ローマ人の手紙講解その62   2020/07/12
『あなたらしく、私らしく』

ローマ12:3-8

 7月第二主日を迎えました。九州、中部、信州の豪雨被害が広がり、先週後半からは東京の新型コロナウイルス感染者の数は再び増加しており、緊張させられる中でこの朝を迎えています。そのような中、お一人一人の主の守りと祝福を祈ります。

(1)一人ひとりに
 ローマ書12章に入りまして、その最初の数節を丁寧に読み進めたいと思っています。今日は3節から8節を朗読しましたが、特に目を留めたいのは3節の言葉です。パウロは1章から11章までの教理篇を、時に緻密に、時に大胆に、深く考え抜いた知恵と言葉を用いて、神の救いのご計画を書き記してきました。それと同じぐらいに、12章からの実践篇もよく考え抜かれた言葉が用いられていると実感します。
 しばしば「理論」と「実践」として分離されてしまう。分離されてしまうばかりでなく、両者が優劣関係に置かれたり対立的になったりすることがあります。しかし本来、教えと実践は密接不可分なものであり、また互いが互いを必要としている。理論なき実践は無節操に陥りやすく、実践なき理論は抽象化しやすい。ローマ書を読み進める上でもこれは大切な姿勢だと思います。1章から11章と12章から16章は確かにある区別がある。しかしそれは別物ではありません。1章から11章を踏まえて読まなければ12章以下のことは分からないし、12章から16章を学ぶことで1章から11章で語られて来たことの意味を改めて受け取り直すことがあるのです。
 そこで今朝の3節をお読みします。「私は、自分に与えられた恵みによって、あなたがた一人ひとりに言います。思うべき限度を超えて思い上がってはいけません。むしろ、神が各自に分け与えてくださった信仰の量りに応じて、慎み深く考えなさい」。パウロは12章の書き出しをよく考えて書いています。私たちの神に献げて生きる礼拝的な生き方を1節で「あなたがたのからだを」、2節で「心を新たにすることで」、つまり「からだと心」、私たちの存在の全体をもっての生き方として勧めたのに続き、1節で「あなたがたに勧めます。あなたがたのからだを」とキリスト者「すべて」に呼びかけたのに続き、3節では「あなたがた一人ひとりに言います」と、一人ひとりに向けて語りかけるのです。
 
(2)信仰の量りに応じて
 「あなた方一人ひとりに」と言ってパウロがこれから語り始めるのは、「教会」についてです。4節、5節。「一つのからだには多くの器官があり、しかも、すべての器官が同じ働きをしてはいないように、大勢いる私たちも、キリストにあって一つのからだであり、一人ひとりは互いに器官なのです」。パウロが教会を「キリストのからだ」と呼ぶ。これは今日のローマ書12章とともに、一コリント12章やエペソ1章や4章でも論じられる、聖書の教会論の中心テーマです。
 夕拝で「五十音順主題説教」に取り組んでいますが、先々週が「か」で「からだ」を扱ったところでした。パウロが教会を「キリストのからだ」になぞらえたのは、「一つでありつつ多様である」というあり方、しかもそれがキリストのいのちに生かされているユニークな姿を表現するためでした。その上でとりわけ重視したのが「多様である」ということです。「一人ひとり」が教会だというのです。しかもその一人ひとりは集団に吸収される一人でなく、交わりから切り離されて孤立した一人でもない。要は「かしらなるキリスト」です。いつも互いに確認することですが、私たちが求める一致は、互いの間の一致ということ以上に教会のかしらなる主イエス・キリストの御心に対する一致です。主イエス・キリストに結び合わされている一人ひとりだからこそ、互いに愛し合い、仕え合い、支え合う交わりが初めて可能になる。それがキリストのからだの姿です。
 しかし地上の教会の現実として、そこには乗り越えなければならない難しい課題があったことも事実です。キリストにある一人ひとりとはいえ、様々な違いを持つ多様な人々がともにある。初代教会のバラエティは私たちの想像以上に広く、複雑なものであったと思いますが、それだけにこのような勧めを繰り返し聴き続ける必要があったのでしょう。「私は、自分に与えられた恵みによって、あなたがた一人ひとりに言います。思うべき限度を超えて思い上がってはいけません。むしろ、神が各自に分け与えてくださった信仰の量りに応じて、慎み深く考えなさい」。ここでパウロは一人ひとりに向けて、互いのことを云々する前にまず自分自身と向き合い、自分自身のことをよく思いみて、顧みるようにと言うのです。そこで心すべきことが二つ。一つは「思うべき限度を超えて思い上がるな」。私たちの陥りやすいと驕り高ぶりの傲慢さの罪です。いま一つは「信仰の量りに応じて、慎み深く考えよ」。「慎み深く」とは「健全に、健康に、健やかに」という意味です。ちょっとニュアンスが違って聞こえます。「信仰の量りに応じて、健全な思いをもって思え」と言うのです。要するに「自己卑下しすぎるな」ということでしょう。ある先生は「思い上がるな、思い下げるな」ということだと説明していました。
 私たちの交わりの中でもしばしば他人との比較が心にのし掛かってきます。他人と比べて思い上がる。思い下がる。しかし高慢と自己卑下は別物ではありません。同じものの現れ方の違いです。このことをどう克服していくかが私たちの信仰の歩みを健やかにする上で決定的であり、また教会が健やかに歩んで行く上で決定的なことです。確かに教会は人間の集まりですが、しかし人間の事柄に終始している訳にはいかない。かしらなるキリストに向かって建て上げられていくために、他者との比較に縛られ続けることから解放される必要があります。ではどうすればよいのか。パウロは神が教会のかしらなるキリストを通して一人ひとりに分け与えてくださった信仰の量りがあると言います。この「量り」というのはむしろ「尺度」と言った方が相応しいかもしれません。もとの言葉は「メトロン」、「1メートル、2メートル」の「メートル」の元になった言葉で基準を示すものです。この量りは皆を一列に並べて大きいか小さいか、多いか少ないか、高いか低いか、そうやって比べるための量りではありません。エペソ4章7節に「私たちは一人ひとり、キリストの賜物の量りにしたがって恵みを与えられました」とあります。つまり「信仰の量りに応じて」とは、神さまが恵みによってイエス・キリストによって私たちに与えてくださった各々への賜物に応じて、ということです。それは神さまの分配、差配であって、すべては恵みによって与えられたものです。だからパウロも自分も恵みを受けた一人として「私は、自分に与えられた恵みによって、あなたがた一人ひとりに言います」と言うのです。

