城 山
(cheng shan=406m)
(2003年7月2日=薄曇り)



   ▽ガイド 旅順に近い金龍寺森林公園内の最も高い岩山
   ▽交通  大連駅北側のから「大黒石」行き路線バス「金龍寺溝」で下車。さらにタクシーで金龍寺森林公園正門へ
   ▽ルート 森林公園から登山口の知青点へ。電気自動車か馬車、徒歩で


■北アルプスを思わせる荒々しい山容


 金龍寺森林公園へ森林浴に来た10日前、トレッキングコースの周りを囲む山系の美しさに感激し、いつかは登ってみたいと思っていた。その願いが早くも実現することとなった。森林公園の山素晴らしさを山仲間の岡田さん、三上さんに話したら、さっそく行ってみよう、ということになったのだ。
 午前8時に大連駅西側の郵政賓館1階ロビーで待ち合わせ。ここから駅西のガードをくぐって大菜市東側のバス停「建設街」へ。利用するバスは、旅順境にある大連市最東端の「大黒石」行き。終点まで1時間半近くもかかる長距離路線バスだ。
 この37番目のバス停「金龍寺溝」で下車するはずだったが、ひと駅降り過ごしてしまった。後で分かったことだが、この辺のバス停ならばどこで降りても同じなのだ。タクシーを拾って金龍寺森林公園に向かわなければならないのだから。それにしてもバス料金の2元は安い。所要時間は1時間15分。
 タクシーはすぐに拾えたが、運転手は森林公園を知らない。それもそのはず、このタクシーは大連市内から旅順まで客を乗せ、その帰り道だった。運転手説「zhe付近、我不renshi」。バイクの運転手に道を聞いて5、6分で無事に森林公園入り口に到着した。料金は12元。
 入園料は15元。ここから馬車に乗って、車止めになっている知青点へと向かう。料金は10元。周りの山やアカシアの森を眺めながら、のんびり馬車に揺られるのは、趣がある。だが、実のところ、乗り心地は悪い。ねじれながら揺れて、内臓もよじれるようだ。
 3.5キロを約30分かけて知青点に着いた。右手には森林公園内で最高峰の城山がデンをそびえて立っている。標高は406メートル。ピークは3つあり、中腹から上は岩肌が見え、荒々しい山容だ。案内板には頂上まで999段の階段になっている、とある。中国は登山道に階段をつくったり、コンクリ路にしたりすることが多い。観光地として、気軽に登ってもらうための方策なのだろう。しかし、野趣に欠けること、おびただしい。
 10時45分、階段状の登山道を登りはじめる。すれ違う中国の人たちの靴もさまざまで、スニーカーから布靴、サンダル、革靴まで。私たちのように、トレッキングシューズを履いている人は皆無だ。
 階段は歩幅が決められているので登りにくいうえ、急登なので息が上がる。11時、観音洞展望台に到着。森林公園の山並や北側の遠くには渤海も遠望できる。疲れを忘れさせてくれる素晴らしい眺めだ。  右手に渤海を見ながら階段を登り、11時25分に城山の山頂に立った。中国人の3グループが記念写真を撮ったりしている。私たちも小休止して展望を楽しんだ後、南西へと延びる稜線を歩くことにした。
 ここからは、不粋なコンクリ階段はなくなり、本来の山道が続いている。城山の山頂に来る人は多いが、この先の峰を目指す人はほとんどいないのだろう。頂上からの展望を楽しんでも、まだ、自然にふれながらトレッキングする習慣はないのかも知れない。
 日本の北アルプスを思わせる岩肌が勇壮な景観をつくりあげている。笠ヶ岳に向かう尾根を歩いているような雰囲気がある。11時45分、第2峰に到着。正面に旅順の老鉄山(465メートル)が霧に霞んでいる。空にはアマツバメが鎌のような翼を広げて飛んでいる。コルは草地になっているところもあり、足取りも軽くなる。「スコットランドの山を歩いているようだ」と三上さん。
 11時55分、第3峰に到着。ここで、周りの風景を見ながら昼食を食べる。きょうの朝5時に起きて作った自作のお弁当。おにぎり3つに卵焼き、ソーセージのソース味炒め、カリフラワーのマヨネーズ和え。山頂で食べるお弁当は格別においしい!。
