
イラクで日本人人質事件おきる
シリアから国境を越えてやってきたヨルダンの首都アンマンのバックパッカー宿、
クリフホテルはてんやわんやの騒ぎだった。
先日、NGOや個人ジャーナリストとしてここに来ていた日本人男女3人が、
この宿を経由してイラクに向かい、現地でイラクの反米勢力一派に誘拐されて
しまったからだ。(イラクに陸路で入るルートとしては、このヨルダンのアンマンから
車をチャーターしたり、バスに乗って行くのがメジャーなのだ)
そんなわけで、彼ら3人がイラクへの出発前に出入りしていたこのクリフホテルには
日本から取材にかけつけたTV局や新聞社の記者たちが入れ替わり立ち代り
出入りしていた。
私はクリフホテルには4日ほど滞在していたのだが、パブリックスペースである
リビングルームには昼夜問わず常にどこかしらの記者さんがいて、クリフの
マネージャーやら、日本人宿泊客やらに事情聴取していた。
関係無い外国人旅行者の宿泊客には、いい迷惑なようで、ある白人の男性旅行者
などは機嫌が悪いのか、記者たちに聞こえるように「nuts!(クソどもが!)」とか
履き捨て、しまいには「I will kill them(やつら殺す)」などと言い出す始末であった。
なぜか私も、クリフホテル宿泊者ということで何度かインタビューされた。
だがこのインタビュー、大抵どこの記者にも同じ質問をされた。
@「誘拐された3人組に対して、どう思いますか?」
A「どうして(イラクで誘拐された3人を含む)日本人はみんな、このクリフホテルに
集まるんですか?」
記者さんと話しをしていて感じたのは、彼らがイラクで誘拐された3人に対しての
批判的な意見を我々宿泊者から求めているような感じがした、ということ。
そしてもう一点は、彼らはこのクリフホテルをイラクに行く人の
溜まり場と勘違いしているんじゃないか、ということだった。
もともと彼らはバックパッカー(長期旅行者含む)という存在自体を知らないので、
こんな安宿に溜まっている理由が、理解できないようだ。
「バックパッカー旅行」というもの自体、一部を除いて日本ではまだまだ認知されて
いないんだな、という感じがした。
この騒動の間、一時期クリフホテルの情報ノートが紛失した。
情報ノート(かなりの量)には、誘拐された女性、高遠さんが書いた
文章が数ページ有り、おそらくどこかの記者さんが外に持ち出してこの情報ノートを
じっくり読んだり、コピーしたりしていたのだろう。
この一週間後くらいには、誘拐された日本人3人はめでたく、無事解放されのだが、
旅行者ではないあの3人でさえ、日本では
「周囲の迷惑もかえりみず勝手な行動をした」と、かなりの批判を浴びている。
イラクにはただの日本人バックパッカーもボチボチ出かけているのだが、
もし今回の3人の中に私のような観光気分のバックパッカーが混じっていたら、
それこそさらに凄いバッシングを浴びてたのではないかと思う。
下手するとバックパッカーの存在自体がバッシングされかねない。
<自己責任ってなんだろうと考える>
最近話題になってる「自己責任」について私的なたわ言。
一般的にどういうふうにこの言葉って使ってたっけなあ?って考えてみた。
例えば、バイクの免許を取ろうとしてる子供に向って親が
「バイクに乗るってことは、事故を起こして他人様に迷惑をかける可能性も
あってその場合自己責任になるんですよ?(=自分で責任を取らないと
いけないんですよ)それを承知で免許を取るのね?」
という感じで使われていたかな?
