祈祷会  
ウエストミンスター小教理問答講解42

「人の血を流す者は、人によって血を流される。神は人を神のかたちにでお造りになったから。」(創世記9:6)

(1)第五の戒め
 今日は十戒の第六戒を学ぶことにします。第67問を読みましょう。「問:第六戒はどれですか。答:第六戒はこれです。『あなたは殺してはならない』」。前回の第五戒から、十戒の後半部分、神の御前における人と人との関わりについての戒めを学び始めました。父母を敬えとの命令に続くのは、「殺してはならない」という戒めです。十の戒めの中で、これほど基準のはっきりした戒め、つまり守ったか破ったかが明白な戒めはありません。つまりこれは程度の問題、加減の問題が入り込む余地のない戒めということになるのです。しかし日常生活を営む私たちにとって、「殺すな」の戒めは直接の関わりからはほど遠い戒めと感じられます。「人を殺すなど考えられない」と思うのが、私たちのごく自然な反応ではないでしょうか。その一方で、そのように通常なら考えられないような戒めに対する違反が、私たちの社会の中に蔓延しているという現実をも直視しなければなりません。人間はいとも簡単に「殺すな」の戒めを犯し、その罪を繰り返しているのです。そのような中で、私たちは改めてこの戒めの持つ意義をしっかりと受け取り、その戒めが今この時代にいかに重要であるかを声高に訴えていかなければならないのです。
 では具体的にこの問答の中身に入っていきましょう。まず第68問には次にように記されます。「問:第六戒では、何が求められていますか。答:第六戒が求めている事は、私たち自身の命と他人の命を守るために、あらゆる正当な努力をすることです」。小教理問答は「殺すな」の戒めについて教えるに当たり、まずこの戒めの主たる心が「自分と他人の命を守ること」にあることを明らかにします。これまでの学びの中で十戒の一つ一つの戒めには単なる禁止の戒めにも必ず積極的な命令が込められていることを見てきましたが、まさに「殺すな」の戒めに込められた心は「命を尊べ」という命令なのです。ただ単に人の命を奪わなければよい。私は間違っても誰かを殺すなどということはありえない。だからこの戒めの前を素通りしても構わない、ということにはならない。そこには命を尊び、命を守ることが私たちへの命令として与えられているのです。

(2)隣人を愛する愛
そこで次に目を留めたいのは、小教理問答が第六戒の求めが「私たち自身の命と他人の命を守るために、あらゆる正当な努力をすること」としている点です。これは続く第69問と併せて読むとよりはっきりしてきます。「問:第六戒では、何が禁じられていますか。答:第六戒が禁じている事は、私たち自身の命を奪うこと、あるいは隣人の命を不当に奪うこと、またその恐れのあるようなすべての事です」。まずここで他人の命を「不当に」奪うことが禁じられていることに注目したいと思います。小教理問答が「不当な殺人」と、ある限定をしているのはそこに「正当な殺人」ともいうべきことが想定されているからでしょう。当時の文脈に照らして言えば、そこではいわゆる合法的な殺人である「死刑」と「戦争」の問題が横たわっていることがわかってきます。これらはいずれも性急に判断するのが難しい問題ではありますが、しかし新約の恵みの時代に生きる私たちにとって、もはや死刑制度や正義の戦争という考えを支持することはできません。新約の時代、主イエス・キリストにある命の恵みの時代に生きる私たちだからこそ、あらためてこの第六戒をそのまま文字通りに受け取ることが必要なのだと言わなければならないのです。

(3)いのちの主
 次に考えなければならない今日的な問題として、第六戒が「私たち自身の命」を守ることを命じ、それを奪うことを禁じていることの意味をしっかりと受け取っておきたいと思います。年間三十万人を越える自殺者が続くという異常事態を迎えている私たちの社会ですが、昨今の不況の中で年末に向かい自殺者が増加するという予想も報道されています。電車に乗ればどこかで人身事故で電車が止まるというアナウンスを聞かない日の方が少ないような希望を失った殺伐とした時代に、絶望の中で自ら命を絶つところにまで追いつめられている人々に対して、教会としてただ手をこまねいているだけでよいのか、という気持ちがいつも頭をよぎります。この町に対して、隣人に対して、いのちの主の福音を伝えていかなければなりません。
 先日の新聞で、三十年以上にわたり自殺予防の電話相談の働きを続けておられる老牧師の先生が取り上げられていました。末期ガンになり、最後の日々を一人でも自殺を思いとどまらせるためにささげたいと奮闘しておられる先生の記事を読みながら、まさに十戒の心を生きる信仰者の姿を見ます。いのちは主があたえ、主がとられるものであり、人はその始まりも終わりも人間の意のままに扱うことは許されません。それはただいのちの主であられるお方だけがお決めになることのできる聖なる領域です。私たちはこのいのちの主の御前に与えられた命を尊び、他人の命も自分の命を大切し、これを正当に守るためにあらゆる努力を惜しむことなく続けていかなければならないのです


 



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