創作文
これは過去にあったような、なかったような山に関する話を書く頁です。作者の気分で書いてますので・・是非読まなくとも結構ですf^_^;)
C 白い岩魚

 源流釣りを始めて数年、あるきっかけで源流釣り界の大御所と釣りに行くことになった。
釣りの雑誌でしか見たことのないその方達は、源流釣りの浅い私にとって憧れであり「神」のような存在だった。自分の地元で尺上の岩魚を釣り上げるのも楽しいが、雑誌に出てた場所で自分が釣り上げる姿は夢である。こんな機会は二度ないと初対面のチームに単身飛び込んだ。
本でしか見たことない人達は勝手な妄想で「大きく美化」してしまう。でもこのチームは「竹を割ったようでリラックスさせる」良い空気を放っていた。
そんな人達と約5時間掛けて「今早出川」に来た。本当はその支流の沢に行くはずだったが、連日の雨でルート変更を余儀なくされた。
まあ、そのお陰か源流釣りの代名詞と言われる「ガンガラシバナ」を拝めるかもしれない。
テンバから日帰りで魚止めのガンガラシバナに行けるらしいので、見に行ったことのない小パーティーに編成しなおして「ガンガラシバナ」へ向かった。進めば進むほど魚は釣れ、餌がなくなる勢いで中々前に進めない。そんな中私は根がかりをしてしまい皆から大きく出遅れてしまった。
遠くでチームリーダーが「早く来い!」と私に呼びかける、私も大きく手を振り一歩を踏み出そうとした時「白い岩魚」15cmくらいのがゆらゆらと岩陰で泳いでいた。私は幻かと何度も目を擦り見直したが、頭から尻尾まで真っ白の岩魚だった。
興奮が収まらない私はチームに合流してからも頭の整理がつかず沈黙していた、それを見かねてチームリーダーから「どうした、何かあったか!」と聞かれボソッと言った。
「俺、白い岩魚みたんス」
皆の足取りがピタッと止まる。「・・・何でそれを早く言わねんだ!」私は事の重大さに気づいていなかった。
そもそも白い岩魚は「アルビノ」と言って天然では数千数万に一匹の確立で発症する生物らしい。しかも私が見た15cmくらいのは成体クラスでそれ以上は大きくなれないらしい。
これは何十年釣りをしてても拝める魚ではないのでかなり貴重な出来事だったらしい。
川を泳ぎ、スノーブリッジをくぐったら「ガンガラシバナ」が見えてきた。壮大な光景の先に「横に走る噴水」のような滝が見え、「白い岩魚」は山の神がくれたプレゼントだったのかなあと勝手な解釈をする自分が「どんぶりの底」に立っていた。

