祈祷会
ハイデルベルク信仰問答講解51

「あなたの父と母を敬え。あなたの神、主が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである。」(出エジプト20:12)

(1)父、母、上に立てられた人々
今日は、十戒の第五戒、父母への尊敬に関する戒めを取り上げます。まず第104問を見ましょう。「問:第五戒で、神は何を望んでおられますか。答:わたしがわたしの父や母、またすべてわたしの上に立てられた人々に、あらゆる敬意と愛と誠実とを示し、すべてのよい教えや懲らしめにはふさわしい従順をもって服従し、彼らの欠けをさえ忍耐すべきである、ということです。なぜなら、神は彼らの手を通して、わたしたちを治めようとなさるからです」。十戒の全体は前半の第一戒から第四戒まで対神関係における戒めであり、今日取り上げる第五戒から第十戒までは対人関係における戒めであることはすでに学んだ通りです。さらに対神関係について教える前半部の最後にあたる第四戒と、対人関係について教える後半部の最初にあたる第五戒の二つの戒めだけが、他の八つの戒めが「〜してはならない」という禁止の戒めであるのに対して「〜せよ」という遂行の戒めであることも注意を引きます。
さて、このように私たちの隣人との関わりについて教える戒めの最初に定められているのは「あなたの父と母を敬え」という親に対する尊敬、敬愛の教えです。しかしハイデルベルクはこの戒めを単なる家族、肉親との関係に限定されたものとしてではなく、広く社会全般における他者との交わりに及ぶものとして理解しています。「わたしの父や母、またすべてわたしの上に立てられた人々」と語られている通りです。「上に立てられた人」とは隣人関係、社会関係における「目上の人」全般ということと同時に、より限定的には世俗の権威、政治的な統治者を指していると言えるでしょう。新約聖書にもこのような理解は示されています。「人はみな、上に立つ権威に従うべきです。神によらない権威はなく、存在している権威はすべて、神によって立てられたものです」(ローマ13:1)、「すべての人のために、また王とすべての高い地位にある人たちのために願い、祈り、とりなし、感謝がささげられるようにしなさい」(Iテモテ2:1)、「人が立てたすべての制度に、主のゆえに従いなさい。それが主権者である王であっても、また悪を行う者を罰し、善を行う者をほめるように王から遣わされた総督であってもそうしなさい」(Iペテロ2:13,14)、「すべての人を敬いなさい。兄弟たちを愛し、神を恐れ、王を尊びなさい」(同2:17)。このように、十戒の第五戒は、主にある者たちがこの地上で生きていく上でのあらゆる人々との関係、とりわけ権威ある人々との関係を定めていると言えるのです。

(2)敬意、愛、誠実、従順、忍耐
このような隣人との関係についての戒めの中心は「敬う」という態度ですが、このことについてハイデルベルクでは次のように教えられていました。「あらゆる敬意と愛と誠実とを示し、すべてのよい教えや懲らしめにはふさわしい従順をもって服従し、彼らの欠けをさえ忍耐すべきである」。ここでの敬意、愛、誠実とは、ちょうどガラテヤ書5章で数えられる御霊の結ぶ実の中にも見られ、「このようなものを禁ずる律法はありません」(ガラテヤ5:23)と記されるキリスト者の徳目です。さらに従順さによる服従もまた大切な教えであり、その中には「彼らの欠けをさえ忍耐すべきである」と教えられます。上に立つ権威が欠けある者であってもなお、これに従順に従うとは一体どういうことでしょうか。ペテロの手紙第一は時には横暴な主人たちにさえ従うべきことを語りつつ、その理由として次のように語ります。「善を行って、愚かな人々の無知の口を封じることは、神のみこころだからです」(2:15)、「善を行っていて苦しみを受け、それを耐え忍ぶとしたら、それは、神に喜ばれることです」(2:20)、「あなたがたの神を恐れかしこむ清い生き方を彼らが見るからです」(3:2)、「悪をもって悪に報いず、侮辱をもって侮辱に報いず、かえって祝福を与えなさい。あなたがたは祝福を受け継ぐために召されたのだからです」(3:9)。このように、ここには地上の常識を越えた主にある者の社会における在り方、信仰者の倫理が教えられていると言えるです。

(3)崇拝でなく、敬愛を
しかし以上のことは政治的な権威を神格化したり、無批判な権威への服従を教えるものではありません。私たちが上に立つ権威を尊び、これに従うのは、それが神に立てられて神の御心を行うという限定付けのもとでのことであるからです。かつて共産主義化されていた時代のチェコ・スロバキアの神学者ロッホマンは、十戒の第五戒について、これは敬愛の教えであって崇拝の教えではないことに注意を促しています。彼は祖国の共産主義化の中で、万民の平等を歌った共産主義が、結局は政治的指導者や国家元首に対する個人崇拝に陥ることを鋭く見抜いていました。その例を引くまでもなく古くから現代に至るまで、独裁的な政治体制のもとでは、絶えずこの権威者、指導者の神格化と崇拝の強制が繰り返されてきたことを忘れることは出来ません。
しかし十戒の第五戒が父と母への敬愛を教えるのは、崇拝されるべきお方がただ一人の主であられるまことの神以外にはないことを教える第一戒と絶えず結びつけられていることであって、この二つを混同することは十戒に込められた主なる神の御心を損なうものです。私たちは、神を神とするからこそ、そのもとでの隣人を敬い、愛し、誠実を尽くし、従順に、忍耐強く上に立つ権威に従いながら、主の御心をこの地上に証ししていくのであって、そこに愛する隣人との豊かな交わりが作り上げられていくことを覚えたいと思います。

 



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