派遣社員の労務管理
派遣先が行う必要がある労務管理に関し説明します。派遣契約は、原則として臨時的・
一時的な労働者不足を補うことを前提としているので、契約期間が長期化する場合は、
雇用契約に移行することを努力義務としています。(専門26業務を除く)
(1)派遣契約期間
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律」(以後労働者派遣法と呼びます。)が、平成16年3月に改正され、派遣契約期間は次のようになりました。
@専門26業務→労働者派遣期間の制限なし。1回の契約期間の上限は3年。それ以上継続するときは契約を更新。
A派遣契約禁止業務以外の業務→最長3年間(派遣可能期間を設定する)
B物の製造業務→最長3年間。
C産前産後、育児介護休業の代替の派遣契約→派遣期間の制限なし。(物の製造業務への派遣を含む。)
(2)派遣契約が禁止されている業務
次の業務は、派遣契約が禁止されています。
@港湾運送業務
A建設業務
B警備業務
C病院等における医療関連業務(紹介予定派遣による派遣は可能です。)
(3)特定行為の禁止
派遣先が、派遣労働者を受け入れる場合に、履歴書を送付させたり、事前の面接を行うことがあります。これらの行為を特定行為と呼んでいますが、労働者派遣法では禁止されています。
平成16年3月の改正で、紹介予定派遣に限り、特定行為が認められるようになりました。一般の派遣契約は臨時的・一時的なものであるのに対し、紹介予定派遣は、将来正社員として採用される可能性がある点を考慮したものです。
(4)派遣先管理台帳
派遣先は、派遣就業に関し、派遣先管理台帳を作成し、それに派遣労働者ごとに必要事項を記載して、これを3年間保存しなければなりません。また、当該記載した事項を派遣元事業主に通知しなければなりません。
(5)派遣先責任者
派遣先は、派遣先管理台帳に関する事項、苦情処理、派遣元との連絡調整などにあたらせるため、派遣先責任者を選任しなければなりません。
(6)労働基準法の適用
@派遣先は、派遣元とともに均等待遇の原則(労基法3条)、強制労働の禁止(労基法5条)、徒弟の弊害排除(労基法69条)の規制を受けます。
A労働時間、休憩、休日等の枠組みの設定は、派遣元の使用者が責任を負いますが、具体的な適用は、派遣先の使用者が責任を負います。
B年次有給休暇の規定の適用は、原則通り派遣元事業主のみとされています。
C時間外労働・休日労働に関しては、派遣元の36協定で定めた時間内であれば、労働を命ずることが出来る。
(7)労働安全衛生法の適用と派遣先・派遣元の安全配慮義務
原則として、派遣先の事業者が措置義務を負います。但し、一般健康診断等の雇用期間中継続的に行うべき事項は派遣元の事業者が措置義務を負います。
特殊健康診断は、派遣先が実施する義務があり、特殊健康診断を実施した場合は、その結果を記載した書面を作成し、派遣元に送付しなければなりません。なお、特殊健康診断の受診時間は、労働時間でなければならないと解されています。
派遣先は、派遣労働者のために自己の設備、器具を提供し、派遣労働者はこれらの設備、器具を用い、派遣先の指揮命令下のもと労務を提供するので、これらに関しては派遣先が安全配慮義務を負います。
また、派遣元は派遣労働者の一般的な健康診断実施の義務があるので、これに関しては、派遣元が安全配慮義務を負います。
(8)男女雇用機会均等法の適用
職場における性的な言動に起因する問題(セクハラ)に関する雇用管理上の配慮、A妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置は、派遣先の事業主にも適用があります。
(9)適正な就業の確保
@派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければなりません。
A派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所、給食施設等の施設であつて現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるように努めなければなりません。
(10)契約期間の中途解約(解雇と自己都合退職)
@原則として、有期雇用契約を中途で解約することは出来ません。従って、止むを得ない事情がない限り、派遣元、派遣労働者とも自由に契約を解約することは出来ません。すなわち、原則として、派遣元は解雇、派遣労働者は自己都合退職をすることが出来ません。
A「やむを得ない事由がある場合」は解約することが出来ますが、派遣労働者、派遣元どちらかに過失があるときは損害賠償責任が生じます。(民法628条)
B派遣元からの解約(解雇)には、少なくとも30日前の予告(又は、解雇予告手当の支払)が必要です。さらに、やむをえない事由による解雇でも、民法628条により、損害賠償として、残存契約期間の賃金相当額の支払わなければならない場合もあります。
C派遣先の都合により派遣が中止になった場合も派遣先、派遣元が協力し、次の派遣先を探さなければなりません。その間、派遣元は、派遣労働者に休業手当を支払う必要があります。
Dやむを得ない理由で派遣労働者から解約せざるを得ない場合(自己都合退職)は、派遣元に納得のいく説明をしなければなりません。その理由よっては、派遣労働者の退職により派遣元が被った損害に対して、民法628条により、損害賠償を求められることもあります。
(11)雇用契約申込み義務・雇入れ努力義務が生じる場合
(1)専門26業務の派遣労働者の場合は、派遣期間の制限がないので、3年を超えて労働者派遣を受け入れることが可能ですが、次の@〜Cの要件を満たす場合は、派遣先に派遣労働者への雇用契約の申込み義務が発生します。
@派遣先が同一の業務について派遣を受けること。
Aその派遣を受けた期間が3年を超えること。
Bその派遣労働者が同一であること。
C3年が経過した日以後労働者を雇入れようとすること。
