ロビンソンR22 HPのメーターパネルです。古い機体なので5つ穴です。

一番上の段は左からVSI(昇降計)、ASI(スピードメーター)、ローター&エンジン回転計(左側がエンジン、右側がローター、どちらも%表示)
その下の段は左からアルティメーター(高度計)、マニフォールドプレッシャーゲージ(いわゆるバキュームメーター)左右に散らばっているのは警告灯です。赤は緊急着地、黄色は準緊急着地です。
基本的には緑色の表示が普通に使って良い領域で、黄色は注意、赤は禁止領域です。マニュアル(POH)に文字で書いてあることが簡潔に表示してあるだけです。
下の方に固まっているのは吸気(マニフォールド)温度計、シリンダヘッド温度、油圧、アンメーター、その他です。あと時計です。
並んでいるスイッチの中で一番大げさなカバーがついているものがやつがクラッチスイッチです。クラッチをディスエンゲージしてしまうとパワーが断たれる上に、エンゲージするのに数分かかりますので、空中でクラッチをいじるのは非常に危険です。そのためカバーがついてます。
あとはストロボライトとかオルタネーターとかのスイッチで、右下と左下にちょっと見えているバーがラダーペダルです。
どこかに、「R22は極端にVFR(有視界飛行)に特化したヘリ」と書いてありましたが、この計器の選択をみればそれがわかると思います。この機体は初期型なので計器がこれだけしかついていません。ある意味フランクロビンソン(設計者)のコンセプトを色濃く反映しているようです。
もしこの機体で完全に雲の中に入ってしまったら相当まずいと思います。ジャイロコンパスとアティチュードインジケーターがないので自分の姿勢がまったくわからなくなると思います。なお最近の機体はその程度の計器はついています。
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やはりR22 HPのメーターパネルの下半分です。

計器の下半分です。スイッチ類の一番右にある、いかにもキーを差しこむような場所はやはりキーを差し込む場所です。車とまったく同じシステムで、エンジン始動は一番右に回しきることで行います。手を離すとBothポジション(要するにON)に勝手にもどります。Bothというのはマグネトのことで両方で点火している状態のことです。普通はここをつかいます。ポジションは左からOFF、RIGHT、LEFT、BOTH、STARTってなかんじです。(うろ覚えですが)Right、Leftポジションでは左右どちらかのマグネト1個で点火している状態になります。片方のみでもパワーが少し落ちるくらいで普通に飛べるそうですが、そんなことは普通しないでしょう。
このポジションの主目的は点火系のチェックにあります。始動手順では、BothからRight、BothからLeftという風に切り替えて2秒間に7%回転数が落ちなければOKという風になっています。もしどちらかのマグネトやプラグがおかしければおかしい側単独で点火していると失火するシリンダが出てくるため急激に回転数が落ちるから分かるという仕組みです。ちなみにセスナ172なども同じです。
ラジオ(無線機)とトランスポンダーが上下に並んでますね。ごくふつうの代物です。ちなみに1200はVFRコードであり、普通はこれを使います。タワーに「Squawk 4231」とかって指示されますが、たとえば「Radar
Service Terminated ,Squawk VFR, Frequency change approved, Good day」といわれたらレーダーでの監視はここで終わりなのでトランスポンダーを1200に合わせろ、無線の周波数も変えてよし、さいならという意味です。
見にくいですが、一番右下に見えている赤い(この写真では赤く見えませんが)のが超重要なミクスチャーです。何が重要かといってここは下手にいじるとエンジン止まります。エンジンのカットもこのノブで行います。写真の状態が一番引いた状態でこれがフルリーンです。飛んでるときは一番押しこんだ状態のフルリッチです。セスナなどの飛行機はミクスチャーの微調整をするみたいですが、R22では常にフルリッチです。分かりにくいですが、ノブにかぶせてあるプラスチックのわっかが「ミクスチャーガード」です。これはローテクの塊R22を象徴するような部品です。フルリッチではノブがこのわっかの中に隠れますので、これを外さないと引けない構造になっています。誤操作を防ぐためです。
問題はこの重要なミクスチャーの左隣にトリムノブがついていることでしょう。巡行中はR22はサイクリックを右前に押しておかないとまっすぐ飛びません。そこで、このノブを引くとバネでサイクリックを勝手に右に押してくれますのでだいぶ楽になります。前後方向は腕をひざにつけておけばそんなにつかれませんが、左右方向は結構大変なのです。私はしょっちゅう引いてました。しかし戻すのを忘れてそのままホバーしてしまったりするんですよね。
ちなみにただ引けばいいのですが、けっこう堅いです。アメリカ人にとっては問題ないのかもしれませんが、最初引いた時は「これは本当に引くものなのか?実は横に押すとか?」と思いました。しかも引いた瞬間にサイクリックが揺れて機体がよれよれっとしてしまいました。
なお、隣にあるミクスチャーを間違って引いてエンストし、そのままパニクって墜落という事故が起こっているそうです。これは非常に分かる気がします。本人の責任といえばそれまでですが、ここは設計が悪いですね。マニュアルにも、トリムを引く時はスティックの左側から手を周りこませて引けと指示があります。
セスナではもし空中でミクスチャーを引いてエンストしたとしてもそのままミクスチャーを押しこめば、風圧でプロペラが回り勝手に再始動します。(と飛行機パイロットが言ってました。私は見たことはありません。でも構造上そうだと思います)ただしR22の場合、同じことをやってエンストした場合ミクスチャーを再度押しこんでもエンジンは再始動しません。なぜならスプラグクラッチによりエンジンとローターが切り離されるからです。しかも、そこでスターターを回すより先にオートロに入らなければなりません。コレクティブを下げないとすさまじい勢いでローター回転が下がるからです。とりあえずコレクティブをフルダウンにしてオートロに入ります。それからスターターを回せばエンジンは復活します。
R22で間違ってミクスチャーを引いたときのヤバさが少しは伝わったでしょうか・・。余談になりますが、マニュアルのSaftyNoticeというのは実際の事故の教訓を書いてあります。だから、あそこに書いてあることは全部実際の事故の結果です。あまりひとごととは思えませんでした。
「追加」
もう一度渡米してR22に乗ってきましたが、その時に乗ったR22はミクスチャーが時計のすぐ下(VORのすぐ上、クラッチスイッチの左)についていました。最初は戸惑いましたが、どう考えてもその方がマトモな設計に思えます。ちなみにミクスチャーガードはありませんでした。
またその機体にはオートキャブヒートがついていました。ロビンソン社のページで存在は知っていたので、マニフォールド温度をモニターして自動でキャブヒートを入れる装置と勝手に想像していたら全然違いました。コレクティブを下げると機械的に連動してキャブヒートノブが上がるだけの代物でした。やはりローテクでした・・。自動で上がらない様にロックすることもできます。もちろん金具で固定するという単純な仕組みです。
私の訓練は真夏で、温度が40度くらいありました。エレベーションは大したことないのにDensity altitudeが4000ftとかある状況でした。しかも機体がR22
betaでエンジンがO-320だったのでたまにパワー不足を感じていました。でも今回は春で温度が低く、機体もBetaII(エンジンはO-360)のせいかすごくパワフルに感じました。アイドリングでもMAPがかなり下がる機体だったのでエンジンのコンディションも良かったのでしょう。どんどん上昇できるので勝手に喜んでいました。パワーがあると気持ちいいですね。
R22 ベータIIのパネルです。

この機体は新しいベータIIです。9個穴パネルがついており、ディレクショナルジャイロやアティチュードインジケーターなどもついていますね。VORなどもあります。新しいからきれいです。
サイクリックスティック(いわゆる操縦桿)も見えます。R22はかなり特殊な形をしています。普通のヘリは左右各々に床からスティックが生えているのですが、R22は真ん中から1本でており、それを左右に分けるようになっています。これも軽量化のためでしょう。なお右席は機長席なのではずれませんが、左席のスティックははずすことができます。
この機体はミクスチャーが上の方についています。トリムから離れた位置についていますね。
ラダーペダルが見えますね。ペダルと言うよりはラダーバーといったほうがいいような構造をしています。左右が連結してあり、同じ動きをします。なお、左席のペダルは取り外しできます。

計器の説明は別稿に書きますので割愛します。
上の警告灯の説明をします。
[Clutch]
クラッチのアクチュエーターが動作しているときに点灯します。もちろんクラッチをエンゲージあるいはディスエンゲージしたときには点きますが、そのうち止まりますので消えます。あと、ランアップして飛び立った直後ぐらいに一瞬だけ点くこともあります。これはベルトを張りなおしているためです。よくあります。
[MR TEMP]
メインローターギアボックスの温度警告灯です。そのままです。
[MR CHIP]
メインローターギアボックスのチップディテクターの警告です。ギアボックスには磁石が付いており、ギアのカケラなどが吸い付くようになっています。そこにわずかな隙間をつけて電圧をかけておきます。そうすると、金属のカケラが吸い付くと電流が流れるという仕組みになっています。要するに、ギア欠けや重大なトラブルを検出するための装置です。
[STATER ON]
スターターが回っているときのライトです。
[TR CHIP]
上記のテールローター版です。
[LOW FUEL]
まんまですね。燃料の残量警告です。ちなみにマニュアルによると、このランプが点いたときの残燃料は5分らしいです。
[LOW RPM]
回転数が下がったときの警告です。

