「 雨 」

ずっと連日雨だったのに、予定のある日だけぽっかり晴れることがある。そんな時たいていの人は「日頃の行いがいいからね」なんて言う。
もしその言葉が本当なら、私は前世でよっぽど悪いことをしていたんだろう…。
「はー…。やっぱりか」
昨日までの麗らかな陽射しが嘘のようなどしゃ降り。そのまましばらく窓の外を眺める。
この雨じゃチャリ使えないだろーなー歩きかぁ…あーだったらもうそろそろ用意しなくちゃ何で卒業式を狙ったみたいに雨降ってるんだろ…ホント前世からのカルマを背負って生まれてきたのかな私雨女ってワケじゃないんだよね修学旅行はいい天気だったし…。
「美凪ー、起きてるー?」
階下のお母さんの声で現実に引き戻されハッとする。
「起きてるー!今降りてくるから」
また自分の世界に入ってたか…高校生になるんだしいい加減直さなきゃなー。



「なーんて思ってたんだけどねぇ」
「へー」
ジュースを一口だけ飲んで、結論だけを苦笑まじりに口にする美凪(ミナギ)に、玲(アキラ)は読んでいる本から目も上げずに相槌だけを返す。
「もー適当に答えないで、ちゃんと聞いてよアキラちゃん」
「じゃあ適当に答えないですむように言いなさい」
あくまで目線は本に預けたまま玲は答える。
「んーーー。今は何読んでるの?」
『会話を成立させる』ことから『玲に構われる』ことに動機がシフトした美凪は、しばらく唸った後唐突に話題を変えた。
しかし、美凪の突拍子のなさには既に慣れている玲は気にすることなく答える。
「ん?『駒橋健(コマハシ タケシ)戯曲集』。やっぱ健さん天才だわ」
「またぁ? 読むの何回目それ」
「もう覚えてない」
「舞台の台本を何回も読んで面白い?」
これまで本から上げられることのなかった玲の視線が初めて美凪の顔へ向けられた。元々切れ長できつい印象のある目が眼鏡の奥で凄みを増す。
「…面白いかって? 面白いに決まってるじゃない。駒橋健よ、コマハシタケシ! 研ぎ澄まされた言葉とその言葉が最も効果的に働くように計算された緻密なストーリー、そしてその話が不自然なものとして映らない鋭敏なリズムで構築された独自の世界。駒橋健の舞台は演劇の枠に収まりきれない…芸術よ。それと美凪、これは台本じゃなくて戯曲集。台本は演者のための舞台の設計図の一部だけど、戯曲集は読み物として確立されてるの」
普段はどちらかと言えば人付き合いが得意ではない玲だが、敬愛する作家である駒橋健のこととなると途端に雄弁になる。周りから浮かない程度に人付き合いはするが、これと言ってのめり込むものを持っていない美凪は、玲のこの情熱が少し羨ましかったりもしている。
「大好きだねー。羨ましいな」
感心したような美凪の言葉に玲は我に返る。放課後ということで教室内に他の生徒の姿は無いが、力説のあまり立ち上がってしまったのは少々恥ずかしい。軽く咳払いをして硬い椅子へと座り直す。
「羨ましいって…。あんたの大好きなバイト先の先輩はどうしたのよ」
「どうもしないけど。あのね、昨日も休憩時間がちょうど一緒だったの。しかもいつもコンタクトなのに眼鏡姿で!」
「へー、よかったじゃん」
「んーん。嬉しかったんだけど、全然よくないの」
肩まで伸ばされた綺麗な黒髪が、美凪が首を振るたびに左右に揺れる。玲は些か矛盾を感じる美凪の発言を反芻しながら尋ね返していた。
「は? なんで?」
