審査請求・再審査請求

行政官庁が行った処分に対し不服がある場合は、異議申し立て、
審査請求、再審査請求する道があります。裁判所ではなく、処分庁、
審査官、審査会に対して申し立てすることになります。

(1)審査請求制度・再審査請求制度の趣旨

労働基準監督署長・社会保険事務所長の決定した処分が請求者にとって不満な場合には、裁判所に訴えることにより問題を解決することが原則ですが、労災保険・社会保険のように専門的、大量的に発生する処分をいちいち裁判所で解決するには、原告は訴訟手続の煩雑さと多額の費用を必要とします。

これでは、不服者の権利の救済には十分とはいえません。そこで、このような弊害を避けるために設けられたのが、異議申立・審査請求・再審査請求の制度です。



(2)異議申立制度

異議申立てとは、処分を行った行政庁に対し、直接異議を申し立てることです。従って、よほどのことがない限り自ら行った処分を変更することはありません。

例えば、概算保険料の認定決定又は確定保険料の認定決定について不服があるとき、事業主は、異議申立てをすることが出来ます。

認定決定の処分があったことを知った日の翌日から
60日以内かつ処分があった日の翌日から1年以内に都道府県労働局歳入徴収官に対して書面で行うことが出来ます。


(3)審査請求制度

保険給付の決定に対して不服のある場合には審査請求を行うことが出来ます。

例えば、過労死の労災認定がおりない場合は、労災認定を求める審査請求を都道府県労働局にいる
労働者災害補償保険審査官に対して行うことが出来ます。

同様に、障害認定の決定に対して不服のある者は、各地方社会保険事務局にいる
社会保険審査官に対して、審査請求を行うことが出来ます。

労災保険の場合、処分の決定のあったことを知った日から
60日以内に文書又は口頭で、労働者災害補償保険審査官に審査請求を申し出ます。

同様に、社会保険の場合も処分があったことを知った日から
60日以内に文書又は口頭で、社会保険審査官に申し出ます。

労働者災害補償保険審査官、社会保険審査官共に独任制で、法令、通達に基づき再調査を行ない、原処分が正しいかどうかを判断します。

審査官の決定は次の3種類に分かれます。
「容認」‥審査請求の申したてが正しいと判断し、原処分庁に処分の見直しを求めます。
「棄却」‥原処分庁の処分が正しいと判断し、審査請求の申し立てを否認します。
「却下」‥申し立てが要件を欠いていたり、期限を過ぎていた場合は、申したて自体が否認されます。

(4)再審査請求制度

労働者災害補償保険審査官が下した決定に不服がある場合、厚生労働省内に設けられた労働保険審査会に対し、再審査請求を行うことが出来ます。

同様に、社会保険審査官が下した決定に不服がある場合、厚生労働省内に設けられた
社会保険審査会に対し、再審査請求を行うことが出来ます。

労災保険の場合、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から
60日以内に文書で、再審査請求を申し出ることが出来ます。

また、審査請求をした日から3ヶ月を経過しても決定がない場合も再審査請求することが出来ます。

社会保険の場合は、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から
60日以内に文書又は口頭で、再審査請求を申し出ることが出来ます。

また、審査請求をした日から60日以内に決定がない場合も再審査請求することが出来ます。

労働保険審査会、社会保険審査会は、保険者、申立人、参与(有識者)、審査員が集まり、審査員の合議制で審査が行われます。


(5)異議申立・審査請求・再審査請求の代理

行政が一度決定した処分を変更させることは、一般の方には、かなり困難な作業です。

申立書に「他の同じ状態の人が障害基礎年金の支給を受けているから」とか「生活が苦しいから」といった理由で、審査請求、再審査請求が容認されることはありえません。

書面の作成や陳述等は、専門家にまかせた方が賢明です。


労働保険・社会保険の法律の専門家である社会保険労務士は、異議申立・審査請求・再審査請求の代理人となることが法律で認められています。社労士の独占業務です。

但し、この分野はかなり専門的なテクニックが必要ですので、その能力・経験のある社会保険労務士に依頼することが必要と思います。

当事務所では、審査請求・再審査請求の経験豊富なスタッフが対応いたします。



(6)労働保険審査会裁決の一例

@経過

再審査請求人(以下請求人という)は、平成○年○月業務上負傷し、平成△年△月治癒したが、治癒後障害が残存するとして、労働基準監督署長(以下監督署長という)に障害補償給付の請求をしたところ、監督署長は、請求人に残存する障害は、労働者災害補償保険法施行規則別表第一に定める障害等級第八級に該当するものと認め、同等級に応ずる障害補償給付を支給する旨を処分した。
請求人は、この処分を不服として労働者災害補償保険審査官(以下審査官という)に審査請求したが、審査官はこれを棄却したので、請求人は、さらにこの決定を不服として再審査請求に及んだ。