計器盤の中ほどです。
左上の温度計は外気温計ではなく、吸気温度計です。キャブのためキャブレーターアイシングが起こりえます。そのためについています。
その下は普通の時計です。
メーターは上段左が電流計、その右が油圧計です。アメリカの機体なので単位はPSI(ポンド/平方インチ)です。アメリカ社会はまったくSI単位系を無視しているのがここにもあらわれています。
中段は左が燃料計(補助燃料タンク)、右が油温計です。
下段は左が燃料計(主燃料タンク)、右がシリンダーヘッド温度計(CHT)です。
なお、クールダウンの際にはこのCHT計を見ながら下がるのを待つようになります。
一番右上の警告灯は下のようになっています。
[ALT]高度の意味ではありません。オルタネーターの警告灯です。
[OIL]油圧だったか油量だったかの警告です。詳しくは忘れました。
[GOV OFF]ガバナーを切るとこのランプが点きます。
なお、下に並んでいるスイッチの説明をします。
[NAV LTS]ナビゲーションライト
[STROBE]ストロボです。ピカッ、ピカッと光るあのライトです。
[CLUTCH]字が見えにくいですが、カバーがついているのがクラッチのスイッチです。これは重要なスイッチです。そのためカバーが付いています。クラッチのエンゲージ、ディスエンゲージを切り替えるスイッチですが、具体的にはスプラグクラッチのすぐ後ろについているアクチュエーターが上下します。その結果ドライブシャフト(?)全体がフレックスカップリングを支点に上下します。
[ALT]発電機のスイッチです。
[MASTER BATTERY]まあメインスイッチのことです。
なお、その右はマグネトー選択とスターターのスイッチです。車の鍵穴とまったく同じ感じです。
「MAP18インチ以下では吸気温度計(CAT Gauge)を無視してキャブヒートを使用せよ」指示があります。これはすこし説明が必要でしょう。
オレゴンチョッパーに書いてあったのですが、R22の吸気温度計のセンサーはスロットルバルブの上流にあるそうです。つまり、スロットルバルブで温度が下がる前の温度を測っているわけです。吸気温度計は結局キャブアイス防止のためについているはずですが、これでは意味がないわけです。そうすると、指示としては18インチ以下なら(これはスロットルがかなり閉じ気味であり、要するにスロットル下流では温度がかなり下がる条件という意味です)キャブヒートを無条件に使えということになるわけです。訴訟対策と言う感じの注意書きですね・・。
1.回転計

これはローターとエンジンの回転計です。左側がエンジンで右側がローターです。%表示ですが、100%でエンジンは2752RPM、ローターは540rpm(たしかそのくらい)です。
よく見るとグリーンアークの範囲が狭いのがわかると思います。100-103%しかありません。しかもエンジンはグリーンのすぐ外側がレッドになっています。
ちなみにアイドルは55%なのでそれ以下はメーターがありませんね。なお、この二つの針は普通は連動して動きます。ただし当たり前ですがオートロの時は当然別々に動きます。
2.対気速度計

今度は対気速度計です。外側がノット表示、内側がマイル表示です。グリーンが50ノット以上になっていますね。実際に50ノット程度でていないと安全ではないのでグリーンがそのあたりになっているのでしょう。超過禁止速度が103kt(ノット)であることがよくわかります。
また20ノット以下のメモリがない事にも注意してください。これはヘリの場合、普通のピトー管方式の速度計では低速ではダウンウォッシュのせいで全く当てになりません。そのためメモリがないのです。実際には30ノット以上からが信頼できるようです。なおR22のピトー管はコクピットのすぐ上あたりについています。
また、このメーターは「対気」速度であって「対地」速度ではありません。そのため風に影響されますし、上空の空気が薄いところでは実際よりも遅く出ます。しかし、航空機が飛ぶと言う観点にたつと大事なのは対気速度なため、対気速度計のついていない飛行機はないと思います。
このメーターの原理は、本質的には圧力計です。進行方向に前向きに管を突き出すと速度によりラム圧(動圧)がかかります。それを動きのないところで測った圧(静圧、R22の場合スタティックソースの白いチューブがあります)と比較したらその差から速度が計算できます。
3.昇降計

昇降計?です。英語ではVerticalSpeedIndicator略してVSIと言います。これは高度の変化速度を表示するメーターです。毎分何フィート上がるか下がるかを表示しています。表示は*100Ft/分です。これが大事になってくるのは、とくにセトリングを警戒するときです。まあ、普通の降下では500以下ですね。また上昇は300あたりのことが多いですね。なおR22はパワーがないので急上昇はできません・・。
4.マニフォールド圧計&バキュームメーター
 

これはマニフォールド圧計です。MAP計ともいいます。単位はinches of mercuryであり、インチ水銀柱と日本語では言うのですかね。なお1インチが25.4mmなので、30インチが760mmになります。
このメーターはわかりにくいメーターだと思います。簡単に言えばエンジンの出力計です。自分の車にブーストメーターをつけておられる方ならまだわかりやすいかもしれません。
このメーターは絶対圧を表示しており、ゲージ圧(=大気圧との差の圧のこと)ではありません。なおこの写真を撮った時はエンジン停止中ですので、ただの大気圧計になっています。ちなみに1013hPa=760mmHg=29.97inchHgとなります。
わかりやすく説明するために、右に自動車用のバキュームメーターを載せてみました。これはゲージ圧で表示されており、マイナスで目盛りがうってあります。この方がわかりやすいと思います。単位は*100kPaですが、要するに「何とか気圧」表示と思えばほとんど正しいです。
写真では0を示していますが、これはエンジンがかかっていないときはただ大気圧を表示するわけですからこうなります。エンジンがかかっているときはマニフォールド内の気圧は下がります。これはこのメーターがスロットルバルブより下流にあるためです。つまり、スロットル全開のときは大気圧を表示するので0となり、アイドリングのときは気圧が一番低くなります。平たく言えばアクセルに連動して動くわけです。
対照的に、R22のMAP計は絶対圧表示なため、エンジンがかかっていないときはただの大気圧計となります。エンジンがかかっているときはスロットルの開き具合に応じて変化します。要するアクセルが開いているほど圧が上がる(ただし上限は大気圧。このときはフルスロットル)わけです。逆にいうと、MAPによりスロットルの開き具合(=出力)がわかります。
これを利用してR22ではMAPにより出力を制限しています。24.5インチのところにレッドマークがあると思いますが、R22では24.5インチで131馬力が出ます。そのためここが上限でこれ以上のMAPを使用してはいけません。
ただし勘違いしてはいけません。24.5インチ以上は使用してはいけませんが、高度の低いところ(=大気圧が24.5インチよりも高いところ)でコレクティブを引き上げれば簡単に上限を超えます。わたしもオートロのパワーリカバリーで30インチまで行ったことがあります。
これは余談ですが、35インチまで目盛りがありますが、いつ使うのか不思議です。たとえば死海で飛ぶなら、標高がマイナス400mなので気圧は32インチほどになります。そういう相当特殊な状況でないと必要性がないような気がします。まあ、このあたりの議論は無過給(自然吸気)エンジンならではです。もしターボエンジンではMAP40インチなどと言う状況はごく普通のことになります。
5.高度計

高度計(アルティメーター)です。高度計は本質的には気圧計です。画面の表示は80ftですね。短い針が1000ftで長い針が100ft単位をあらわします。右の2と3の目盛りの間にある小さい数字は補正用の目盛りです。ATISなどで「QNH2997inch」といっていますが、こういうときは29.97を示すようにノブを回すと現在の正確な高度を示すようになっています。
なぜこのような仕組みが必要かというと、この計器は気圧を高度に変換しています。しかし天気により気圧は変動します。つまり気圧が低ければ、実際の高度よりも表示は高くなります。逆もまた然りです。これを補正するためです。
6.高度計

アティチュードインジケーターです。姿勢表示器とでも言うのでしょうか。機体が地面に対してどういう姿勢になっているのか表示する計器です。
この計器の重要さはわかりにくいと思いますが、ある意味もっとも重要な計器といっても過言ではありません。(なお、飛行機なら最も重要な計器は対気速度計でしょうか)
これは要するに「姿勢を表示する」だけの計器ですが、航空機ではよく姿勢がわからなくなります。
良く知らない人の場合は「そんなわけないだろ。外の景色を見れば姿勢などだれでもわかるだろう。」と思う方が大半だと思います。私もはじめはそう思っていました。しかし、そんなことは断じてありません!
いかに簡単に姿勢がわからなくなるかは体験しなければわからないと思いますが、あっというまです。すごいスピードで落ちていても一定速で落ちていれば重力は1Gであり感じることはできません。
計器飛行の教科書には「Rely on your instruments」とはじめに書いてあると思いますが、これこそが計器飛行(計器飛行というよりは非有視界飛行というほうが正確か)の真髄ではないかと思います。
なお、右からでてきている赤白のしましまの棒は停止中のインジケーターです。内部にはジャイロがあるため、ジャイロが停止しているとき(つまりこの計器が動いていないとき)にはこの棒がでてくるようになっています。
7.ジャイロコンパス

これはジャイロコンパスです。まあ、ただのコンパスですがジャイロにより表示される仕組みです。ただ、もちろん最初は方角を指定する必要があります。右の方に出てきている赤白の縞々棒はやはり計器の停止サインです。
実際にはマグネティックコンパスはジャイロコンパスの初期設定に使うくらいです。マグネティックコンパスは機首の上げ下げにも指示が影響されますので、実際に飛んでいるときにはこちらばかり使うことになるでしょう。
なお、R22のマグネティックコンパスはスクリーンのど真ん中の特等席についています。例のスリップを感知するヒモのあたりです。
「新航空工学講座 (10) 「航空計器」
題名のとおり、航空計器だけについて解説してある本です。エンジンの構造などは車(30年前のもの)と飛行機は同じですが、計器については全く異なります。
そのため、最初はなじみにくいと思います。実際には合理的かつわかりやすくできています。
原理、構造など詳しく書いてあります。この項がわかりにくかったらこちらで勉強されたら理解しやすいかもしれません。解説本としては良くできています。

