大黒山南嶺
(da hei shan nan ling =約550メートル)
(2004年6月19日=曇りのち晴れ)


     ▽ガイド 大黒山の主峰に負けぬ山容と眺望
     ▽交通  開発区の路線バス4路の終点「杏林小区」で下車
     ▽ルート 南嶺と主峰の中間の山あいから入山


■開発区見下ろす大黒山系の南嶺

 大連の山を代表する大黒山は、いくつものピークが集まっている山塊の総称であって、本来は「大黒山系」と呼んだ方がふさわしいのかも知れない。
 この山に惚れ込んで何度もアプローチしている大連山の会世話役の岡田稔さんと三上吉彦さんも登ったことがない、というピークがある。それは、主峰の南側に、稜線が東西に走る山並みである。今回はその山に登ることになったが、地図に山名はない。そこで岡田、三上さんが「大黒山南嶺」と命名した。
 山行日は6月19日(土)。そういえば、大黒山の最高峰を目指しているうち、軍事施設に侵入してしまい、拘束されそうになった昨年の大黒山登山は6月14日だった。早いものであれからちょうど1年。いま、思い返すだけでも冷や汗が出てくる。(詳細は、昨年の大黒山登山レポートをご覧ください)
集合は軽軌(都市型電車)の始発駅「香炉礁」に午前8時半。参加者は日本、中国、マダカスカルの11人で、男性7人、女性は4人である。午前8時50分発の電車に乗り、30分後に「開発区」駅に到着。しかし、車窓からの景色は、霧が立ちこめて、視界はせいぜい300メートルしかない。きょうの天気は軍事施設侵入事件の“悪夢”を思い起こさせる。「軍事施設に紛れ込んだ後は、土砂降りの雨だったなぁ。」
 「開発区」駅前から路線バス4路に乗り、約20分後の午前9時45分、終点の「杏林小区」に到着した。左手に鳳凰山、正面に大黒山、右手に目指す大黒山南嶺があるはずだが、その姿は霧に覆われて、すそ野しか見ることができない。嫌な予感がする。
 北へ延びる溪沿いの林道を15分ほど進んだところで、登山口に着いた。昨年と同じコースで、ここから東の山あいに続く本格的な山道となる。15分ほど登った枯れ谷で、地元のおじさんがわき水からホースを引っ張って、空のポットボトルに水を入れていた。「ここの鉱泉水(ミネラルウォーター)はおいしいんだよ」と、人なつこい笑顔で話してくれた。
 登山道沿いには、山桜桃が鈴なりに実っている。日本名でウスラウメ。1週間ほど早いが、中には赤く熟れた実もあり、選びながらつまんで食べる。甘酸っぱい味が口の中に広がってきた。野趣の味わいは、初夏の山登りの特権である。
 途中でガレ場を何か所かクリアし、急な登りに息を切らす。霧はさらに濃くなってきた。今にも降り出しそうな気配だが、何とか持ちこたえている。視界の利かない山中から、布谷鳥(bu gu niao)の鳴き声が聞こえてきた。日本名で郭公(カッコウ)。中国の聞きなしは「プーグゥ、プーグゥ」。霧の中から聞こえてくるその響きは、神秘的でさえある。
 午前11時半、ナラ林の尾根に出てきた。ここから右手の登山道へと入る。20分ほど登り詰めたところで城壁跡といわれる石積みに着いた。願いが天に通じたのか、雲の切れ間から開発区の街並が見えてきた。大黒山の頂上付近から南嶺に続く石積みも見渡せる。
 この石積みは、唐時代初期に築かれたものだという(三上吉彦さんのホームページのハイキングレポート「22 金州の大黒山」にも記載されています)。そうすると、1300年以上も前の遺構となるのだが、どう見ても積まれた石に歴史を感じることはできない。つい最近、整備したようにも見える。「苔でも生えていれば古く見えるのだろうけどね」と岡田さん。
 ともかく、この歴史的遺構で記念写真を撮る。ここから北へ進めば、大黒山の頂上方面に着くが、軍事施設となっているので拘束されてしまう。私たちは南へと向かい、南嶺を目指す。なだらかな稜線沿いの登山道となり、視界も広がって気持ちがいい。午後12時45分、南嶺の頂上に到着した。
 石積みの上で遅めの昼食。それぞれ手作りのお弁当を広げ、おかずやおにぎりを交換しあいながら食べる。いつも思うことだが、みんな料理上手だ。まん丸のおにぎりも格好がいいし、煮物、卵焼きもおいしい。このひと時が、山登りの大きな楽しみのひとつである。
 そうこうしているうちに、山塊を覆っていた霧が晴れ、正面に大黒山の主峰が現れてきた。比較してみると、この南嶺は主峰より100メートルほど低いだろうか。大雑把に判断すると、南嶺の標高は約550メートル。三上さんと協議の上で決定した。
 南側には開発区の街、その向こうに大連湾、大連の市街地を望むことができる。独立峰ならば立派な名前も付けられ、秀峰としてその名をとどめることができただろう。どっしりした山容も素晴らしく、大黒山系としてひとくくりにされているのが気の毒に思えてくる。
 午後2時、下山開始。尾根に沿って西へと下り始める。薄日も差してきて、汗が吹き出してきた。気持ちのよい林間の道が続いていたが、途中で踏み跡が消えて道がなくなった。見下ろせば、あと50メートルで林道にたどり着くことができる。そのまま急斜面を下ることにした。
 斜度は30度もあるだろうか。慎重に足を進めるが、難所では3人が滑って尻もちをつき、2人が手に切り傷を負った。午後3時20分、行きに歩いた林道に出てきた。メンバーが持っていた消毒液とバンドエイドで切り傷の手当てをする。幸いけがの程度も軽くて胸をなで下ろす。
 みんなできょうの山行を話しながら、バスの始発駅のなる「杏林小区」までのんびりと歩く。後ろを振り向くと、霧に煙っていた南嶺は、青空の中に浮かんで、りりしい姿を見せていた。

写真は上から

霧に煙る大黒山系
ミネラルウォーターをペットボトルに入れる地元のおじさん
稜線に沿って続く城壁跡の石積み
大黒山の主峰をバックに記念撮影
青空にくっきりと浮かぶ大黒山南嶺