契約社員の労務管理

契約社員の採用時には、必ず「契約社員雇用契約書」を締結しましょう。
契約社員就業規則を作成し、契約社員の統一的な労務管理を行いましょう。


(1)契約社員とは


契約社員とは、特定の仕事を担当させるために期間を定めて雇用する場合や高度な技術や技能を持ち専門性の高い仕事をする人を期間を定めて雇用する場合の社員のことを言います。また。定年退職者を嘱託として雇用する場合も1年契約の契約社員として、1年ごとに契約を更新する形が多いようです。


契約社員の労働日数、労働時間等は通常の労働者と同じことが多いですが、通常の労働者より短い場合もあります。



(2)契約社員の契約期間


・契約社員の契約期間は、1年以内の契約を反復継続する場合と仕事の完成まで一定の契約期間を定めて契約する場合に分かれます。


・平成16年1月の労働基準法の改正で原則1年以内の契約期間を原則3年以内に延長することが可能となりました。


@通常の労働者とは、3年以内の労働契約期間を設定することが可能です。


A専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者とは、5年以内の労働契約期間を設定することが可能です。


B満60歳以上の労働者とは5年以内の労働契約期間を設定することが可能です。


・下記(4)の通り、有期雇用契約を会社側から止むを得ない事情のため中途解約(解雇)すると、損害賠償請求(残りの契約期間の賃金相当額)を求められる可能性がありますので、契約期間は1年間にして、必要があれば更新する形がリスク管理上の望ましいと考えられます。


(3)契約社員の適用法令と労働条件


契約社員は、労働日数、労働時間に係らす、労働基準法上の「労働者」に該当しますので、労働基準法上の保護規定が適用されます。労働基準法以外にも労働安全衛生法、最低賃金法、労災保険法等が適用されます。


さらに、契約社員の勤務時間・労働日数が通常の社員より短い場合は、パートタイム労働法が適用されます。パートタイム労働法に関しては、こちらをご覧下さい。


また、契約社員の勤務時間・労働日数が通常の社員と同じ場合は、パートタイム労働法が適用されないため、「有期契約労働者の雇用の管理の改善に関するガイドライン」が定められています。


契約社員は一般の労働者(期間の定めのない労働者)とは、異なる訳ですから、上記法令の強行規定に反することは出来ませんが、任意に規定することが出来る労働条件については、「就業規則」「労働契約」できちんと定めておくことが、後のトラブルを避けるための基本です。


「就業規則」についても契約社員就業規則を正社員用の「就業規則」と別個に定めておいた方が良いでしょう。別に定めていないと正社員用の「就業規則」が適用となり、トラブルの原因となります。例えば、契約社員には退職金を払うつもりがなくても、正社員の「就業規則」しかなく、退職金の支払いに関しては契約社員を除く旨の規定がなければ、契約社員にも退職金を支払う義務が発生します。


(4)契約期間の中途解約(解雇と自己都合退職)


@原則として、有期雇用契約を中途で解約することは出来ません。従って、止むを得ない事情がない限り、使用者、労働者とも自由に契約を解約することは出来ません。すなわち、原則として、使用者は解雇、労働者は自己都合退職をすることが出来ません。


A「やむを得ない事由がある場合」は解約することが出来ますが、労働者、使用者どちらかに過失があるときは相手方への損害賠償責任が生じます。(民法628条)


B使用者からの解約解雇には、少なくとも30日前の予告(又は、解雇予告手当の支払)が必要です。さらに、やむをえない事由による解雇でも、民法628条により、損害賠償として、残存契約期間の賃金相当額を支払わなければならない場合もあります。


Cやむを得ない理由で労働者から解約せざるを得ない場合自己都合退職は、使用者に納得のいく説明をしなければなりません。その理由よっては、労働者の退職により使用者が被った損害に対して、民法628条により、損害賠償を求められることもあります。なお、平成16年1月以降は、1年を超える労働契約期間で契約した労働者は、当分の間、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職(中途解約)することができます。


(5)契約社員の労働条件


・労働基準法及び同法施行規則では、雇用契約を締結する際に労働条件の明示事項として次の事項を定めています。この明示事項を文書で明示しない場合は、30万円以下の罰金に処せられます。