どこか分かりにくいかもしれませんが、右側面のハッチを開けたところです。右端のクランクから一直線に左に行っているのがラダーのリンケージです。まあ、普通の構造なのでここについてはあまりコメントする気が起こりませんね。ちなみにハッチを固定するクランプは非常に単純な仕組みです。はじめて見た時は、「こんなんで大丈夫かいなと」思うでしょう。ただ半回転ねじるだけ・・。ま、ここが開いたとしてもべつに危険ではないのでシンプルです。R22はそのへんの割り切りが結構はっきりしているとおもいますね。
サイクリックがギアボックスのまわりにあるロッド類に接続されています。ここの接続はよく分かりませんでした。ここだけはラジコンのほうが簡単です。
ギアボックスのこちらがわの正面に窓(写真ではボルトに見えますが・・)がついていて、ここからオイルの量がチェックできます。
マニュアルによるとこのギアボックスでは11:47(つまり0.23倍)に減速されてメインローターが駆動されるとの事です。
ギアボックスのすぐ後にワイヤーみたいなのが見えると思いますが、これはローターブレーキです。コクピットでは頭の横にブレーキのノブがついていて、それを引くとこのワイヤーが上に引っ張られる様になっています。ま、ママチャリの後輪のドラムブレーキと大差はないような気がします。
右下から上に向かってひん曲がっている白いチューブはスタティックソースです。高度計やVSI(昇降計)、スピードメーターに供給される静圧はここから取得されます。だからこの白いチューブを口で吸うと高度計の針が上がると思いますよ。やったことはないけど。
ハッチの左下についているスイッチが6個並んでいるパネルは、警告灯をテストするスイッチです。これを押すとランプがつきます。ちなみにこの機体はこのスイッチの接触が悪くガシガシなんども押さないとランプがつきませんでした・・。
非常に見にくいですが、ギアボックスのすぐ後にフレックスカップリングがついています。昔はよくここにクラックが入っていたそうです。このカップリングがクラッチの断続による上下動を吸収します。実物を見ると分かりますが、鉄板とは言え薄いんですよね。124HPの出力を(実際には160HP)受け止めるには不安だなあといつも思ってました。問題ないでしょうけどね。ベルトが掛かっているプーリーの前後にフレックスカップリングがついており、この写真では前側の物だけが見えます。
左端にエンジンからの駆動ベルトが見えます。2本が並列になっています。クラッチを切るとこのベルトが滑るわけです。2本あるから1本切れてもとりあえず帰ってこられるという設計でしょう。
この写真の奥側は全部燃料タンクです。19ガロン(70リットルくらい)入ります。ベータ以降は右側(この写真でちょうどギアボックスが隠れる感じ)にもサブ燃料タンクがつきます。ものすごくチェックがしにくいです。手が入りにくい。はっきり確かめたわけではありませんが、タンクは単なる鉄板でできたタンクみたいな感じがします。試しに叩いてみると結構安っぽい感じです。
この写真の右側にある壁の前はすぐコクピットです。そのせいかどうか知りませんが、壁にスポンジがはってあります。遮音か遮熱か知りませんが、一応の配慮はしてあるようです。ロビンソンのHPを見たら、「遮音に配慮」とか書いてありました。その遮音対策とはこのスポンジのことでしょうか?かなりいいかげんな対策ですねえ。
なお、最近は補助燃料タンクがついていない機体はあまりないのではないかと思います。補助燃料タンクが付いていると、メインローターギアボックスは全く見えないのである意味貴重な写真かもしれません。

この手裏剣みたいな鉄板がフレックスカップリングです。クラックが入るときは、カップリングのへこんだ部分にクラックが入るので気をつけて点検しましょう。

後ろ半分です。ベルトが緩んでいるのがわかるでしょうか。また左下のボタンは、警告灯のテストスイッチです。なお、LowFuelボタンは何秒か押し続けないと点きません。
また手前の黒いパイプはメインローターギアボックスの冷却用です。
右側面その3、 R22ベータII Auxiliary Tank付き
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上の説明で補助タンクうんぬんと書きましたがこれがその補助タンクです。R22とペイントされている部分がタンクになります。

R44 RavenIIのハッチ内です。基本的にはR22と似たり寄ったりのようですが、真ん中にグレーの円筒形の部品が見えます。これがRavenのRavenたるゆえん(ちなみにRavenとRavenIIの違いはエンジンがインジェクションかどうか)であるハイドロシステムです。車でいうパワーステアリングです。これのおかげでRavenは操縦しやすくなったそうです。実際に乗ってみましたが、あまり違和感はなかったです。
このアングルだとフレームが鋼管のスペースフレーム構造になっているのがよく分かりますね。

当たり前ですがエンジンなどがあります。R22のエンジンはセスナ172と基本的に同じものです。いちおうR22専用のエンジンではありますが、基本設計はまるでセスナ172と同じだとききました。
スターター(たぶん車と同じようなもの)なども見えていますね。一見マフラーに見える物はキャビンヒーター用の熱交換器です。(なおR22にはクーラーはありません)見るからにうるさそうですが、実際めちゃくちゃうるさいです。地上ではローターの音なんかよりも圧倒的に排気音がうるさいです。爆音といっていいんじゃないですかね。普通の車の排気音を想像してはいけません。そんな甘い物ではないです。いわゆるアフター物のマフラーに付け替えた車でもR22にはかなわないでしょう。
オイルクーラーは結構大きいものがついています。エンジン冷却ファンから空気を供給され、写真の上から下に向かって空気が抜けて行きます。これはかなり初期のモデル(HP)なのですがベータ型以降では大型化されており、そのおかげで離陸出力131馬力が5分間だけ使用できます。ちなみに連続出力は全てのR22で124馬力です。空冷というか油冷エンジンというほうが正確かもしれませんね。
赤いダクトは吸気用なのですが、キャブヒートを引くと下にあるボックスの中で板が動き、吸気がエキゾーストパイプ周辺からのものに切り替わります。よく見ると分かりますが、右前シリンダーのエキゾーストパイプにだけカバーがついており、そこから赤い吸気チューブが伸びていますね。そこからの吸気がエンジンに供給されるということです。とんでもなくローテクな作りです。しかし故障のしようのない優れた構造といえますね。軽いし。ほんとうにR22は見れば見るほどよくできています。仕組みとしてはたいしたことはないですけど・・。
プラグも見えますね。下側のものが見えています。よくここは緩むらしいです。要注意。上側にもついていますが、この写真では見えません。
なおR22のキャビンヒーターは非常に原始的な構造です。これもオプション扱いですが、ヒーターをつけないのはかなり無謀と思います。真夏に地上でホバリングしていると、キャノピー面積が広いこともありものすごい暑いですが上空では意外と涼しいです。風が吹き込むことと、機体の上昇による気温の低下と両方の影響でしょう。もちろん冬はすごい寒いです。
構造はヒートエクスチェンジャー(熱交換器)で外気を暖めてキャビン内に供給するだけです。まあ単純で軽い構造であることは間違い無いのですが、問題は排気ガスとキャビン内への温風が金属板を隔てて直接接触することです。つまり、もしヒートエクスチェンジャー本体が腐食などして一部でも破れたとすると、排気ガスがキャビンに侵入します。
排気ガスにはあの悪名高い一酸化炭素(CO)が含まれています。そのためそのようなことになると一酸化炭素中毒になる危険があります。ある意味危険な構造といえるでしょう。
一酸化炭素の危険性はかなり高く、数%含まれていると即死の危険があります。とくに、CO中毒は直接それ自体が死因にならなくても、それが引き起こす判断ミスや筋力低下で事故を起こすという要素があるため、航空機ではさらに危険性が高いといえるでしょう。
ただ、触媒があればCOはCO2に酸化され量が減るためすこしはましになります。もちろんR22には触媒などついていません。(ある自殺マニュアル本には、車で自殺するなら排気ガスをキャビンに引き込んでという項があるそうですが、そこには触媒をはずせと指示があるらしい。いちいち細かいですが、理にはかなっています)
なお、普通の車のヒーターは冷却水を車内に引き込む構造になっていますのでこのような危険はありません。排気ガスを暖房に使っていたのはごく初期の車のみのはずです。
現実的な対応策としては、排気ガスのにおいがしたらキャビンヒーターを止め、換気をするということになるでしょう。パイロットショップでは一酸化炭素検出器(Carbon
Monoxide Detrector)がよく売っていますが、これは上記のような理由からです。

新しい機体なので光り輝いています。ただ構造に大して違いはないですね。
オイルクーラーにオイルを供給するパイプが目立つかも。あと、サブタンクつきなのでこちらがわにも燃料系統がありますが、この写真ではよく分かりませんね。
キャブヒートを使っていない時は、右側面についている穴から吸気します。この写真の中央に写っているパイプが吸気パイプです。

テールコーンがモノコックというのが見れば分かるでしょう。ラダーのリンケージがどう言う風に接続されているかも分かりますね。日本やアメリカの事故報告書をだいぶ読みましたが、ここのボルトが吹っ飛んで墜落したこともあるみたいですね。ああテールトラブルは怖い。
奥に見えている赤いシールが貼ってある部分が上下することによってクラッチが断続されます。ここがクラッチの心臓部です。というかこれが全てです。クラッチをエンゲージするとウィーンといいながら(ラジオにノイズが入る・・)ここが上に上がって行きます。(上がりきるのに2分くらい)そこでベルトの滑りがなくなりエンジンの出力がローターに伝わります。
このクラッチのプーリーにはフリーホイリングユニット(空転装置?、スプラグクラッチ)が入っています。エンジンよりもローターが早く回っている時は空転するようになっています。ま、要するにオートロ装置といえば的確です。とても大事な部分ですね。下の灰色の部分は冷却ファンのケーシングです
なお赤いシールはテレテンプといって温度を見るためのシールです。どこまで変色したかで温度が分かるらしいです。ギアボックスなど温度の上昇がダメージの原因となりうる重要な場所にはすべて貼ってあります
なお出力は、エンジンのクランクシャフトからこのベルトで0.8536倍に減速されます。

テールコーンです。危険と書いてありますが今ひとつ目立っていないような気がします。
なお、テールの駆動シャフトは当然テールコーン内を通っていますが、途中でベアリング1個で支持されているそうです。ダンパーベアリングという部品名だそうです。ラバーダンパーなどは付いておらず、ステーのフリクションで振動を吸収するようになっているとか。(見たことはないので詳細は不明です。)

