[COLUMN]

RPG時代

(2003年8月27日更新)
[4]そして近世へ
『ドラゴンクエスト3』は
中世から近世へ移行する時代、
すなわちルネサンス期が描かれていた。

では、その次回作となる
『ドラゴンクエスト4』では、どうなったのか?

もちろん、そこでは、すでに中世は終わっている。
時代は中世ではなく、近世へと移行する。

だから
神様を中心にした時代ではなく、
人間を中心にした時代が、そこでは描かれることになった。

その変化を、プレイヤーに体感させるためにこそ、
このゲームだけは、特殊なスタイルをとることになったのだろう。

このゲームだけが、
5つの章に分割されている理由はそこにある。

中世の価値観に慣れてしまったプレイヤーを、
いつのまにか、次の時代へといざなうためにこそ、
このゲームは、5つの章で構成されることになったと考えていい。


では、それぞれの章を、詳しく分析してみよう。

・第一章:王の部下。王の命令で出発。でも最後は自分の意志で旅立つ
・第二章:王の娘。王の命令に反抗し、冒険に出る。最後に王が消える
・第三章:庶民。自分のために冒険。稼ぐために王を利用することも可
・第四章:庶民。親を殺した相手を追う。その王はニセモノだった
・第五章:家族同然だった村人たちが全滅し、冒険に出る

章が進むたびに、
主人公たちの立場は、だんだん王家から離れていく。
王家は、信頼できないものになっていく。

その一方で、家族の存在が、だんだん強まっていく。
王のためでなく、家族のために冒険するようになっていく。

王家=神様から権威を授けられた=犯すべからざる絶対的なもの
という価値観は、どんどん薄れていく。

かわりに、家族=かけがえのないもの
という価値観が、どんどん強まっているのだ。


ひとつの物語で、世の中の価値観を変えてしまうと、
プレイヤーは混乱する。
だから、5つの章に分割し、主人公を変えていった。

このような手順を踏むことにより
『ドラゴンクエスト』シリーズは、
プレイヤーに違和感を与えることなく、
その世界における価値観を変えることに成功
しているのだ。


かくして、
中世を舞台にした『ドラゴンクエスト』は、完全に終了する。

そして近世を舞台にした『ドラゴンクエスト』の新シリーズが
スタートすることになったのだ。

そこは近世であり、
人々が自分の意志で行動する時代である。
その行動原則は、物語のみならず、
戦闘シーンにも、ちゃんと反映されている。

ゆえに、これ以降の『ドラゴンクエスト』では、
戦闘はAIになっている。

主人公は、絶対的な存在である王様から、
以来を受けた人物ではない。
だから、人々に命令することはできないし、
人々は、それに従う義務もない。

主人公に出来るのは、あくまでも、方針を示すだけである。
それぞれのキャラが、自分の判断で行動するようになったのだ。

(この萌芽は、中世から近世へと移行する時代を描いた
『ドラゴンクエスト3』でも、すでに見て取れる。
主人公の命令に従わない人物は、すでに登場しているのだ。
その職業名こそが「遊び人」である)



これは余談だが、
『4』からは、新しい王様が登場する。

メダル王だ。

この人物は、考えるまでもなく、ただの金持ちに過ぎない。
お池の血筋を引いているわけではない。

だから「王」を名乗っているけれど、
これは「石油王」とか「海運王」とかと同じことであり、
王家の人間ではないのだ。

「王」の権威が、神に授けられたものであった時代には、
このようなネーミングは、絶対に許されない。

しかし『4』の時代には許される。
時代は、すでに近世だからである。

「王」という名の持つ意味は、
この人物の登場により、さらに軽々しいものになった。
そのように感じさせるため、この人物は存在する。


なお、リメイクされた『ドラゴンクエスト3』にも、
小さなメダルは存在する。
だから、それを集めるメダル王も存在する――と思うと、さにあらず。

そこでは、彼は「メダル王」を名乗っていない。
「メダルおじさん」と名乗っている。

『3』は、ルネサンスが舞台だ。
ちょうど中世と近世が切り替わる時期なのだ。

だから一般人は、まだ「王」を名乗れない。
そういう時代の空気があるのである。

だから、彼は「おじさん」を名乗っているのだ。

『ドラゴンクエスト』シリーズの時代考証が
かなり徹底されていることがわかる一例である。


[つづく]

●ゲームの部屋に戻る