東日本大震災から9年を覚えての夕拝説教    2020/03/08
『苦難を分け合って』

ピリピ4:14

 今年も3月11日を前にして、「東日本大震災から9年を覚えての夕拝」をおささげしています。2011年3月11日に震災が起こり、翌年から2015年までは、この日に一番近い日曜日に、世田谷中央教会を会場に、同盟教団震災復興支援本部主催の祈りの集いが開催されていました。私たちも毎年、この集いに夕拝を合流して参加していましたが、2015年で教団の支援活動に区切りが付けられて以来、2016年からこの夕拝をささげ続けて、今晩で9回目となりました。
 震災直後から教団では、諸教会で祈りを合わせるための祈祷文を作成し、配布し続けてきました。私が毎年祈祷文の文面を用意していましたが、これも2016年以降はこの教会で朝夕に祈るために作り続けて来ました。感謝なことに、これを自分たちの教会でも用いたいと言ってくださるところがいくつもあり、今年の祈祷文も諸教会で用いられています。しかし震災のための祈りを用意するというのは、なかなかエネルギーの要ることで、特に今回は新型コロナウィルス感染症の広がりの中で迎える主日ということも意識したこともあり、祈りつつ、集中して整えたものです。朝拝に続いてこの夕拝でも祈ります。集われた皆さんとともに、心を合わせる祈りになっていれば幸いなことだと思っています。

(1)数えること、覚えること
 一つの出来事を記憶に留め、覚え続けるために、数字を確認し続けるというのは大切なことだと教えられています。東日本大震災以来、自分に課して来たのは、警察庁や復興庁が毎月発表する震災の死者数、行方不明者数、震災関連死者数、避難者数を確認し続けることでした。とはいっても自分でデータを集めているわけでなく、毎月忠実に集計してまとめた数を掲載し続けてくれているブログを確認することによってでした。ちなみに警察庁が2月10日に発表した、昨年12月10日現在の死者は15,899人、行方不明者は2,529人。昨年よりさらに行方不明者の数が少し減って、死者の数が少し増えました。また復興庁が2月28日に発表した、2月10日現在の避難者の方々の数は47,737人。昨年のこの時期が約5万4千人でしたから約6千人減ったことになりますが、9年経っていまだ避難生活を強いられている人々がいるという事実をやり過ごしてしまっている自らの感覚の鈍さを思います。
 先週、岩手の北上におられる牧師と語り合う機会がありました。甚大な被害を受けた岩手三陸沿岸は、今ではかさ上げ工事や防潮堤工事が終わり、見違えるような新しい町になっているそうで、仮設住宅はほぼ無くなり、復興支援住宅に転居が進んでいると聞きました。その一方で震災後の人口減少、人口流出は止まらず、この先どんどん先細りしていくだろうと話しておられました。原発事故後の福島も、私自身は昨年3月でふくしまHOPEプロジェクトが終了してから、足を運ぶ機会がなくなっていますが、避難区域が徐々に解除されていく一方で、廃炉作業や汚染水対策がなかなか進まないこと、むしろ汚染水の海洋放水や汚染度の再利用へと徐々に舵が切られているように感じられます。先週、二冊の本を読みました。一冊は『孤塁 双葉郡消防士たちの3.11』、もう一冊は『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』です。今になってはじめて語られ出した震災直後にその現場にいた人々の生々しい証言を読みながら、心拍が上がったり、涙が出たりと、自分でもその反応に驚いたのですが、しかしそれでもやはり9年という歳月の中で、自分自身の記憶も関心も薄れつつあることを否むことができません。覚え続けるというのは難しいことだと実感します。