ある意味ヘリでもっともクリティカルな部品であるテールローターです。もし戦争になって銃でヘリと闘うはめになったら私は迷うことなくテールローターを狙います。
ラジコンをやっている人なら、まったく同じなのがわかるでしょう。リンケージの持って行き方はシャトルとほぼ同じです。(向きが逆なだけ)フラッピングヒンジがついているのが分かるでしょうか。よく見るとかなり激しくデルタスリー角がついているのが分かるでしょう。この写真ではわかりませんが、プレコーン角もついています。もっとも違うのは、テールローターとメインローターが直結であるという点でしょう。ラジコンは(ふつうのやつは)メインローターとテールローターは直結ではなく、逆転時には空転します。しかしR22はダイレクトです。(その理由は、フリーホイリングユニットがエンジンとプロペラシャフト?の間にあるからです)
テールローターが非対称翼型をしているのもよく見ると分かりますね。この写真で見るとテールローターの大きさは実感できないかもしれませんが、R22のテールローターは相対的にすごく大きいそうです。たしかにそうかも。なおテールはこの写真で反時計回りです。
ウォームアップ(ランアップ)しているR22を後から見たことがあります。べつにたいしたことではないのですが、後から見ているとテールコーンがゆらゆらと結構な振幅で揺れているんですよね。はじめてみた時は少し不安になるほどの揺れでしたが、最後の方は笑えてきました。なんだかユーモラスです。
テールローターギアボックスの点検の際はテールコーン全体を押し下げてテールローターを回します。軽いから結構簡単に押し下げられますよ。
垂直尾翼や水平尾翼はセスナの主翼のようにペラペラです。押すとぺこっとへこむ感じです。
ちょっと話がずれますが、私は免許を取るまでノーター(NOTOR)というものの価値がよくわかりませんでした。テールコーンが太くてカッコ悪いとしか思っていませんでしたが、今はノーターの利点がはっきり分かります。あるビデオでノーター機がテールコーンを茂みの中に突っ込みながらホバーターンしていましたが、そんなことはコンベンショナルなテールローターを使っている限りできません。それに、メインローターに当たって死ぬ人はあまりいなさそうですが、テールローターに当たって死ぬ人はいます。ローターって回転していると見えにくいんですよね。そう言うことが全てなくなるわけですから、いいのかもしれませんけどね。でも私はカッコ悪いから嫌いです。
これは飛行機にも言えることですが、墜落というのはエンジンが故障して起こることは非常に少ないのです。なにも知らない人は航空機の事故=エンジントラブルと思っていることが多い(私も以前はそう思っていました)のですが、航空機用エンジンはめちゃくちゃ信頼性が高いので、きちんとした整備と運用をしている限り完全に出力がなくなることは珍しいです。R22が落ちる時は、ワイヤーにヒットしたりすることが多いようですね。分かる気がします。私の祖父は第2次世界大戦中に戦闘機に乗っていましたが、「電線は空から見えん」と言っていました。当時はそんなことないだろと思っていましたが、今はしみじみとその言葉がわかります。本当に空からは電線は見えません。例の安全ビデオに出てきますが、R22の事故原因No1はワイヤーヒットだそうな。納得です。
マニュアル(PilotOperatingHandbook)から抜粋したスペックを書いてみます。
[Tail Rotor]
Free to teeter,rigid inplane
つまり、シーソーはできるということです。しかしドラッグ運動はできないということです。なお、最初の方のモデルではシーソーは本当にフリーでぐらぐらしていましたが、最近のものはゴムで少し拘束気味になっています。
Diameter:3feet4inches
そのままです。
Blade Chord : 4inches(constant) 約10cm
省略
Blade Twist : 0degrees
テールローターのブレードにはねじりはないということです。
Precone angle : 1degree 11 minutes
プリコーンアングルとは、あらかじめコーニング角がつけてあるということです。写真では分かりにくいですが、2枚のブレードが少しだけナナメに取り付けてあります。もちろん応力を軽減するためでしょう。
TipSpeed@100%RPM : 599 FPS(FeetPerSecond)=182m/s=656km/hr
チップスピードとはブレードの先端の速度のことです。
メインローターのチップスピードと余り変わらないのが分かると思います。こんなものにあたったらただではすまないのは当たり前ですね。十分注意しましょう。

テイルローターはこんな感じになっています。フラッピングできるようになっているのがよくわかるでしょう。

テイルのリンクの持っていき方はこうなっています。ラジコンそっくりですね
マニュアルによるとこのギアボックスで3:2に増速されるそうです。
R22HPの左側面です。

うーん。あまり言うことがないです。でっかいファンのケーシングが見えます。その向こうにオルタネーター(やはり車のものそっくり)が見えます。スキッドを支えるフレームがしなっているのが愛嬌です。
このモデルはHPなのでこのアングルでバッテリーが見えません。初期型、HP、アルファはバッテリーが機首に積んであります。そのため一人乗りの状態でだいたい水平です。二人乗ると前下がりになります。ベータ以降はこの写真でちょうどフレームが交差した部分にバッテリーがついています。そのため一人乗りだと後ろ下がりになります。また、重心位置の制限のせいで総重量の制限が1300lb(ポンド)だったのが1370lbになりました。
燃料系統が見えるはずなのですが、余り見えませんね。ちなみにR22はただ重力で下に流れていくだけの仕組みです。いちおう燃料フィルターとかはついています。もちろんプリフライトチェックではサンプルをとって調べます。はじめてセスナに乗った時に、燃料のサンプル(チェック後)をエプロンに撒き散らすのに驚きました。でも、どこでもそうみたいですね。たしかに捨てる場所は他にないですからね。
ベータIIの左側面です。四角い箱に入っているのがバッテリーです。
ローター関係のチェックをするときに機体によじ登らないといけないのですが、そのときに足をかけていいのはフレームが三角形になっている部分(この写真の真中に見えているところ)だけです。注意してください。この機体ではまさにその場所にすべり止めがついています。

