パートタイマーの労務管理

パートタイマー採用時には、必ず「雇入通知書」を交付しましょう。
パートタイマー就業規則を作成し、パートタイマーの統一的な労務管理を行いましょう。


(1)パートタイム労働の現状


常用労働者(期間の定めのない社員)は、近年減少していますが、これと対照的にパートタイム労働者は、近年著しく増加しています。平成25年6月末の短時間労働者(1週間の労働時間が35時間未満)は、1,218万人であり、労働者総数(4,617万人)の26.3%となっています。労働者の約4人に1人が短時間労働者ということです。これは、いうまでもなく人件費削減を目指した企業の姿勢の表れであり、また、労働者の働き方が多様化してきた表れでもあります。今後もこの傾向は続くもの思われます。


こうしたパートタイマーの増加を踏まえ、平成20年4月からは、パートタイム労働法が改正され、パートタイマーと正社員との均等待遇にも配慮することとされました。平成20年4月のパートタイム労働法の改正内容に関してはこちらをご覧下さい。


さらに、平成27年4月にもパートタイム労働法が改正され、均等待遇やパート労働者への説明義務等一層パートタイム労働者への配慮が必要となってきました。平成27年4月のパートタイム労働法の改正内容に関してはこちらをご覧下さい。


以下にパートタイマーの労務管理を行ううえで必要な事項をまとめてみましたので参考にして下さい。



(2)短時間労働者の呼称


一般に短時間労働者は、「パートタイマー(パート社員)」「アルバイト社員」「契約社員」「嘱託社員」と様々の名称で呼ばれますが、労働基準法は労働者の定義を「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」としていますので、これらの人たちは全て労働基準法上の「労働者」に該当します。


法律的な呼称ではありませんが、一般的に良く使われる名称は次の通りです。


パートタイマー(パート社員)‥一般的には、通常の事業所の所定労働時間より短い時間で働く人や、所定労働日数より働く日数が少ない人のことをいいます。法律上では、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労時間と比べて短い労働者を短時間労働者」と定義しています。(パートタイム労働法第2条)


アルバイト社員‥本来の仕事なり、学業なりを持つ者が余裕のある時間を利用して働く場合をいいます。これまでは、卒業や就職で「終期」があることが特徴でしたが、近年は「フリーター」と称する「専業のアルバイト」が増加しており、パートタイマーとの違いが不明確になってきています。


契約社員」‥特定の仕事を担当させるために期間を定めて雇用する場合や高度な技術や技能を持ち専門性の高い仕事をする人を期間を定めて雇用する場合が該当します。


嘱託社員‥一般的には定年で退職した人を再雇用する場合や高年齢者、非常勤で守衛、運転手などを雇用する場合に使われます。


(3)パートタイマー等の適用法令と労働条件


(2)で述べたように「パートタイマー」「アルバイト」「契約社員」「嘱託」などの非正規雇用者は全て労働基準法上の「労働者」に該当しますので、労働基準法上の保護規定が適用されますので、注意が必要です。


労働基準法以外にも労働安全衛生法、最低賃金法、パートタイム労働法、労災保険法等が適用されます。


パートタイマーは一般の労働者(期間の定めのない労働者)とは、異なる訳ですから、上記法令の強行規定に反することは出来ませんが、任意に規定することが出来る労働条件については、「就業規則」「労働契約」できちんと定めておくことが、後のトラブルを避けるための基本です。


「就業規則」についても「パートタイマー就業規則」「アルバイト社員就業規則」「契約社員就業規則」「嘱託社員就業規則」を正社員用の「就業規則」と別個に定めておいた方が良いでしょう。別に定めていないと正社員用の「就業規則」が適用となり、トラブルの原因となります。例えば、パートタイマーには退職金を払うつもりがなくても、正社員の「就業規則」しかなく、退職金の支払いに関してはパートタイマーを除く旨の規定がなければ、パートタイマーにも退職金を支払う義務が発生します。


また、採用の際には「労働条件通知書」(雇入通知書)で労働条件を書面で交付するか、「雇用契約書」を交わすことで後のトラブルを避けることができます。


(4)契約期間の中途解約(解雇と自己都合退職)


@原則として、有期雇用契約を中途で解約することは出来ません。従って、止むを得ない事情がない限り、使用者、労働者とも自由に契約を解約することは出来ません。すなわち、原則として、使用者は解雇、労働者は自己都合退職をすることが出来ません。


A「やむを得ない事由がある場合」は解約することが出来ますが、労働者、使用者どちらかに過失があるときは損害賠償責任が生じます。(民法628条)


