賞与の社会保険料節約
賞与に関する社会保険料の合法的な節約方法をまとめました。
平成15年4月より社会保険料の徴収方法が総報酬制になり、賞与に係わる社会保険料の事業主負担分が増加しています。この事業主負担分を削減する方法を下記の通りまとめました。
(1)賞与の一部を月給に加算する。
(2)賞与を月給に加算する。
(3)賞与の支給を年1回にする。
(4)賞与の支給を年4回にする。
(1)賞与の一部を月給に加算する。
健康保険料、厚生年金保険料ともに資格取得時の月給が、例えば、290,000円以上310,000円未満の間にある場合は、資格取得時の月給が291,000円であっても、309,000円であっても、標準報酬月額が300,000円で固定され、健康保険料は14,145円(企業負担分)、厚生年金保険料は21,963円(企業負担分)となります。年収を対策前と対策後は同額にし、資格取得時の月給を範囲の上限近くに設定し、賞与をその分減少させます。これにより賞与に係る社会保険料の節約を図ることが出来ます。
資格取得時の場合は、月給(残業代見込み額、通勤交通費を含みます)に賞与の一部を加算した額が範囲の上限近くになるように設定します。
【事例】
資格取得時の月給が対策前は295,000円、賞与1,200,000円、年収4,740,000円の従業員の月給に毎月14,000円を加算し、309,000円になるようにします。対策後の賞与は1,032,000円となります。年収は4,740,000円で対策の前後で変更有りません。(賞与は年2回支給、1回当りの支給額は同額、資格取得月は9月、残業はなしと想定)
【対策前】
健康保険料
月給分
14,145円×12ヶ月=169,740円
賞与分 600,000円×9.43/100×1/2×2回=56,580円
厚生年金保険料
月給分 22,494円×12ヶ月=269,928円
賞与分 600,000円×14.996/100×1/2×2回= 89,976円
合計 586,224円
【対策後】
健康保険料
月給分 169,740円(変更無し)
賞与分 516,000円×9.43/100×1/2×2回= 48,659円
厚生年金保険料
月給分 269,928円(変更無し)
賞与分 516,000円×14.996/100×1/2×2回=77,379円
合計 565,706円
586,224円−565,706円=20,518円
この事例の場合、年間で20,518円削減することが出来ます。従業員が50名いれば、年間約100万円削減することが可能です。
【条件】 賞与があまり変動しないこと、原則として、残業が発生しないことが前提です。
【従業員のメリット】 手取り収入が増加します。
【従業員のデメリット】 老齢厚生年金等の給付が若干下がります。
(2)賞与を月給に加算する。
厚生年金保険の保険料額表では、標準報酬額の上限が620,000円に設定されています。これを利用して、社会保険料の節約を図ります。月給が605,000円以上の方が対象になります。
【事例】
月給61万円、賞与年間240万円の被保険者の月給を71万円、賞与年間120万円とする。(対策の前後で年収は同額とする)賞与240万円のうち、120万円は固定的部分として、残り120万円は業績給部分で変動する可能性があるものとする。固定的部分の120万円を12ヶ月で割り、1ヶ月当たり10万円を月給61万円に上乗せし、月給71万円とする。
【対策前】
月給分
健康保険料 29,233円×12ヶ月=350,796円
厚生年金保険料 46,488円×12ヶ月=557,856円
賞与分
健康保険料 2,400,000円×9、43/100×1/2=113,160円
厚生年金保険料 2,400,000円×14.996/100×1/2=179,952円
総合計 1,201,764円
【対策後】
月給分
健康保険料 33,477円×12ヶ月=401,724円
厚生年金保険料 46,488円×12ヶ月=557,856円
賞与分
健康保険料 1,200,000円×9,43/100×1/2=56,580円
厚生年金保険料 1,200,000円×14.996/100×1/2=89,976円
総合計 1,106,136円
1,201,764円−1,106,136円=95,628円
この事例の場合、年間95,628円の削減を図ることが出来ます。
