会計検査院社会保険事業所調査

会計検査院の事業所調査で、社会保険未加入者が
発見されれば、最大2年間社会保険料(事業主負担分
及び従業員負担分)が遡及して徴収されます。


会計検査院は社会保険事務所が社会保険強制適用事業所を正しく指導しているかどうか(未加入者がいないかどううか等)を確認するため、直接強制適用事業所を調査することがあります。


この調査は大変厳しいもので、未加入者が発見された場合、加入の強制と過去2年間に遡って社会保険料の支払を命ぜられます。さらに未加入者が高齢者(60歳以上)で特別支給の老齢厚生年金を受給していた場合は、不正受給と判断されその返還が求めれます


企業はこれらの支払を求められますので、企業存続の危機を向かえるかも知れません。


例えば、年収200万円の未加入者がいると社会保険料の事業主負担分及び従業員負担分を合計して(社会保険料の納入義務は事業主にあります)、約50万円を1年当たり支払わなければならないので、2年間で約100万円となります。この様な社員が10名発見されたとすると約1,000万円を支払わなければなりません。


さらに、この中に高齢者がいて、特別支給の老齢厚生年金を月額12万円2年間受給しており、その全額を返還しなければならないとすると288万円の支払が必要です。このような人が5人いるとすると1,440万円を社員に支払わなければなりません。社会保険の未納分と合計すると約2,440万円の支払となります。これに、支払うまで延滞金14.6%がかかってきます。


中小企業の場合は、この金額を負担することが出来るでしょうか。会計検査院は、この金額の減額は認めてくれません。このように会計検査院の調査は企業にとって非常に厳しいものです。



【事例】

● 突然のお手紙

地方都市のA社は運送業を営んでいる。従業員は117人で地元の業界では指折りの存在だった。そのA社にお手紙が来たのは平成13年2月のことだった。その封書はA4サイズの紙が2枚入っていた。その文面は「会計検査院の実地調査に伴う健康保険及び厚生年金保険関係の調査について」という表題で「このたび○○社会保険事務所が会計検査院の実地調査を受けることになり、貴事業所を調査確認させていただくことになりました」と書いてあった。


調査の日時は約1ヵ月後の3月だった。持参する帳簿類として(1)労働者名簿、雇用契約書(2)就業規則、労働協約、賃金規程(3)被保険者資格取得届、被保険者資格喪失届、被保険者報酬月額算定基礎届、被保険者報酬月額変更届、賞与支払届(4)賃金台帳、源泉徴収簿(過去2年分)(5)出勤簿又はタイムカード(過去2年分)が挙げられていた。そして調査対象者として「貴事業所に勤務されている方全員(事業主、パートタイマー、外国人就労者を含む)としながら「特に以下の方は調査対象となります」として具体的な従業員名が3名載っていた。いずれもA社が雇用している高齢の従業員ばかりだった


労務を担当していた総務係長のB子さんは「また調査か」と抵抗を感じた。ただでさえ多忙な3月決算の時期に、これだけ多くの帳簿をそろえていくのは面倒だというのが実感だった。ただ、社会保険事務所の調査自体は何度も受けてきたので、今度も何とか乗り越えられるという自信があった。だから、上司の総務部長にも「社会保険事務所の調査が入った」とだけ報告した。


● 調査の日

調査の日は3月初旬で、まだ寒かった。調査は午前10時からで「約20分間で終わる予定」だと書いてあった。B子さんが社会保険事務所に着くと、社会保険事務所の職員が入り口で立って待っていた。そして「A社さんですね」と声をかけてきた。B子さんが「はい」と答えると、社会保険事務所の職員は緊張した面持ちで「検査官から聞かれたことだけを答えて下さいよ」と忠告してきた。


B子さんは調査の部屋に入った。正面に会計検査院の調査官らしき人物が座っていた。その横に社会保険事務所の職員も座っていた。B子さんが着席するなり、会計検査院の調査官は「正規従業員の1日あたりの所定労働時間は何時間ですか?」と聞いてきた。B子さんは「7時間15分です」と答えた。検査官は「賃金台帳と出勤簿を過去2年分出して下さい」と言ったので、B子さんはそれに従った。検査官は賃金台帳を調べながら随所にフセンを貼り出した。そのフセンの数は増え始め、数十枚になった。検査官は厳しい表情で作業を続けた。それから検査官は「従業員の○○さんの分はどこですか?」と質問してきた。それは会社に来た手紙の中に氏名が記載されていた高齢者だった。



検査官の質問は、この高齢者に関することに集中してきた。「出勤簿は」「雇用契約書は」などと突っ込んできた。そして検査官は「貴社のこの高齢者は常用的使用関係にある。本来なら社会保険に加入するべき立場だった。時効である2年間さかのぼって社会保険の資格取得をしてほしい」と言い放った。「もちろん不正に受給してきた特別支給の老齢厚生年金を過去にさかのぼって返還していただく」とも言った。


B子さんの顔は真っ青になった。B子さんは社会保険料の時効は2年間で、万一の場合はさかのぼって徴収されることがあるとは聞いていた。しかし、過去の社会保険事務所の調査ではそこまで処分されたことがなかったので、まさか本当に徴収されるとは思ってもみなかった。


調査は20分間のはずだったが、実際には2時間にも及んだ。従業員の中で問題だとされたのは12人だった。それはいずれも60歳過ぎの高齢者のパートタイマーだった。その12人の社会保険料は過去2年分で合計790万円に及んだ。


B子さんは粘った。「これからは気を付けますが今度だけは許して下さい」「会社に帰って社長に相談させて下さい」。だが、検査官は「ダメだ」と冷たく言い放った。「いまここで資格取得を訂正するための届出を出してもらう」と命令した。


B子さんは足取りも重く会社に帰り、調査結果の内容をスグ会社に報告した。本日に調査があることも知らなかった社長は驚き、そして「そんなバカな」と怒り出した。この情報は瞬く間に社内に流れた。年金不正受給だと指摘された高齢者のパートタイマーの人たちは「エッ、年金をさかのぼって返還するのですか?今後の年金は3分の1ずつカットされるのですか?」と青ざめた。


【事例から学ぶべきこと】

このように会計検査院の事業所調査は大変厳しいものです。特に、パートタイマー、高齢者に関しては、雇用契約書上は社会保険の加入者の条件を満たしていなくても、恒常的に残業していると常用的使用関係にあり、社会保険の加入者と判断され、社会保険料をさかのぼって徴収されることになります。

管理者は、パートタイマー・アルバイト・高齢者・契約社員・嘱託で社会保険の加入者でない者の労働時間については十分な管理が必要です。



パートタイマー等と社会保険の関係はこちらを参照して下さい。





                                        大阪労務管理事務所トップに戻る


業務案内障害年金申請代行適格年金の移行退職金制度の見直し401kの導入支援
就業規則の作成・見直し審査請求・再審査請求代理あっせん代理問題社員対応
コンピテンシー高齢者の賃金設計
小規模企業の健康診断最新ニュースセミナーの開催
職場のメンタルヘルス助成金の申請代行パート社員労務管理キャリアコンサルティング
賃金制度年金の実務
給与計算の実務Eメール顧問貴社のメリット報酬規定
賞与計算の実務解雇雇止め安全配慮義務労災発生時の対応労務管理なんでも相談
社会保険料の計算方法傷病手当金合同労組契約社員の労務管理派遣社員の労務管理