「だってね、ずーっとメールしてるの。いつもならテレビ見ながらおしゃべりとかするのに。あれは絶対彼女だよー。そりゃ小山内さんカッコいいから彼女の一人や二人いるかも…っては思ってたけど、いざ見るとショックー!」
彼女の有無はともかく複数形は拙かろうと心の中でツッコミながら玲は、机の上に突っ伏してしまった美凪の頭を軽く撫でる。
「彼女がいるって聞いたわけじゃないんでしょ? 偶々色んな友達からメールがきてただけかもしれないし」
「そう…かなぁ?」
「そうだよ」
「でも、これがもし舞台で、本当にアキラちゃんが言った理由でずーっとメールしてたんだったらつまんなくない?」
「……あんたねぇ」
さっきまで頭を優しく撫でていた右の手でそのまま後頭部を叩く。
「いたーい。なんでつっこまれてるのかわかんなーい」
「はいはい。それよりまだ大丈夫なの?」
「あ、そろそろ行かなきゃ。アキラちゃんまだ帰んないの?」
「うん。生物室の『シーマン』と遊んでから帰る」
「げー。『シーマン』ってあの蛙でしょー?」
今まで見たことのあるアマガエルなんかは可愛い外見だったんだなと認識をさせられるほどグロテスクな蛙、通称シーマン(正式名称を誰も知らないらしい)。それと仲良く戯れている玲を想像して美凪は軽く身震いした。
「あんたがそんなんだから、一人で行くんでしょうが」
「んー。じゃねバイバーイ」
「また明日ね」
お互いに手を振って、それぞれの目的地へと向かう。
美凪の目的地であるバイト先は学校から自転車で十分ほどの商店街の一角にあった。この街にオープンしてからまだ五年程度のファミリーレストラン。駐車場の片隅にいつものように自転車を停める。
事務所でシフトの確認をして、美凪はため息をついた。
(小山内さん今日休みかー。ちぇ)
美凪より三つ年上の大学生、小山内優鷹(オサナイ ユタカ)。ふたりの仲は、正直ボチボチと言った感じだった。一緒にいればしゃべるし、バイトが終わってご飯を食べに行くこともある。だが、それだけ。『バイト仲間では比較的仲の良い方』、それが今のふたりの距離だった。
あともう一歩踏み込めれば…と思うのだが躊躇してしまいなかなか上手くいかない。逆に自分の気持ちを伝えてしまうと、今の距離が広がってしまいそうで…それが怖くて口に出そうとした言葉をいつも飲み込んでいる。
「お、一ノ瀬おはよう。今日は一人?」
「あ、店長おはようございます。私一人みたいなんで朝礼お願いします」
「はい、お願いされましたー」
平日ということでさほどバタバタすることもなくバイトが終わった。秋ももう終わる十月。九時をまわると制服のブレザーだけでは肌寒い。
「コートを着るにはまだちょっと早いんだよね」
自転車で風を切りながら家路を急ぐ。制服のポケットから微かに、映画『エクソシスト』のテーマ曲が聞こえてきた。慌てて端に自転車を止め、ポケットから携帯電話を取り出して見ると、予想通りバイト先からの電話だった。
「もしもし、一ノ瀬です」
『お疲れ様ですー。あのさ一ノ瀬、さっき言い忘れてたんだけど、明日シフトがちょっと変わってるから。六時から入ってもらっていいかな?』
「明日金曜ですよね?どうせ次の日休みなんで大丈夫です」
『ありがとう、助かるよ。じゃあ気をつけてねー』
「はーい。おつかれさまでーす」
電話を切って美凪は、はたと気づく。六時からということは、多分小山内と一緒にシフトインのはず…。
「…聞いてみようかな」
自転車を再び漕ぎ出しながら胸の中で小さく決意した。