                           終わり

B ミンツァプール

 小学生の頃、男のステータスは高いとこから飛ぶことだった。
始めは学校の二階から花壇に飛び降り、授業を脱走したことから始まった。教頭先生に呼び出され友達5人でこっぴどく怒られ、学校内では一躍有名人になった。
この日の帰り道に「俺ら男は高いとこから飛ぶのをカッコイイことにしようぜ。で、男組ってチーム作ろう」 というのを決めた。次の日学校では、このお馬鹿なステータスを自慢げに語る俺らがいた。他の同級生達もこぞって「俺らも混ぜてよ!」と俺ら「男組」に入りたがって集まってきた。
このことは先生達には内緒と怪我したら抜けるいうのが約束で「男組」に入れることにした。
俺らは色々目標を掲げた、生コンの砂利山に飛び降り競争・ミンツァプールに高飛び込み等。
砂利山は高さ約3mのコンクリート石から砂地に手を広げて飛ぶ遊びで意外と皆飛べた。高さで尻込みする奴もいたが、下が砂だと痛くないからと走って跳ぶ奴もいた。
最後に掲げたミンツァプールは行くまでが恐い、マムシが一杯いる沢の脇を通り抜けなければ行けないのだが、皆蛇が恐くて先に進めない「俺帰る!」「俺も!俺も!」で結局最初の5人が残り5人で行くことになった。
行く途中3匹マムシを見かけたが臆することなく先に進んだ。ミンツァプールとは滝のない堰堤でミズサワ川という名が田舎でなまってミンツァプール、川幅10m水深3mくらいで大きな岩魚がゆっくり泳いでるのがよく見えるとこだった。
この堰堤は側面が5m程の高さで飛び込んだら上流へ泳がない限り陸には上がれない、下流へ行けば滝壺に落ちてしまう。
まあ漫画に出てくるような切迫した滝壺とは違うので泳げる人なら心配いらない。でも、小学生が飛び込むにはちょっと気味が悪い。水温は上流域でかなり冷たく、飛び込み失敗で腹でも打ったらハンパなく痛い。5人皆びびっていたが、リーダーのケンちゃんが立ち上がった。
「俺行ってくるよ」ケンちゃんは青白い顔をしながらも間をおかずに飛び込んだ。
「ひゃっほー!気持ちいいぜ!」俺らの中でケンちゃんは英雄だった。それに釣られてそれぞれ連続で飛び込んだ。一度飛び込んでしまうと度胸がつくのか皆何度も飛び込んだ。
私はその最後の飛び込みで大きな岩の下に大岩魚を見つけた。水面に出て皆にそれを捕まえようと算段し潜水した、岩魚は私の肩幅を有に越え40cm以上はあったと思う。
前側から回り込むと逃げられるので後ろから「腹」と「鰭」を掴むことにした。私は「腹」担当、親戚の「手掴み名人」に下から上の岩に押し当てるといいと聞いていたのでケンちゃんの合図と供に下から上の岩に押し当てた。
「!!」岩魚は暴れることなく俺らに捕まってしまった。皆で上流まで泳ぎ陸に上げるとあっさり捕まった原因がわかった、横っ腹にヤスで刺された跡があった。俺らもヤスで突くことはあったが高学年になる頃には手掴みだけになっていた。
「逃がそうぜ」誰かが言った。それに合わせ「逃がそう、逃がそう」と皆が賛同した。俺等は大岩魚を抱え、一緒に深場の岩の下まで一緒に泳いだ。
岩魚はゆっくりと岩に張り付き横たえた。それを見送ると俺らは陸に向かって泳いだ。
俺等は感慨深げにチャリをこいで家路に向かっているとさっき帰ったはずの友達がチャリで転んでいた。近づいてみると膝からダラダラと血を流して泣いてるので皆で家まで送り届けてあげた。
次の日、職員室に俺ら5人は呼び出された。怪我した友達の親が学校にチクッたらしい、お陰でミンツァプールに行くの禁止で「男組」解散となった。
皆不貞腐れる素振りもなく「すいませんでした」と先生達に頭を下げ教室に戻った。怪我した友達は俺らの前に手をついて「ごめん!」と謝った。
「やめろよ気にすんな」ケンちゃんが言った。「そうだぜ気にすんな、また遊ぼうぜ」誰も友達を恨んだりしない、だって行くなって言われたって「他に面白いこと見つけちまうからな」皆と一瞬目が合った時そんなことを「話した」気がした。



                           終わり


A 空を飛んだ日

 小学生の頃見たあの景色は私以外にも見た人がいたんだろうか?
私は小学生の頃、友達と遊ぶよりも山で木に登ったりカブトムシを獲ってくるのが楽しかった。決して友達がいなかったわけではないが、学校から帰ると毎日裏山に一人で出かけてた。
毎日同じ場所に行くのだが少しずつ遠くまで探検するようになっていた。小学校高学年になると大分山奥まで入るようになって1時間くらい歩くこともざらになった。
そんなある日曜日、母におにぎりを握ってもらい山に長めの探検に出かけた。いつもの場所から1時間ほど歩くと沢が見えた。そこに2mくらいの丸太橋が架かっていて恐る恐る渡り終えるとミズナ・エラコ・シドキの大群生になっていた。私は持ってきたビニール袋に夢中で詰め込みながら山を登り始めた。
どれだけ登ったろう・・お腹がすいたのでおにぎりを食べて一休みしていた。小学生が来るような場所じゃないなと正直思った。だけどなんだかどんどん進んで来てしまったというか、来なけりゃいけないような気がして歩いていた。
もう少し登ると頂上のようなのでまた登り始めた。頂上に着くと木々があまりなく平らな丸い草原が広がっていた。真ん中の方へ近づくと福寿草が一面に広がりとても綺麗だった。
綺麗だなと思いながら福寿草へ近づいていくと急に日が翳って周りが暗くなった。雨でも降るのかと思い空を見上げると、高い木から蔓が伸びてるのが見えた。ジャンプすると届きそうだったので飛びついて蔓を掴んだ。
「!!」掴んだとたんビヨーン!と空に向かって引き上げられた。
「うわーっ!たすけてー!」こんなとこで誰も助けに来るとは思わないが自然と叫んでいた。本人は10mくらい浮いた気がするがたぶん2mないと思う。下を見ると福寿草の群生は漢字の森という文字に見えた。
「へえ〜面白いな」蔓にぶら下がりながら独り言を言っていたが、降りれなかったらしょうがないのでもう一度蔓をギュッと引っ張ってみた。するとズルズルッと蔓が伸びて地面に帰れた。
無事着地してホッとしてると、また日が差して明るくなった。もう一度地面から福寿草を見たが文字には見えなかった。
何だか得した気分になり、このままここは内緒の場所にして帰ることにした。帰ってから両親に何処に行ってきたのか聞かれたが楽しい所としか言っていない。
何時かまた行くときが来るんだろうか。


