俊樹の部屋(?)

俊樹の部屋(第14回)


(97.10.28アップデイト)

1996年5月30日、歴史は始まりました。ついに布川俊樹のホームページがスタートしたのです。このページを立ち上げた4、5月はギターを弾くよりとにかくこのホームページ製作に追われる日々、日夜Macに向かっておりました。この「俊樹の部屋」は毎回僕がたわいもないことをエッセイ的に書き連ねたり、「徹子の部屋」みたいにゲストを呼んで対談をする、みたいなコーナーであります。

さて今回は、僕が日本で最も敬愛するピアニストの1人、福田重男氏を迎えた対談です。彼は今年N.Yでロン.カーター(b)、ジョー.チェンバース(ds)というメンツでファースト.アルバムのレコーディングを行い、98年のアタマにリリース予定。僕が彼に感じる一番の魅力はそのリズムとスピード感の気持ちよさです。加えて彼はワイン、車などかなりの趣味人、人間としても実に面白い。今回はそこいらへんも含めて僕もベンキョウしてみたいと思います。ちなみにこの対談はワインをしこたま飲みながら9月13日拙宅に於いて行われました。



布川:
もうテープが回り始めましたね(厳密に言うとMDなのでテープではない)。
福田:
これ、何分録れるの?
布川:
1時間くらいはだいじょうぶでしょ。いやいやでも…。
福田:
突然「いやいやでも」か(笑)。マルタじゃないんだから(笑)。
布川:
やっぱりCDの話題かな。福田氏がCD出すのはほんとに嬉しいですよ。もう齢も40くらいでしょ。ほんとに尊敬しているプレイヤーだからさ、日本のジャズの音楽状況とかもあるかとは思うけどさ、いままでアルバムが出てなかったのが不思議って言うか情けないよね。ロン.カーターはどうでしたか?
福田:
最初はロンという話じゃなかったんだよ。ポール.モチアンとゲイリー.ピーコックって話だったんだよ。
布川:
それも凄い。プーさん(菊地雅章氏)みたいだね。
福田:
そう、それでそのリズムセクションを想定して曲も書いたりしてたんだけどさあ、ちょっと地味かなって話にもなったのとスケジュールが合わなかった。それで色々あたるうちに「どうせだったらロン.カーターにあたってみたら」という話になった。
布川:
彼はこわいんでしょ。
福田:
うーん、こわいね(笑)。まあやっぱりスターなんだよね。
布川:
何か気に入らないと口もきかないとか聞いたことあるけど。
福田:
俺も緊張する方じゃないんだけどさあ、最初に会ったときはね…。最初のリハが、ソーホーのあたりだったんだけど、ジョー.チェンバースと俺だけ最初にいてオリジナルの曲とかリハしようってことで始めてたんだよ。そうしたら途中でロンが来てさあ、そこでリハを続けるべきかロンに挨拶するか迷ったよ(笑)。でも音楽家だから始めた演奏はしたけどね(笑)。それでロンっていつもスポーツ新聞を4紙か5紙くらい持っててさあ、ちょっとでも時間があるとすかさずスタジオの中で読み始めるわけよ。それもだんだんポーズだってわかったんだけどさ(笑)。でもなんかイギリスの貴族階級みたいな人だよな。
布川:
あっはっは。
福田:
俺が聞いてた話だとさあ、シェイクスピアを読んでパイプを喫ってて格好もいつも正装ってことで…。それでけっこうちゃんとした格好で行ったら向こうは短パン(笑)。ところでロン.カーターってプレイバックを聴かないんだよね。
布川:
キースのスタンダーズもそうだってね。よっぽど自信があるのか、そのときの音楽はそのときのものっていう感覚なのかなあ。僕なんか小心者だから家帰っても何度も聴いちゃうよ(笑)。どっちのテイクがいいかとかさあ。
福田:
まあとにかく4ビートのグルーヴはとんでもなく凄いよな。
布川:
そこらへんのジャズのスイング感とかグルーヴ感、スピード感のことを聞きたいんだけど…。僕のこのページの質問コーナーにのそういう質問って多いんですよ。福田氏って本当にそこらへん凄いと思うから。何たってジョージ大塚さんと演れるんだから(ちと内輪ネタだな…笑)。
福田:
これはね、最近渋谷のヤマハでも教えてんだけど一番伝授しにくいことなんだよね。まあ簡単に言うと一番大切なのは2(拍)、4(拍)のスピードなんだよね。電車が駅を通過する時刻は同じでも200kmで通過するか、80kmで通過するかの違いなんだよ。
布川:
うーん…。
福田:
音符を長くするってのは2、4を遅らせるってんじゃなくて2、4を通過するスピードが速いってことなんだよ。スピードを出そうとして前のめりになると必ず走ってしまう。ところが2、4特に4拍めを意識してるとごく自然にアタマがジャストにくるんだよ。1、3で合わせて行くと球を置きに行くみたいな感じになって絶対スイングしないんだよ。それから勘違いしている人が多いんだけど、2、4はアクセントって意味じゃない。例えばその好例が2ビート。ベースは1、3しか弾かないんだよ。でも何でうまい人はそれだけでスイングするのか。2、4がスピードあって1拍めがめちゃくちゃシャープに出るんだよ。
布川:
うーん、そういうことなのか(嘆)。
福田:
あっはっは。
布川:
めちゃくちゃ難しくて私にはわかったような、わからないような…(笑)。
福田:
2、4が速く通過する意識がないと走ってるだけなんだよね。だからすごいスイングしてるハービー.ハンコックとかってアタマのリズムが倒れ込まないんだよ。1拍めってコードも変わったりとか音楽で最も重要な箇所じゃない?それは目立つところだからそこでこけると目立つだろ。よくジャズはレイドバックとか言うじゃない。例えばギターでもジョンスコとか…。でもあれ素人がまねすると遅れていっちゃうだろ。2、4のスピードを意識してるかなんだよ。
布川:
そういうことか…。僕は速いタイムの上にゆったり乗るという風に捉えていたけど。
福田:
うん、速いタイムってえのは2、4のスピードなんだよ。それでゆったり感というのは2、4がたっぷり取れて必然的に押し出されるように1拍めが出てくるからこけない。
布川:
これを文章にできるかわからないけど(笑)、いい話だなあ。


今回の対談、いかがでしたか。この後延々とリズム談義は続いたのですが、2人とも相当量のワインを飲んでいて話の脱線することすること(ほとんどはページに載せられない裏話、某サックス奏者とか)、何たって福田氏がシャトー.マルゴー(5大シャトーでっせ)を持ってきてくれたんだもんね。僕も酔っ払ってかなり不明なところも多かったのですが、今回の話に僕なりの解釈をしてみましょう。まず僕が生徒を教えていてよく思うこと、とにかく4ビートのミディアム.テンポ以上のものをやるとほとんど遅れるということがあります。これはほとんどの人が1、3で合わせているからだと思うわけです。それで2、4を人間は(すべての人間というわけではないが)ハネたウラと感じやすい。すると遅れてしまう。4ビートから2ビート、あるいは長い音符になるとテンポが遅れるというのもそこらへんと関係があるのではないでしょうか。それで遅れないようにするために走ろうとする。すると1、3がこけてしまうのです。これは要するに2、4の速いタイムを感じていないからなのです。ただ走っているのはインチキ4ビートです。福田氏の素晴らしいグルーヴ、あのレイドバックしながらも加速していくような感じというのは2、4を速く感じていてそこに音符が向かっていく、そういった感覚から生まれているのではないでしょうか。僕もベンキョウになりました。ワインも旨し!とにかく福田氏の初リーダー作に期待しましょう。



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