祈祷会  
ウエストミンスター小教理問答講解44

「盗んではならない」(出エジプト20:15)

(1)第八の戒め
 今日は十戒の第八戒を学びます。最初に第73問から第75問を読んでおきましょう。「問73:第八戒はどれですか。答:第八戒はこれです。『あなたは盗んではならない』。問74:第八戒では、何が求められていますか。答:第八戒が求めている事は、私たち自身と他人との富や生活状態を正当に確保し、向上させることです。問75:第八戒では、何が禁じられていますか。答:第八戒が禁じている事は、何事であれ私たち自身または隣人の富や生活状態を不当に妨げること、あるいはその恐れのあることです」。
 「盗み」というのは、私たちが「罪」の目録を挙げるならばその筆頭に来るような、誰もが思いつく悪しきことの代表的なものです。小さな子どもでも「人のモノを黙って取ってはいけない」と教えられています。しかしそれほどの基本的な人間同士の約束事でありながら、同時に私たち自身の欲深さや罪深さと切り離すことができないのが、この「盗む」という行為と言えるでしょう。しかし小教理問答の教えていることを見てみますと、ここでは単に他人のモノを盗むということだけが問題になっているわけではないことに気づきます。第74問と第75問を読むと、他の戒めと同じように「求められている事」と「禁じられていること」の両面からの説き明かしがされていますが、そこでは「自分自身と他人」との「富や生活状態」を「正当に確保し、向上させること」が求められ、反対に「不当に妨げること、あるいはその恐れのあること」が禁じられています。すなわちここでは「盗むな」という戒めが、第一に、単に他者からの収奪や搾取ということだけでなく、自分自身にも関わっていること、第二に、お金やモノということだけでなく、生活状態全体にも関わっていること、第三に、自分と他者の富と生活状態を不当に妨げることのみならず、かえって正当に確保し、向上させることが求められているのです。

(2)正当さと不当さ
 そこで次に考えたいのは、小教理問答が「盗むな」の戒めについて、「自分自身と他人」との「富や生活状態」を「正当に確保し、向上させること」と、「不当に妨げること、あるいはその恐れのあること」を禁じることと教えることの意味です。まず、「盗むな」との戒めに生きる道は、正当な経済活動や富の再分配などを通して、人々の生活を正しく保証し、向上させることと教えられます。聖書は決して私有財産を禁じたり、経済活動を通しての利潤の追求事態を悪とはしませんが、しかし今日のような極端な自由競争による市場主義経済のもとでの貧富の格差の拡大や貧困層の増加は、明らかにある人々の富や生活状態を「不当に妨げること、あるいはその恐れのあること」につながっていると言わなければならないのではないでしょうか。
 一方では莫大な資産を築く一握りの人々がある一方で、ある人々は極度の貧困の中で職を失い、家を失い、家族を失い、ついにはいのちまで失っていくような異常な事態が起こってきている今日、私たちはもう一度、小教理問答が教える「自分自身と他人との富や生活状態を正当に確保し、向上させること」という意味を深く考え、受け取っていかなければならないと思います。

(3)生かす愛によって
 このように「盗むな」という戒めの持つ心を、自分自身と他人の生活全般を正当に生かすことと受けとめていくとき、そこから聖書が求める正しい意味での自己愛と隣人愛の道が開かれていきます。すなわち、盗むなとの戒めに生きる道は、単に盗みを働かないというだけでなく、より積極的には自分自身と隣人への愛に生きる生き方であると教えられるのです。自分自身に与えられたものを、自分の力で勝ち得たものとしてでなく、主から与えられた恵みの賜物として感謝して受け取って生きること、また与えられたものを、自分一人で独占してしまうのでなく、隣人と分かち合いながら生きること。そこに主なる新しい人の生き方が表れてくるのです。十戒が教える「盗み」の罪とは、他人のモノを奪い取って自分のモノにすることであり、またそれのみならず、自分のモノを自分だけのモノとして独占することによって他者を顧みないことでもあるのであって、そうやって結果的に他人との交わりを断ち切って生きようとする自己中心的な生き方です。
 そしてそれによって他人のモノを得ることはあっても、しかし結果的に他人との生きた交わりは失われ、絶えず人を疑い、疑心暗鬼と不安の中に生き続けることになるでしょう。そこに残るのは孤独ということです。しかし主イエス・キリストが招いてくださる生き方は交わりに生きる人生です。神との交わりに生き、それによって隣人との真の交わりに生きる人生です。そこにおいてこそ隣人も生き、私も生きることのできる愛の交わりが生まれてくるのです。私たちは本来すべてのものは主なる神から与えられ、お預かりしたものであり、それを正しく管理し、運用するようにと委ねられたしもべであることをわきまえ知って、そのようにして委ねられたものを、正しく自分自身と隣人とのために活用しなければなりません。それをしないこと、すなわち不忠実と怠惰さもまた盗むなの戒めに触れることであることを十分に心に留めて、自分自身と隣人とを愛するという十戒の中心に沿って、この戒めに生きる者でありたいと願います。

 



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