15. 銀河鉄道の夜

明治29年8月27日生まれの 宮沢賢治 生誕100年にあたる今年は、賢治の
作品の数々や人物像にふたたび関心が高まっています。
雨ニモマケズ… 」などは時代背景が違うとはいえ、現代の私たちが忘れかけた、
質素で慎ましやかな生き方について考えさせられます。
代表作の長編 『銀河鉄道の夜』 をはじめ彼の作品には 星や星座 を
あつかったものが多く、“童話”と呼ぶには難解な、独特の不思議な雰囲気に
満ちていることは、読んだ誰もが感じるところでしょう。
37歳という若さで亡くなられたことが本当に残念です。

「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと
言われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」―――


銀河鉄道の夜』は 午後の授業で先生が星図を指し示しながら、みんなに
問いかける場面から始まります。賢治は化学、地質学、鉱物学などから天文学まで、
幅広い科学知識をもつ学者でもありましたから、この最初の場面で先生が話す
銀河系の形や構造も、当時としては最新の知識を紹介したものです。

物語は天の川 を北から南へ、二つの十字架のあいだの星座を旅する形で進みます。
すなわち、「北十字」の別名をもつ はくちょう座 から、終着駅「サウザンクロス」
(南十字)までの旅―――。 物語の後半部分には、ケンタウルス座以南の
日本からは見ることのできない南天の星座も登場します。


お盆を過ぎて、日暮れがずいぶん早くなっていることにお気付きでしょう。
そのぶん夜の時間が延びて、気温も下がり、どことなく淀んでいる感じだった
空気も透き通り、淡い銀河を鑑賞するのに適した季節の到来です。
賢治が想像の世界をひろげ、ジョバンニ と カムパネルラが旅した
“銀河鉄道の夜” を、あなたも星空を見上げ、体験してみてはいかがでしょう。

(あさお) 


上高地ビジターセンター発行 『マガモ新聞』 No.136  (1996年8月29日発行) より

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