ルツ記講解その10    2018/07/01
『買い戻しの権利』

ルツ4:1-12

 いよいよルツ記も最後の4章に入ります。今晩は、これまですでに幾度か登場しながら今日まで積み残してきた、旧約における重要な思想でもある「買い戻しの権利」を巡ってのボアズの姿勢から学んでまいりましょう。

(1)町の門にて
 ルツがボアズに結婚を申し入れるという決定的な一夜が明けて、場面は町の門に移ります。1節、2節。「一方、ボアズは門のところへ上って行って、そこにすわった。すると、ちょうど、ボアズが言ったあの買い戻しの権利のある親類の人が通りかかった。ボアズは彼にことばをかけた。『ああ、もしもし、こちらに立ち寄って、おすわりになってください。』彼は立ち寄って座った。それから、ボアズは、町の長老十人を招いて、『ここにおすわりください』と言ったので、彼らもすわった」。朝の礼拝で第九戒を学んだように、町の門、すなわち町の中での様々な裁判沙汰や調停、話し合いを行うための場所 に、当事者同士と長老たちとが集まり、これから一つの重要なテーマが話し合われるというのでした。
 ここでボアズが持ち出す議題。それが「買い戻し」の権利の行使を巡る一件です。1節に「買い戻しの権利のある親類の人」とありますが、これは他の聖書では「贖い手」と訳されています。もともとのヘブライ語は「ゴーエール」という言葉ですが、その動詞形の「ガーアル」が「贖う」という意味で、ルツ記における、旧約聖書における、そして旧新約聖書における最も重要な思想の一つとなっているのです。実際、ルツ記ではこれまでに2章20節、3章9節、12節、13節、そして4章1節以下に繰り返し登場して来ます。
 これらを読んで分かるのは、ナオミにとってボアズは買い戻しの権利のある親類の一人であること、ナオミの亡くなった息子の妻であるルツがボアズと結婚するのは、ナオミと亡き夫エリメレクの血筋を絶やさないためというのが一つの理由であること、そしてボアズがルツと結婚するためには、ボアズよりも権利関係の近い親類がおり、その親類が権利を放棄する必要があること、そしてこの権利をボアズが得るための話し合いが開かれようとしている、というのが今日の4章の町の門での光景だということなのです。

(2)買い戻しの権利
 ここでようやく「買い戻しの権利」そのものを取り上げます。「買い戻し」、「贖い」というのは旧約聖書の中でかなり幅広い意味があるのですが、その中でも特に重要な点を三つほど確認しておきましょう。第一にレビ記25章23節以下の箇所です。ここではまずある人が先祖代々受け継いできた土地を手放さなければならなくなった際、それを後に本人かその近親者が代価を払って買い戻す権利を持つことが定められています。第二に奴隷として売られていった人を、誰かがその所有者に代価を払って買い戻すことができると定められています。
 第三に、今日のボアズとルツのケースに関わりがあるのは申命記25章5節以下に定められている結婚制度、すなわち夫が自分の子がないままに死んだ場合、その親族が彼の妻を自分の妻にして、亡くなった夫の子孫を残すという「レヴィラート婚」の定めです。
 ここに表れる結婚観は、血筋を絶やさないためということに主眼が置かれており、今日の結婚観からすると随分と違和感を覚えるのは事実ですが、それでもとにかくここでボアズがルツと結ばれていくためには、ボアズよりも関わりの近い、権利を行使することのできる他の贖い手に、その権利を放棄してもらう必要がある。自分たちの思いだけではどうにもならない、越えるべきハードルがあったのです。

(3)生ける主の御前で
 こうしてボアズは町の長老たちの目の前で、買い戻しの権利のある親類との交渉に入ります。まず3節、4節では先の買い戻しの権利が行使される第一のケースが扱われます。ここでその贖い手は、エリメレクの土地を買い戻すことに意欲を示します。しかし継いでボアズは5節で上記のことに付帯する条件を示します。それが先の買い戻しの権利が行使される第三のケースに関わることです。土地を相続するだけでなく、それとともにルツをも引き受けなければならないと提案するのです。するとこれに対して贖い手は答えます。6節。「その買い戻しの権利のある親類の人は言った。『私には自分のためにその相続地を買い戻すことはできません。私自身の相続地をそこなうことになるといけませんから。あなたが私に代わって買い戻してください。私は買い戻すことができませんから』」。こうして見事にボアズは、ナオミに対する買い戻しの権利を譲り受け、これをもってルツとの結婚も正式に決まることになりました。7節から12節でこのことが保障され、確認される手続きが記されていきます。
 このやりとりを皆さんはどのように読まれるでしょうか。相手に主導権を持たせているように見えて、次々とカードを切る交渉術に、ボアズのしたたかさを見るでしょうか。それともルツとの結婚が流れるかもしれないというリスクを冒しても、相手の権利を尊重し、条件を明らかにして交渉に臨む姿に、ボアズの誠実さを見るでしょうか。私たちは今晩、このボアズの姿に、神の御前で彼がすべてのことを為しているということを教えられるのです。もちろん彼の願いはルツと結ばれることですが、しかし彼はそのことに伴う諸事情をも含めて引き受けようとしています。買い戻しの権利のある親類が、最終的にその権利を放棄したのは、ルツを引き受けてその間に子が生まれれば、土地財産はエリメレクの子孫としてルツの子に引き継がれることになり、自分の所有とならないという事情があったからです。メリットのないことに贖い手になることはできないという判断です。しかしボアズは、この自分にはメリットのないと見られる結婚を望み、そしてそれにともなって贖い手になろうと自ら進んで決心し、そのように行動する。裏表無く、正面から、真っ正直に、公明正大に事を進めていくのです。それは彼がこれを生ける主の御前で取り扱っていることの証しです。こうしてボアズとルツは結ばれて、いよいよ次週、ルツ記のエンディングに入って行きます。自分にメリットのないものの贖い手となる。そういうボアズの振る舞いが、私たちに「贖い」というもののより真実な意味を物語っているでしょう。贖う価値のないもののために、しかし贖いを成し遂げてくださった主イエスのお姿に思いをはせることができたら、と願います。

 

 



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