退職金制度の見直し

現在、中小企業の退職金制度の多くは基本給連動型の年功を重視した制度となっています。
この制度では、毎年基本給の引上げとともに退職金支給額が引上げられる仕組みになっています。
基本給連動型から企業貢献度を重視するポイント制の退職金制度への見直しが時代の流れです。

(1)退職金制度の現状


大企業をはじめわが国の多くの企業では退職金制度があります。しかし、労働基準法では、、退職金は必ず労働者に支払うべき賃金とは考えられていません。退職金制度のない企業も約1割存在します。


現在多くの企業が採用している退職金制度は、勤続年数が長く、基本給の高い従業員ほど多く支給される仕組みとなっています。賃金においては既に年功型から、企業貢献を重視する仕組みにかわりつつあります。こうした時代に旧来型の退職金制度を続けていると下記の(2)のような問題点が表面化します。



(2)退職金制度の問題点


@退職金制度の多くが基本給連動型となっています。支給退職金=退職時の基本給×勤続年数係数×退職事由別係数(自己都合か会社都合かの別) これは、年功型退職金制度の典型であり、会社への貢献度に係らず多額の退職金が支払われる点、退職時点にならないと正確な退職金が計算出来ない点など多くの問題点があります。


A中小企業では、社員の移動も多く、勤続年数は短かったため、いままでは退職金の支払いもそれほど負担ではありませんでした。しかし、景気が低迷する中での転職意欲の低下により、勤続は長期化し、定年で退職するケースが多くなると、それに見合った準備や対策が必要となります。勤続年数係数は勤続年数が長くなるに従い急激に大きくなるため、支払う退職金の額も多額となります


B適格退職年金などの外部積立で退職金の準備をしている場合、運用環境の悪化から積立不足が発生し、企業が埋め合わせしなければならない債務が存在します


C退職金の既得権は保護されるので、勤続年数の長い社員がいる会社で現状を放置しておくと、毎日大きな退職金債務が積みあがっていますこうした企業様の場合、いますぐ退職金制度の見直しが必要です。問題を先送りしていますとそのツケは、より大きなものとなり、「退職金倒産」も十分あり得る話です。


【事例】 退職金計算方法を2005年から基本給連動型からポイント制に変更する。

退職年度 退職者数 現状放置 新制度導入 差額
基本給連動型 ポイント制
2005年 1人 1,900万円 1,900万円 0円
2006年 2人 3,876万円 3,876万円 0円
2007年 4人 8,056万円 8,056万円 0円
2008年 5人 10,070万円 9,500万円 570万円
2009年 4人 8,208万円 7,600万円 608万円
2010年 1人 2,090万円 1,900万円 190万円
合計 34,200万円 32,832万円 1,368万円

本年度から退職金を変更しても、既得権の補償及び不利益変更を避けるため、3年間の経過措置(新旧いずれかの制度から支給される退職金のうち有利な方を受給できる)を設ける必要があるため、退職金の減額の効果が出るのは、2008年以降となります。


それでも、退職金制度の見直しを本年度にすれば、2008年以降減額の効果が出てきます。退職金制度の見直しを先送りすればするほどこの退職金減額効果は少なくなります。団塊の世代で勤続年数が長い社員がいると一刻も早く退職金制度の見直しに取り掛かる必要があることがお分かり頂けると思います。


(3)退職金制度の見直しのポイント


退職金制度を見直す場合、次の3つのポイントがあります。

@退職金制度の必要性

A退職金の計算方法(退職金規程)

B退職金の資金準備方法(ファンド)


@退職金制度の必要性


そもそも長期的に雇用定着率を高める手段として退職金制度は現在でも必要でしょうか最近、退職金を廃止し、退職金分を前払いする企業が増えています。雇用の流動化が背景にあるようです。退職金分を毎月の給与や賞与に上乗せして支払います。積立不足の問題は発生しませんが、税金、社会保険料の負担の問題が発生します。


この問題を解決するには、前払い分を現金で支払うのではなく、
日本版401kを導入すれば解決します。日本版401kの拠出金は非課税で社会保険料の対象にもなりません。また、60歳になって一時金で支給を受けると、退職金に対する減税措置をまるごと享受することができますが、原則として60歳にならないと支給されないのが難点です。(日本版401kは退職金というよりは、公的年金を補完する企業年金、個人年金ということが出来ます。)


