バングラデシュの船旅と病院と国境トラブル

<バングラデシュ概説と船旅>
インドのカルカッタから電車で2時間でバングラデシュという国に
来ることができる。
ビザもカルカッタのバングラデシュ大使館で無料で即日発給してもらえる
ということで当初の予定には入っていなかったが、バングラデシュを旅行した。
この国は国土の殆どが海抜10M以下のため、雨季には国土の3分の1近くが
毎年浸水する。またこれといった産業が発達していないため、全体的に非常に
貧しい国だ。なので日本はこの国に対して一兆円規模の援助を行っているのだが、
悲しいことにこの国の政治は腐敗していて某調査機関が調べた、国別の政治の
腐敗度ランキング(汚職等)でここ3年連続トップをキープしている国なのだ。
観光においても、他のアジア諸国に比べ名所旧跡が少ないため、旅行者も
あまり来ていない国である。

さて、私はこの国でクルナという町から、首都ダッカまで川を30時間近くかけて
のんびり船で移動した。
バングラデシュは「川の国」といっていいほど川が多い国なので、船は重要な移動手段だ。
私が乗った船はロケットスティーマーという船なのだが、名前とは裏腹にノロノロと進む
船である。だが、こと風情という点では今まで私が乗った船の中ではピカ一であった。
海と違い川を進むので、波が無く揺れが少ない。デッキに出て外を見れば両岸には
いかにも熱帯といった感じでヤシの木やジャングルが生い茂っている。
景色に飽きたらのんびりデッキで読書するもよし、お茶を飲みながら歓談するもよし。
部屋で昼寝するもよし、である。
私が乗った外輪船オーストリッチ号 護岸されてないので岸が水で削りとられていく
売店 私の2等船室

人間陸の上では色々とやることがあってなかなかのんびりできないものだが、
こうして一定の枠の中で行動を制限されると、私のような働き者でも心底リラックス
できるものである。船内のカレーもなかなかだったし、私は船旅を満喫した。

さて、話は変わるが、私はここ最近胃の調子が悪かった。
何か食べるとすぐ腹痛が襲ってくるのだ。すぐ治ると期待していたがかれこれ
一週間も痛みは続いている。私はダッカに到着してからすぐに「山形ダッカ友好病院」という
病院に診療にいった。この病院には、山形大学で学んだバングラデシュ人の医師がいる。
山形で学んだので当然山形弁だ。タレントのダニエルさんみたいだ。
看護婦さんには山形の病院で働いていた日本人の方もいらっしゃる。心強い限りだ。

病院では、体温を計ったり聴診器を当てたりしたあとベットに横たわり触診をした。
医師が胃の辺りを触ってくる。とくに痛くはない。
次にわき腹を触られる。私はわき腹を触られるのはとても苦手である。
くすぐったくて条件反射で反応してしまう。

医師が「ここはどうですか?」と質問し、私のワキ腹を押す。
すると私はくすぐったくて「グウッ」と言いつつ条件反射で身をよじる。
医師は言う「ワキ腹が痛いんですね!!」
私が言う「違います!」
医師「だって今反応したでしょう!脇腹に何か問題が・・・」

そんな問答が続いた。

さて、診察の結果お医者さん曰く、現状からすると、単に疲れから胃と腸の
働きが不安定になっているだけの可能性が高いですね、とのこと。
そういうわけで今日から胃腸の働きを促す薬を服用して検便もして
数日間様子を見ることになった。
「ただし、もしこのまま痛みが消えないようだったら、胃潰瘍の可能性もありますね」。

最後に嫌なセリフを聞いてしまった。
そんなわけで、私は今、ちょっとびびっている。
  (2003年12月6日バングラデシュ ダッカにて)


<首都ダッカと国境での出来事>
ところで、バングラデシュの首都ダッカという街は、他の東南アジアの
国々の首都同様、非常に活気に満ちていた。
街はリキシャ、三輪タクシー、車で大変な混雑を見せている。
この街のリキシャの数は凄いものがあり、道路の主役はこのリキシャーである。
またこの街のニューマーケットという市場は、なかなか面白い市場であった。
以下に写真を掲示しておくが、ここの市場の人間は(というかバングラデシュ人全般に
言えることだが)外国人が珍しいのか、やたらと声をかけて来て、
また写真を撮ってくれとせがんでくる。そんなわけで、皆様々なポーズで写真を取りつつ
写真に納まっていった。市場の人間に紛れて、物乞いのおばあさんを写真に撮ったら
しっかりバクシーシ(喜捨)を要求された。

野菜、野菜、野菜・・ スパイス売り場
魚市場にて ニワトリ、ニワトリ、ニワトリ・・

街の散策で時間を潰し、数日後に私は再度山形ダッカ友好病院に行った。
検便の結果、細菌が検出された。腸の方は細菌性の腸炎とのことである
(コレラとか赤痢とかそういう悪い菌ではないとのこと)。
胃の方は、ここ数日で少しは痛みが和らいできており、お医者さん曰く症状からすると、
軽度の胃潰瘍(胃の粘膜を通り越して胃の表面が荒れるもしくは傷付く)でしょうとの
診断であった。胃潰瘍といっても、最近では薬の服用と食事に気を付ければ
1〜2ケ月で治る場合が殆どで、手術にまで発展するのは100人に一人くらいとの事。
私の場合も、今後油っこい食事や辛い食事、甘すぎる食事を避けていれば薬で
自然に良くなるのでは?との事であった。
(しかしインドあたりであっさり味のメシを見つけるのは至難の業だ。
辛いものを外すと自動的に激甘の食べ物しか残らない。
しかも大抵非常に油っこい。まだまだ余談を許さない状況だな、
と今後の旅に対して危機感を感じた)