【従業員のメリット】
従業員の手取額が増加する。
【従業員のデメリット】
従業員の老齢厚生年金等の給付額が減少する。
賞与支給時期に受給する額が減少するので、生活設計の見直しが必要となる。
(3)賞与の支給を年1回にする。
総報酬制の導入に伴い、保険料を負担する賞与の上限額が決定されました。厚生年金保険で1回当たり150万円、健康保険で1年間(4月から翌年3月まで)通算して540万円です。この上限額を利用して、社会保険料(厚生年金保険料)を節約します。上期賞与と下期賞与の合計が150万円以上の方が対象となります。
【事例】
上期賞与を120万円、下期賞与を130万円支給されている従業員の賞与を年1回の支給(支給額120万円+130万円=250万円)に変更します。
【対策前】
健康保険料 56,580円+61,295円=117,875円
厚生年金保険料 89,976円+97,474円=187,450円
合計 305,325円
【対策後】
健康保険料 117,875円
厚生年金保険料 112,470円
合計 230,345円
305,325円−230,345円=74,980円
この事例の場合、年間74,980円の削減を図ることが出来ます。
【従業員のメリット】
賞与の手取額が増加する。
【従業員のデメリット】
・減額した賞与分の老齢厚生年金等の支給額が減少する。
・年2回の支給で計画していた賞与からの住宅ローン等の支払の見直しをする必要が出てくる。
【留意点】
賞与の支給を年2回から1回に変更する場合、賞与支給に関しての賃金規程等を変更する必要があります。支給時期とその算定にかかる対象期間の変更が必要となります。また、支払対象期間の途中で退職する社員が出た場合にその調整等を考えておく必要があります。
(4)賞与の支給を年4回にする。
賞与の支給を年4回以上とすると賞与としてではなく、賃金として社会保険料がかかってきます。すなわち、翌年の定時決定において、定時決定前1年間に4回以上支給した賞与の合計の12分の1を、4〜6月の各月の賃金に上乗せして毎月の社会保険料の控除額を決定します。
大企業等で賃金の水準が高い社員が多い会社ほど効果は大きくなります。厚生年金保険の標準報酬月額の上限が620,000円(報酬月額605,000円〜)となっていますので、年収で726万円(60.5万円×12ヶ月)以上の役員・従業員に対しては、毎月厚生年金保険料としては、46,488円の負担で済むからです。
【事例】
対策前のある従業員の月給を50万円、賞与を240万円、賞与の支給を年2回とし、対策後は年収合計は、840万円と同額としますが、月給を50万円、賞与240万円を年4回に分けて支給するものとします。
【対策前】
標準報酬月額 500,000円 標準賞与額 1,200,000円
月給分
健康保険料 23,575円×12ヶ月=282,900円
厚生年金保険料 37,490円×12ヶ月=449,880円
賞与分
健康保険料 1,200,000円×9.43/100×1/2×2=113,160円
厚生年金保険料 1,200,000円×14.996/100×1/2×2=179,952円
合 計 1,025,892円
【対策後】
標準報酬月額 500,000円+2,400,000円÷12=700,000円
月給分
健康保険料 33,477円×12ヶ月=401,724円
厚生年金保険料 46,488円×12ヶ月=557,856円
賞与分
健康保険料 0円
厚生年金保険料 0円
合 計 959,580円
1,025,892円−959,580円=66,312円
すなわち、この人一人で社会保険料を66,312円節約することが出来るので、年収がもっと高い人が多くいれば節約効果はもっと大きなものとなります。例えば、平均7万円節約することが出来る人が100人いると考えれば、年間700万円もの削減を図ることが出来ます。
【従業員のメリット】
年収の手取額が増加します。(年収726万円以上の方)
【従業員のデメリット】
老齢厚生年金等の給付が若干下がります。(年収726万円以上の方)
【留意事項】
就業規則(賃金規程)の賞与の部分の変更と届出が必要になります。従業員の同意が必要となります。
※賞与計算の具体的な方法は、賞与計算の実務をご覧下さい。
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