日本版401kを導入するには事務コストが発生します。従って、少なくとも100名以上の従業員がいないと導入は困難です。


企業によっては、前払い退職金と日本版401kとの選択を認めている企業もあります。



・一方で退職金制度を設けるメリットも次のように考えられます。


イ、優秀な人材を採用しようとする場合、有利な手段となる。

ロ、経営を縮小する時、整理解雇が必要となるが、退職金があると整理解雇を進め易い。

ハ、中小企業の場合、経営が不安定で清算する必要が出てくる場合も考えれるが、この際に退職金があると、従業員を解雇し易い。


結局、退職金制度を見直しを行ない、「続ける(新設する)」か「廃止ずる(新設しない)」かは、経営者の考え方により異なってくることになります。



A退職金の計算方法(退職金規程)の見直し


退職金制度を続ける場合、退職金の計算方法として、次の中から適当なものを選択します。


基本給連動型(上記説明の通り、年功重視で企業貢献が反映されていない点、退職時でないと債務が確定しない点で、現在では適当とは言えません。)


定額制(あらかじめ勤続年数により支払額が確定している点は評価出来ますが、勤続年数重視で企業貢献を反映されていない点で、現在では適当とは言えません。)


別テーブル制 退職金=退職金の算定基礎額×勤続年数係数×退職事由係数


ポイント制 退職金=(勤続ポイント+職能ポイント)の累積点×退職金単価×退職事由係数


 上記4つの退職金額計算方法のうち、定額制、別テーブル制、ポイント制はベースアップによる退職金の増額を防ぐ点で有効ですが、ポイント制が会社への貢献度を反映し合理的と考えられます。


B退職金の資金準備方法


退職金の計算方法が決まれば、次にその退職金の資金準備方法を考えます。退職金の資金準備方法には次のような方法があります。


中小企業退職金共済制度(中退共)

特定退職金共済制度(特退共)

生命保険会社の福利厚生プラン


※中退共、特退共、生命保険のメリット・デメリットを考えてみます。

メリット等 中退共 特退共 生命保険(福利厚生プラン)
メリット ・仕組みが分かり易い。
・新規加入・増額の際に助成金が受取れる。
・損金算入できる。
・加入できる企業の規模による制限はない。
・仕組みが分かり易い
・損金算入できる。
・加入できる企業の規模による制限はない。
・制度が柔軟で、自由な設計が出来る。
・資金繰り上必要な場合に資金を借りることができる。
・経営者から退職者に直接退職金として手渡すことができる。
・在職中に死亡した場合に死亡退職金として活用できる。
・2分の1損金算入できる。
デメリット ・加入できる企業の規模による制限がある。
・制度が一律で自由度に欠ける。
・経営者から退職者に直接退職金を手渡すことができない。
・掛金は最高30,000円である。
・制度が一律で自由度に欠ける。
・経営者から退職者に直接退職金を手渡すことができない。
・掛金は最高30,000円である。
・死亡補償が含まれるので、掛金が高い。
・原則全員加入である。

■ 中退共と生命保険、特退共と生命保険を組み合わせ、自己都合と会社都合による退職金支給額の区別に対応する設計も可能です。


■ 生命保険で退職金の資金を準備する場合、福利厚生プランのほかに長期傷害保険、逓増定期保険、長期平準保険等で準備することも考えられます。


■ 下記の企業年金からの支給も考えられますが、いずれも支給原因が老齢(60歳以上)となっているので、退職金のファンドとしては適当でないと考えられます。


日本版401k(確定拠出年金)

確定給付企業年金(規約型)


(4)退職金制度見直しの留意点


ア) 不利益変更が認められる条件


退職金制度は上に書いたように一度導入すると、労働者の労働条件となり、これを減額したり、廃止することは、不利益変更となり、合理的な理由がない限り無効となります。



不利益変更が認められるための条件

・高度の必要性

・代償措置の有無

・労働組合(労働者側)との交渉過程

・他の従業員の動向

・同規模・同業他社等の制度との比較

・わが国一般の制度及び支給額との比較

・経過措置の有無

・選択制度(複数の制度から労働者の選択を認める制度)の採用


判例上は上記のように厳格な規定がありますが、実務上は、事業主が労働組合又は従業員とよく話し合い、企業の窮状、企業規模に応じた一般的な退職金の支給水準、代替措置の導入などで退職金の見直しをすることが出来ます。労使の信頼関係が大切です。


退職金規程をめぐる不利益変更に関する最近の判例



(イ)既得権は完全に保証される。期待権は話合いによる。


制度移行時には、現行制度で退職金を算出し、その額は社員の既得権として侵害することは出来ません。制度改訂後の将来分は、合理性と労働者の合意を前提に減額改訂が認められます。この場合も労使の信頼関係が大切です。


(5)中小企業の退職金制度


中小企業では、少数精鋭主義でやっていますので、出来るだけ簡易な退職金制度が望まれます。ここではポイント制に変わるもので、かつ、企業貢献度を反映する制度を提案します。


・退職金の支給額は、原則として中退共から支給される額とします。定年退職の場合は20%程度上乗せ給付を行います。


・中退共の掛金を「役割等級」または「資格等級」により差を設けます。例えば、役割等級に応じてあらかじめ次の様な表を作成します。

役割等級 中退共1ヵ月当たり掛金
社員2級 5,000円
社員1級 7,000円
主任 10,000円
課長代理 14,000円
課長 18,000円
部長 24,000円


