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 城山
(cheng shan=406m)
(2004年7月3日=曇りのち晴れ)


   ▽ガイド 山の幸豊かな“桃源郷”
   ▽交通  大連駅北側の大菜市前から出ている「大黒石」行きバスの「金龍寺溝」で下車
   ▽ルート 知青点広場から階段登山道へ


■山行の思い出はジャムの中に


 大連には梅雨がないといわれる。昨年に続いてわずか2度目の体験だが、確かに毎日のように雨が降り続くことはないし、肌にべっとりへばりつく湿気もない。だが、ここ数日、天気がすっきりしない。雨が降ったり、霧がかかったり、どこか日本の梅雨を思わせるのだ。
 そんなぐずついた天気続きの7月3日、旅順区境にある大連金龍寺森林公園の城山に登ることになった。「大連山の会」世話役の岡田稔さん、三上吉彦さんとの3人で初めて登って以来、ちょうど1年ぶりである。
 昨年は下山途中で山桜桃(日本名はウスラウメか?)の群生地を見つけ、そのありのままの自然に感激した。オトコ3人が木にへばりついて赤い実を頬張り、「ここは桃源郷だ!」。今回の山行は、山桜桃が実るこの時期にあわせて計画したのだ。
 同行者は岡田稔さん、古川信幸さん、福井明美さん、三宅俊也さんと私の5人。午前8時、大連駅北口に集合し、大菜市南側から大黒石行きの路線バスに乗車した。天気は曇り。雨が降らないだけでも幸運なのかもしれないが、スカッと晴れて欲しいものだ。
 バスは旅順北路をひた走り、約1時間後の午前9時30分、「金龍寺溝」で下車。ここから森林公園入り口まで、小型ライトバンのタクシーに乗る。運転手は劉さん。「こんにちは」「さようなら」と知っている日本語で話しかけてきた。劉さんのように、大連には親日的な人が多い。こんなところが、大連の居心地の良さになっているのだろう。タクシー料金は5人合わせて10元(約130円)と安かった。
 森林公園の入り口に着いてみると、空を覆っていた雲はすっかり消えて、青空が広がっている。願いが天に通じたのだろうか。
 1人15元の入場料を払い、城山の登山口となっている知青点まで電気自動車に乗車。こちらの料金は1人10元とやや高い。しかし、オープン形式の座席に入ってくる風は緑の香りを含んでいて、気持ちいい。目指す城山の頂上も右手に見えてきた。
 知青点の広場で電気自動車から降り、城山の山頂に延びる階段を上り始めた。午前9時57分。日差しは強く、蒸し暑い。歩き始めて間もなく汗が吹き出てきた。周囲の山からはカッコウ、キジの鳴き声が聞こえてくる。
 中腹の展望台から階段は二手に分かれ、なだらかな右側のコースを進む。展望台のすぐ上にアンズの木が密生し、実がたわわになっていた。やや小振りだが、果肉はほどよく熟していておいしい。7、8個採ってバックの中へ。頂上の真下に来たところで、きつい登りになった。それぞれの体調もあり、5人の列はばらついてきた。最後尾では、“夜型”のメンバーが息を切らし、重い足を引きずっている。
 それでも1時間後の午前10時50分、全員が城山の頂上に到着。青空が広がっているものの、渤海や遠くの峰々は霞んでいる。頂上一帯には、餃子の具や、おひたしにして食べる山菜「山麻査」が生えていたので、柔らかい新芽の部分を採取。15分ほどで両手いっぱいほどになった。
 城山の頂上から尾根伝いの道を進む。ここからは、地道が続き、気持ちのよいトレッキングコースとなる。午前11時20分、第2ピークへ。第3ピークの方を眺めると、中型のワシタカ3羽が飛んでいるのが見えた。遠くてよくわからないが、飛翔時に翼をカギ型にする特徴から、ハヤブサだろうか。
 城山の頂上から歩き始めて約50分後、最後の第3ピークにたどり着いた。ワシタカはどこかへ行ってしまったが、私たちの頭上には無数のトンボとチョウチョが舞っている。ここで弁当を広げて昼食。それぞれが作ってきたおにぎりやおかずを真ん中に並べたが、きょうはいつになく豪華版だ。
