老帽山
(lao mao shan=848m)
(2003年10月5日)


▽ ガイド 普蘭店市北部の国家森林公園老帽山風区にある大連広域市で2番目の高峰。
▽ 交通  公共交通機関はない。大連市内から車を利用。
▽ ルート 登山口から周回コースがある。西ルートから稜線に出て東ルートで下るのが一般的。


■"おまけ登山"は達成感いっぱい

 山登りは計画を立て、準備を整えて実行するものだが、今回の老帽山登山は、まったく予想外の成り行きで実現した。
 国慶節の黄金週間を利用して、中国人旅行ツアーに交じって1泊2日の「氷ィウ溝(bing yu gou=ィウは山偏に谷)の旅」(旅のレポートはこちら)に参加した。初日の4日は氷ィウ溝を観光してその夜は安房温泉に宿泊、2日目の5日は自由時間となっていた。そのオプションに老帽山登山があったのだ。
 説明書では歩雲山に続く大連広域市で2番目の高峰。登山の用意はしてこなかったが、これは登らない手はない。ガイドに老帽山に登りたい、と言うと、16人中14人が賛同して登山ツアーとなった。
 ホテルからバスで15分、老帽山景区のゲートに到着。ここで入山料の1人5元を払う。さらにバスで林道を登り、午前8時40分、登山口駐車場に着いた。集合時間は11時30分。ガイドは「時間がないので途中で下りてきてください」という。頂上に行けないのは残念だが、とにかく行けるところまで行くことにした。
 登り始めはいきなり岩盤。スニーカーなので滑らないように登る。もっとも、ほかの中国人も登山靴を履いている人はいない。ほとんどがスニーカー、運動靴だ。10分ほどで溪沿いの山道となった。
 周りの木々は紅葉が始まって美しい。樹間を縫うようにして続く登山道を進む。結構、きつい登りが続く。歩き始めてから約50分、尾根に出てきた。間もなく見晴らしの良い岩場に到着。パンフレットの簡単な地図で見ると、「百歩緊」らしい。山頂付近の稜線を見上げると、大きな岩山がそびえ立っている。老帽山を象徴する「将軍岩」だ。
 上空を見上げると、タカが2羽、円を描きながら上へ上へと舞っていた。タカの渡りだろうか。双眼鏡がないのではっきり見えないうえ、私のワシタカ識別能力では何の種類か判然としない。でも、大きさはオオタカほどか。ワシタカの観測地点として、毎年この時期に私が通っていた日本の岐阜県益田郡下呂町の観音峠では、サシバやハチクマが南下していくタカの渡りがピークを迎えたことだろう。中国の空を見上げながら、日本の空が懐かしく思い出される。
 この辺で、一緒に登ってきたツアー参加者が少なくなってきた。急登続きのため、諦めた人もいるのかも知れない。私も時間は気になったが、時間が許す限り登り続けることにした。
 途中で6,7人の中国人グループに追いついた。小学高学年ほどの地元の男の子がガイド役を務めている。同行の仲間がその男の子に聞いたら、山頂の「仙峰」まではさほど時間がかからないという。ここまで来たのに引き返す手はない。もう少し頑張って頂上を目指すことにした。
 10時12分、山頂手前の大きな岩場の「天堂」に着いた。私たちのツアーでここまで登ってきたのは7人。展望が素晴らしい岩場の上にかたまって記念撮影。上空では、再びワシタカ2羽が飛んでいた。先ほどよりもう少し小型で尾が長め。ハイタカかアカハラか。
 登りの登山道から睥睨(へいげい)するようにそびえていた「将軍岩」が下に見える。山頂は間近だ。
 登山口から1時間40分、ついに「仙峰」にたどり着いた。頂上は5、6でいっぱいになってしまうほど狭さ。「高峰」と刻まれた岩を横に写真を撮って、下山することにした。
 尾根に出て来たあたりから一緒になった別の中国人4人パーティーと話ながら下る。女性3人、男性1人で全員が大連大学の卒業生だという。みんな日本語が上手で、「私は日本語を勉強しました」「私は日本語が上手です」「早く下りましょう」などと話しかけてくる。それにしても、大連は日本語を話すことのできる人が多い。うれしいことだ。
 途中から大きな岩と林が続くなだらかな登山道となる。きょうは遠くの景色は霞んでいるが、斜面の木々は色づき、空の青とのコントラストが見事だ。足取りも軽やか。ぐんぐんと高度が下がる。右手には息を切らして登った西ルート、後ろには山頂付近が展望できる。
 登り始めから2時間35分後の11時15分、登山口に戻ってきた。集合時間の15分前。ほとんど休まなかった強行軍だったが、途中で下山するよりもいい。駐車場で待っていたガイドは「えーっ、この時間で頂上まで登ってきたの? すごいね」と驚いていた。
 駐車場では農家の人がキノコや果物、飲み物など地面に並べて売っていた。リンゴ5個を1.5元(約22円)で買い、1個を丸ごとかぶりついた。カリッとした歯応え、甘酸っぱい果汁が口からノドへと伝わる。予期しなかった今回の“おまけ登山”。リンゴのおいしさとともに、達成感が体の隅々に染み渡った。

写真は上から

「将軍岩」がそびえる山頂付近の稜線
「天堂」でツアー参加者と記念撮影。Vサインは万国共通
気持ちのよい登山道が続く東ルート。日本語の堪能な若者の足取りは軽やかだ