case3:報告書や論文を書く

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case3:報告書や論文を書く

欧米、特にアメリカには学生向けのプラグマッティックな文章作成技法書の類がたくさんあり、テーマを設定し、アイデアを出し、文章として形にしていくための様々な技法が紹介されています。

もちろんそうした本を読んだからといって、すぐにレポートや企画書や論文が大量生産できるということはないのですが、どのように書いていったらいいかわからないときや、筆が進まないときに、実際に仕事を前に推進させてくれたという点で、確かに効果がある場合も多いのです。

こうした本に紹介されている方法のうち、アウトライナーでの作業に特に向いていると思う方法を、アウトライナーの利用を前提にアレンジして、9ステップに分けて紹介してみます。ちなみに、ここに紹介するような、「書きながら書くことを発見していく」方法を、Writing in process(ライティング・イン・プロセス=プロセスで書く)といいます。

(1)フリーライティングpart1

まず、書くべきテーマを発見する段階です。いわゆる「発想法」的なパートで、古くはKJ法からマインドマップまで、様々な方法があります。アメリカの文章読本でもクラスタリングとかチャートとか、いろんな方法が紹介されています。

アウトライナーとの相性という点では、ぼくは「フリーライティング」がもっともマッチしていると思います。これは、個人的にもよくお世話になる方法で、確かに効果があります。特に、自分でも何を書くべきか分からない、というような場面で、けっこうブレークスルーさせてくれることが多いです。

まず時間を測って20〜30分間、頭にあることを好きなように書きます。形式や文章にはこだわらず、書きたいように書き飛ばします。順番も、表現も、誤字・脱字も気にすることなく、ひたすら頭に浮かぶことを書いていきます。唯一注意することは、「手を止めない」ということ。「自動筆記」だと思うといいかもしれません。

何も頭に浮かんでこなかったら、「今、自分が書くべきことを書こうとしているのだが、何も浮かんでこない。自分は何が書きたいのだろう?」とかなんとか、書いてみます。経験的には、深く考えずにただ手を動かしているうちに頭が働き始め、自然に書くべきことが流れ出してくることが多いようです。出てきたことは躊躇せずに書き出していきます。

乗ってくると、今書いていることとは違うネタを突然思いついたりもします。そんなときは、今までの流れに構わず、その場所に書き込んでしまいます。前後の脈絡が支離滅裂になっても気にすることありません。この段階での主眼は「引っ張り出す」ことにあります。むしろ、「書きながら思いつく」ことを大事にします。整理することは後でいくらでもできます。20〜30分も書いていれば疲れて手が止まってくるので、一度ブレイクします。

(2)フリーライティングpart2

20〜30分間休みなしに書き続けたとすれば、けっこうな分量になっているはずです。その中に「これ!」と思える内容や、特別気に入った部分があれば、マークをつけておきます。その中に、テーマに関するヒント、もしくはテーマそのものが含まれているかもしれません。

気に入ったものが見つかったら、今度はその内容に絞って、もう一度時間を決めてフリーライティングをしてみます。今度はできる限りテーマから逸脱しないように注意しながら書いていきます。前後の文脈や細かい表現なんか気にしないで書き飛ばすという点はpart1と変わりません。もし手を止めずにどんどん書き続けることができたら、そのテーマは「当たり」かもしれません。今回も同じように20分程度でブレイクします。

(3)テーマを1行で表現してみる

フリーライティングの結果を眺めた上で、書きたいことを一文で表現してみます。これは漠然としているテーマを明確化する作業なのですが、個人的にはここがいちばん難しい気がします。

どうしても一行でうまく言い切ることができなかったら、テーマがまだ絞りきれていない可能性が大です。そんなときには、複数のテーマに分割するとうまくいくことが多いようです。逆に書きたい内容をすんなり1行で表現することができたら、そのテーマはかなり明確だということになります。

(4)仮のアウトラインをつくる

テーマがわかったら、仮のアウトラインを作成してみます。これは、最終的なアウトラインではなく、内容に肉付けしていくための仮のものです。別にどんなアウトラインでもいいんですが、特にレポートや論文、企画書みたいな、論理的に読み手を説得するようなものだったら、一度全体の概要を一段落で書いてみる、というのがおすすめです(もっと柔らかい内容のものだったら、逆に内容が固くなってしまうので、やめた方がいいかもしれません)。

段落で表現するということは、単なるキーワードやフレーズの羅列ではなく「てにおは」や接続詞がある文章で書くようにするということです。日本語の場合、接続詞を入れると、自然に論理関係が明確になります。

○○は○○だ。なぜなら、○○、○○だからだ。その背景は○○、○○である。したがって、○○ということがいえる

というような具合です。「てにおは」をきちんと入れるようにすることで、強制的に論理構造が生まれてくることがミソです。この段落を、単純に改行していくと、なんと「仮のアウトライン」ができあがります。

