祈祷会
ハイデルベルク信仰問答講解56

「あなたの隣人の家を欲しがってはならない」(出エジプト20:17)

(1)むさぼりの罪
今日は十戒の最後の戒めである「あなたの隣人の家を欲しがってはならない」という第十戒を取り上げます。まず第113問を見ましょう。「問:第十戒では、何が求められていますか。答:神の戒めのどれか一つにでも逆らうようなほんのささいな欲望や思いも、もはや決してわたしたちの心に入り込ませないようにするということ。かえって、わたしたちが、あらゆる罪には心から絶えず敵対し、あらゆる義を慕い求めるようになる、ということです」。隣人の家をむさぼることについて、出エジプト記20章17節はさらに詳しく語っています。すなわち「隣人の妻、あるいは、その男奴隷、女奴隷、牛、ろば、すべてあなたの隣人のものを、欲しがってはならない」。この最後の戒めは、私たちの心の内側に奥深く潜む欲深さ、むさぼりの罪の性質を露わにするものです。殺人や姦淫、盗みの禁止の戒めの前では自らの正しさをあるいは主張することができたとしても、しかしこの最後の戒めにおいては、私たちは自らの貪欲さと直面させられることになるのです。
十戒はその第一戒において「あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない」と教えました。そしてハイデルベルクもこの第一戒の意味を第94問で「唯一のまことの神を正しく知り、この方にのみ信頼し、謙遜と忍耐の限りを尽くして、この方にのみすべてのよきものを期待し、真心からこの方を愛し、畏れ敬うことです」と解説しました。そして十戒の最後に来て、第十戒が私たちにむさぼりの罪を禁じる時、そこには真の神礼拝を離れて、「モノ」や「カネ」を偶像化していこうとする人間の内面の罪を示すことで、もう一度私たちを新しく第一の戒めへと向かわせようとしていると言えるのです。隣人の家を欲すること、それは単に隣人の所有物や財産にとどまらず、隣人の妻やその暮らし向きの全般をも含み込んでいます。そしてそれらを欲する思いが頭をもたげてくるのは、私たちの中に自分自身の生活への満足が消え失せて、隣人の幸せへに対する羨みや妬みが生じてくる時なのです。私たちの置かれている世界は、一方ではその日一日を生き延びるために必要案な食物すら十分でなく、飢えと貧困にあえぐ大多数と人々と、必要以上のモノに溢れかえっていながら、なお満ち足りることが出来ずに飽くなき欲望に突き進む少数の人々という二つの世界に引き裂かれています。私たちも満ち足りることを忘れて、いつもどこかにまだ足りない、まだ十分でない、という焦りにもにた感覚を駆り立てられて日々を過ごしているのではないでしょうか。

(2)義を慕い求めよ
では、この戒めが私たちに求めている生き方とは一体どのようなものなのでしょうか。ハイデルベルクは次のように解説します。「神の戒めのどれか一つにでも逆らうようなほんのささいな欲望や思いも、もはや決してわたしたちの心に入り込ませないようにするということ。かえって、わたしたちが、あらゆる罪には心から絶えず敵対し、あらゆる義を慕い求めるようになる、ということです」。つまりここでは隣人の家や妻、暮らし向きを慕い求める心ではなく、むしろそのような罪には心から絶えず敵対し、あらゆる義を慕い求めるように、というのです。
「慕い求める」という言葉は、聖書において大変強い願いを込めた言葉として用いられています。熱心に、ひたすらに、敢えて言えば貪欲に求めるように、というのです。隣人の家、モノ、カネ、妻への貪欲、この地上での暮らし向きへの貪欲、所有すること、築き上げること、手に入れること、成し遂げることへの貪欲ではなく、「義」に対して貪欲であるように、というのです。
 「義を慕い求める」。このことは真の満足を得た者が初めて転じることのできる生き方であると言えるでしょう。自らが不義で罪ある者であったにもかかわらず、主イエス・キリストの十字架の贖いによって今や恵みにより信仰によって義なる者とされている。この義認の恵みがあって初めて私たちは、そこにハイデルベルクの第1問のいう「キリストのものとされている」ゆえの生と死を貫く唯一の慰めを得ることができ、それゆえに私たちはその神の御前に罪赦され義とされた者として、いよいよ義を慕い求めることができる者へと作り替えられ、進ませられるのです。これは私たちの内に今住んで下さっている聖霊なる神様の働きによるものです。そうして、私たちが自分自身がキリストのものとされていることに生と死における唯一の慰めを見出した時、私たちは本当の意味での生きること、生かされていることへの深い満足に溢れることができるのであり、その時に私たちはむさぼりの罪から次第次第に自由にされていくことができるのではないでしょうか。十戒はそのようにして、私たちに恵みの事実を見つめさせることによって私たちを罪の誘惑から自由な者へと解放していく戒めです。そのことの意味を改めて確認しておきたいと思います。


 

 



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