・定年退職の上乗せ給付は、生命保険で準備します。


(6)退職金制度の見直しの手順


@今いる社員が定年まで働き続けると仮定した場合、どのくらいの退職金になるか試算します。さらにこれを年度ごとにまとめ、いつどのくらいの退職金が必要なのか、このうちどれだけ外部積立などで資金手当ができているのかを試算します。(現状分析)


A現行の退職金制度は基本給連動型のところが多いですが、この方式ですと年功を重視するので、多額の退職金を準備する必要があります。


B適格年金で退職金を準備している場合、現在の資産運用状況を考えますと当初設計した5.5%に満たないため、多額の積立不足が発生していると考えられます。


C適格年金の決算報告書上積立不足が少ないようにみえても、それは5.5%で将来も運用されることを前提としているためで、今の環境ではとても無理な数字です。実際の積立不足はかなり深刻です。


D従って、退職金制度の見直しは、企業が現実に掛金を負担出来る水準まで、給付水準を下げる必要があります。


E貴社の今後の退職金制度のあり方を社長様の意向をふまえ、検討します。


F新退職金制度の設計及びその資金準備を考えます。


G新制度が給付水準の引下げとなる場合は、労働条件の不利益変更となりますので、既存従業員に対する代替措置、経過措置を検討します。


H従業員への説明会を実施したり、個別に説明し、従業員全員の同意を得て、最終決定します。


J退職金規程の変更及び届出、退職金の資金手当のため、金融機関等と契約を締結します。


K新退職金制度運用開始となります。


(7)退職金制度の見直しに関する当事務所の方針


@当事務所は、貴社の発展と従業員の幸せを考え退職金制度の見直しを検討します。社会保険労務士として中立的な立場で、検討いたします。


A退職金制度の見直し(退職金規程)と資金の準備(ファンド)を分けて考えますので、特定の金融商品を積極的に薦めることはありません。赤字の場合で、将来も資金的に苦しい場合は、退職金規程の廃止をお薦めする場合もあります。また、経営者様のご希望で退職金規程を廃止し、前払い退職金をお勧めする場合もあります。


B当事務所では、現状分析から退職金制度の見直しの必要性を判断し、退職金制度見直しの必要性がある場合は、どのような退職金制度を導入するか、退職金の支給水準をどの当たりに設定するか、退職金の資金準備方法はどうするか、経過措置をどうするか、従業員に対する合意をどのように取り付けるまで新退職金制度がスムーズに導入できるようコンサルティングを行います。


C新退職金制度の設計では、全体の給付水準が下がっても従業員のモチベーションの下がらない制度を提案いたします。.また、経営者様の退職金制度に対するお考えに沿って制度設計いたします。


D不利益変更に関しましては、既得権は完全に補償し、代替措置、経過措置を設け、従業員の方々にご納得頂けるように制度の設計をいたします。


※退職金現状分析


自社の退職金制度を見直すかどうかを検討する前に、現状分析が必要です。どれ位積立不足になっているのかどうか、将来の退職金は支払える水準かどうかなどを調べます。

現状分析で退職金制度に問題がなければ、見直す必要はありません。現状分析で問題点が出てきた場合のみ、退職金制度の見直しが必要となります。

当事務所では、ご希望があれば、無料で現状分析をおこなっています。企業経営診断の一環として退職金制度の現状分析をされてみてはどうでしょうか。

退職金現状診断ご希望の方は、下記メールに必要事項をご記入のうえ送信して下さい。


                      メール先   


現状分析に際し、ご提出をお願いする書類


@退職金規程、退職年金規程、賃金規程

A直近1か月分の賃金台帳(生年月日、入社年月日が記入されているもの)

B適格年金、中退共、特退共等の外部積立を採用されている場合、従業員別解約返戻金等


現状分析では、下記の情報を報告書にまとめご提供いたします。


(1)ご提供するグラフ

@年度別予想退職金額グラフ
A貴社モデル退職金グラフ

(2)分析結果

・退職金制度について(退職金制度とカーブ)

(3)問題点と今後の方向性

退職金制度の見直しに関しましては、下記メールをご利用のうえ、お気軽に当事務所までご相談下さい。

                                   

退職金見直しコンサルティングでは、上記退職金制度に見直しの手順を踏まえ、現状分析から退職金規程の変更・届出までを実施いたします。料金は、従業員1名当たり1万円です(基本金額30万円が別途必要)、従って、従業員50名の場合は80万円、従業員20名の場合は50万円となります。但し、従業員説明会まで依頼される場合は説明会1回につき5万円を頂戴します。

                                            
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