俊樹の部屋(?)

俊樹の部屋(第19回)


(98.9.8アップデイト)

1996年5月30日、歴史は始まりました。ついに布川俊樹のホームページがスタートしたのです。このページを立ち上げた4、5月はギターを弾くよりとにかくこのホームページ製作に追われる日々、日夜Macに向かっておりました。この「俊樹の部屋」は毎回僕がたわいもないことをエッセイ的に書き連ねたり、「徹子の部屋」みたいにゲストを呼んで対談をする、みたいなコーナーであります。

ついに9月21日、お待ちかねのCD付き教則本「ジャズ.ギターの金字塔/スタンダード編1」が発売されます。今日はもう僕がお世話になりっぱなしのリットーミュージック.ディレクター、昆真樹(こんまさき)氏を迎えて教則本づくりの裏話をお聞かせいたしましょう。

布川:
こんにちは、昆さん(いきなりだじゃれ)。ようやっと発売ですね。
昆:
いやあもう感慨無量ですよ。
布川:
もうこれはほんとに大変でしたよ。書き始めたのが5月ぐらいでなんだかんだ3ヶ月はかかった。最初は教則部分を書いて、6月の末にレコーディング。その後、自分の演奏をコピーして譜面にしたんだけど、これが予想に反してめちゃくちゃ時間がかかった。コードを弾いてるところとかって譜割りが複雑じゃない。もうまいりましたよ。明け方にコピーした曲とか次の日に見たらけっこう間違ってるしさ(笑)。
昆:
まあでも、お客様は布川さんが自分でコピーするものだと知っているでしょうから、当然正確なものができあがると期待していると思うんですよ。だから譜面の校正にはかなり神経を使ったつもりなんですけどね。一応全部タブをもとに自分で弾いてみて確認しながら校正したんですが…。結局最後は布川さんにも見てもらうことになっちゃってご苦労おかけしました。
布川:
うーん、あれは僕以外校正できないからなあ…。でも昆さんはうまいギタリストだけどね(笑)。
昆:
やめてくださいよ。でも実際にジャズ.ギター.マスター.シリーズ.VOL4から布川さんとお付き合いをさせていただいて、僕もそれで初めてジャズ.ギターを学び始めたのですから実質的に布川さんは僕の師匠ということになりますね。
布川:
そうか、矢堀と兄弟弟子ってことですか。ところでディレクターから見た今回の教則の売りは何ですかねえ?
昆:
一番の売りは何と言っても布川さんのスタンダード.ソロ.アルバムが聴けるという点でしょう。リスナーの方々は布川さんのことをコンテンポラリーなタイプのギタリストだと思っている方が多いと思いますが(VALISのサウンドとかコンテンポラリーでしょ)、今回のCDはモダンジャズを深く愛する布川さんの一面を皆さんに紹介出来るという点ですごく意義深いものだと思っています。何より演奏の出来が素晴らしいです。
布川:
それはどうも、でももともと今回はスタンダードの演奏ということに重点を置いてましたから。
昆:
最初は譜面+CDという形にしようと思ったんですよね。でも途中から曲の解説だけではなくて、その発想法のようなもの、例えばコード.アレンジやソロに関する秘密のようなものを僕自身どうしても知りたくなって何とか教則部分を書いてくださいと無理にお願いしたわけです。
布川:
うーん、でも結果的には僕もこんな大々的に教則を書いたことないし、自分の考えを整理する意味でもこれをやったことはよかったですよ。ビデオとかだと画像を見せられるというのはものすごい利点なんだけど、やっぱり深く掘り下げられるのは文章とかの強みでしょう。
昆:
そうですね。特に譜例がたくさん載っているので、多くのフレーズを学べると思いますよ。あとソロの教則部分で画期的だと思えることは、すべてが key in C で書かれていることでしょうね。
布川:
そうですか。それ画期的なのかなあ…?
昆:
それに循環コードの中でだんだんとフレーズがジャズらしくなっていくように構成されている点も布川さんのアイディアに溢れていると思います。いままで見たジャズの教則本というのは、key in F や key in Bb のブルースやスタンダードのコード進行を題材としていていちいちアタマの中で移調するのがめんどくさいものばかりでしたからね。
布川:
コード進行とかそういう練習素材は統一した方が色々なアプローチの理解にはよいと思ったんですよ。
昆:
それがユーザーにはとてもシンプルでわかりやすいものになったんじゃないでしょうか。
布川:
うーん、シンプルは僕の座右の銘ですからね(笑)。ところでレコーディングもハードでしたねえ…。
昆:
2日で12曲まるまる録りましたからね。でも最後まで布川さんのパフォーマンスが落ちなかったという点はさすがプロだなあとつくづく思いましたよ。よくあれだけ集中力が持続できるものですね。
布川:
今回の録音は1日めがすごかったなあ。大体の曲はギター2本で録る。普通のレコーディングだと他のメンバーが直したりしている時間に少しは休みが取れるじゃない。でも今回は録音してるのが僕だけだから、ソロが終わったらすぐバッキングやったり、もうほとんど1テイクか2テイクしか時間的には取れないよね。それで1日めに8曲録った。昼メシ食ってその後ビール飲んだらぶっ続けで録れましたね(笑)。
昆:
そうですね。午後になってからローディの方を酒屋に派遣して缶ビール買いだしさせてましたもんね。
布川:
まあスタンダードはリラックスした演奏がいいから…(笑)。あのときはワールド.カップの話題も盛り上がってたし(笑)。