B使用者からの解約(解雇)には、少なくとも30日前の予告(又は、解雇予告手当の支払)が必要です。さらに、やむをえない事由による解雇でも、民法628条により、損害賠償として、残存契約期間の賃金相当額を支払わなければならない場合もあります。


Cやむを得ない理由で労働者から解約せざるを得ない場合(自己都合退職)は、使用者に納得のいく説明をしなければなりません。その理由よっては、労働者の退職により使用者が被った損害に対して、民法628条により、損害賠償を求められることもあります。


D平成16年1月以降は、1年を超える労働契約期間で契約した労働者は、当分の間、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職(中途解約)することができます。



【参考・労働契約法第17条】


使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することが出来ない。

2.使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


(5)パートタイマーの労働条件


@労働契約を締結する際に次の労働条件を「労働条件通知書」(雇入通知書)で交付するか、労働契約書(雇用契約書)を交わします。


  イ 労働契約の期間

  ロ 就業の場所

  ハ 従事すべき業務

  二 始業及び終業の時刻

  ホ 所定労働時間を越える労働の有無

  ヘ 休憩時間、休日、休暇

  チ 賃金の額



また、次の事項は「パートタイマー就業規則」により本人に交付します。(「パートタイマー就業規則」を交付しない場合は、イ〜ホまでは「労働条件通知書」等で交付します。)

  イ 賃金の計算、支払いの方法、賃金の締切り、支払いの時期

  ロ 退職(解雇の事由を含む)

  ハ 労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換

  二 昇給の有無

  ホ 退職手当の有無、賞与の有無

  ヘ 所定労働日以外の日の労働の有無

  ト 所定労働時間を越えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度

  チ 安全及び衛生

  リ 教育訓練

  ヌ 休職


※平成20年4月以降、パートタイム労働法の1部改正に伴い採用時に次の条件が義務付けられました

昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」を文書交付等で明示すること。

この規定に違反すると10万円以下の過料に処せられますのでご注意下さい。



A雇い止めつき契約


期間の定めのある労働契約を何回か繰り返したあと、何度目かの契約更新時に、今回の契約をもって最終の契約更新とし、次回以降は契約更新を行わない旨明記して契約を締結する場合があります。これを「雇止めつきの契約」といいます。この場合、労働契約は、最終の契約期間が満了すれば自動的に解除されます。


パートタイマー等と「有期雇用契約」を締結する場合、契約更新の都度漫然と契約更新をすることは、トラブルの原因となります。今回で契約を終了したい場合はその旨をはっきり告げることが必要です。また、契約を更新する場合は、その基準について説明しておくことが必要です。


B年次有給休暇


事業主は、雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したパートタイマーより請求があれば、年次有給休暇を労働基準法に従い下記の通り与えなければなりません。

週所定労働時間 週所定労働日数 年間労働日数 勤続年数
6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月
  30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間未満 5日以上 217日〜
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日


C休日


パートタイマーに対しても1日の勤務時間の長短に関わらず、「毎週少なくとも1回の休日」又は「4週間を通じて4日以上の休日」を与えなければなりません。


但し、例えば、1週間の勤務日数が4日の場合には残りの3日は労働義務のない日ですので、改めて休日を与える必要はありません。


D割増賃金


事業主は、パートタイマーの1日8時間を超える労働時間、1週間40時間(注)を超える労働時間、深夜(午後10時以降翌日午前5時まで)の労働時間及び休日労働時間については、法定の割増賃金を支払わなければなりません。


時間外・休日労働を行うためには、36協定の締結と届出、パートタイマー就業規則に時間外・休日労働を行うことがある旨の規定及び労働契約締結時に所定労働時間超える労働有りと規定しておくことが必要です。


なお、所定労働時間を超える労働であっても1日8時間を超える労働、1週40時間を超える労働、法定休日労働でなければ、割増賃金を払う必要はありません。


日曜日・休日に出勤すること=休日労働ではありません。曜日に関わらず、週1日の休日が与えられない場合に、はじめて休日労働が発生することとなり、3割5分の割増賃金が必要となります。



(注)常時10人未満の労働者を使用する商業・映画演劇業(映画の製作を除く)・保健衛生業・接客娯楽業の場合、1週44時間


E休憩時間


事業主は、パートタイマーの1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。


パートタイマーから連続7時間働きたいという希望があっても、6時間を超える労働に対しては、労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を与えなければなりません。休憩時間は疲労の蓄積による労働災害を防ぐ意味から設けられており、法定通りの休憩時間(無給で良い)を与えなければなりません。


