38. 天動説を信じた人々


地球は丸いということ、地球は太陽のまわりを回っているということ、
星が時間とともに位置を変えるのは、星が動いているのではなく、
地球が自転しているからだということ――― 
そんなことは“常識”として私達は片付けてしまいがちです。

でも、本当にそうだと確信できますか?

毎日、日が昇り日が暮れる、月や星が東から西へ動いてゆく。それを見て
「あぁ地球は回っているのだな」と実感できる人がどれほどいるでしょう。
頭で考えて、“常識”のなかで判断しているだけで、私達はたいてい“実体験”として
それらのことを理解できてはいません。

地動説が“常識”=真理として定着する以前に、長いこと
「地球は動かない。空が回っているのだ」と信じられてきたことも不思議とは言えません。
星空を見上げていれば、むしろその方が自然な発想です。

遠い海の果ては滝のように流れ落ちて、行ったきり二度と帰ってくることはできない
という地球観も、地球の大きさや丸いという知識がなければ生まれてきて当然です。
実際に行ったことがないのだから想像するしかないのです。

それまでの“常識”を自らの体験を通してくつがえす。これほど愉快なことはありません。
科学とはそういうものだと私は教わりましたが、天動説を否定し、
地動説が受け入れられるまでには、17世紀のヨーロッパで当時の宗教上の教えに背く
ものだとして弾圧された歴史があることも思い起こさなくてはなりません。

イタリアの科学者ガリレオ(1564〜1642)は自作の望遠鏡で木星を観測し、
4つの衛星が回っているのを発見しましたが、その様子から太陽系のしくみを確信したといいます。
この衛星と同じように、地球も太陽のまわりを回っているに違いない。
地球が宇宙の中心ではないのだ、と本に著しました。
ところがその後、宗教裁判にかけられて心ならずも
地動説は間違っていた、と認めさせられたのです。
ガリレオは「それでも地球は動いている…」とつぶやいたと伝えられます。

その宗教裁判から350年たった1983年、ローマ法王
ヨハネ・パウロ二世はかつての弾圧の事実を認め、正式に教会側の非を認めました。

科学が著しく発達した現代、幸か不幸か、私たちが実体験から新しい真理を発見することは
たいへん難しいのですが、たとえば「地球は丸い」ことを観測から知ることはできます。
月が地球の影に隠される「月食」では、欠けぎわの形が丸くなっています。
これは地球の影が丸いということ、つまり地球が丸いという証拠です。
昔の人も月食の起きる仕組みは理解していて、この様子から、丸い地球の姿を想像したと言われます。

今度9月17日未明、すばらしい皆既月食が全国で見られます。
“地球”を実感するチャンス到来ともいえるでしょう。


上高地ビジターセンターだより 『マガモ新聞』 No.159  1997年9月1日発行より

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