つまり、自己責任とは、何か有った場合、親は責任は取れない=自分で責任をとりなさい
=自分で責任を取れない(取る覚悟がない)場合は免許を取っちゃいけません)
って感じか。
じゃあ今回のような、海外の危険地域に行くことの自己責任はどうよ?と考えた。
これが例えば、スリランカの内戦とか、インドネシアの内戦とか、「ただ単に危険な地域」
に行くぶんには何かあったとき自己責任の範囲で済むと思う。
そのへんでは、例えば流れ弾に当たって死ぬ(これは自己責任)ということはあったと
しても、今回のような人質事件はまずおきないと思う。
でも、イラクはただ単に危険という上に、日本の国が当事者として関与している
地域であり、今回のような人質事件がおきる可能性がもともとあった地域でしょう。
そこで案の定、人質にされると、今回のような政治的な要求(自衛隊撤退)が
日本という国に突きつけられ国を困らせたり、国民を心配させたりする。
(個人的には、自衛隊派遣は反対ですが)
これはすでに自己責任(自分で責任をとれる範囲)をはるかに超えていると思う。
自分だけの問題で収まらず、自分で責任を取れず、日本という国までも巻き込んでいるから。
そういうわけで、何かあったときに自己責任で収まらなくなる可能性の有る
イラクに行くのは、例え人道支援のためであっても個人的には賛成できない。
ところで、女性のNGO活動家の高遠さんについての、クリフホテル内での余談。
彼女は以前から、イラクに観光旅行で行くバックパッカーをよくは思っていなかったようで
以前、クリフホテルに泊まっていて、これからイラクに旅行に行くという若い
バックパッカーの男性に、説教をした、という話しを聞いたことがある。
そのバックパッカーは災難だったが彼女はそれだけ自分の仕事(NGOとしての
イラクへの貢献)に誇りをもっていたのだろう。遊び半分で今のイラクを訪れる
バックパッカーに対して良い印象を持たないのも当然だ。
ついでに、以下はクリフホテルの情報ノートにあった彼女の記述。
「私も何度か(イラクで)恐ろしい経験などをしました。なのでその辺り、完全に自己責任
とれる方に限ります」
「私は薬を運んでいる途中、2回銃を向けられました。PRESS IDは場所に
よってはタイホされるし、NGOのサインをはった車でも、狙われるということです」
この記述から判るとおり、イラクの危険を十分知っていたはずの彼女が、今かなり危険と
言われているヨルダンのアンマンとイラクをつなぐイラク南部のハイウェイのルートを
迂回せずに通り、かつ狙われにくいといわれているバスではなく、狙われやすいといわれる
チャーター車を使って案の定誘拐され、自己責任の範囲どころか、日本の国じゅうが
大騒ぎになるほどの誘拐事件に巻き込まれてしまったのは、皮肉としか言いようがない。
ある彼女の知人の話では、北海道出身の彼女は、今回イラクに派遣された
自衛隊(北海道・旭川の自衛隊が大半をしめる)に彼女自身の友人知人がおり、
彼らの安全を懸念して様々な手段で一生懸命自衛隊のイラク派遣に反対していた、という。
個性が強そうに見える彼女に関しては色々と有ると思うけど、もとをただせばイラクへの
貢献活動や、自衛隊の友人たちを心配してやっていた自衛隊派遣反対の活動も、
その動機自体は非難されるべきことではないと思った。
こういう人がマスコミのバッシングによって潰されてしまうとしたら、非常に残念。
また、18歳の今井さんなどは、両親が共産党を支持しているというだけで、
家族までひっくるめてバッシングされている。何党を支持してようと関係ないだろう、
彼がその悲惨さを訴えたかった劣化ウラン弾と、何の関係があるというのか、と思った。
劣化ウラン弾の悲惨さを調査して、それを世間にアピールしていこうという活動、
志、それ自体は尊敬できるものだと思う。
そういった志とか活動を、先の高遠さん同様マスコミのバッシングによって潰されて
しまうとしたら、もったいないと思う。
つくづく、マスコミって恐いな、と思った。
<死海観光>
アンマンから日帰りで死海に、行って来た。
ここはその名の通り、塩分濃度が27%と極端に高いため、生物の住めない海だ。
同時にここの場所自体、海抜マイナス394メートルと、世界一低い場所でもある。
ここはぺトラ遺跡と並んで、ヨルダン観光の目玉の一つだろう。
ここには、クリフホテルで知り合った大学生のTくんと、シリアから一緒の
Fさんと一緒に行ってきた。
噂には聞いていたけど実際入ってみて体が沈まなかった時は皆大笑いだった。
「ホントに沈まねえよ!!ガハハハ!」「スゲーぞこれ!!」なんて言って、
皆ハイテンション。童心に戻って楽しんだ一日でした。
どんな体勢をとっても絶対沈まない死海。対岸はイスラエル。
大学生のTくんが、「このまま泳いでイスラエルに行ってきて下さいよ」
と言ってきたが、見つかったら撃たれそうなので、やめておく。
というわけで、この後はちゃんと陸路でイスラエルに行ってこようと
思います。では、ごきげんよう。
(2004年4月18日 イスラエルにて)
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