書籍(1980年代〜90年代)

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書籍(1980年代〜90年代)

80年代後期から90年代前半が、アウトライナーの黄金時代でした。その時期、日本でもアウトライナーについて専門的に扱った書籍が数多く出版されました。今ではほとんど考えられないことですが、当時はアウトライナーを全面フィーチャーした書籍が、書店のパソコンコーナーに並んでいたのです。少なくともアウトライナーに関しては、当時の方がいろいろな情報を入手しやすかったし、知る機会も多かったんじゃないかと思います(海外のよりディープな情報までネットで簡単に入手できるという点では、もちろん今の方がはるかにいいんです。でも、体系的にアウトライナー使いのノウハウや奥深さについて知る機会は、逆に今の方が少ないでしょう)。

ここでは、アウトライナー黄金時代、アウトライナーについて直接・間接に触れた本のうち、手元にあるものの一部を紹介しました。出版年順に、時系列に並んでいます。内容は、パソコンマニュアル本、ビジネス実用書から思想書まで、様々です。共通点は、なんらかの形でアウトライナーをフィーチャーしてあること。そして、アウトライナーの奥深さが伝わってくること。

多くは10年以上前(ものによっては20年以上)前の本なので、実用書として役には立ちません。でも、ことアウトライナーに関しては、今でも充分に通用する内容が含まれているのに驚きます。こうした本に紹介されているアウトライナーに関する情報の多くは、今では触れることが難しい貴重なものです。Amazonで調べてみると、ほとんどがユーズドで入手可能です。図書館にある本もネットで検索できるケースが増えているので、興味のある方は、読んでみてください。

書籍のタイトルはAmazonの該当ページにリンクしています。他にもあるので、随時追加していきます。

アイデアプロセッサ活用法―HiperXのすべて

著者
アンテナハウス
出版社
啓学出版
出版年
1988
コメント
ここで紹介する中で、おそらくいちばん古い本。21年前の本です。ぼくもさすがにリアルタイムではなく、図書館で見つけました。
「Hyper Xのすべて」という副題がついているので、Hyper Xのマニュアル本かと思いきや、中身はかなり良心的なアウトライナーの紹介・解説本です。アウトライナーの誕生の背景、その思想などについて、かなりのページを割いて紹介しており、アウトライナーの起源のひとつがSmalltalkのシステムブラウザだという説は、この本ではじめて目にしました。また、ThinkTank、MORE、MindWriteなど当時のアメリカで普及していたアウトライナーも、個別に紹介していて、アウトライナーの歴史に興味のある方(いるのか、そんな人?)には面白いと思います。
それから、当時日本でも登場し始めた「アウトラインプロセッサ」「アイデアプロセッサ」といわれるいくつかのソフトも紹介されています。標題のHiper Xの他、プランUP、IDOQなど。IDOQ、オールドユーザーには懐かしいんじゃないでしょうか。
Amazonでも滅多にお目にかかれないレア本です。

物書きがコンピュータに出会うとき―思考のためのマシン

著者
奥出直人
出版社
河出書房新社
出版年
1990年
コメント
言わずと知れた(?)名著中の名著。ぼくがアウトライナー中毒になるきっかけになった本。古本屋で見つける度に購入して、今家に3冊あります(笑)。著者の奥出直人先生(現・慶応大学教授)が、アメリカで博士論文を執筆する際に、「考える」「書く」ためにコンピューターを利用した体験的論文作法、というのが主旨。
でも、なんといっても奥出さんの文章が読み物として魅力的なのです。Wordのアウトラインモードや、アウトライナー「MORE」の虜になったのも、奥出さんの文章で読んだからかもしれません。
あと、あらためて読み返してみて思うんですが、この当時の方が今よりもよほど文章作成マシンとしてのコンピューターに対する期待が高いんです。
また、これも奥出さんが別のところで書いていることですが、文章を書く道具としてのコンピューターは、今の方がむしろ退化しているということ。
確かに、職場で長大のレポートをパワーポイントやエクセルをワープロ代わりに使って作成するような状況を考えると、(少なくとも文章を書く道具としてのコンピューターは)どこかで進化の方向を間違えてしまったんじゃないかという気がします。