A再審査請求の理由

請求人は再審査請求の理由として、要旨、「右手の残存障害につき、現処分庁は、右示指は、中節骨二ミリ残して切断している。右環指は、中節骨九ミリ残して切断しているとし、いずれも「用を廃したもの」に該当することを根拠に、障害等級第八級準用としている。
しかし、病院で治療した際に、医師より「中節骨まで損傷しており、機能しないが、そのまま残しておく」旨の説明を受けた。事実上右示指は、中節骨が無いのと同様の状態であり、「示指を失ったもの」と判断すべきである。従って、「一手の母指及び示指を失ったもの又は母指もしくは示指を含み三以上の手指を失ったもの」であり、障害等級第七級の六に至っているもので、第八級準用と決定した監督署長の処分は誤りである。


B労働保険審査会の裁決(要旨)

請求人の障害は、障害等級表に掲げられた障害には該当するものではないが、その障害の程度を当該障害の具体的状態を考慮のうえ障害等級表に掲げられている手指の障害との比較を中心に総体的に検討した結果、障害等級第七級に準用するのが相当であると認められるものである。
したがって、監督署長が請求人の障害を障害等級第八級とした判断は失当と言わざるを得ず、その判断に基づき監督署長が請求人に対してした障害補償給付の支給に関する処分は取り消しを免れない。


【コメント】

障害補償給付で第八級と認定されるか、第七級と認定されるでは給付面で非常に大きな違いがあります。第七級と認定されれば、1年につき給付基礎日額の131日分、第八級と認定されれば、一時金として給付基礎日額の503日分が給付されます。給付基礎日額が1万円とすれば、第七級と認定されれば、毎年131万円が給付され、第七級と認定されれば、503万円が一度だけ支払われるだけです。審査請求、再審査請求の重要性がわかると思います


(6)労働保険審査会の様子

平成20年3月4日に東京都港区の労働委員会内で開催された労働保険審査会に出席しました。その様子をお話します。

まず、配置ですが、正面に審査長、その右に審査員1名、左に審査員1名、合計3名の審査員がいらっしゃいます。審査員は、「両議院の同意を得て、厚生労働大臣により任命」されます。合議制による審査が行われ、労働保険審査官と異なり、行政通達に拘束されませんので、審査請求より申請が容認(主張が認められる)可能性が高いです。

審査長の前に書記官2名が座り、その右に労働者側参与2名、左に使用者側参与2名がすわります。参与は、労働保険等の有識者で意見、質問を述べることが出来ます。

そして、右手に請求人側の席、左手に原処分庁の席があります。

再審査請求は関係者以外の人でも傍聴することが出来ます。座席は部屋の最後部にあります。

進行は、まず、審査長が請求人及びその代理人に請求の趣旨を質問します。次に、原処分庁の主張を聞きます。

原処分庁は、再審査請求の棄却を求めることを述べます。原処分庁の発言はこれだけです。残りの時間は、請求人側への質問がなされます。

質問者は、審査長、審査員、参与です。

同じ日に他の再審査請求の事件も扱われます(1日当たり原則として12件)ので、時間に制限があり、1つの事件については原則30分の時間内で審議が行われます。従って、質問に対しては、趣旨を良く理解し、適切に返答しなければなりません。

私が関与した事件は、疾病に業務起因性があるかないかを扱ったものです。詳しくは守秘義務があるので公表出来ません。疾病の労災認定は、一定の基準があり、その基準に沿って説明しないとなかなか認めてもらえません。

如何に要領よく意見書をまとめ、再審査会で陳述し、審査員、参与を納得させる説明が出来るかどうかが社会保険労務士としての腕の見せ所です。


審査請求・再審査請求の代理に関してましては、下記メール等をご利用のうえ、お気軽に当事務所までご相談下さい。

                                  

標準報酬額

着手金 成功報酬
異議申立 105,000円 一時金の5%又は年金月額の1ヶ月分
審査請求 105,000円
再審査請求 105,000円(注)

(注)公聴会への出席も重ねて依頼される場合は、東海道新幹線を含む交通費実費及び日当1万円が別途必要となります。

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