左の下側からの写真です。オルタネーター、ベルトなどが良く見えると思います。

エンジンの左側面のやや前側です。右マグネトやオイルチェックゲージが見えています。右下に見えているパイプは吸気管です。
R22のエンジンはライカミングのO-320またはO-360です。O-320は排気量が320キュービックインチで約5.2リッターです。O-360は約6リッターです。いずれも強制空冷水平対向4気筒OHVエンジンであり、基本的にはセスナ152や172と同じエンジンです。
以下はO-360に限って話を進めます。
6リッターで4気筒ですから、1気筒で1NZエンジン1基くらいの排気量があります。だいたいガソリンエンジンで効率を維持できるのは1気筒500mlくらいまでらしいので、効率悪そうです。もちろん1気筒2バルブです。でかいバルブがついてます。日本車のエンジンを見慣れた目で構造をみると、30年前の構造といっても過言ではない感じです。実際に設計されたのは戦後という話です。
指定ガソリンはAV-GASの100LLです。これもセスナなどと同じ標準的航空ガソリンです。
ヴィッツのエンジンと比較してみます。左側がヴィッツで右がロビンソンR22です
|
トヨタ ヴィッツ |
ロビンソンR22 |
| エンジン名 |
トヨタ1NZ-FE |
ライカミング O-360 J2A |
| 形式 |
水冷直列4気筒DOHC |
強制空冷水平対向4気筒OHV |
| 総排気量 |
1496cc |
6000cc |
| 圧縮比 |
10.5 |
8.7? |
| ボア・ストローク |
75.0*84.7 mm |
130.2*111.1 mm |
| 燃料供給装置 |
EFI |
シングルキャブレター |
| 使用燃料 |
無鉛レギュラー |
100/100LL航空ガソリン(有鉛) |
| 最高出力 |
110 ps / 6000 rpm |
160HP / 2650rpm |
| 最大トルク |
14.6 kg・m / 4200 rpm |
不明 |
| 燃料タンク容量 |
45L |
70Lまたは110L |
O-360は超ビックボア ショートストロークですね。1NZとまったく違うボアとストロークです。しかも回転数が低いためピストンスピードはきわめてゆっくりです。
しかし実はスバルのインプレッサ&レガシイのEJ20エンジンは90mm*75mmで同じくらいショートストロークです。
これはなぜかと言うと、水平対向エンジンではストロークを長くするとエンジンの全幅にダイレクトに跳ね返るためショートストロークになります。エンジンの全幅はサスペンションとモロに干渉するので厳しいところですね。だからこそインプレッサのフロントはストラット形式であるということもいえます。BE,BH型レガシィも後はマルチリンクですが、フロントはストラットです。
バルブシステムとしては1気筒2バルブのOHVとなっています。とんでもなく単純な仕組みです。言葉を変えれば大昔のエンジンです。ただDOHCはOHVよりも高級などというふうに単純にはいえません。
はっきりDOHCの方が優れている部分は、燃焼室の形の自由度が高いこととと高回転化しやすい点です。燃焼室の設計はエンジン性能の全ての基本ですから、ここが優れているということは優れた方式といえるでしょう。可変バルブタイミングシステムを組み込みやすいと言うのもメリットになるでしょう。
ただし欠点としてヘッドが複雑で重くなり、動弁系の信頼性が落ちます。とくに水平対向のベルト駆動(まさにインプレッサはこれですが)ではえんえんとベルトを這わすことになりスマートではありません。その面ではOHVは非常にいい方式です。単純で信頼性も高いでしょう。
現在のジェネラルアビエーション用のレシプロエンジンはほとんど空冷です。これは自動車用エンジンで空冷がなくなったのと対照的です。確かに初期の自動車のエンジンは空冷が多いですが、現在では全て水冷です。これは排ガス規制と燃費による要求からです。水冷はエンジンの温度管理が厳密にできることから燃費や排ガス規制をクリアしやすいからです。もちろん適切に管理すれば耐久性も優れています。ただし、水冷は冷却水を使用するため水漏れが起こりえます。また重量も重くなる傾向があります。
性能では水冷のほうが良いに決まっていますが、飛行機で空冷エンジンが全盛なのは、飛行機は必ず前に進んでいて十分に冷却用の空気を取り込むことができるからです。また高度が高いと外気温が下がるためその意味でも冷却に有利です。このような条件があるためいまだに空冷なわけです。もちろん軽量に作ることができるという点も有利でしょう。
それではなぜR22のエンジンが空冷かというと、おそらく単にセスナ172と(ほぼ)共通のエンジンを載せたかったからではないでしょうか。ヘリの場合、飛んでいても前に進んでいるとは限りません。また地面近くを這いつくばるようにして使用されることも多いです。はっきりいって空冷が向いているとは思えません。また空冷といっても実際には油冷エンジンであり、オイルクーラーが付いています。
CHT(Cylinder Head Temperature)の制限はマニュアルによると以下のようになっています。
Green:200-500F (摂氏93 - 260度)、Red:500F(摂氏260度)
Greenは通常の使用範囲です。摂氏(日本での「度」です)では93-260度ですが、93度はともかく260度というのは尋常ではありません。自動車の水冷エンジンでは通常水温は80-110度程度です。260度というとアルミニウム合金の使用限界を超えかけている温度です。信じられない温度ですね。またオイル温度の使用範囲は24-118度Cですが、118度でも十分高い気がします。
R22の燃料は、ただ重力で流れてくる仕組みになっており燃料ポンプを持ちません。GravityFlowSystemとか書いてありました。キャブレター(英語ではカーブレイターと言わないと通じません)はエンジンの下側についていますが、きれいに撮れなかったので写真はないです。ええかげんインジェクションにすればいいのにとも思いますが。(なお最近生産を再開したセスナ172の最新型はインジェクションになりました。それから最近でたR44 RavenIIという改良型R44はインジェクションになっていましたね。「キャブヒートが不必要になった」とメーカーのページに書いてありました。そりゃあたりまえだろと突っ込みたくなりますが・・。
スロットルバルブは通常のシステムです。バルブが1個あります。
このページを読まれるとわかると思いますが、ピストンエンジンのヘリでは基本的にフルスロットルは避けて運用します。もちろんフルスロットルになってしまうことはありますが、パーシャルスロットルで使うのが基本です。しかしガソリンエンジンの低回転低負荷時はポンポングロスが大きくなります。パワーの余裕のためには仕方ないですが、R22の負荷のかけ方だとポンピングロスの塊になってしまいますね。ターボ化すればポンピングロスを少し回収?できるでしょう。あとはシリンダー内直噴にすればスロットル全開で運用できますね。またまず有り得ませんが、BMWのバルブトロニックを採用してスロットルバルブを廃止すればポンピングロスはなくなります。
点火系は航空機エンジンらしく信頼性が高いしくみになっています。マグネト以下の点火系は全て2重です。しかもマグネトですから点火系には電気の供給を必要としません。エンジンが回っている限り問題ない作りになってます。そういうわけでオルタネーターとバッテリーが同時に故障してもエンジンだけは止まらないつくりです。両方が同時に死ぬのはほとんどあり得ませんが、もしそうなってしまったら回転計が死ぬのがもっとも問題になると聞きました。速度計も高度計も電気を必要としないのでそこは問題ないですが、回転計がないとスロットルの調整ができません。
もちろんツインプラグですが、片方が死ぬとかなりパワーが落ちるとともに明らかに振動が増えます。ただし、プラグが1個おかしくなった程度では、性能は落ちるもののただ飛ぶだけなら問題ありません。
なお車と比較したときに、ヘリのエンジンは次のような特性が要求されます。
1.信頼性
ある意味もっとも要求される特性です。古くて単純な実績のある構造が採用されます。
回転数も低い状態で使われます。また減格(Derated)して使われることが多いです。そのため寿命はますます長くなります。なお、R22は160hpを134hpに減格して使用しています。
しかし、キャブはいい加減やめて欲しいです。キャブレターアイシングなどインジェクションにしさえすればなくなるはずです。インジェクターの信頼性に不安があれば二重にすればいいでしょう。(RobinsonR44 RavenIIではインジェクション化されました。)
ただ、インジェクションにすると今度は電気系統にセンシティブになるかも。現在のシステムだとエンジン自体は外部からの電気の供給がなくても回り続けます。
2.重量
これは非常に重要視されます。航空機用エンジンは排気量のわりに非常に軽くできています。当たり前ですね。空冷も軽量化に貢献しているでしょう。たとえばR22ベータIIのエンジン ライカミングO-360
J2Aのカタログ上の乾燥重量(ライカミングのWebページによると)258lbとの事です。kgに換算するとたったの117kgです。
参考までにホンダS2000のF20Cエンジンはホンダのページによると約200kgとの事です。エンジンの重量というのは補機類をどこまで含めるかなどにより変化するので一概には比較できませんが、それでも軽量さは分かると思います。
3.パワー
あればあるに越したことはないが、パワーが足りなければ排気量で補う傾向にあります。そのため排気量あたりのパワーは非常に低いです。トルク特性もヘリでは使用回転数が非常に狭いので、ある狭い回転数でのトルク以外は問題になりません。(通常の使用においてはという意味です)
ぱっと見ると排気量が6Lもあるわりにパワーが無いと思われるかもしれません。しかし、車と航空機ではパワーの使われ方が全く異なります。車の場合は最高速アタックでもするなら別ですが、ガソリンがなくなるまで最高出力が続くというのはほとんど有り得ません。
しかし航空機ではそのような状況は十分ありうる状況です。R22でも夏に重い人を乗せてガソリンがなくなるまでホバリング練習をすればそうなります。
車の最高出力はあくまでも使用時間が短い事を前提に設計されています。しかし航空機用エンジンは違います。そのため高出力時の信頼性が重要です。
4.レスポンス
ヘリのエンジンはほとんど定速で運転されます。そのためレスポンスは要求されません。オートロのパワーリカバリーなどでは少しはレスポンスが必要かもしれません。ただどちらにしてもメインローターとテールローターという大慣性の構造物が接続されているので、エンジン単体のレスポンスを云々するのは意味がないでしょう。まあ、どんな作り方をしてもレシプロエンジンがタービンエンジンよりレスポンスが悪くなることはないはずです。
5.燃費性能
車ほど厳しく要求されてはいません。ただし良いに越したことはありませんので、これからのピストンエンジの航空機では重要になりそうです。燃費はダイレクトに航続距離に響くため、重要な性能と思います。
ただし、ピストンエンジンの航空機が業務(フライトトレーニングを除く)に使用されることはあまりないと思うので良いのでしょうか。とりあえず圧縮比が8台というのを何とかするべきです。有鉛のハイオクタンガソリンですので、ヘッド温度の管理が厳密にできればもっと上げられると思います。
6.環境(エミッション)性能、また騒音特性
現在は無視されているのではないでしょうか。触媒もありませんし、マフラーさえありません。まあ飛んでいさえすれば別にそんなにうるさくもないのは確かです。まあターボ付きにすればそれだけで相当静かになるでしょう。
有鉛ガソリンですので被毒の影響のため触媒を装備することはできません。できれば有鉛ガソリンをやめて通常のハイオクガソリンを使用すれば触媒が使えてよいかもしれません。ただ、自動車用のガソリンと航空ガソリンは使用条件が違うのでそのまま使えるのでしょうか。厳しくない条件の時は良いでしょうが、超低温とか高空での低圧とかでも大丈夫なのでしょうかね。
ライカミングエンジンの構造を見れば見るほど現代の技術でどこかのメーカーが新しいエンジンを作ってくれないかと思います。ホンダが興味を示しているようですので期待ですが、現在のジェネラルアビエーションの生産数では決して採算は取れないでしょうね。
こんなエンジンだったらいいなと思うことがあります。とりあえず理想を挙げてみます。
水冷直列4気筒で排気量を3Lくらいにして、使用回転数を少しあげるとともに低圧のターボ付きにします。ターボは馬力的になにか自動車のものを流用できそうですね。パワーは十分でしょう。とくにターボにすると高空性能が飛躍的に改善されるのでパワーの余裕も十分とれるのでは。またターボだと排気音が静かになります。
直4は水平対向よりも振動は多いかもしれませんが、バランサーをつければ済むことです。それよりもヘッドが一つですむメリットの方が大きいような気がします。
理論的にはターボで排気をバイパスすることなく利用するほうが燃費は良いですが、ヘリのように部分負荷を多用する場合にはそれは非現実的ですね。実際にはウェイストゲートが開きっぱなしになるでしょう。仕方がありませんね。
また冷却に水を使うというと信頼性の問題がでてきますが、現在でも油冷みたいなものでオイルの配管やオイルクーラーはあります。なのでそれほど変わるとも思えません。
なにより、シリンダーヘッド温度やピストン温度の管理がまともにできるようになるためむしろ信頼性はあがると思います。
また、些細なことですが水冷ならクールダウンが不要になります。現状では夏にはエンジンカットの前にクールダウンが結構必要です。あの時間はお金がかかる上に何の意味も無い時間なのでイライラします。クールダウンがなくなるのは精神的によいです。
ただし、ピストンエンジンですのでウォームアップにかかる時間は仕方ないです。なにかヒーターでエンジンを温めてあげればちがうでしょう。(タービンならウォームアップは不要)
動弁系はDOHCの4バルブにしますが、可変バルブなどは不要でしょう。どうせ回転数は限られているのでそこに絞って点火系や燃焼室設計などを設計すればよいです。水冷であればヘッド温度を厳密に管理できるはずであり、使用回転数が狭ければ燃費のチューニングも簡単にできるはずです。
フライホイールのイナーシャも不要です。単にスターターのギアだけあれば十分です。アイドリングが不安定ならアイドリングの回転数を上げればよいだけです。どうせアイドリングする時間などほとんどありません。
エンジンについて理解するうえで参考になる本を紹介しておきます。
「乗用車用ガソリンエンジン入門 」
単行本: 224ページ 、出版社: グランプリ出版 (1995/11)
ISBN-10: 4876871655 、ISBN-13: 978-4876871650
商品の寸法: 20.6 x 14.8 x 2 cm
この本は基本的には題名のとおり自動車用のガソリンエンジンの解説書です。ただしガソリンエンジン全体について網羅的に記述してある良い本ですので紹介します。
吸気、燃焼、振動などいろいろな面から書いてあります。よくまとまっていてわかりやすい本だと思います。
なお、航空用という意味での記述は全くありません。著者は伝説のグループCカーに搭載されたVRHエンジンを開発した林教授です。
新航空工学講座6 「航空用ピストン・エンジン」
単行本: 259ページ 、出版社: 日本航空技術協会 (1998/02)
ISBN-10: 4930858461 、ISBN-13: 978-4930858467
これは航空用ピストンエンジンについて詳しく書いてある本です。日本語で航空用ピストンエンジンについて記述してあるほぼ唯一の本ではないでしょうか(ほかにあれば是非教えてください)
もちろん、記述は空冷水平対向エンジンについてのみです。これもわかりやすいいい本ですが、記述の内容が古いといえば古いです。エンジン自体が古いからその解説が古くなるのは当たり前ではあります。
設計云々については記述はありません。基礎理論と正しい運用などに焦点を当てて書いてあります。
上のR22のエンジンについての説明が興味深いと感じられたなら買って間違いはないでしょう。そういう方には是非お薦めします。
「Motor Fan Illustrated vol.5」 エンジン 基礎知識と最新技術
出版社:三栄書房 (2007/02)
ISBN-10:4779601789
ISBN-13:978-4779601781
BMWのバルブトロニックの意味がわからない方はこちら(Wikipedia-バルブトロニック)をお読みください。
また、もっと深く知りたい方はこの本を読むともっとよくわかるかと。
これはモーターファン別冊シリーズのNo5で、メカニズムの解説だけを掲載しているシリーズです。
これはエンジン編ですが、スペックなどの記載は最小限です。そんな上っ面の仕様ではなく、設計思想を深く掘り下げて書いてある稀有な本です。
前半はエンジン各論であり、BMW M5のV10エンジンからトヨタパッソの1Lエンジンまでいろいろ掲載されています。ポルシェ911のFlat6もでていますが、「本質はごく普通の高性能エンジン」とばっさりです。まさにその通りだと思います。教科書的可変機構を普通に装備した保守的なエンジンでしょう。
そのあとは燃焼室から始まり、テクノロジー別に各論が並んでいます。とくに秀逸なのはBMWのバルブトロニックとシリンダー直噴の解説でしょうか。
最後はF1エンジンの解説です。これも結構興味深いです。「V8はV10から2気筒取っただけではない」などと振動やパッケージングを含めて深い考察がしてあります。
この本はエンジンのテクノロジー自体を解説した本としては大傑作です。このページを読んで面白い方なら絶対面白いはずです。安いし強く勧めます。