Doticon_red_NEW.gif パソコンを思想する―社会的・哲学的側面からの考察 (PC‐PAGE)

著者
いがらしみきお、岩谷宏、桝山寛、志賀隆生、津野海太郎、松岡裕典、室井尚、小坂修平、奥出直人、橋田浩一
出版社
翔泳社
所収
1990年
コメント
「パソコンへの認識をより深めるために、パソコンの可能性をもっと自由な場所に解き放つために、そしてヒトとパソコンのよりよい関係を探るために、パソコンを試走してみよう」こんな本が昔は売られていたんたなあ(しかもムックで!)と感慨にふけってしまいますが。
当時のパソコン関連の識者たちが「パソコンを思想する」文章を集めたもので、歴史的にも興味深いのですが、ここで紹介したいのはもちろん、奥出直人さんが寄稿している「良い文章のための方法論」。実際に指導した学生が論文を仕上げていく様子を例に取りながら、22ページにわたって、アウトラインから完成品の文章に加工されていくプロセスと、それぞれの段階での方法を解説しています。
ただのノウハウ解説ではなく、アウトラインを使って文章を書くということはどういうことなのか、その思想的背景にまで話が及ぶところは、奥出さんの真骨頂です。
実際には当時奥出さんの満足するような日本語のアウトライナーが存在しなかったことから、アウトライナーで行う作業をワープロとバインダーでシミュレートしている(!)ということですが。
ちなみに当サイトの私的ケーススタディ集・case3:報告書や論文を書くで紹介している方法のネタ元のひとつでもあります(これだけではありませんが)。

思考のエンジン―Writing on Computer

著者
奥出直人
出版社
青土社
出版年
1991
コメント
奥出直人さんの、「物書きがコンピューターに出会うとき」の姉妹編といってもいい本。でも雰囲気はまったく違う。なにしろ「現代思想」誌での連載の単行本化ということからもわかる通り、「コンピューターで書く」ということの、哲学的分析です。
文章はけっこう(それっぽく)難解ですが、奥出さんの文章は魅力的で、読んでるだけで楽しくなってしまいます。
アウトライナーに関しては、英語MS-DOS用のGrandViewを使って、英語論文を仕上げていくプロセスが詳細に説明されているのが興味深い。細部の記述を検討しながら、全体の構造がどんどん変化していく、細部→全体→細部がダイナミックに連動する様子は、まさにアウトライナー使いの真骨頂です。

マックのアイデア発想法

著者
ワードクラフト(編)
出版社
毎日コミュニケーションズ
出版年
1994
コメント
今だったら考えられない、アウトライナーの使いこなしガイドブック。編集者、プログラマー、マルチメディア・クリエーター、生産管理者といった人々が、それぞれのアウトライナーの活用アイデアを紹介する。もちろん今ではソフトのガイドブックとしては使えないけれど、紹介されているノウハウや考え方の中には、今でも参考になるものがあります。

Microsoft WORDによるオフィスパブリッシング入門―効率的な執筆、レイアウト、そしてイメージセッタでの出力まで、見せるため読ませるための企業内出版最新テクニック