「へえーついに覚悟決めたんだ」
「うん。やっぱり気になるから、彼女がいるか、いないかだけでも聞く」
もう既に緊張した面持ちで告げる美凪を玲はぎゅっと抱きしめる。美凪もそんな玲を抱きしめ返す。
「頑張っておいで」
「うんっ」
「…しかし、それでこの天気か。いい返事だといいね」
「ん?『それでこの天気』ってどういうこと?」
玲の言葉に美凪はわけがわからないと首を傾げる。
「ここの入試のとき雨降ってたよね」
「うん」
「美凪はここ以外に別の学校受験した?」
「滑り止め受けてた」
「その日は晴れてたでしょ?」
「…うーん。多分晴れてた」
「結果は?」
「…落ちた」
「成る程ね」
「だーかーらー、何が?」
ひとしきり美凪に質問を浴びせ掛け、満足いく答えが返ってきたのか玲は嬉しそうに頷いている。しかし質問をされた側の美凪はどうしてそんなことをきかれているのかわからない。
「ずうっと、言おうと思ってたんだけどね…」
軽く目を伏せて、いつもより少し低い声で玲が話し出す。
「私が思うに、美凪は『節目雨女』なの」
「…ふしめあめおんな?」
初めて聞く言葉に漢字変換が追いつかない。
「まあ私が勝手に作った造語だけどね。よーく思い出してから、そのときの天気を答えてね」
「…わかった」
まだ玲の意図がいまいち掴めていないが、妙なところにスイッチが入った玲に逆らうと何だか怖そうなので、美凪は素直に従った。
「小学校の入学式」
「…傘差して写ってる写真があったから…雨」
「小学校の卒業式」
「雨。お気に入りの靴がドロドロに汚れちゃったんだよ」
「中学校の卒業式」
「雨」
「初めて本命チョコを手作りしたバレンタイン・デー」
「え〜……。あ、雨だ。四年生のとき、大島くんに来てもらった公園で雨宿りしたもん」
「ほらね」
納得したように言う玲に、美凪はなおも首を傾げる。
「だから、人生の節目節目に必ず雨が降ってるのよ、あんたは」 
「あー、ホントだ。…でも、ただの偶然じゃない?」
「たとえ偶然でも、これだけ重なればもう立派にあんたの特異体質。多分高校の卒業式も、成人式も、結婚式も雨の日になってー『本日はお足元のお悪い中…』とか言うんだよーきっと」
「なんなの、それは」
「ごめん、ちょっと暴走した。結局ね、一大決心した今日も、美凪にとっては人生の節目になるんだと思うよ」
「そっかなー」
白く霞む町並みを教室のガラス越しに見る。強くはないが、絶え間なく雨は降っている。
「今日はいつもより遅いんでしょ、私と一緒に生物室行かない?」
「やだー。『シーマン』怖いんだもん。それにもう『せいぶつ室』じゃなくて『ナマモノ室』って感じじゃん、あそこ」
「ひとのフェイバリットをそこまで否定しなくてもいいんじゃない」
「あ、ごめん」
「ま、いいけどね。一人で行こうっと。残念だなー美凪は来ないのかー。折角木庭先生が出張帰りのお菓子持ってきてるって言ってたのになー」
「え、ホントに?なら行く」
「いいよー無理してこなくても、美凪の分までおいしく頂くから」
「やだやだー。行く行く行く」
「はいはい。じゃ、行こっか」