R22のエンジン(Lycoming O-360 J2A)に使われているピストンの写真です。
横にタバコを置いているのでなんとなく分かってもらえると思いますが、とんでもなく大きなピストンです。見て分かるとおり2バルブです。8.5(?たしか)と低圧縮比にもかかわらず、ショートストロークのため結構リセスが深いです。ボア*ストロークがそれぞれ5.125インチ(130mm)、4.375インチ(111mm)です。130mmのボアなど普通の車ではほとんどありえないでしょう。燃焼効率から言うと非常に非効率的です。
まあ通常のピストンですが、このピストンだけをみるとまるでディーゼルエンジンのピストンです。現代の設計思想では考えられない形状です。
慣性重量の削減などあまり考えられていません。見るからに低回転型のピストンです。ピンボス側を削り取るのが普通ですが、それも全くされていません。フリクションが増えそうですが、ピストンの熱を少しでもシリンダー側に逃がすために接触面積を稼いでいるのでしょうか。まあいずれにしても現在の自動車用ピストンとは違いますね。

2枚目の写真は裏面です。とくに特記すべきことはないのですが、ピストンの厚みは結構あります。低出力のこのエンジンでここまで強度が必要なのかどうかと疑問になるくらい厚く、重いピストンです。ただし、ショートストロークかつ低回転なのでピストンスピードはかなり遅いはずです。そう考えると軽いより丈夫な方が重要なのかも知れません。

R22のエキマニです。あとヒートエクスチェンジャー(兼マフラー)です。左の上についている赤いチューブはキャブヒート使用時の吸気管です。なお、これは実際の使用時と上下が逆においてあります。おそらくスチール製ですが、これこそチタンにすれば数kg軽くできそうですね。
ぜんぜん関係ありませんが、この写真は攻殻機動隊に出てくる思考戦車に見えて仕方がありません。
[何かのエンジン]

ライカミングのO-320かO-360かです。型番は詳しく見ていないので正確には知りませ ん。ただし、これはチューンドエンジンらしくオールブラック塗装です。なかなかシ
ブい塗装ですね。
この写真ではマグネトの配置が良くわかります。ツインマグネトであり、それが左右 のプラグにそれぞれ接続されているのが良くわかると思います。片方のマグネトから
左バンクの上側のプラグ2つと右バンクの下側のプラグ2つにつながっています。当然 反対側のマグネトはそれ以外のプラグ4つに接続されています。決して左側のマグネ
トが左バンクの8つのプラグ全てを点火しているわけではありません。これはマグネ トの故障の際にも各シリンダーに最低1つはまともなプラグがあるようにとの配慮で
す。冗長性を考えると当たり前ですね。

ヘリの命ともいえるローターヘッドです。スワッシュプレート、TeeteringHinge、CornningHinge、FeatheringHingeなどヘリ特有の部品がいっぱいありますね。この写真に見えている範囲でR22の特徴というとコーニングヒンジでしょうね。ジェットレンジャーにはありません。シーソーローターでは必須ではありませんが、ローターの応力を逃がすという意味ではよいのかもしれません。
ヘリの特徴を一言でいうと、ヘッド関係が「柔らかい」構造をしていることです。飛行機のプロペラは硬いですが、ヘリはローターはペニャペニャ、ヘッドはヒンジがたくさんあり手でも動かすことができるということになっています。このR22でもフェザヒンジを除き、ほかのヒンジは全く拘束されていません。何もつながっていないので自由に動くことができます。と書くととんでもない作りになっていると思うかもしれませんが、別に問題は起きません。本当にヘリはよく考えられた作りになっていると実感します。飛行機はアイデアはだれでも考え付きそうですが、ヘリは天才の発想という感じがしてなりません。
これはエキュレイユ、BK117、アパッチのなどの「リジッド(無関節)」ローターでも同じです。構造上剛性は高くできないので実際はリジッドといっても全関節ローターと同じように「やわらかい」構造にせざるを得ないそうです。だってフラッピングできなかったら飛べませんからね・・。
別にここに限った話ではありませんが、ボルトに全てマーキングがしてありますね。特に大事なボルトにはワイヤーロックがかけてあります。
マストバンピングというのは推力がない状態で過大にTeeteringヒンジ(三つある中で真中の上がわにあるやつ)が動いた時にローターの付け根がマストに干渉する現象のことです。ローター平面が傾きすぎたらいかにもそうなりそうな構造だと思いませんか?傾いてマストに当たる部分に白いプラスチックのようなものがついていますが、これはDroopStopという部品です。これが少しは緩衝してくれるのかもしれませんが、いちどマストバンピングに入ってしまったらこんなもの関係ないでしょう。ひどい時にはマストがちぎれるそうですね。別のところにも書きましたが、R22でマストバンピングに入ると、テールコーンをカットするか、あるいはコックピットをローターが直撃することも多いそうな。その結果左席パイロットの首が飛んでいることもあるとか。
なお、ローターを手で押し下げたらこの部品が壊れるそうです。ローターは決して手で押し下げてはいけません。反対側を押し上げなければなりません。このすぐ下の写真に注意書きが書いてありますね。
あるときアパッチのフライトエンベロープを見ましたが、-0.5G機動が許されていました。リジッドならではですね。それを見ながら思ったのですが、初期型コブラ(スーパーコブラでなくて)はヒューイのコンポーネントを流用したので、ヘッドはシーソーのはずです。あの構造で攻撃ヘリに必ず必要とされる匍匐飛行(Nap
on the earth,NOE)ができるのでしょうか?すごく疑問でした。自衛隊マニアの方おしえてください。なおAH-1Z、AH-64、BO105などの攻撃ヘリは全部リジッドヘッドです。当然か・・。
日本で消防ヘリの訓練を見学したことがあります。機種はベル412EPでした。見学者は数十人いましたが、その場でヘッドばっかり見ていたのは私だけでしょうね。ベル社はシーソーヘッドがおおいのですが、412はリジッドです。しかも四枚ローターです。非常に面白かったのを覚えています。本題そっちのけでよそ見ばかりしていました。もう少しだったのですが、残念ながら乗ることはできませんでした。ま、自分で操縦しない飛行機に乗るくらいなら、ハッチを開けてエンジンやトランスミッションなんかを見たほうがよっぽどおもしろいですけどね。
私はラジコンヘリでエンジンをカットした時に、回っているローターを速く止めるためにピッチを最大まで上げています。空気抵抗が増えるのですぐ止まって便利でした。それでR22のマニュアルを読んでいると、「エンジン停止後ローターを止めるためにコレクティブを上げるな。」とわざわざ書いてあって笑ってしまいました。誰でも考えることは一緒ですね。なぜかというとそれをやるとヒンジのフリクションが減るため、ローターがテールコーンに接触することがあるからだそうです。わざわざ書いてあるということは、たぶん誰かやった人がいるんでしょうね。間違いなく。
マニュアル(PilotOperatingHandbook)から抜粋したスペックを書いてみます。
[Main Rotor]
Free to teeter and cone,rigid inplane
つまり、シーソーとコーニングは自由だが、ドラッグ運動はできないということです。ま、これはローターヘッドの構造を見れば当たり前のことです。
Diameter:25 feet 2 inches
つまり直径が約7.7mということですね。
Blade Chord : 7.2inches(constant) 18.3cm
コードとは日本語では翼弦?と訳されます。正式な定義では「翼型の前縁と後縁とを結ぶ直線の長さ」だそうですが、要するにブレードの幅です。
constantというのはコード長が一定との事で、平たく言うと長方形のブレードということです。
Blade Twist : -8 degrees
これはブレードのねじり下げが8度あるということです。これは少し説明が必要かもしれません。
理論的には推力を効率よく出すためには、ローターディスクの全面で一定の吹き降ろしを実現することが必要です。ただし、まっすぐな(ねじり下げのない)ブレードですと、外周の方がブレードの相対的スピードが速くなるため、推力が大きくなります。それをなるべく一定にするためにねじり下げが有効ということです。ラジコンヘリをやっておられる方ならねじり下げありとなしのブレードを使ってみれば意味が分かると思います。
ただしラジコンには背面があります。このときにはねじり下げは逆効果になります・・。
TipSpeed@100%RPM : 672 FPS(FeetPerSecond)=205m/s=737km/hr
まあ、こんなものでしょう。100kt(ノット)で飛んでいるときには、前進側のチップスピードは930km/hrになるので結構音速(音速を時速で定義する際は空気密度と温度が厳密には必要です)に近づくことが分かるでしょう。