そんなこんなで1週間ほどのバングラデシュ滞在を終え、国境を越えて
インドに戻るときに事件は起こった。
私はダッカから、インドのカルカッタへ直行するというバスを使って
カルカッタへ向うことにした。
チケットは片道500タッカ(1000円強)である。このバスには、インドに向う
金持ちなバングラデシュ人も数人乗っていた。
ダッカから国境まで7時間ほど走り、国境近くのバスのオフィスで我々は
一旦下ろされた。そしてやおらバス会社の社員に皆、パスポートを集められた。
どうやら一気にまとめて出入国の手続きをしてくれるようである。

バス会社のオフィスでのんびりしてバナナを食べていたら、「ジャパニ!」と呼ばれた。
そしてバスの社員が言った
「トラベルタックス510タッカ(1100円くらい)プリーズ!」
「はあ!?なんじゃそれは?そんな話し聞いてないぞ」私が言うと
「これはバングラデシュを旅行してインドに行く旅行者は皆払わなければならない
国の税金だ」とのこと。寝耳に水である。
ははーん、コイツら、さては有りもしない税金をデッチ上げて自分たちの懐に
入れようとしているな!そうピン!と来た私は猛烈に抗議を開始した。
「ウソを付くな。そんなもの聞いたこと無いぞ。大体なんでバスの
チケットを買う時点でその税金の金額も言わなかったのだ。
こんなことなら、自分で勝手に電車とかで国境まで来ればよかった!」
社員「これは合法的な税金だ!どのみち払わなければならないものだ」
私  「ここはバスのオフィスだろう。どうして国に払う税金をバスの
会社に払わなければならないのだ!」
510タカ(約1100円)と言えば、現地の感覚では1万円
くらいの価値がある。いや、カネの話し云々よりも、か弱い旅行者を
騙そうという企みを、正義感の強い私は許せないだけだ。

私は尋ねる「そこの婦人!あなたも税金払ったのですか?」
バングラ婦人「イ、イエス」。ウソっぽい・・きっとみんなでグルになってオレを
騙そうとしているな。こうなってくるとどうにも私は暴走機関車である。

「パスポートはどこだ!もう自分で出入国手続きする!そこで税金を
請求されたら払ってやろうじゃないか!もうここからカルカッタまでの
お宅のバスは要らない!ここからカルカッタまでは自分で電車で行く!
オレのパスポートを返せ!」そう啖呵を切って私は預けていたパスポートを
ひったくると、一気に出入国管理事務所まで駆け込んだ。
あたりを見回すと、バス会社の人間は追ってきていない。
やはりどうやら税金というのはハッタリだったようだ。
この国でも外国人に対してダマシを行っているとはガッカリだ。
全く、腐敗しきっとるぞ。そう思いながら出国係官にサクっと出国スタンプを
押してもらう私。次は税関である。係官が笑顔で出迎えてくれる。
係官「ほほう、旅行で来てたんですか。どうでした、バングラデシュは?」
私  「オフコース、ベリーナイス!ビューティフルカントリー!(大嘘)」
係官「そうでしょう。特にこの国の人間は誠実でね・・云々」
<そうそう、ついさっきまで私ももそう思ってたんですよ。今は違うけど>
そう思い、荷物検査を終えとうとう最後の税関を抜けた。

<どうだ!やっぱり旅行税なんて請求されなかったじゃないか。
今のオレってめっちゃクールだな。惚れ直した!>
そんな晴れ晴れとした気持ちでさっそうと国境のゲートをくぐる私。

・・と「ハロー!パスポートプリーズ!」国境ゲートにて警備の係官に
呼び止められる。<あんだよ、人が良い気分でいるのに。また
パスポート見せるのかよ。何回見せてんだよまったく>
ため息をつきつつパスポートを差し出す私。係官はなにやらノートに
パスポートのナンバー等を書き込んでいる。そして言った。「レシートはどこだ?」
私「えっつ?今なんと?」 係官「トラベルタックス(旅行税)のレシートだ」
<またまた、冗談きついなあ〜。いや、もしもしかしたらこやつも
バス会社の回し者かも?>そう思いつつ、「ちょっと待ってね」と
言い残し、出国管理事務所に逆戻りして係官に尋ねた。
「あの〜、旅行税って払わなきゃいけないんですかね?」
「なんだ、君払ってなかったのか。払わなきゃダメじゃないか。
そこの銀行で今すぐ払ってレシートをもらって来なさい」・・・!!

結局、旅行税というのは本当に存在したのである。
オレって日本の恥だな。もちろん私はこの後、バス会社の一行に戻った。
皆さんにどんな目で見られたかはご想像にお任せする。
そしてよく見たら皆さん、ちゃんと旅行税の領収書持っていた・・・。

穴が有ったら入りたい!
(2003年12月10日 カルカッタにて)



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