実務の相談

長年勤務の高齢パート社員を解雇するときの手続きは?

【質問】

営業事務を任せているパート社員がいます。15年のキャリアをもつ彼女は弊社にずいぶん貢献してくれましたが、なにぶんにも60歳を超えており、若い営業担当者とのコミュニケーションがとりにくくなりました。また、昇給を重ねてきたため、時間給も地域の相場を超える額となっています。そこで、そろそろ引退をしてもらいたいのですが、本人はまだまだ働く気でいるようです。
彼女に辞めてもらうには、どのような手続きが必要となるでしょうか。なお、当社にはパートの定年について規程はありません。                             (新潟県、Y生)

相談に答える人 社会保険労務士 三嶋 道明

合理性を欠く解雇は権利の濫用で無効 長年の貢献に対し、誠意ある対応を

長年勤務してくれたパート社員を単に高齢等を理由とする解雇は、合理性を欠き、解雇権の濫用とされ無効となります。

パート社員とは、通常3ヵ月、6ヶ月又は1年等と雇用期間を限定し有期雇用契約を締結します。有期雇用契約ですから、契約期間の満了をもって、雇用契約は終了するのが、原則です。但し、「有期雇用契約」を何回か更新し、長年にわたり、雇用契約を継続していると、その雇用契約は「期間の定めのない雇用契約」とみなされ、パート社員の解雇に関しても、「期間の定めのない社員」と見做され、その解雇に関しては、「期間の定めのない社員」とほぼ同様の規制がかかる場合があります。

「解雇」に関しては、平成16年1月1日に労働基準法で重要な改正が行われています。すなわち、同法の18条の2において、次の条文が追加されました。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

この条文は、日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日判決)以来確立されいた「解雇権濫用の法理」を明文化したものです。「解雇権濫用の法理」は、従来判例上確立されていたものですが、このことを労働基準法の条文として明記することにより、使用者による安易な解雇を防止する効果が生ずるものと期待されています。

解雇は、使用者による一方的な意思表示による労働契約の解約のことを言いますが、@普通解雇A整理解雇B懲戒解雇の3種類に分類することが出来ます。普通解雇とは就業規則に定めのある解雇事由に相当する事実があって行われる解雇をいい本件相談の場合は、普通解雇に当たります。

さて、平成16年1月1日の労働基準法の改正で、前記の「解雇権濫用の法理」の明文化とともに「解雇の事由」が就業規則の絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)として、規定されました。多くの企業では、既に就業規則において、「解雇の事由」を明文化されておられる思いますが、まだ就業規則に明文化されておられない企業や就業規則そのものを作成されておられない企業におかれては、解雇する労働者が出てきた場合に備えて、必ず就業規則への記載、就業規則の作成を行って下さい。

パート社員の労働条件は、通常の社員と異なることが多いので別規程として作成されることをお勧めします。ご相談者の場合パート社員の定年を定めていないとのことですが、定年も退職事由として規定しておくことが必要と考えられます。

パート社員就業規則の届出に際し、事業場の社員の過半数を代表するものの意見書の提出が義務付けられていますが、パート社員の労働条件に関することでもあり、パート社員の意見も聴いておいた方が良いでしょう。

定年の導入により、不利益になるパート社員が出る場合には、本人と十分話し合うことが必要です。ご相談の対象となっている高齢のパート社員の方も60歳を超えておられるとのことから、あとで述べる通りご本人と十分話し合う必要があります。

さて、この高齢のパート社員の解雇は、普通解雇と考えられますがを有効と判断されるための条件を考えてみましょう。

@    就業規則に定められた解雇事由に相当する解雇であるか。

普通解雇事由として、若い営業担当者とコミュニケーションがとりにくくなっていることや時間給が地域の相場を越える水準になっていることを挙げることは、困難です。

A    解雇が、客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるか。

高齢であることや上記@に記載した理由だけでは、この条件を満たすことは出来ないと判断されます。

B    解雇回避努力を講じたか。

人とコミュニケーションをとる機会の少ない業務への配置転換等の措置を講じていません。

@、A、Bの条件より、この解雇を有効とすることは困難です。この状態で、解雇手続きをとっても、本人から解雇無効の訴えを提起され、時間、労力、弁護士費用がかかり、最終的に敗訴する可能性が高いと考えられます。

では、この高齢のパート社員に引退してもらうことは出来ないのでしょうか。そんなことはありません。以下の対応をとれば彼女に引退してもらうことは十分可能です。

ます、経営者が本人と直接会い長年の会社に対する貢献を感謝するとともに会社の方針として若返りを図る必要性を誠意をもって説明し、後進に道を譲って欲しい旨の申出をします。本人にも事情があるので、本人から話にも十分耳を傾け、その場で直ぐに結論を出すのではなく、1週間程度考慮して返事をもらうのが良いでしょう。

なお、長年の会社に対する貢献に配慮して特別に退職金として6ヶ月分程度の退職金を支給することも申し出た方が本人の了解を得やすいでしょう。欧米では裁判で解雇が無効とされた場合、金銭解決が図られますが、その相場が、原則として賃金の1年分となっています。

このように、解雇という経営者の一方的な意思表示で本人を辞めさせることは、本人の反発を招き、話をこじらせ、結局高い費用負担を招く危険性がありますが、本人が納得した上で退職すれば、費用負担も少なくて済み、他の従業員も自分たちを大切に思ってくれる会社だという風に考え、モチベーションを高める副次的な効果をあげることが出来ます。

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