(1)必ず明示しなければならない事項


@ 労働契約の期間

A 就業の場所、従事すべき業務

B 始業、終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日及び労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

C 賃金の決定、計算、支払いの方法及び賃金の締め切り、支払いの時期

D 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

E 昇給に関する事項


(2)定めをした場合に明示しなければならない事項


F 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算、支払方法及び支払時期

G 臨時に支払われる賃金、賞与及び最低賃金に関する事項

H 労働者に負担させる食費、作業用品等に関する事項

I 安全、衛生

J 災害補償、業務外の傷病扶助

K 表彰、制裁

L 休職



※これらの労働条件に関しては、文書で明示するだけではなく、「契約社員労働契約書」、「契約社員就業規則」等で文書化し、採用時に交付することが後のトラブルを避けるポイントとなります。


A雇い止めつき契約


期間の定めのある労働契約を何回か繰り返したあと、何度目かの契約更新時に、今回の契約をもって最終の契約更新とし、次回以降は契約更新を行わない旨明記して契約を締結する場合があります。これを「雇止めつきの契約」といいます。この場合、労働契約は、最終の契約期間が満了すれば自動的に解除されます。


契約社員等と「有期雇用契約」を締結する場合、契約更新の都度漫然と契約更新をすることは、トラブルの原因となります。今回で契約を終了したい場合はその旨をはっきり告げることが必要です。また、契約を更新する場合は、その基準について説明しておくことが必要です。


B年次有給休暇


(1)通常の労働者と同様の労働日数、労働時間の契約社員の場合


事業主は、雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した契約社員より請求があれば、年次有給休暇を労働基準法に従い、通常の社員と同様所定の日数与えなければなりません。


(2)通常の労働者より労働日数、労働時間が短い契約社員の場合


事業主は、雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した契約社員より請求があれば、年次有給休暇を労働基準法に従い下記の通り与えなければなりません。


週所定労働時間 週所定労働日数 年間労働日数 勤続年数
6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月
  30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間未満 5日以上 217日〜
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日


C休日


事業主は、契約社員に対しても「毎週少なくとも1回の休日」又は「4週間を通じて4日以上の休日」を与えなければなりません。


D割増賃金


事業主は、契約社員の1日8時間を超える労働時間、1週間40時間(注)を越える労働時間、深夜(午後10時以降翌日午前5時まで)の労働時間及び休日労働時間については、法定の割増賃金を支払わなければなりません。


時間外・休日労働を行うためには、36協定の締結と届出、契約社員就業規則及び契約社員労働契約書に時間外・休日労働を行うことがある旨規定しておくことが必要です。


なお、所定労働時間を超える労働であっても1日8時間を超える労働、1週40時間を超える労働、法定休日労働でなければ、割増賃金を払う必要はありません。


日曜日・休日に出勤すること=休日労働ではありません。曜日に関わらず、週1日の休日が与えられない場合に、はじめて休日労働が発生することとなり、3割5分の割増賃金が必要となります。



(注)常時10人未満の労働者を使用する商業・映画演劇業(映画の製作を除く)・保健衛生業・接客娯楽業の場合、1週44時間


E休憩時間


事業主は、契約社員の1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。


契約社員から連続7時間働きたいという希望があっても、6時間を超える労働に対しては、労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を与えなければなりません。休憩時間は疲労の蓄積による労働災害を防ぐ意味から設けられており、法定通りの休憩時間(無給でも良い)を与えなければなりません。