昆:
レコーディングのときに4、5本ギターを使っていらっしゃいましたけど、僕のギターを弾いてくれたのも嬉しかったですよ。
布川:
今回は主に弾いたのはビデオ「虎の穴」のときに弾いたES175。それとバッキングの音を変えたくて昆さんのダキストを借りて生音をマイク録りしたんですよね。フルアコの生録りってジム.ホールやジョー.パスもやってるけど、いい感じなる。「Alone Together」とかシブくできた。
昆:
そうですね。ジム.ホールみたいでしたよ。
布川:
あとはいつも使ってるアーガスのセミアコでクランチ系のサウンドを2曲。それからゴダンのナイロン弦とアリアのスティール弦のエレアコ。計5本使った。
昆:
「Donna Lee」、「Airegin」とかハイテンポな楽曲も決まりましたね。
布川:
ありがとうございます。でも「Airegin」はギターだけでやるのは難しかったなあ。ウェスはやっぱり偉大ですよ。
昆:
いやあ、布川さんヴァージョンの「Airegin」も聴き応え充分でしょう。それに「Donna Lee」のテーマに続くバップフレーズの嵐もこのCDのハイライトの1つでしょう。いま必死でコピーしてるところですよ(笑)。
布川:
間違いはコピーしないでくださいね(笑)。
昆:
布川さんはどの曲が特に印象に残ってますか?
布川:
「Wave」と「Sonnymoon For Two」(S.ロリンズのブルース)はいい感じにできたと思っています。特に「Sonnymoon For Two」では1人でスティール弦のアコギとクランチ系セミアコで4バース、2バース、1バースの掛け合いをやってる。これが息が合ってるんだ。当たり前か(笑)。でもさあ、1人で掛け合い録音するのって最初のギターを入れてるとき、気持ちを盛り上げるのが大変なんですよ(笑)。
昆:
そうでしょうね。そう言えば、掛け合いの最中で「奇跡のユニゾン」フレーズが出ましたね。
布川:
そうそう、同じ箇所でオーバーダブしたときにまったく同じフレーズを弾いちゃった。人間の行動にはパターンがあるんだなあと思いましたよ(笑)。
昆:
まあかっこいいからOKでしょう。
布川:
あとマイク録りしてるやつだと足音とかも入ってるのも臨場感あるでしょう。「アンダーカレント」とかもよく聴くと入ってるんだよね。
昆:
よく聴くと興奮した布川さんの鼻息も聴こえるかも(笑)。
布川:
まあジャズってことで…。こういうレコーディングってどうやって録ってるのかって思う人もいるかも知れないけど、普通のレコーディングとは違ってソロを最初に録ってバッキングを後から入れたのがほとんですよね。
昆:
それは僕も意外でした。普通バッキング.トラックから録りますよね。どうしてソロから先に?。
布川:
ジャズってソロの長さとかあらかじめ決められちゃうとやっぱりいやじゃないですか。それにバッキングもソロを盛り立てるように絡みあった方がいいと思うんですよ。
昆:
なるへそー。ところで「いつか王子様が」のリハモもすごいですね。どうしてあんなことを思いつくのか謎ですよ。
布川:
普段から色々な曲のリハモは考えてるんですよ。ジャズライフの連載もあるし…。でもあんまりただトリッキーなリハモっていうのは20歳くらいの頃はやろうとしたけど、いまは自然で美しくつながるというのをモットーにしています。1つのコードそれ自体が面白いサウンドでも流れが悪いものはだめだと思うんですよ。キース.ジャレットなんてシンプルでも美しいでしょ。
昆:
そうですね。それでいてハッとさせる部分があるというのが楽しいところですよね。
布川:
それは嬉しいお言葉だなあ。無伴奏でやった「星影のステラ」なんかもそういうのを意識したかもしれない。
昆:
全部録り終えた後で、布川さんから電話が入って「TDの日にもう1曲チェロキーを録りたい」と言われたときはどうしようかと思いましたよ。エンジニアに相談したら「あの人は相当凝り性だからTDの時間がなくなっちゃうんじゃないか」と不安がっていたんです。でも布川さんが何としても録りたそうだったんで説得したんですよ。
布川:
全部聴いてさあ、アップテンポの曲が少ないような気がしたんですよ。あの曲は6曲めなんだけど、このCDにの中では1曲だけ変わったアレンジで面白くできた。是非聴いてみてください。最後に昆さんからセールストークを一言お願いします。
昆:
まずは、布川俊樹入魂の新譜(3年振り)にご期待ください。僕はすでに愛聴盤となっています。まったくギター以外の楽器は使っていないけれど、12曲飽きずに聴き通せると思います。そして一番気に入った曲からコピー譜を見て少しずつでもコピーしてみてください。布川さんのアレンジの妙がおわかりいただけるんじゃないでしょうか。教則ページも布川さん独特の語り口で(口語で)書かれているので読みやすいし、わかりやすいと思います。教則+コピー譜+オリジナルフルCDで2,800円!これはもうリットーミュージックにとっては限界です(笑)。もしこれがヒットすれば、堂々と次の企画も会社に提案できますので、どうかだまされたと思って買ってください(笑)。
布川:
僕も買おうかなあ(笑)。


ちなみに「俊樹の部屋」のバックナンバーを用意しています。見てない方はチェックしてね。








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