アウトライナーで文章を書く

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アウトライナーで文章を書く

事前にアウトラインは作れない

「アウトライン」は元々アメリカの作文教育で教えられている方法です。文章を書く前に、あらかじめ文章の構成を「アウトライン」の形で作成し、アウトラインができてからはじめて文章を書きはじめる、という方法です。日本でも論文やレポート作成の参考書などで、アウトラインの作成がすすめられています。

書こうとする文章の論理展開を最初に決めておくことで、破綻のない、一貫性のある、論理的な文章を書こう、というのがその主旨ですが、やってみたことのある人ならわかる通り、この方法は額面どおりにうまくいくことはまずありません。はじめにアウトラインを決めてしまうと、かえって縛られてしまって書けなくなるものです(アメリカには、このせいで「アウトライン嫌い」になった人がたくさんいます)。

あらかじめ決めたアウトラインに従って書こうとしても、アウトラインに縛られて頭が硬直してしまい、かえって筆が進まなくなってしまう。アウトラインを作ったときには簡単に文章化できそうに思えた項目も、書いてみると項目のタイトル以上の内容が出てこない。がんばって無理に書こうとすると、いかにもスペースを埋めただけのつまらない文章になってしまう。

逆に、何かの拍子に筆が走り出すと、今度は確定したはずのアウトラインから内容がどんどん逸脱していってしまう。

ちょっと長い文章を書いた経験のある人なら承知の通り、書こうとする文章の内容を事前に(項目だけとはいえ)100%決めておけというのは、ほとんど不可能です。なぜなら多くの場合、何をどんな風に書くべきかは、実際に書くことを通じてはじめてわかってくるからです。事前に完璧なアウトラインが作れるようなら、アウトラインなんか作らずに、とっとと本文を書いた方が早いじゃないか、ということです。

だから、事前にアウトラインを提出してOKをもらわなければ本文作成に入れない、一度アウトラインを承認されたら、今度は何が何でもアウトラインの通りに書かなければならない、などと言われたら、それは相当な苦痛であることは想像がつきます。アウトライン作成がトラウマ化してしまっているアメリカ人が多いのも無理はないと思います。

結局、要領のいい学生はアウトラインの提出期限までに本文を全部先に書いてしまい、アウトラインを後からでっち上げるということになるわけです。

アウトライナーはアウトラインから自由になるためのソフト

アウトライナーを嫌う人の多くは、アウトライナーのことを「アウトラインを先に決めてから、文章を書くためのソフト」だと思っている傾向があります。これは、大きな誤解です。

アウトライナーが画期的だったのは、「アウトラインをつくってから文章を書く」のではなく、「既に書いてしまった文章から自動的にアウトラインができる」こと、「いくらでもアウトラインを修正できる」こと、「アウトラインを修正すれば文章そのものも修正される」ことでした。

こうなってはじめて、「アウトライン」作成が本来持っている利点が生きてきます。考えようによっては、アウトライナーが登場して初めて「アウトライン」は実際に活用できる道具になったと言えるのかもしれません。

アウトライナーを使うと、森(全体の構成)と木(詳細な本文)に同時に目を配りながら、同時並行的に書き進めることが無理なく、自然にできます。

本文を書いている最中でも書きかけの文章のアウトラインをリアルタイムで確認できる。
画面上でアウトラインの構成を修正すれば、対応する本文も一緒に移動する。
書きながら当初のアウトラインから逸脱してしまっても、その段階でのアウトラインをリアルタイムで確認し、必要なときにはいつでも修正できる。

つまり、勢いに任せて自由に書き飛ばしながら、全体としては破綻することなく、おさまるべきところにおさめることが、楽にできるわけで、アウトライナーは、その名称とは逆に、アウトラインにしばられずに自由に書くことを可能にしたのです。

アウトライナーを使っていて何といっても気持ちいいのは、自分でも何が言いたいのか把握できないような支離滅裂な殴り書きが魔法のように整理されて筋の通った文章にまとまってくるときです。これがうまくいくと、一種の生理的快感さえ感じます。

この感覚に一度慣れてしまうと、普通のワープロやエディタには戻れなくなってしまいます。少なくともぼくは、そうです。

「テキスト・オン・レイルズ」

最初のアウトライナーである「ThinkTank」を開発したデイヴ・ワイナーは、アウトライナーのことを「テキスト・オン・レイルズ(Text on Rails)」と表現しています。うまい日本語訳が見つかりませんが、オン・レイルズというのは「軌道に乗って、順調に」という意味。また「滑らかに、流れるように」とも取れる。

あえて訳してみれば、「文章滑らかに流れるレール」みたいな感じでしょうか。流れ出す言葉や気持ちや思いの断片を片っ端からぶち込んで、後からカタチを与えていく、というのがぼくにとってのアウトライナーです。その様子を、これほどうまく表現した言葉は他にない、かもしれません。うまい日本語訳が見つからないのが残念だけど(もちろん、元はRuby on Railsのもじりだと思うんですが)。

書くこと=考えること

ここでは文章を書く場面を例にあげましたが、アウトライナーは他にも様々な応用がききます。「アウトライン」構造が実に様々な場面で役に立つからです。当たり前ですが、アウトライン形式で表現できるものであれば、何でもアウトライナーで扱うことができます。

何か考えごとをするとき、思いついたことをアウトライナーの中に打ち込んでいく。関係のある思いつきは、ひとまとまりにして見出しをつけておく。見出しだけ表示すれば、全体としてどんなことを考えてきたのかわかる。関係のある見出しをまとめることもできるし、そうしているうちに新しいことを思いつく。

仕事があまりにも立て込んで何から手を付けていいのかわからなくなったら、とりあえずアウトライナーで「やらなきゃならないこと」を書き出す。プロジェクト別や内容別の見出しだけ表示させれば、全体としてどんな仕事を抱えているのかわかるし、見出しをいろいろと並べ替えてるうちに、頭の中も自然に整理されていく。そうしているうちに、何をどんな順番で片づければいいか、自然にわかってくることが多いです。

書くこと=考えることだとすれば、書くための道具=アウトライナーは、考えること全般に使えるということになります。