(3)あなたらしく、私らしく
 4節以下は次週あらためて学びますが、この朝、よく心しておきたいことは、教会とはこの神さまの恵みによる交わりだという事実です。そして神さまは教会のかしらなるキリストによってその豊かな恵みを賜物として実に多様に、豊かに一人ひとりに分け与えてくださった。教会の多様性はそのまま神の恵みの多様性、恵みの賜物の多様性の表れです。あなたがあなたらしく、私が私らしく、罪赦された者として、恵みを与えられた者として、キリストのいのちに生かされた者として生きていく。人と比べて思い上がることなく、思い下がることもなく、かしらなるキリストに向かって分け与えられた賜物をよりよく生かしてともに建て上げられていく。それがキリストのからだなる教会の姿です。
 教会が神の賜物を分け与えられた共同体であるという時、気をつけておきたいことがあります。そこでの「賜物」とは皆さんの持っている何か特別なものを指しているわけではない。むしろ教会という存在そのもの、今日、ここに呼び集められた徳丸町キリスト教会という存在そのものが神の恵みの賜物そのものであるという事実です。そしてその賜物の恵み深さを発見し続けていくところに大きな慰めと励ましを与えられるのです。
 2月の終わりから共に集まる礼拝を休止し、毎週の礼拝を朝は基本的に妻と私と当番役員さんの三名、夕拝は識神学生を加えた四名で献げてきました。人数が少ないこと自体は毎週の早朝礼拝で経験していることですからそれほど違和感はないのですが、それでも毎週Webカメラに向かって語るというのも、皆さんの画面越しの礼拝にもご苦労があったように私にとってもなかなか複雑なものでした。
 4月に入ってK兄が朝拝にご一緒するようになりました。正直申しまして、最初はKさんを牧会的な配慮のもとに受け入れていると感覚を持っていました。そのような感覚の誤りと傲慢さに思い至っていませんでした。しかししばらくして気づかされたのは、このような状況下でKさんは教会の皆さんを代表してここにいる。思いがけない病を得て人生が一変したKさん。教会に一番近いところに住むようになったKさん。かつてのように働くことはないKさん。そんなKさんが日曜日の朝になると教会に来て、礼拝堂でともに賛美を歌い、祈りをささげ、悔い改めと赦しの宣言をともにし、十戒を唱え、説教を聴き、信仰を告白し、とりなしの祈りに心を合わせ、献金し、派遣と祝福を受け、そして遣わされて行く。その姿をあらためて見つめた時に、Kさんは主がこの教会に与えてくださっている神の賜物だとあらためて感謝したのです。皆さんお分かりのように、これはKさん一人のことではありません。皆さん一人ひとりが、そのようなかけがえない神の恵みの賜物として生かされているのです。あなたらしく。私らしく。主の恵みによって生かされている。その賜物が豊かに溢れる姿を映し出していく教会の歩みであらせていただきましょう。

 

 



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