 チラシ寿司のおにぎりがあれば、納豆巻き、卵焼き、笹かまぼこのベーコン巻き、きんぴらごぼう、ソーセージ炒め、枝豆、ぬか漬けもある。デザートはライチー。私は午前5時に起きておにぎり4個を作ってきたが、結局、自分のおにぎりは1個食べただけ。メンバーのお弁当を食べて満腹になってしまった。
 休憩した後、午後1時20分に出発。ここから下りとなり、目当ての「桃源郷」へと向かう。
 マツ、カシワの林間を抜け、細い登山道を下る。道の両側にはサンショなどが茂り、枝をかき分けながら進む。やがて岡田さんが山桜桃の実を見つけた。甘酸っぱさと水分が、乾いたのどを潤してくれる。実は熟れていてちょうどいまが食べごろ。あと4、5日もすると落下してしまうだろう。
 午後1時40分、知青点の広場へと向かう道の分岐点に出てきた。ここから左に折れる。この辺一帯が山桜桃の群生地だ。30メートルほど進んだあたりから山桜桃の木が道の両側に続き、どの木にも真っ赤な実がついている。つまんで食べ、ビニール袋に入れながら進む。
 ビニール袋に三分の一ほど採ったところで林道の合流点に出てきた。午後2時25分。左手には、いま登ってきた城山の第1ピークから第3ピークまでが、衝立のように迫る。岩が切り立つ山容は雄大であり、大連の山の中でも姿の美しさはベスト3に入るだろう。
 知青点からは馬車に揺られて帰ることにした。静かで滑らかな電気自動車とは違い、乗り心地はぎくしゃくとしている。だが、その揺れが眠りを誘う。
 公園の入り口に着き、来るときに聞いておいた劉さんの携帯電話に電話を入れ、迎えにきてもらった。劉さんは、運転席から笑顔で「こんにちは」と言いながら、5分ほどでやってきた。大連市内行きの帰りのバスは座りたいので、始発駅の大黒石まで乗せてもらうことにした。料金は5人で20元。
 大黒石では、バス停近くの店で冷えたビールを飲む。大瓶1本2元。人の良さそうな店主は、私が持っていたデジタルカメラを見て、「日本のカメラはとってもいい」と話しかけてきた。
 バスを待つ間、路上に並んだ果物売りをのぞいた。買うつもりはなかったが、「食べてみなよ」というおばさんの言葉に誘われてアンズとモモを試食した。これが何と甘くておいしいではないか。値段もアンズは12、3個で1元、モモは5キロほどもあるのに3元だという。思わず買ってしまった。
 バスは一番後ろの席に座り、隣の中国人のおばさんと意気投合。おばさんは自分が買ったモモを2つくれた。食べた後、手に種と皮を持っていたら、おばさんは窓を開け、「ここから捨てろ」という。断っては角が立つ。思い切って走るバスの中から外へと投げ捨てた。おばさんは、「そうそう」とうなずく。罪悪感ちょっぴり、爽快感たくさん。普段は軽蔑している行為なのに、不思議な感じがした。
 その晩、山登りの疲れも忘れてジャムづくり没頭した。
 山桜桃はきれいにしてから煮込み、水分が上がってきたところで適量の砂糖を入れ、再び煮込んだ。仕上げは生レモンを絞り、湯煎した瓶に詰めて出来上がり。野趣満点の自家製ジャムだ。続いて、アンズもモモも鍋で煮てジャムにした。アンズは及第点だが、モモは果肉の繊維が多く、ジャムに不向きであることが判明。でも、食べて食べられないことはない。
 結局、ジャムは3種類、4瓶になった。問題は、1人暮らしの上、米好きでパンをほとんど食べないことにある。こんなに作ってどうするのだろうか。翌朝、鍋を洗いながら考えた。

写真は上から

城山の山頂直下は厳しい上りの階段が続く
稜線の登山道は気持ちのよいトレックングコースだ
いつになく豪華な頂上ランチ
鈴なりに実った山桜桃。真っ赤に熟して、いまが食べごろだ
下山の足を止め、山桜桃の実を採取する
大黒石のバス停前に並んだ果物売りのおばさんたち。笑顔が素敵!
出来上がった自家製ジャム