著者
田尾勇一
出版社
アスキー出版局
出版年
1994年
コメント
オフィス用途のDTPにWindows、しかもMicrosoft Wordを使ってしまおうという、当時としてはかなり大胆な提案をした本。この本自体がWordで版下を作成しています。ちなみに扱っているWordのバージョンは6.0、Windowsのバージョンは3.1。そう、まだWindows95以前の時代なんです。そう思って内容を見ると、すごいでしょう?
アウトライナー好きの視点から見て、この本がなんといっても素晴らしいのは、DTPに主眼を置いているにも関わらず、Wordのアウトライン機能にきちんと言及していることです。単に機能の説明に留まらず、アウトラインの考え方に始まり、Wordの他の機能との連動まで含めて説明しており、文書作成のフローの中ちにきちんと位置づけているところが素晴らしいです(アウトライン機能を使ってこそ、Wordを使う意味があると思っています)。ぼく自身、ワードに関してはもっとも参考にした本のひとつです。
Word自体も、周辺の環境も、当時からは激変していますが、Wordとアウトライン機能に対する考え方の基本は、当時からほとんど変わっていません。今、Wordを使う上でも、役に立つ情報が含まれています。
ちなみに、このときぼくはまだ日本語版Wordを入手していませんでした。日本語版Wordは、マック版よりもWindows版が先に登場したからです。

ライティング スペース―電子テキスト時代のエクリチュール

著者
ジェイ・デイヴィッド・ボルター
訳者
黒崎 政男、伊古田 理、下野 正俊
出版年
1994
出版社
産業図書
コメント
人間が「書く」ためのテクノロジー/メディア(パピルスロール、写本、活版印刷、そしてコンピューターの画面……)=ライティング・スペースの変化が、書き手や読み手のあり方を根本的に変えてしまう、という考え方の元に、電子テキスト時代のエクリチュール(=書くこと)の意味を探求する。アウトライナーについては一部ですが、新たなライティング・スペースとしてのコンピューターの特性を述べている部分で、その意義について触れています。「電子メディアのおかげで、文を書く際に、我々は自然言語の豊かさを失うことなく、形式的構造と創造的に戯れることができるのである」。

マックユーザーのための「知」のコンピュータ活用術

著者
山名一郎
出版社
東洋経済新報社
出版年
1995
コメント
著者自身が(当時)実践する、マックを使った知的生産の指南書。山名氏はアウトライナーのヘビーユーザーで、本書の中では主にInspirationを使用しています。この本の特徴は、アウトライナーの用法を「企画型ツール」(=発想)と、「原稿型ツール」(=文章作成)に分けて論じていること。ぼくは、日本でのアウトライナーは、いわゆる発想のための道具として捉えられる傾向があったという印象を持っていますが、発想の際の使い方と、文章作成の際の使い方を明示的に分けて論じていた人は少なかったような気がします。
山名氏による「企画型ツール」としての使い方は、梅棹忠夫の「こざね法」やKJ法をアウトライナーを使って行なうというイメージ。一方「原稿型ツール」としての使い方は、メモを集積してボトムアップ的にアウトラインを組み立てていく方法です。
非常に参考になったのは、アウトラインをそのまま最終の文章に仕上げるのではなく、ワープロとアウトライナーのウィンドウを並べて、アウトラインを眺めながら一から書いていくという方法。最近では林信行さんも同じようなことを書かれていたけれども、目からウロコでした。
実際にやってみると、この方法は「アウトラインぽい」文章になってしまうのを避ける上でとても有効です。
インターネットに関する記述など、今の目からみると「?」というところもありますが、これは時代からいって仕方ないでしょう。ただひとつ、「マンダラート」についての記述はちょっと……。

