8.七夕のとおい恋

7月7日は七夕。
短冊にひどく現実的な願いごとを書いて、笹の葉に吊るしたことを
懐かしく思い出します。上高地にササは歩道の脇にいくらでも繁茂していますが、
あの歌に出てくる“笹”というのはいわゆる“竹”のことを指すのかなと
思ったりします。丈の低いササに飾りつけをしても見映えがしません。
星祭りなのですから、天を仰がないと・・・

いつもは星に興味のない人でも、この日ばかりは七夕の星・織姫と彦星は
年に一度の再会を果たせるだろうかと気になって夜空を見上げた経験が
きっとあるに違いありません。そして梅雨時ですから、
どんよりと曇っていてがっかり、かわいそうな二人・・・
と同情なさった方もあるでしょう。

この物語に登場する織姫(織女)=こと座のベガ、
彦星(牽牛)=わし座のアルタイル で、
もちろんどちらも実在する美しい1等星ですが、なかにはこの物語を信じて(?)
本当に七夕の夜、この2つの星が接近して見えるとか、
この日にしか見られない星だとお考えの方もいらっしゃいます。

それでは、ちょっとここで現実的に、二人の恋を検証してみることにしましょう。

実際の夜空では、両者は天の川をはさんで約35°離れて見えます。
地球とベガとの距離は26.5光年、アルタイルまでは17光年―――。
これをもとに三角形を作図して求めてみると
二人の距離は、じつに 16光年も離れていることが分かります。
光の速さで会ってきたとしても往復で32年かかるということですね。
電話交際でもかかる年月は一緒です。
こんな究極の遠距離恋愛、あなたなら成就させることができるでしょうか。

梓川のように簡単に増水されたのでは、天の川の往来も容易ではないでしょう。
くびれたあたりに“河童橋”でも渡してあげて、お互いが
半分の年月で行き来できれば、うまくいくかも知れません。

たらいに水を張って二星を写し、そよ風が吹けば水面がゆらゆら揺れて
両者がくっついて見えるのでは… 江戸時代には実際
こんなアイディアが考えられたとか。
大正池で実験してみてはいかがでしょう? もし晴れてくれれば。


上高地ビジターセンターだより 『マガモ新聞』 No.129(1996年7月2日発行)より  

   あさお