case4:長文を読む

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推理小説のプロット分析

私的ケーススタディその4。もうずいぶん昔のことですが、作家の紀田順一郎氏が初期の名作アウトライナーであるMOREを使って、推理小説のプロット分析をしたという話を紹介していたことがあります。少し長くなりますが、引用してみます。

MacintoshのMORE IIというアウトラインプロセッサを使って、推理小説のプロット分析をやったことがあります。こういうことをやってみると、小説の構成がじつによくわかるんです。まず導入部があって、死体がふたつボートの中で発見される。こういうプロットをMORE IIを使って書いていくわけです。
このとき解析した小説は全体が21章で構成されているんですが、ここでおもしろいのは、12、13章あたりで迷宮入りするとキャストというのをするんです。
キャストというのは、この本の中に出てくる概念なんですが、河岸を変えるという意味です。つまり、今まで追いかけていた線を変えて、ちょっと見直してみようというわけです。21分の13でキャストするということは、真ん中よりもちょっといったところなんですね。これは非常に微妙なところです。つまり、真ん中でやったのではあとがもたない。かといってあまりあとにしても構成上うまくいかない。そこで21分の13なんです。これは私にとって、大変勉強になりました。
それから、最後に探偵が犯人を逮捕するときにも、一回泳がせて、罠に掛けて、それから逮捕するという二枚腰、三枚腰の工夫があるんです。普通はすぐに犯人を逮捕して終わってしまったりするんですが、一回泳がせて決定的なミスをおかすのを待つわけです。ここで、今まで理詰めできてすこし退屈していたところをもりあげるわけです。
最後は無理して活劇にしているわけですけれども、やっぱり一般的な読み物にする場合には必要なテクニックだと思うんですね。MORE IIを使ってプロット分析をすると、このようなことがじつに多くわかるわけです。

「プロフェッショナルのパソコン利用術」翔泳社、1990年

アウトライナーで読む

プロットの分析などというと大げさですが、紀田氏の方法は日常の「読む」場面でも気軽に使うことができます。

たとえ他人の書いたものでも、アウトライナーに取り込んでしまえば驚くほど立体的に把握できるようになります。「森」レベル(概要)から「木」レベル(詳細)まで自由にズームイン・ズームアウトしながら読むこの方法は、やってみると強力です。全体像を把握しつつ、必要に応じて詳細に下りていく。あるいは詳細を検討しながら、一瞬で全体の中での位置づけを確認する。長文になればなるほど、内容の把握が楽になります。

時には著者の気づいていない論理のねじれや矛盾が発見できたりもします。きちんとした書籍になっている文章や、権威ある文書でもそうです。実際、世の中には一見立派でも「うまくアウトラインがつくれない」、つまり構成が破綻した文書というものがけっこう存在するということを、この方法を実践するようになって知りました(あんまりやりすぎると嫌われますが)。

ぼくは特に長文の資料を読まなければならない場合、しばしばこの方法を使います(最近はテキストで十分内容が伝わるはずの内容でも、パワーポイントによるビジュアル重視の文書になっていたりして、簡単にアウトライン化できないことも多いのですが)。特に官公庁の文書を読むときにずいぶんこの方法を使いました。

アウトライナーで作られた文章は読むにも便利

問題は、どのようにしてアウトライナーに読みたい文書を取り込むかということです。その文書がアウトライナーを使って作られているなら(そして自分が同じアウトライナーを持っているなら)話は簡単です。このサイトで例にあげているOPALやSolで作ったファイルを他人からもらうという可能性は(ものすごく)少ないでしょうが、ワードで作られた文書なら世の中にたくさんあります。その文書が、もしワードのアウトライン機能を使って作成されていれば、画面を「アウトライン表示」に切り替えるだけで(もしくは「見出しマップ」を表示するだけで)、見出しだけを画面に表示させることができます。アウトラインをきちんと設定してあれば、たいていの場合、これだけで概要を把握することができます。概要を把握した上で、必要な部分だけ見出しの本文をさっと展開して読むことができます。

また、パワーポイントも、原始的なアウトライン機能を持っています。これはスライドのタイトルだけを表示するというものですが、これでもスライドのタイトルを正しく設定していれば、文書全体のタイトルを一目で眺めることはできます。

残念ながらワードもパワーポイントも、アウトライン機能についてはほとんど活用されてないんですが。

デジタルのテキストはアウトライナーに取り込んで読む

世の中の多くの文書はアウトライナーで作られてはいません。そこで、テキストを自前でアウトライナーに取り込む作業が必要になります。テキスト中心の文書であれば、新規のアウトラインにペーストするだけです。

次に文章をアウトライン化するための、アウトライン項目(見出し)の設定を行います。ここでいう「見出し」とは、必ずしも元の文書についている見出しとは限りません。あくまでも自分が後から内容を把握するための見出しです。自分が分かりやすい見出しをどんどんつけていけば、自分の視点からアウトライン化していくことができます。どの程度細かい見出しつけるかは、用途と目的によるでしょう。

設定が終わったら、本文を折り畳んでアウトラインだけを表示すれば、文章の概要・流れを一目で把握することができます。全体をざっと把握して、より詳しく読みたい箇所があれば、折り畳んだ下位見出しや本文を開いて読めばいいわけです。これで、長文を読む苦痛がかなり軽減されます。

ところで、多くのアウトライナーは、任意のレベルのアウトライン項目を非表示にする機能とは別に「項目の1行目だけを表示する」機能を持っています。この機能を使うと、段落の1行目だけ飛ばし読みしていくことができるので、アウトラインの折りたたみと併用すると特に重宝する機能です。特に欧米の論文などの場合は、本文段落の1行目はその段落の概要を述べているケースが多いため、段落の1行目だけを飛ばし読みすることで、だいたいの内容を把握できてしまいます。

書籍は目次とメモを打ち込む

デジタル形式で手に入らない文書の場合も、深く読み込みたい場合はこの方法を使う価値があります。書籍の場合は「目次」をアウトライナーに打ち込んでしまえば、そのままアウトラインのひな形になります。あとは、本文を読みながらポイントをメモ的に該当見出しの下に打ち込んでいけばいいのです。どちらかというと読書ノートをアウトライナーで作成するようなイメージです。

少し面倒ではありますが、本当に深く読み込む必要がある文章であれば、やってみる価値はあります。自分の専門分野の本当に重要な文献であれば、全文打ち込んでしまってもいいくらいです。