(2)専門26業務以外の派遣労働者で、派遣可能期間が1年超3年以内の場合、次の要件を満たせば、派遣労働者に雇用契約の申込み義務が発生します。
@派遣先が派遣可能期間につき派遣の役務の提供を受け、派遣元事業主から、以後派遣を行わない旨の通知を受けたこと。
A派遣先があくまで派遣労働者を使用しようとすること。
B派遣労働者が派遣先に雇用されることを希望していること。
(3)専門26業務以外の派遣労働者に関しては、次の要件を満たす場合、雇入れ努力義務が発生します。
@1年以上派遣可能期間以内の期間、派遣の役務の提供を受けた場合。
Aその同一の業務について労働者を雇入れようとする場合。
Bその派遣労働者がその期間ずっと派遣業務に従事していたこと。
Cその派遣労働者が同一の業務に従事するため派遣先に雇用されることを希望することを申し出たこと。
D派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了したこと。
(12)従業員の意見徴収が必要となる場合
専門26業務以外の業務で1年超3年以内の派遣可能期間を設定する場合、派遣先事業所の過半数労働組合、それがなければ過半数代表者に対して、その派遣可能期間を通知して、労働者側の意見を聴く必要があります。派遣先は、この意見に拘束されるわけではなく、自ら判断することは可能です。この意見書は、施行規則では3年間の保存義務が定められています。
派遣先は派遣可能期間を設定したとき、又は、これを変更したときは、速やかに派遣元事業主に対して、その派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければなりません。
(13)派遣契約が終了した場合、次の派遣契約はいつから可能か
専門26業務以外の派遣契約は、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないことになっていますが、派遣契約が終了し、3ヶ月の期間をおけば、再度派遣契約を契約することは可能です。
(14)紹介予定派遣
@紹介予定派遣とは
紹介予定派遣とは、本来、当初は労働者派遣を行い、その終了後に職業紹介を行うという形態のことです。現実には、労働者本人、派遣先企業双方が労働契約の締結を目指し、とりあえず派遣労働者として就労し、労働者はその間に企業が自己に合っているかどうか、派遣先は本人がその企業に適しているかを観察する試用期間として意義があります。
A平成16年3月以降緩和された点
@派遣期間途中の紹介予定派遣への切替が可能となりました。
A派遣期間途中での職業紹介が認められるようになりました。
B履歴書の事前送付、事前面接等の特定行為が認められるようになりました。
B紹介予定派遣の明文化
紹介予定派遣自体は、平成12年12月1日から解禁になりましたが、平成16年3月の改正で明文化され、規制が緩やかになりました。
C紹介予定派遣の期間
紹介予定派遣は、企業の試用期間に近いものですので、その期間は6ヶ月とされています。
D紹介予定派遣と一般の派遣との違い
@紹介予定派遣の派遣期間は6ヶ月を超えてはなりません。
A紹介予定派遣の場合、派遣先の特定行為が禁止されていません。
B派遣元事業主は、派遣労働者を雇入れるに際して紹介予定派遣であることを明示しなければなりません。派遣労働者に紹介予定派遣である旨明示し同意をとることが必要です。
C労働者派遣契約を締結する際、紹介予定派遣であること及びそれに関する事項を定めることが必要です。
D派遣先管理台帳、派遣元管理台帳に紹介予定派遣に関する事項について記載しなければなりません。
(15)平成16年3月の改正による追加事項
@事業者間通知の簡素化
派遣先から派遣元に書面で通知することとされていたものが、ファックスまたは電子メールによる通知が可能となりました。
A派遣先責任者の業務の追加
派遣先の事業所の安全衛生を統括管理する者との連絡調整の業務が派遣先責任者の業務に追加されました。
B安全衛生に関する派遣先の協力
派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者に対する雇入時の安全衛生教育を適切に行えるように派遣先の業務に係る情報を派遣元事業主に提供すること、派遣元事業主から雇入時の安全衛生教育の委託の申入れがある場合にはこれに応じるよう努める等、必要な教育や配慮を行わなければなりません。
C労働者死傷病報告の改正
派遣労働者が労働災害により死亡又は負傷した時は、派遣先事業主は所轄の労働基準監督署に死傷病報告を提出することが必要です。派遣先はその死傷病報告の写しを派遣元事業主に送付しなければなりません。
D派遣労働者の教育訓練・能力開発に関する協力
派遣先は、派遣元事業主が行う教育訓練や派遣労働者の自主的な能力開発について、可能な限り協力をするように努めなくてはなりません。
E労働・社会保険の加入促進
派遣先は、派遣元事業主から労働・社会保険に加入していない派遣労働者に関し適正な理由により加入していない通知を受けた場合には、派遣労働者を労働・社会保険に加入してから派遣するように求めなければなりません。
F派遣労働者の雇用の安定を図る配慮
派遣先は、労働者派遣契約後の締結に際して労働者派遣の期間を定めるに当たっては、可能な限り長く定める等派遣労働者の雇用の安定を図るための配慮をするように努めなければなりません。
G雇用調整により解雇した労働者のポストへの派遣の受入れ
派遣先は、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストに、解雇後3ヶ月以内に派遣を受け入れる場合、必要最小限限度の労働者の期間を定めるとともに、受入れ理由を説明する等適切な措置を講じ、派遣先の労働者の理解が得られるよう努めなければなりません。
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