またカリフォルニアにヘリに乗りに行ってきました。そうしたら廃棄するブレードを切っていたので断面を撮ってきました。ステンレスリーディングエッジ+アルミハニカム、対称翼と字で読むよりこの写真を見れば一発で構造が分かるでしょう。切った部分は内側から50cmくらいのところなのでだいぶ内側の方です。前縁の部分は切るのが大変そうでした。まあ、ステンレスですから当然でしょうね。
オレゴンチョッパーにローターの上でピョンピョン跳ねてみたというくだりがありましたが、私もやってみました。ブレードってすごく弾力性があっていくらでも曲がる感じです。アルミハニカムが曲がるのは何となく分かるのですが、リーディングエッジも曲がるというのがすこし不思議でしたね。みなさんも機会があればやってみることをお奨めします。こんなに柔らかいものに頼って飛んでいるのかというのがすこし新鮮ですよ。
| Main Rotor stall & Mast Bumping |

R22のマニュアル(POH)にわざわざ1ページをさいて、この2つが載っていました。これはかなり重要な内容であり、わざわざ載っているのもよく分かります。引用してみます。
[Main Rotor Stall]メインローターの失速
中略
Low main rotor RPM, aggressive manuvering ,high collective angle,and slow
response to the low main rotor RPM warning horn and light may result in
main rotor stall.
かなり略しましたが、訳してみます。
「メインローターの失速は、ローターの回転数低下、激しい機動、高いコレクティブピッチ、あとは回転数低下警告に対する反応の遅れなどにより起こる」
まあ、この文章を単にメインローターの迎角(Angle of Attack)が高くなる状況を羅列しただけと認識できるなら正しい理解です。
対処法としては、まず速度を60kt(KIAS)でかつVneの0.9倍以下に保つ。しかし57kt以下にはしない。また急激な操作はしない。サイドスリップを無くす。RPMは上限に保つ。
などなどが書いてあります。
これも要するに「必要パワーを減らす」=>「迎角を減らす」ということが書いてあるだけです。(細かいことですが、RPMを保つの項だけは必要パワーは増やす方向になります。迎角は当然減りますが、RPMは低い方が必要パワーは少なくなります。)
[Mast Bumping] マストバンピング
Mast bumping may occur with a teetering rotor system when excessive main
rotor flapping results from low "G" or abrupt controls input.
A low "G" flight condition can result from an abrupt cyclic pushover
in forward flight. High forward airspeed, turbulence, and excessive sideslip
can accentuate the adverse effects of these control movements. The excessive
flapping results in the main rotor hub assembly striking the main rotor
mast with subsquent main rotor system separation from helicopter.
これも訳してみます。
「マストバンピングはシーソーローターシステムにおいて、低G状態あるいは急激な操作によりメインローターのフラッピングが過大になった場合に起こる。低G状態は前進飛行において急激にサイクリックを前方に押すことによって起こる。高速時、気流の乱れている時、過大な横滑りなどの際に起こりやすい。過大なフラッピングはメインローターハブがマストにぶち当たるため、マストがヘリコプターから分離する。」
マストバンピングは、シーソーローター(正確にはteeteing hinge with underslungの際に)で問題になります。リジッドヘッドでは起こりません。なぜならフラッピングが起こってもどこにも衝突しないからです。
これの本質的な問題は、ローターの傾きを機体(=マスト)の傾きに変換する力を全面的に推力に頼っていることから起こります。Low Gというのは要するにメインローターが推力を出していないという意味ですが、このときにはフラッピングを規制する力はまったくありませんのでフラッピングし放題です。そのためハブがマストに当たることがあるということです。
マストバンピングに関しては、これで墜落することが多かったとのことで訓練でもかなり詳しく教わると思います。
もともとはベトナム戦争でヒューイ(ベルUH-1、あるいはベル204、もちろんシーソーローター)が山の尾根を越えたところに墜落する事故が多発したそうです。事故調査の結果この現象がわかったとのことです。
要するにメインローターから推力がなくなるような低G(当然マイナスGなど論外でしょう)状態になると、テールローターの推力で機体が右に傾きます。そこであわてて左サイクリックを当てるとマストバンピングにはいってしまうとのことです。
オレゴンチョッパーによると、昔は訓練で実際にそのような状況にしていたそうですね。しかし、事故が多発したため最近は無くなったらしいです。
R22もリジッドヘッドにすればマストバンピングは無くなるでしょう。ただし、ただでさえ敏感な操縦性がとんでもないことになるかもしれませんね。
もしアメリカでR22で訓練を始めるとしたら、訓練開始前に「Awareness Trainingなんとか」というビデオを見させられると思います。これは法律で決まっているのでかならずあると思いますが、その内容の半分くらいはマストバンピングについてです。えんえん英語で説明があります。興味深い内容ではあるのですが、訓練前に予備知識がない状態で見ても意味がわからんのではないかという気もします。

R22のマストです。要するにこの先にローターが付くことになります。
非常にシンプルな構造ですね。まあ、全重量を支える場所ではありますが、リジッドではなく、無拘束のシーソーローターシステムですから応力的には楽な構造でしょ
う。
ジェットレンジャーもやはり無拘束のシーソーローターシステムであり、非常にマストが細いです。(なぜなら基本的には曲げ応力がかからないからです。リジッドではそうはいきません。)あれに比べたらR22の方が太いかもしれません。
R22は普通のヘリに比べてマストがかなり長いです。前述のとおりR22は非常に敏感なヘリであり、すこしでも操縦性をマイルドにするために長くなっているのだと思います。重量は短いほうが軽いに決まっているので短くしたかったのだと思いますが、できなかったのでしょう。今は慣れましたが、はじめてみたときのかっこ悪いという印象はマストの長さのせいだったかもしれません。
ピトー管がパイプに接続されているのが分かると思います。構造は知りませんが、このパイプが対気速度計に接続されているのでしょう。
それよりも、ローターの周りの鉄板のみの外装がすごいです。ただひん曲げて止めているだけのようですね。シンプルの極みです。

見てのとおりです。単段減速のベベルギアとPOHに書いてありました。
なおR22については詳しくは知りませんが、トランスミッションがパワーの限界を決めているヘリはたくさんあります。つまりトランスミッションの制限のせいでアクセル全開にできないという意味です。車の発想ではトランスミッションの設計がおかしいと思うかもしれませんが、決して間違っていません。
この理由は高高度性能のためです。高度が高くなるとエンジンの出力は下がってきます。その場合でもカタログ出力をキープするためにエンジンをオーバースペックに設計します。だから、ほとんどのヘリは低高度かつ低温度ではアクセル全開にはできないはずです。もちろんR22も例外ではありません。
ただ、これは私だけではないとおもいますが、オートロのパワーリカバリーでコレクティブを引き過ぎて、マニフォールドプレッシャー(MAP)が30インチとかになったことがあります。つまり、アクセル全開になりパワーが124馬力をはるかに超えたということです。マニュアルに規定がないので、特に問題はないらしいですけど。 これは言い訳ですが、もしあなたが自分でオートロをやってみたらコレクティブを引きすぎる気持ちはわかってもらえるかもしれません。
なお、R22での出力制限はトランスミッションの許容馬力、オイルクーラーのサイズ、エンジンの寿命などからきていると聞いたことがあります。まあまあ当たり前の理由ですね。ただ真偽はしりません。
「Motor Fan Illustrated vol.9 ITS」
これは自動車用のITシステムの特集ですが、突然ヘリのトランスミッションの記事が出てきます。BK117C2のメインローターギアボックスとMD900を題材に取り上げています。
BK117は重量が大きい上にツインエンジン、しかも回転数の高いタービンエンジンです。エンジンはターボメカ、アリエル1E2です。コンプレッサーが一段軸流(というか斜流)+1段遠心で2段のガスジェネレータータービンです。パワータービンはフリーの1段軸流です。
エンジン内にギアがあり、出力が6000rpmになっていますが、それでもまだ早いのでヒトケタ回転数を落とさないといけません。
しかも、BK117はヘッドがリジッドなので設計は大変でしょうね。セミリジッドはその点ラクだと思います。
なかなか面白い記事です。とてつもなく凝った構造をしているのがよくわかります。
ヘリの安全性はオートロに依存していますが、エンジンが止まってもトランスミッションは壊れてはいけません。そういう意味では大変な場所でしょう。R22はレシプロですので回転数ももともと低く、設計はラクだろうと思います。

おまけでAS350(エキュレイユ)のヘッドです。これがユーロコプターが誇る(?)複合材製のリジッドローターヘッド「スターフレックス」です。ローター自体も複合材製だそうです。シーソーでないのでマストバンピングが起こらないですし、リジッドですので機動性も高いそうです。
操縦感覚はリジッド機であるため敏感らしいです。乗ったことがないので感覚は知りませんが。フランスとロシアのヘリはローターが右回転です。これもそうです。だからホバー中は右ペダルを踏みこんでいるらしい。ま、当然ですね。

さらにおまけでラジコンヘリ(アミーゴ)のヘッドです。標準ローターは木でできています。R22よりはるかに複雑ですね。
強度の高いプラスチックを使用しているため各部品の耐久性が高いです。ホバリング、上空ともに文句ない性能です。(と私は思っています。でも、誰に聞いてもアミーゴは傑作だというと思いますよ)実物よりラジコンの方が複雑な機械はそんなにないと思いますが、これはその数少ない例外のひとつでしょう。
システム的には一応シーソーヘッドです。左右のローターグリップを貫通するスピンドルという鉄の棒がシーソー運動をします。ハブの中心に銀色の丸い部分が見えると思いますが、そこがシーソーの支点です。ただ、シーソーとはいえかなり堅いです。手では余り動きません。ゴムのダンパーでかなり動きが拘束されています。ピッチの可変幅が22度くらい取れます。私は-10度(背面用)から+12度くらいで使っています。
プラスチック製でちゃちに見えるかもしれませんが、この機体でもローターの周速は300km/hとかになります。当たったらたぶん死にますね。だいたいこのクラスのヘリでローターグリップにかかる遠心力が200kgくらいです。あるヘリは、「ローターグリップは1200kgでやっと破断する強度を持つ」とか宣伝していました。すごい力です。逆にいえばその程度の力に耐えうるように設計する必要があるということです。
知り合いが60クラス(排気量10cc)のへりの最高速を車から操縦して確かめたそうです。だいたい130km/hくらいだったそうです。超ド田舎の直線道路でサンルーフから上半身を出して操縦したそうですが、間違ってアップを打ってしまったらしく、あっという間に後に飛び去ってしまい(そりゃ当然)かなりあせったそうな。60クラスだと重量は6kg以上あります。こんなんが100キロ以上で突っ込んできたら重傷を負いますよね。
日本製の実機ヘリはパッとしませんが、ラジコンヘリに関しては日本製は世界を制覇しています。とくに、プロポ(コントロール装置)は日本のメーカーの事実上の独占状態です。ラジコンに関して言えば、日本はラジコン天国です。プロポは安く、エンジンも高性能で、燃料はヨーロッパに比べてはるかにやすいです。やっぱり文化の差を感じますね。日本人は細かいことが好きなのかも。