○○は○○だ
なぜなら、○○、○○だからだ
その背景は○○、○○である
したがって、○○ということがいえる

このままでもアウトラインとして機能しますが、気になる場合はもう少し見出しっぽい表現に変えてもいいかもしれません。たとえば、こんな感じです。

○○は○○
○○の要因
○○の背景
結論

ひどく殺風景なアウトラインではありますが、仮のものなので細かいことは気にしないようにします。あくまでも書き始めるためのガイドです。

(5)仮のアウトラインに沿って内容を整理する

さて、ここから先は「case1 ヒアリング結果を報告書にする」で紹介した方法がそのまま使えます。まず、アウトラインの末尾に「未整理」という項目を立てます。そしてフリーライティングのテキストをコピーして貼り付けます(フリーライティングを手書きでしている場合は、その内容を打ち込みます)。そして、内容を仮のアウトライン上で該当すると思われる場所にどんどん移動して整理していきます。

書いた内容をそれぞれの項目に振り分けてみると、あちこち足りないところが出てくるはずなので、思いつくままに書き足していきます。それぞれの見出しの下に整理した断片で、共通する内容のものは1ヶ所にまとめ、見出しを立てておきます。

分類先が思いつかないものは、「未整理」の下に入れたままにしておきます。「未整理」の下に残ったもので共通の内容を持つものは、新しい見出しをたててその下にまとめておきます。

(6)アウトラインの組み換えと本文の加筆を繰り返す

ひと通り整理ができたら、アウトラインを折りたたんで、どんな構成になったか、どこに何が書いてあるかを確認します。構成を変更したければ、アウトラインを組み替えます。納得いくまでひとしきり組み換えます。

組み換え作業をしていると、自然に書き足したいことや論理が通っていないところが出てくるので、必要に応じて加筆します。多くの場合、この段階で新しいアイデアを思いつくので、躊躇せずどんどん書き加えます。乗ってきたら、ここでまたフリーライティングを繰り返すこともあります。どこに入れていいかすぐに思いつかないことを書いてしまった場合は、「未整理」見出しの下に入れて後で整理します。

あるパートが不要になった場合も、すぐに削除しないで「未整理」の下に移動しておきます。後から必要になることがあるからです。必要なだけ加筆したら、またアウトライン全体を検討します。新しく加筆した結果、アウトラインを組み換えた方がいいと思えば組み換えます。以下繰り返し。

こうして、再構成と加筆を繰り返すことで、アウトラインは成長していきます。新しい内容が加わり、アウトライン自体を組み換えているうちに、当初思っても見なかった内容になったり、結論まで変わっていくこともあります。実は、このあたりがアイデア・プロセッサーとも呼ばれる所以なのだと思います。

(7)アウトラインの引き締め

アウトラインがどんどん成長していくと、次第に最初に設定したテーマがぼけてきたり、逸脱したりしていくかもしれません。ときどきアウトラインを折りたたんで、全体の構成を確認・調整します。焦点がぼやけてしまったら、(3)〜(4)を繰り返すことで、引き締め直すことができます。

(8)アウトラインの固定

ここまでのプロセスは、いくらでも繰り返せるのですが、どこかでアウトラインを「固定」する必要があります。「固定」というのは、もうアウトラインの大幅な組み替えが発生せず、中身の仕上げに入れる段階のことです。

どこで「固定」するかは、スケジュールや内容にもよります。提出時期が迫っている場合には、アウトラインが気に入ろうと気に入らなかろうと、スケジュールを眺めて「もう仕上げに入らないとなあ……」ということになります。スケジュールに余裕がある場合には(現実にそんなケースがどのくらいあるのかわかりませんが)、アウトラインの固定時期のひとつの基準として、アウトラインの形式を確認することが考えらます。

アウトラインの完成度の基準のひとつとして、すっきりしたシンプルな構造を持っているかどうかがあげられます。目的にもよりますが、本編の見出しの階層が章・節・項に相当する3レベル程度で、見出しの下に入った本文の量が安定していると、アウトラインとして「完成」していることが多いようです。

大した規模のテキストでもないのに、アウトラインの階層が5段階も6段階も掘られている箇所があったり、項目ごとに内容に極端な分量差がある場合は、まだ内容が消化しきれていない可能性があります。複雑なものを、シンプルに表現できるということは、それだけ自分の中での理解が進み、論理の展開も洗練された状態になっていることなのでしょう。

(9)本文の完成

アウトラインを固定したら、改めて全てのテキストを表示させて、最初から全てのテキストを読み直していきます(この作業はプリントアウトした方が効率的かもしれません)。バラバラの断片を組み立てたので、文と文のつなぎなどはかなりいい加減になっているはずです。そうした部分がスムースに流れるように読みながら赤を入れ、ブラッシュアップして完成させます。