マッキントッシュによる人文系論文作法

著者
中尾 浩、 逸見 龍生、 伊藤 直哉
出版社
夏目書房
出版年
1995年
コメント
「学術論文をマックで書く」ということに絞った書かれた、研究者のためのマックガイド。著者もいわゆるライターさんではなく、人文系の研究者。実際の研究者の目を通して、文献管理ソフトなど、通常は取り上げられることのない、専門用途のソフトもピックアップして、(当時の)学生・研究者のニーズに応えました。今でもこういう本はあんまりないと思います。
ちなみに「ウンベルト・エーコの名著『論文作法』の電脳版」という紹介文には賛同しかねますが。
面白いのは、著者が3名いるんですが、それぞれの意見の違いを敢えて統一しないまま掲載しているところ。たとえば、アウトライナーに関しても肯定派の著者と否定派の著者がいます。こういう姿勢は、ぼくは好きです。
アウトライナーに関して特筆すべきは、おそらく日本語版MOREをきちんと紹介している唯一の書籍ではないかということ。文章作成というよりも、文献管理でのMORE(=アウトライナー)の活用法を紹介しています。
ただ、MOREというのは決して分かりやすいソフトではないので、どの程度読者に伝わっていたのか、またこの本を読んでMOREを実際に使ってみた人がどのくらい存在するのかはわかりませんが……。日本語版の出来も、残念ながらよくなかったしね。

人文系論文作法―Windows95版

著者
中尾 浩、伊藤 直哉
出版社
夏目書房
出版年
1998
コメント
前作「マッキントッシュによる人文系論文作法」のWindows版という位置づけ。前作ではマックを使っていた著者も、3年後にはすっかりWindowsに移行していた、というところに当時の時代の流れを感じますが。
アウトライナーに関しては、Wordのアウトラインモードとともに、WZエディタのアウトライン機能がフィーチャーされています。個人的には、ウィンドウの左側にアウトライン専用のペインを表示するWZエディタのアウトライン機能は「(私的)アウトライナーの条件」からははずれてしまうんですが……。中尾氏は高く評価しています。

マック企画大全―ホワイトカラーの仕事革命 (日経MAC Book)

著者
中野明
出版社
日経BP社
出版年
1996
コメント
著者の中野明さんは、幅広いジャンルで活躍されるライターですが、いわゆるビジネス実用書の中で、アウトライナーの意味と使い方のノウハウをきちんとフィーチャーしている、数少ない著者です。
特にアウトライナーが得意とする、ボトムアップ思考とトップダウン思考を行き来する書き方を「拡散思考」と「集中思考」の繰り返しと表現して、わかりやすく紹介しています。
さらに独特なのが、図解のベースとしてアウトラインを活用する方法。アウトライン形式で表現した内容を、ビジュアル図解に展開していくところは、目からウロコでした。このノウハウは、ちょっと他では見たことがありません。
紹介されているソフトはクラリスインパクト、クオークエクスプレス、Actaなど古いものばかりですが、特にビジネス現場での企画書やプレゼンテーションに特化した、アウトライナーの活用に関しては、今でもそのまま通用する内容です。

プロが教えるOffice98スーパーテクニック (日経MAC BOOK)

著者
中野明
出版社
日経BP社
出版年
1998
コメント
上で紹介した同じ中野明さんによる「マック企画大全―ホワイトカラーの仕事革命」の内容を、マック版Microsoft Officeに当てはめた感じの内容。10年以上前の本だけど、Officeの基本的な機能は当時からあまり変わっていないので、今でもある程度「実用書」としての利用価値はあると思います。
アウトライナーの使用を奨励しており、ここではもちろんWordのアウトラインモードを全面フィーチャー。拡散思考・集中思考、アウトラインの図解化といった独特のノウハウも健在。Wordのアウトラインモードを使う際の注意点や落とし穴もきちんと説明されています。

Outlining Goes Electronic (Attw Contemporary Studies in Technical Communication, V. 9)

著者
Jonathan Price
出版社
Ablex Publishing Corporation
出版年
1999
コメント
タイトル通り、世にもめずらしい、アウトライナーについての専門的な研究書。チーム内のコラボレーションでのアウトライナーの利用に比重を置きつつ、コンピューター以前の時代に遡り、文章作成におけるアウトラインというものの位置づけから、コンピューター上のアウトライナーで可能になること、そしてそれが広い意味でのドキュメント作成と、コラボレーションの中で持つ意味について、非常に詳細かつ専門的に述べられています。
ノウハウレベルでなく、アウトライナーそのものの研究をするのであれば、入り口として外せない文献だと思います。