在職老齢年金

在職老齢年金とは、特別支給の老齢厚生年金を受給している者が
就職している(厚生年金保険の被保険者である)間、賃金の額に応じて
本来の年金額の一部をカットされたり、全額支給停止されたりする制度です。


(1)在職老齢年金とは


特別支給の老齢厚生年金を受給している者が就職している(厚生年金保険の被保険者である)間、賃金の額に応じて本来の年金額の一部をカットして支給したり、年金額の全額を支給停止にするのが在職老齢年金制度です。従って、在職老齢年金の話の前に、特別支給の老齢厚生年金を理解しておくことが必要です。


(2)特別支給の老齢厚生年金とは


特別支給の老齢厚生年金とは、本来の老齢厚生年金が65歳から支給されるのに対し、経過措置として現在
60歳から65歳の間支給される老齢厚生年金のことです。この年金は、報酬比例部分、定額部分、加給年金額から成り立っています。


報酬比例部分:厚生年金に加入している間の賃金に応じて決定される部分です。
定額部分:賃金に関係なく厚生年金の加入期間によって決まる部分です。
加給年金額:要件を満たす配偶者や子を有する場合に加算される年金額です。


特別支給の老齢厚生年金は、これまで60歳から支給されていましたが、このうち定額部分の支給開始年齢が、下表の通り平成13年4月から徐々に引き上げられています。将来は、報酬比例部分の支給開始年齢も引き上げられ、年金は65歳からしか支給されなくなります。





特別支給の老齢厚生年金の支給要件は下記の条件を全て満たすことです。

1年以上の被保険者期間を有すること。
60歳以上であること。
・原則として、保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間=25年以上であること。


特別支給の老齢厚生年金の計算方法はこちらをご覧下さい。


(3)在職老齢年金の支給額(60歳以上65歳未満)の計算方法


@特別支給の老齢厚生年金(加給年金額は除く)を12等分したものを基本月額と呼びます。


A標準報酬月額+(その月以前1年間の賞与額÷12総報酬月額相当額と呼びます。


B次に、総報酬月額相当額と基本月額を合計した金額が支給停止調整開始額(28万円)を越えるときは、次の金額が支給停止となります。



●基本月額≦支給停止調整開始額(28万円)、かつ、総報酬月額相当額≦支給停止調整変更額(46万円)の場合
 {(総報酬月額相当額+基本月額)−支給停止調整開始額}×1/2×12

●基本月額≦支給停止調整開始額、かつ、総報酬月額相当額>支給停止調整変更額の場合
 〔{(支給停止調整変更額+基本月額)−支給停止調整開始額}×1/2〕+(総報酬月額相当額−支給停止調整変更額)〕×12


●基本月額>支給停止調整開始額、かつ、総報酬月額相当額≦支給停止調整変更額の場合
 総報酬月額相当額×1/2×12

●基本月額>支給停止調整開始額、かつ、総報酬月額相当額>支給停止調整変更額の場合
 {支給停止調整変更額×1/2+(総報酬月額相当額−支給停止調整変更額)
}×12


在職老齢年金支給額(月額)特別支給の老齢厚生年金月額支給停止額月額(上記B参照)


※支給停止額が特別支給の老齢厚生年金の額以上であるときは、老齢厚生年金の全額が支給停止となります。


総報酬月額相当額と基本月額を合計した金額が支給停止調整開始額(28万円)以下の場合は、特別支給の老齢厚生年金は全額支給されます。


【事例】
昭和27年4月2日生まれ、59歳時月給34万円、賞与年額90万円の従業員の60歳時の賃金を20万円、賞与を年額36万円(特別支給の老齢厚生年金月額報酬比例部分10万円と想定)とすると、次のようになります。(賞与支給月6月及び12月)


平成24年5月
総報酬月額相当額  200,000円+(45万円+45万円)÷12ヶ月=275,000円
基本月額        100,000円
支給停止額計算   (275,000円+100,000円−280,000円)×1/2=47,500円
併給調整        200,000円×0.06=12,000円(下記(4)参照)
月額支給額      100,000円−47,500円−12,000円=40,500円


平成24年6月〜11月
総報酬月額相当額  200,000円+(45万円+18万円)÷12ヶ月=252,500円
支給停止額計算   (252,500円+100,000円−280,000円)×1/2=36,250円
月額支給額      100,000円−36,250円−12,000円=51,750円


平成24年12月〜平成25年3月
総報酬月額相当額  200,000円+(18万円+18万円)÷12ヶ月=230,000円
支給停止額計算   (230,000円+100,000円−280,000円)×1/2=25,000円
月額支給額      100,000円−25,000円−12,000円=63,000円


★上記計算式から分かる様に在職老齢年金制度に総報酬制が取り入れられた結果、60歳時の在職老齢年金の受給額は、59歳及び60歳の賞与の影響を受け、3度変更になります。