F妊娠中及び出産後における措置


事業主は、妊娠中および出産後1年以内の契約社員(妊産婦といいます)に対し、労働基準法等に基づき、次の措置を講じなければなりません。


  1.産前及び産後の休業の措置

  2.生後満1歳未満の子を養育する女性契約社員の育児時間

  3.妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換しなければなりません。

  4.妊産婦を危険有害業務に就かせてはなりません。

  5.妊産婦が請求した場合には法定時間外労働、法定休日労働及び深夜業に従事させてはなりません。

  6.母性健康管理のための休業等



上記の措置を実施した場合、契約社員の不就業に対しては、賃金を支払う義務まではありません。


G育児休業の取得


契約社員は、原則として、育児休業を取得することが出来ません。但し、申し出時点において、次の要件をすべて満たす契約社員に限り、育児休業を取得することが出来ます。


●入社1年以上であること。

●子が1歳に達する日を超えて雇用関係が継続することが見込まれること。

●子が1歳に達する日から1年を経過する日まで労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。



H介護休業の取得


契約社員は、原則として、介護休業を取得することが出来ません。但し、申し出時点において、次の要件をすべて満たす契約社員に限り、介護休業を取得することが出来ます。


●入社1年以上であること。

●介護休業開始予定日から93日を経過する日(93日経過日)を越えて雇用関係が継続することが見込まれること。

●93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。


I育児・介護休業のための勤務時間の短縮等の措置


3歳未満の子供を養育する契約社員が、就業しながら子供を養育することを容易にするため、勤務時間の短縮等の措置を講じなければなりません。また、要介護状態にある対象家族を介護する契約社員に対しては、勤務時間の短縮等の措置を講じなければなりません。介護休業及び介護のための勤務時間の短縮等の措置を合算し、通算して93日が限度となります。


この場合も、契約社員の不就業に対しては、賃金を支払う義務まではありません。



J育児・介護等に関する深夜業の制限


小学校就学始期に達するまでの子を養育する契約社員又は要介護状態にある対象家族を介護する契約社員が、その子を養育するため又はその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、原則として、午後10時から午前5時までの間において労働させてはなりません。


K育児・介護等に関する時間外労働の制限


小学校就学始期に達するまでの子を養育する契約社員又は要介護状態にある対象家族を介護する契約社員が、その子を養育するため又はその対象家族を介護するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、原則として、1ヵ月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。


L健康診断


(1)通常の労働者と同様の労働日数、労働時間の契約社員の場合


事業主は、契約社員に対し通常の社員と同様、労働安全衛生法に基づき、健康診断を実施しなければなりません。


(2)通常の労働者より労働日数、労働時間が短い契約社員の場合


事業主は、契約社員であっても、次の@からBまでのいずれかに該当し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である時は、雇入れ時と1年に1回(有害業務に従事している者は6ヶ月に1回)、医師による健康診断を受けさせなければなりません。

  @雇用期間の定めのない者

  A雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上使用される予定の者(注)

  B雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上引き続き使用されている者(注)

  (注)有害業務等特定業務に従事する者は1年を6ヶ月と読み替えます。



M給与形態


(1)通常の労働者と同様の労働日数、労働時間の契約社員の場合


日給月給制や年棒制が多いようです。


(2)通常の労働者より労働日数、労働時間が短い契約社員の場合


時間給か日給制が普通です。最低賃金を下回らないように注意して下さい。


N賞与・退職金


雇用期間が1年以上の契約社員には賞与(通常の社員と同水準ではない)を支払うこともあります。各会社の方針により異なります。勤続年数の長い契約社員に寸志ととして支払う場合もあります。契約社員には、普通退職金は支払いません。なぜなら、退職金制度は長期雇用に対するインセンティブだからです


(6)契約社員と社会保険の適用・社会保険料の負担


(1)通常の労働者と同様の労働日数、労働時間の契約社員の場合


通常の労働者と同じ扱いで、社会保険の適用があり、社会保険料も通常の労働者と同額の事業主負担があります。具体的な社会保険料の事業主負担分は社会保険料の計算方法をご覧下さい。


事業主の社会保険料納入義務は次の通りです。


@労災保険に関しては、契約社員全員の保険料納入義務があります。

A雇用保険に関しては、契約社員全員に対し、契約社員負担分を含め保険料納入義務があります。

B社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)に関しては、契約社員全員に対し、契約社員負担分を含め保険料納入義務があります。


(2)通常の労働者より労働日数、労働時間が短い契約社員の場合


パート社員等と社会保険の適用をご覧下さい。


事業主の社会保険料納入義務は次の通りです。


@労災保険に関しては、契約社員全員分の保険料納入義務があります。

A雇用保険に関しては、適用対象者分の保険料を契約社員負担分も含めて納入義務があります。

B社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)に関しては、適用対象者分の保険料を契約社員負担分も含めて納入義務があります。





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