 12時45分、第3峰を下りはじめる。ここを歩く人は少ないのだろう。踏み跡も弱々しくなって、はっきりと見えない。1時20分、城山の3連山中腹に下がったところでヤブ漕ぎとなった。
 1時30分、城山の南に位置するピークに立つ。いま、歩いて来た城山の稜線がダイナミックに迫って来る。山容が見事だ。ここの頂上付近には動物のふんがたくさんある。黒くて小さな丸い塊だ。低木の葉が刈り込んだようになっていて、動物に食べられたようだ。
 岡田さんが下山途中で「何の動物かわかった」と声を上げた。以前、山にヤギを放牧しているのを見たことがあるそうだ。このふんも放牧のヤギのものだという。野生動物を想像していただけに残念。
 1時50分尾根伝いの道から、左に下っている道へ入る。ここは山桜桃の大群生地。だれも入らないのだろう、食べごろの赤い実が鈴なりになっている。「わーっ、幸せ」。オジサン3人が歓声を上げて山桜桃の木にかぶりつきながら、取っては食べ、また取っては食べ。草花も目を楽しませてくれる。オカトラノオ、キスゲ、野百合、アザミ……。まさに桃源郷だ。
 2時20分、城山の登山口から約50メートルほど南側にある周回路に合流した。知青点の売店で3元のビールを飲む。店員の女性は、私のことを覚えていて、「もう一度、来い」という。
 「中国人は、3度会えば朋友になれる。今度は周回コースを反対側から回って、帰りにここへ来てビールを飲みなさい」。私のへたくそな中国語にも付き合ってくれ、山桜桃は野桜桃ともいう、売店に植えてある木は「芙蓉樹」という、などと丁寧に教えてくれた。名前は廬恵青(lu2 hui4 qing1)。35、6歳か。「廬小姐」と言ったら笑顔を浮かべた。
 ひと休みした後、帰りは電気自動車の電平車に乗る。料金は10元。馬車と違って乗り心地はいい。いま登って来た山並や周りの緑を見ながら正門へと下った。
 帰りの足がないので係の男性にタクシーを呼んでもらう。この人も人なつっこくて、「前にも来ただろう、覚えている」。名前は石俊儒(shi2 jun4 ru2)。写真を撮ってあげ、「送ってやるから住所を教えて」と言ったら、「こんど来た時に持ってきてくれればいい」。再見を約束する。
 間もなくタクシーが来た。運転手の曲成武(qu3 cheng2 wu3 )の説明だと、金龍寺の地名は唐時代に建設されたお寺があったところから由来しているそうだ。そのお寺は共和国になってから壊されてしまった。このため、地元の住民が大黒石に13年前、双面双身千手、千眼観世音菩薩と508羅漢を建設し、この後は金龍寺を再建する計画がある。ただし600万ー1000万人民幣が必要で、資金集めに大変だという。
 それでは、そこに案内してもらおう、ということになり、まずは千手観世音菩薩へ。渤海の海岸に面した小高い丘に建つ高さ20メートルほどの仏像だ。見学料は10元。仏像よりも、渤海の静かな海に感動した。
 ここから500メートル離れたなだらかな斜面に広がる508羅漢へ。見学は自由。508体の仏像が点々と配置されている。観光地として売り出そうという狙いもあるのだろうが、これを建設した地元住民の地域の歴史や仏教に対する熱い思いが伝わって来る。
 508羅漢からさらに海辺に回って、最後は大黒石のバス乗り場でタクシーを降りた。金額は30元。案内もしてくれたので、安いチャーター料金だった。
 バス停近くの果物の路上販売で桃を買う。25個で4元は安い。さすが産直だ。
 間もなく来た「建設街」行きのバスに乗る。始発なので座ることができるのがうれしい。疲れている上、長い距離なので助かる。
 帰路は揺られてひと眠り。山に登って、日本人で訪れる人はほとんどいないであろう大黒石の歴史も名所も、ほんの少しだけ知ることができた。中身の濃い1日だった。

写真は上から
頂上までは急な階段が続く
頂上からの尾根は気持ちの良いトレッキングコース
下から見上げると岩山の荒々しい山容をしている
鈴なりに実った山桜桃。絶品だ
渤海を見下ろす小高い丘に建てられた千手観世音菩薩
なだらかな斜面に配置された508羅漢