加給年金額がある場合の計算

@特別支給の老齢厚生年金から加給年金額を除いた額によって、支給停止額が算定されます。
A特別支給の老齢厚生年金から加給年金額を除いた額によって、支給停止額による支給停止が行われます。
B支給停止額が特別支給の老齢厚生年金から加給年金額を除いた額以上であるときは、加給年金額を含めた特別支給の老齢厚生年金の全部が支給停止となります。
C加給年金額以外の部分が一部でも支給されているときは、加給年金額は全額支給されます。



(4)在職老齢年金と高年齢雇用継続給付との併給調整


在職老齢年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付(ハローワークから高年齢者の雇用を促進するために個人に支給される奨励金)は、それぞれ支給要件を満たせば両方支給されますが、在職老齢年金の一部が支給停止されたり、全額支給停止されます。


支給停止される金額は、60歳以後の標準報酬月額によって、次の表のとおりです。

標準報酬月額 支給停止額
60歳到達時賃金の61%未満 標準報酬月額の6%
60歳到達時賃金の61%以上75%未満 標準報酬月額の0%〜6%

【手続き】

年金を受給している人が、高年齢雇用継続給付を受ける時は、「厚生年金保険老齢厚生年金受給権者支給停止事由該当届」に「高年齢雇用継続給付支給決定通知書」を添付し、最寄の社会保険事務所に提出することが必要です。


(5)在職老齢年金の支給額(65歳以上70歳未満)


65歳以上70歳未満の方が老齢厚生年金を受給しながら厚生年金保険に加入している間は、賃金・賞与と老齢厚生年金の額に応じて、老齢厚生年金の全部又は一部が支給停止される場合があります。


支給額は下記により計算されます。

総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計額が支給停止調整額(46万円)以下の場合は、全額支給されます。
総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計額が支給停止調整額を超える場合は、超えた額の1/2の額の老齢厚生年金が支給停止されます。


  支給停止額=(総報酬月額相当額+老齢厚生年金月額−支給停止調整額)×1/2×12


  在職老齢年金支給額(月額)老齢厚生年金月額−上記支給停止額
月額


※支給停止額が老齢厚生年金から加給年金額を除いた額以上であるときは加給年金額を含めた在職老齢年金の全額が支給停止されます。


【事例】

昭和15年4月2日生まれ、64歳時の月額報酬額60万円、賞与0円、65歳時の月給36万円、賞与0円、老齢厚生年金の支給額120万円の役員の場合


 老齢厚生年金月額  120万円÷12ヶ月=10万円
 総報酬月額相当額  36万円

 総報酬月額相当額36万円+老齢厚生年金月額10万円=46万円=支給停止調整額

 従って、この場合、在職老齢年金は全額支給されます。


(6)在職老齢年金の支給額(70歳以上)


70歳以上の方で正社員と同様の働き方をされる方は、65歳代後半の在職老齢年金の計算式が準用されます。但し、70歳以上の方は厚生年金保険の被保険者ではなくなりますので、保険料は負担しません。また、昭和12年4月1日以前生まれの方は、対象外です。


すなわち、賃金・賞与と老齢厚生年金の額に応じて、老齢厚生年金の全部又は一部が支給停止される場合があります。


支給額は下記により計算されます。

総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計額が支給停止調整額(46万円)以下の場合は、全額支給されます。
総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計額が支給停止調整額を超える場合は、超えた額の1/2の額の老齢厚生年金が支給停止されます。


  支給停止額=(総報酬月額相当額+老齢厚生年金月額−支給停止調整額)×1/2×12


  在職老齢年金支給額(月額)老齢厚生年金月額−上記支給停止額
月額


※支給停止額が老齢厚生年金から加給年金額を除いた額以上であるときは加給年金額を含めた在職老齢年金の全額が支給停止されます。



(7)在職老齢年金と厚生年金基金


@60歳以上65歳未満の場合


上記(3)の「基本月額」を「国の年金月額(基金の代行部分を含みます)」と読み替え上記計算式が適用されます。この場合、支給停止される額は、国から支給される年金から先に支給停止されます。支給停止額が国から支給される年金額を超える場合は、超える額が厚生年金基金の基本年金から支給停止されます。


なお、厚生年金基金が在職支給停止を行うかどうかは、各基金の規約において定められています。


政府支給分が全額支給停止になっても、基金代行部分で支給停止されない部分があるときは、加給年金額は全額支給されます。


A65歳以上70歳未満の場合


上記(5)の「老齢の厚生年金月額」を「国から支給される老齢厚生年金(基金の代行部分を含みます)」と読み替え上記計算式が適用されます。この場合、支給停止される額は、国から支給される老齢厚生年金から先に支給停止されます。支給停止額が国から支給される老齢厚生年金額を超える場合は、超える額が基金の基本年金から支給停止されます。(プラスアルファ部分は支給停止されません)


B70歳以上の場合


65歳以上70歳未満の場合に準じます。


(注)なお、厚生年金基金の規約により取扱いが異なる場合もありますので、ご注意下さい。


高齢者の賃金は税金、社会保険料控除後の手取額で比較する必要がありますが、在職老齢年金、高年齢雇用継続給付金が複雑に絡み合い、従業員のためによかれと思い、賃金、賞与を高めに支給すると、会社負担額が増加するにも係らず、従業員の手取額が増加するどころか逆に減少する場合があります。
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