(2)苦難を分け合って
 そのような中で今晩、心に刻みたいのがピリピ書4章14節の御言葉です。「それにしても、あなたがたは、よく私と苦難を分け合ってくれました」。別の翻訳では「苦しみを共にしてくれました」となっています。直訳すると「私の苦しみに一緒にあずかった」となります。かつて礼拝でピリピ書を読んだ際にも学んだことですが、ピリピ書のキーワードとも呼ぶことのできる言葉が二つあります。一つは動詞の「喜ぶ」、名詞で「喜び」、いま一つが動詞の「あずかる」、名詞になると「交わり」と言う言葉です。この14節の「苦難を分け合ってくれた」というのも、まさにこの「あずかる」という言葉が用いられています。
 ここでパウロは獄中の自分のために援助物資を送ってくれたピリピ教会に感謝の言葉を述べているのですが、彼はここでピリピ教会と自分自身との関わりを単に「援助する側」と「される側」というようには捉えることをせず、むしろ主の御前にあっての互いの関係として保とうとしています。14節もその延長線上にあって「あなたがたは、よく私と困難を分け合ってくれました」と言っているのです。「分け合う」、「あずかる」、新約聖書の言葉で「コイノニア」です。これに「ともに」を意味する「シュン」という前置詞がついているのが元の動詞です。「コイノニア」とは「あるものを共有する」、「あるものに与る」交わりを意味する言葉ですが、ここでは「苦難を分け合うコイノニア」と言われる。そこでは獄中にいるパウロも、それを支えるピリピ教会も、ともに困難を分け合い、困難を担い合うことで交わりが作られているというのです。これはまさに「一つの部分が苦しめば、すべての部分がともに苦しみ」、「喜ぶ者とともに喜び、泣く者とともに泣く」キリストのからだなる教会の交わりの表れといえるのではないでしょうか。
 同盟教団には、しばしば「同盟の三本柱」と呼ばれるものがあります。一つは「聖書信仰」、いま一つは「合議制」、そしてもう一つが「宣教協力」というものです。私は同盟教団の教会で生まれ育ち、同盟教団の教師になって二十九年になりますが、同盟教団が「宣教協力」の教団であること、それは国外宣教や国内宣教、キャンプ宣教や次世代宣教、教会支援や問安伝道などでも表されているものの、それ以上にこのことを実感させられたのは、3.11の経験を通してでした。震災直後から教団事務所に詰めて支援態勢作りと支援物資の受け入れ、被災地への搬送作業に従事しましたが、全国の同盟諸教会から連日送られてくる支援物資で教団事務所の部屋が埋め尽くされていった光景は忘れることができません。またトラックに物資を満載して被災地の教会を回ったときも「自分たちより必要としているところが他にあるはずだから」といって、支援物資を受け取ることを控えようとする牧師たちばかりであったことを思い出さずにはおれません。どの教会も小さく、先生たちも信徒の方々も震災前からずっと苦労を重ねてきた方々ばかりです。しかしそれでも自分たちより他の人々を案じ、自分たちを後回しにしようとする姿に、「それにしても、あなたがたは、よく私と苦難を分け合ってくれました」との御葉が思い起こされるのです。

(3)私たちのこれからの課題
 また、ふくしまHOPEプロジェクトの立ち上げのことを思い起こします。当時、東北の各地で動き始めていた教会ネットワークの会合に、同盟教団の支援本部の代表としてよく顔を出していました。震災から数ヶ月後の福島での集まりに出席した際に、特に原発事故後の子どもたちをケアする働きの重要性が語られながら、福島の教会だけではとても担い切れないという声が聞かれました。そのときに初めてお会いしたのが今は郡山におられ、その後、ご一緒するようになった木田恵嗣先生です。先生と個人的に話をする中で、子ども支援のプロジェクトを立ち上げようと言うことになり、2012年の5月に仙台で関係者に呼びかけて最初の準備会合を開きました。そこで決めた基本的な枠組がありました。子ども支援の働きはあくまで福島の教会の主体的なもの、しかしそれを福島の外にいる教団や支援団体で支えようというものでした。人とお金を集めるのは参加する教団、支援団体が担い、それらをもって福島の教会の働きとして地域の子どもたちと家庭に仕える。ふくしまHOPEプロジェクトの理念がこうして出来上がって行きました。そして2012年7月に最初の保養キャンプを岩手で開催し、以来、2019年3月までこのプロジェクトが続けられたのです。私はいきがかり上、事務局長を務めさせていただきましたが、まさにこの経験を通して「苦難を分け合う」交わりの豊かさ、幸いを教えられたと実感しています。
 私たちは今晩、この礼拝において過ぎ去った出来事を思い起こすだけでなく、それが問いかける私たちのこれからの課題についても祈り、考えたいと思います。思うに 
このような苦難を分け合うコイノニアが、今とこれからの日本の教会にますます必要になっていくことでしょう。災害のような緊急の時だけでなく、過疎化が進む地方の教会、高齢化が進む都会の教会、会員数の減少や無牧となって弱っている教会はこれから増えていきます。一緒に集まって礼拝することが難しい時代になることも予想されます。そんな中での教会の交わり、協力、助け合い、支え合いの必要性さらに増していくでしょうし、キリストの身体の全体に対する祈りと奉仕、心配りはますます大切にされていかなければなりません。自分たちのことだけを考えるのでは、教会の交わりは壊れてしまいます。私たち徳丸町キリスト教会は、苦難を共にする交わりに連なっていく教会でありたいと願います。犠牲を払うことを厭わない教会でありたいと願います。痛みをともに担う教会でありたいと願います。大きなことはできなくても、十分なことはできなくても、分け合われる苦難のその一片でも受け取って、その交わりに参与していく。そのような教会として進んで行くという思いを、この東日本大震災から9年を迎える週の、この礼拝においてともに確かめ合いたいと願います。



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