                            終わり


@ 岩魚のダンス

 釣れない釣りは面白くない。
特に何週間も前から源流釣りの計画をしていたにも関わらず、他のチームとブッキングしてしまった。
朝現場へ着くと、数台車があり装備の準備中だった。とりあえず挨拶をしてどのルートに入るのか聞いてみる。残念ながら私の予定していたコースと同じだった。
一緒に付いていくのは嫌だったので、そこでお別れし別な川に入ることにした・・そして現在に至る。

出遅れて良い思いをしたことはない、どうせならと人家のない本流を登ることにした。先行者がいるようだが、気にしないで釣り進んだ。
魚の姿は見えるのだがさっぱり釣れない。もう二時間はこの調子だ、距離も大分進み見たことがない景色になってきた。竿を仕舞い暫く進んだ、30分程進むと左の山手に小さな滝が見えた。
今日は「探検でもしてみるかな」そう気持ちを切り替え、川から上がり滝に向かって山際を登って行った。
初夏の奥山はまだ山菜の宝庫だ、シドケ・コゴミ・コシアブラを採りながら登って行く。
暫くして水の流れがないということに気づいた。けして大きい滝ではないが、本流に流れ込む沢があってもいいはずなのに何処にも見当たらない。滝に近づくにつれ不気味になってきた、途中から笹が異様に茂りだし前が見えづらくなってきた。足場を取られないようウェーデイングシューズをしっかり踏み込み歩いてるとぬかるみに嵌まり込んだ。引き抜こうともう一方の足でドン!と踏ん張ると「バチャバチャバチャバチャバチャ!」・・水鳥が驚いたかのような音が回りに響いた。びっくりしたお陰で足は無事に引き抜けた。
笹薮の先は湿地帯になっているようだ。湿地帯は見た感じ10mの楕円形で奥に遠くから見えていた滝が現れた。湿地帯はぬかるむので遠巻きに近づいて行った。気づくと笹はなくなり苔の生えた岩が広がって、滝を含んだ大きな空間が広がっていた。
「へえ〜こんな場所があったんだ」私はここで始めてカメラを忘れたことに気がついた。絶景ではないが秘密の隠し滝のようで写真に納めたかった。滝壺は直径3mほどで滝底まで青く透き通る水はとても綺麗だった。
昼飯でも食うかと傍らに腰掛ると。何かが水面を跳ねた!岩魚だ!次々と岩魚が跳ねる!なんという光景だ。餌を捕食してると思えない、ジャンプしてるのか?かなりの数が踊ってるように次々飛び跳ねる。夢中になって見てると周りに靄が立ちこめてきた。霧はジャンプする岩魚に纏わり付くように上下に揺れる幻想的な光景だ。岩魚は今どんな気持ちでジャンプしてるのだろう、求愛のダンスなんだろうか?・・・ハッとして時計を見ると午後3時そろそろ帰らないと野営することになってしまう。
荷物を纏め立ち上がると岩魚のダンスは終わっていた、というか水面は滝の流れる揺れだけで岩魚の泳ぐ姿は見えなかった。大体1時間くらいの出来事だろうか?本当にそれが起きたことなのかと言われると、夢だったのかな・・と考えてしまう。
帰り足で色々考えてみた、岩魚は完全に陸封され今まで生き残ってきた者達なんだろう。あのダンスはなんだったのだろう、雪虫が舞う中のライズとはちょっと違う気がする。
それよりなぜ「竿を出さなかったのだろう」釣りに対する欲望はあの地では起きなかった。何時かまたここに来ることがあればまた考えよう。当分ここへは来ないだろうな、何だかそんな気がする。
                           終わり