F妊娠中及び出産後における措置


事業主は、妊娠中および出産後1年以内のパートタイマー(妊産婦といいます)に対し、労働基準法等に基づき、次の措置を講じなければなりません。


  1.産前及び産後の休業の措置

  2.生後満1歳未満の子を養育する女性パートタイマーの育児時間

  3.妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換しなければなりません。

  4.妊産婦を危険有害業務に就かせてはなりません。

  5.妊産婦が請求した場合には法定時間外労働、法定休日労働及び深夜業に従事させてはなりません。

  6.母性健康管理のための休業等



上記の措置を実施した場合、パートタイマーの不就業に対しては、賃金を支払う義務まではありません。


G育児休業の取得


パートタイマーは、原則として、育児休業を取得することが出来ません。但し、申し出時点において、次の要件をすべて満たすパートタイマーに限り、育児休業を取得することが出来ます。


●入社1年以上であること。

●子が1歳に達する日を超えて雇用関係が継続することが見込まれること。

●子が1歳に達する日から1年を経過する日まで労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。


H介護休業の取得


パートタイマーは、原則として、介護休業を取得することが出来ません。但し、申し出時点において、次の要件をすべて満たすパートタイマーに限り、介護休業を取得することが出来ます。


●入社1年以上であること。

●介護休業開始予定日から93日を経過する日(93日経過日)を越えて雇用関係が継続することが見込まれること。

●93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。



I育児・介護休業のための勤務時間の短縮等の措置


3歳未満の子供を養育するパートタイマーが、就業しながら子供を養育することを容易にするため、勤務時間の短縮等の措置を講じなければなりません。また、要介護状態にある対象家族を介護するパートタイマーに対しては、勤務時間の短縮等の措置を講じなければなりません。介護休業及び介護のための勤務時間の短縮等の措置を合算し、通算して93日が限度となります。


この場合も、パートタイマーの不就業に対しては、賃金を支払う義務まではありません。



J育児・介護等に関する深夜業の制限


小学校就学始期に達するまでの子を養育するパートタイマー又は要介護状態にある対象家族を介護するパートタイマーが、その子を養育するため又はその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、原則として、午後10時から午前5時までの間において労働させてはなりません。


K育児・介護等に関する時間外労働の制限


小学校就学始期に達するまでの子を養育するパートタイマー又は要介護状態にある対象家族を介護するパートタイマーが、その子を養育するため又はその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、原則として、1ヵ月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。


L健康診断


事業主は、パートタイマーであっても、次の@からBまでのいずれかに該当し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である時は、雇入れ時と1年に1回(有害業務に従事している者は6ヶ月に1回)、医師による健康診断を受けさせなければなりません。


  @雇用期間の定めのない者

  A雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上使用される予定の者(注)

  B雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上引き続き使用されている者(注)


  (注)有害業務等特定業務に従事する者は1年を6ヶ月と読み替えます。



M給与形態


時間給か日給制度が普通です。最低賃金を下回らないように注意して下さい。


N賞与・退職金


賞与は、普通支払われません。業績の良い会社、パートタイマーが正社員と同様の仕事をしている場合等で、賞与が支払われる場合もあります。勤続年数の長いパート社員に寸志ととして支払う場合もあります。


パートタイマーで正社員と同一視すべき者を除き、退職金が支払われることはあり得ません。なぜなら、退職金制度は長期雇用に対するインセンティブだからです。



(6)パートタイマー等の社会保険加入条件・社会保険料の納入


パートタイマー等の社会保険加入条件はこちらをご覧下さい。


事業主の社会保険料納入義務は次の通りです。


@労災保険に関しては、パートタイマー全員分の保険料納入義務があります。

A雇用保険に関しては、適用対象者分の保険料をパートタイマー負担分も含めて納入義務があります。

B社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)に関しては、適用対象者分の保険料をパートタイマー負担分も含めて納入義務があります。


(7)短時間雇用管理者の選任


事業主は、短時間労働者を常時10人以上雇用する事業所ごとに短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理する短時間雇用管理者を選任するように努める必要があります。(努力義務)


短時間雇用管理者は、短時間労働者から労働条件に関して相談に応じることにより、事前にトラブルを回避することが出来ます。また、その選任を都道府県労働局長に届け出ることにより、都道府県労働局より、短時間労働者雇用管理改善に関する情報の提供や、各種セミナーの開催案内の提供を受けることが出来ます。





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