これまで何度も来た場所のはずなのに、気持ちひとつでここまで変わるものかと感心してしまうほど、休憩室まで緊張しながら美凪は歩いていた。
どのタイミングで言おう、なんて言えばいいんだろう、色々な考えが頭を巡るけれどどれもきちんとした形にはならない。覚悟は決まっていたはずなのに…。
悶々としながら入ると、既に来ていた小山内から声をかけられ、美凪は声をあげて驚く。
「驚きすぎ、こっちがビックリだよ」
人のよい笑みを浮かべる小山内に、美凪も自然と笑顔になる。
「へへっ」
コーヒーを入れて、椅子に座ると待っていたように小山内が口を開いた。
「一ノ瀬さ、駒橋健って知ってる?」
「え?ああ、知ってますよ。結構好きなんですよ、友達の影響で」
「ああそうなんだ」
不自然な沈黙が流れる。次の一言を発するのをためらっているような小山内に、美凪は不安を感じながら同時に『もしかしたら…』と期待していた。
そして、その期待は間違いではなかった。
「観に行かない?」
「え?小山内さんとですか?」
「嫌なら別に無理に…」
「行きます!いつですか?」
「再来週の土曜日なんだけど」
休みは大丈夫?と尋ねる小山内にコクコクと頷く。
「なんかオモチャみたいな動きになってるぞ」
柔らかく苦笑しながら優しく頭を叩く小山内。途端に美凪の頬が熱を帯び出す。赤くなってしまっているのが恥ずかしくて顔を上げられず、撫でられる格好のままうつむいて何度も何度も頷く。
「やっぱ一ノ瀬はいいなぁ」
「…どういう意味でですか?」
「一緒にいて飽きないよね」
小山内のその一言で美凪の心の中にお花畑が広がる。見渡す限り可愛らしいピンクの花々が咲き誇っているお花畑。甘く優しい匂いのなかで楽しそうにはしゃいでいる。耳馴染んだ声に呼ばれ振り返るとそこには……。
「一ノ瀬、おい一ノ瀬?」
「え…?あ、ああ。なんですか?」
「なんですか、じゃないよ。また遠くに行ってたろ」
「えへへ。楽しみですねぇ。そういえば何を観に行くんですか?」
「あ、言ってなかったっけ?ATRだよ。ほら、駒橋健がプロデュースしてるやつ」
「それで、知ってるか訊いてたんですねー」
「うん。多分一ノ瀬だったら知ってるだろーなって思ったんだよ」
『どうして?』と尋ねた美凪に『普通そうに見えて案外マニアックだから』と答えた小山内。美凪は微妙な顔をして笑うしかなかった。

〔よかったねー。しかし小山内氏、なかなか見る目があるわ。私は予定があって行けないから私の分まで観てきて…ってそれどころじゃないね(^^;〕
小山内から誘われたことを報告したメールに対する玲の返事。浮かれてしまっていつも以上に妙なメールになっていただろうに呆れることなく応えてくれる。
〔ありがとう。やっぱりアキラちゃん大好きだよv(^▽^)〕



「メイクよし、服よし、アクセよし! そして外は雨…。でも大丈夫! こんなこともあろうかと傘の色まで充分考慮に入れたコーディネート。うーんカンペキ」
鏡の前で自分の姿を何度も何度も見直す。一つ一つを指差し確認しながらおかしいところはないか、丁寧にチェックしていく。
「大丈夫よね、気合入りすぎてるように見えてないよね」
気持ちが高揚すればするほど、理性のかけらが、傷つく前に防波堤を作る。
「ただ一緒にでかけるだけだもん。デートじゃないもん。あんまり気合が入ってると引かれちゃうかもしれないし…」
何度も何度も自分自身に言い聞かせ、刷り込む。
「小山内さんが私を誘ったのは他に行きそうな人がいなかったから」
そうは言いながらも、やはり一緒の時間を過ごせるのは楽しみで、出て行く前の最後の仕上げとばかりに美凪は前髪の分け目を微調整する。
「よし、時間もいいし出発!」

待ち合わせの公園。濃紺の傘を持った背の高い人影を見つけて美凪は駆け寄る。遠くからでも見間違えない、ずっと見つめ続けてきた背中。
「すいません、待ちました?」
「ん? ああ、気にしないで。ちょっと早く着いただけだから」
雨の中傘をさしたまま並んで歩く。
ショーウィンドウに映る自分たちの姿に少しくすぐったい気持ちになる。
周りから見たら恋人同士のようにみえるだろうか…?
話すのは他愛もないことばかり。バイトのこと、面白かった昨日のテレビ、最近見た映画。けれどとても心地がいい。
会場についてもとめどないおしゃべりを続ける。いっそのこと開演しなければいいのに、と無茶なことをチラリと願いながら美凪は、楽しそうに話す小山内の精悍な横顔を見つめていた。
やがて場内に流れていたBGMが徐々に大きくなっていく。ざわめきも覆い隠してしまうほどの音量が突然止まり、客電が落ちると入れ違いに舞台にスポットライトがあたり公演が始まった。
玲がマニアと言ってもいいほどの駒橋ファンなので、知識として知ってはいたが、実際見てみると玲が敬愛するのも最もだという気がした。決して具体的な台詞ではないのに、虚をつかれる言い回し。人間の隠しておきたい醜い本音の部分をサラリと見せ、決して不快には感じさせないテクニック。思わず美凪は泣きそうになった。
舞台が終わってからもある台詞が美凪の頭の中でずっとリフレインしている。

『言葉に無駄遣いなんて存在しないんだよ、怖がらないで、大事に抱え込んでるだけじゃ勿体ないよ』

「面白かったねー。…ん、一ノ瀬? どうしかした?」
ずっと難しい顔をしている美凪を小山内が覗き込む。
「小山内さん…」
「なに?」
「今日は…ATRが見たくて、来ただけなんですか?」
「うん? …ごめん、よく意味が…」
「私は、ATRよりも小山内さんと一緒だったことが大切でした。小山内さんはどうですか?」
小山内がどんな表情をしているのかを知るのが怖くて顔を上げられない。傘の柄をぎゅっと握り締め、美凪はただ小山内の返答をまった。
「…………………」
「…………………」
長い沈黙。車道からは離れているので今聞こえるのは雨が傘を叩く音だけだ。
「…………俺は……」
小山内が口を開く。美凪は反射的に体を強張らせた。
「俺は、一ノ瀬と見たくて誘ったんだ。バイトの友達じゃなくて、女の子として誘ったんだ」
その言葉に美凪の涙腺が一気に緩んだ。自制も効かず涙は後から後からずっと零れ続ける。
「う………っく………うぅ〜……」
美凪の様子がおかしいのに気付いて顔を上げさせ、小山内は慌てふためく。
「泣くなよ、俺が苛めたみたいじゃん」
「うー………っふく………」
ごめんなさい、ごめんなさいと言いながら美凪はハンカチで目元を押さえたりして涙を止めようとするがうまく行かない。
仕方がないので、人の邪魔にならないところに誘導して小山内は美凪が泣き止むのをじっと待った。
「…落ち着いた?」
「………はい。本当にすみません」
赤くなってしまっている鼻をハンカチで隠すように押さえたまま美凪は答える。
「改めて言わせて貰うけど、一ノ瀬。俺の恋人になってくれないか? あ、もう泣くなよ! 頼むから」
美凪はまた涙が出そうになるのを深呼吸で落ち着けてから頷いた。
「はい。…小山内さんも私の恋人になってくれますか?」
「喜んで」
よく見る優しい笑顔とも、大好きな凛々しい顔とも違う。初めて見る、少し幼く見えるはにかんだ様な笑顔。
目元を拭いながら美凪は笑う。
「えへへ、今日、雨でよかった」
「どうして? 俺頭痛くなるから雨苦手なんだよねー」
「うわ、今日大丈夫でした?」
「うん平気平気。で、何で雨でよかったの?」
「友達が言ってたんですけど、私人生に節目に雨が降る『節目雨女』なんだって」
「えー…と、てことはアレ? 今日が一つの節目だと、そういうこと?」
「だと思います」
「そっか。じゃあ今日から『節目雨女』は返上だな」
「ん、なんで?」
「だって、これから先は俺がずっと一緒にいるのが日常になるからな」
悪戯っぽく笑って、小山内は美凪を引き寄せる。
驚く美凪をよそに、そのまま額に口付ける。
すべては濃紺の傘の中での出来事。
雨はまだ止んでいない。けれども、厚い雨雲の隙間からは朧月が覗いていた。


【END】


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