小さいですねー。キャノピーの全幅は44インチ(110cm)です。かわいいですね。デメキンのようです。この前面面積の少なさからも空でこの機体を見るのが難しいのが伺われますね。
きれいにシートがうつっていませんが、シートの下が荷物入れになっています。意外といっぱい入りますよ。しかしシートのできは余りいいとはいえませんね。2000万もするくせに。
シートベルトもついています。ほとんど車のと同じ感じですが、バックルが独特です。その時は別になにも感じませんでしたが、日本への帰りの747-400についていたやつとおなじバックルでした。747とR22は航空機としては両極端ですが、共通部品があるというのがなんとなくおもしろかったです。
ヘッドライトが2つうつっていますがこれは基本的に飛んでいるときしか点けてはいけません。製造元の社長(フランク・ロビンソン、例の安全ビデオでしゃべってる人です)が昔ライト点けっぱなしで本人がその場を離れたところ、機体が火事になったとか。(すごい設計だ・・。車なら訴訟物ですね。航空機だから重量の制限でそういう設計になったと言うことなんでしょうけど。)その後、クラッチをエンゲージしないとヘッドライトが点かなくなりました。
ちょうど写真の真中になりますがキャノピーに白い糸がくくりつけてあります。(この写真では左を向いています。)長さ5cmほどの糸ですが、トリムを取る(簡単に言えばドリフトを修正する)のにとても役立ちます。簡単だけどすごい発明ですね。ちなみにX-planeというシュミレーターでは再現されています。機種でR22を選択すると糸が出現します。実物に乗るまでは「なんじゃこりゃ」とおもっていましたが、実物を知ってからはX-planeのマニアさをさらに知ることになりました。
なお、私が訓練に使用したR22 HPの写真と、最新モデルのR22 betaIIの写真を両方載せてみます。初期型(モデル名が単なるR22)とR22 HPはバッテリーが機首に積んであります。そのため重心が前寄りにあるためテールコーンが水平に突き出ています。対照的にbeta以降(もちろんbetaIIも)は重心が少し後ろ寄りにしてあるため、テールコーンが少し上向きになっています。重心位置の調整はバッテリーをエンジン横に移して行っているようですが、これは多分わざとです。なぜならキャビンはマストより前にあるので、重心位置の制限をクリアーしながら総重量を上げようとすると、自然と重心は後ろ寄りにせざるを得なかったのでしょう。
なお上がHP、下がbetaIIです。
[RobinsonR22 HP]

[RobinsonR22 betaII]


なお、ヘリを運ぶときはこのように小さいタイヤを取り付けて動かします。具体的にはテールを押し下げて押すような形になります。重量は400kgくらいしかないので、そんなには重くないですが、一人ではつらいです。

参考までにR44のスキッドです。さすがに高速性能を追求したのかカバーが付いています。まあ航空機としては当たり前ですね。
R22もおもちゃのようですが、それでも巡航中は150km/hr位は出ているわけです。車で考えても空力的な配慮が十分必要なはずの速度です。ただの円柱は非常に空気抵抗が高いのですが、それもわかっていながらカバーを付けていないということでしょう。やはりコストと重量の面で割り切りが見えます。その割り切りが潔いと思います。

見たとおりの燃料コックです。左席の肩の辺りにあります。

ベータIIのサーキットブレーカーです。左席のひざの下当たりについています。押しこむのがONの状態で引きあげると切れます。右の方にミクスチャー(スティックの右上)、キャブヒート(スティックの右下)、サイクリックフリクション(スティックの左上、十字のノブ)、トリムノブ(ミクスチャーの左)、あとスティックの根元が見えますね。
ブレーカーがずらっと並んでいますが、まあ車のヒューズのようなものです。ひとつだけ赤いブレーカーがありますが、それはクラッチアクチュエーターです。なぜ赤いかと言うと、クラッチベルトが切れた時のプロシジャー(手順)に「クラッチブレーカーを切る」という項目があるからでしょう。R22に限らず、一般的に航空機ではヒューズは使用されません。何故なら、機械が壊れるのを覚悟で電流を流さないといけないときがあるからです。ヒューズだとすぐに交換できませんしね。
パネルにクラッチライトがありますが、それはアクチュエーターが動いている時だけ点きます。飛行中にそのライトが点いた(一瞬なら正常です。パッと点くのはよくあります。ずっとということ)ということは、ベルトが一本切れてベルトを張り直している可能性があります。あんまり引っ張るともう一本も切れちゃうので、手順に従ってブレーカーを切り(つまりアクチュエーターを止めて)パワーを下げてオートロに入る準備をしつつ、すぐ着地せよとマニュアルに指示があります。

荷物入れです。シートを持ち上げると出てきます。結構容量はあります。深さも深く、いろいろ入るのですが、一応重量制限があります。
この写真は左席ですが、右席にも同じように荷物入れがあります。

なぜか日本の機体にはついているが、アメリカの機体にはついていないプライマーです。右席の膝下の部分についています。
寒い時の始動時に燃料を余分に送る装置です。ノブを回しながら引いてあとはシュポシュポとポンプのように何度か往復させる様になっています。実際にはスロットルグリップを何度か握れば燃料は送られるそうなので、そんなに必要ではないとか聞きました。実際にスロットルを(エンジンをかけていない状態で)何度かあおるとキャブから燃料がポタポタたれていました。なんちゅう構造だろうかと思った覚えがあります。加速ポンプが働いているそうです。加速ポンプがどう言う仕組みなっているのかわたしは知りませんが・・。
この機体はまともな装備がついている機体ですが、アメリカで見たある機体はここに「HONDA」と書いてあるテープのデッキがついていました。すごく安っぽいデッキで、どうせ某シビックとかから外したデッキを適当に付けたんでしょう。それを見たときに自由なアメリカの空を実感しました・・。

コレクティブレバーです。握りはスポンジになっています。先にガバナーのスイッチがついており、右側にしたらONです。握る感覚としては、車のサイドブレーキとよく似ています。
この写真ではよく見えませんが、コレクティブレバーの先にガバナーのスイッチが付いています。右に倒すとONです。
ちょっと気を付けるべきことについて書いてみます。コレクティブは当然左手で握ります。車のサイドブレーキと同じ感じですね。もちろん引き上げるとピッチが上がります。これはまあ自然で気をつけることはありません。
最近ガバナーが必須装備に格上げされました。そのためガバナーの無い機体に乗ることは基本的に無いと思います。ガバナーが付いていればスロットル操作は不要です。
またコリレーターといって、コレクティブを引き上げるとそれに応じて自動的にスロットルが開くようになっています。つまり、実際に飛んでいるときには、連動でスロットルの調整が行われ、微調整をガバナーがしているということです。
また握りがスロットルになっています。手の甲側(左?)に回すとスロットルオープンです。手のひら側(右?)に回すとスロットルクローズです。これが曲者でして、バイクのスロットルと逆なんです。バイクに乗っている方ならぜったい逆にやってしまうと思いますよ。
これは個人的な印象ですが、ヘリや飛行機が好きな人はバイク好きも多いと思います。あなたがこのページをここまで読むことに耐えられたということは、機械好きであり、かつバイク好きな人も多いと思います。当てはまる方がもしヘリの免許をR22でとるなら気をつけてください。
空中でやってもそんなに大した事にはなりません。そんなに敏感には反応しませんし、だいたい継続的にコントロールしている時には間違えないのです。わたしが思うのに一番まずいのが、プリフライトチェックの最後にある「Low RPM Warning Horn Check」の時かも知れません。あの時はほんの少しコレクティブを上げてからスロットルを絞ります。そうすると回転数が下がりHornが鳴ってチェックできるという仕組みになっていますが、この時に逆にやってしまってエンジンが吹きあがるのはかなり良くないことです。車が好きな方ならエンジンのオーバーレブのヤバさを知っていると思いますが、ヘリでも同じでしょう。気を付けてください。オレゴンチョッパーにかいてありますが、回転計の上限に張りついてしまったら(回転数は117%だそうです)、1万ドル(100万円のケタ)オーバーホールになるそうです。ああこわ。
それから、エンジンをかけるときにスロットルをあおることがありますが、それも結構やばいような気がしますね。R22のエンジンはキャブだからかもしれませんが、なかなかエンジンがかからないことがあります。そういうときは車やバイクでやるようにスロットルをちょっとあおるとうまくかかることがあります。正しい操作かどうかは知りませんが、そうするのは現実的な対応だと思います。もうお分かりのように、エンジンが掛かったらすぐにスロットルを閉じないと吹けあがるんですね。
ちなみに回転計は%表示とはいえ、実際には100%でも2800rpmくらいしか回っていない低回転エンジンです。簡単にオーバースピードになるんですね。油断すると回転が一気に吹けあがるので注意する必要があると教えられました。ま、アイドルが55%(1500rpm)ですので、実はスロットル位置がフルクローズでもそれなりにスロットルは開いているのかもしれません。車などではアイドル700rpm、最高回転数7000rpmなどはざらですが、R22と比較するとR22は(相対的に)極端にアイドル回転数が高いのがわかると思います。
余談ですが、回転数70-75%をキープしてはいけません。マニュアルに書いてあります。テール?の共振のため、一時的に通過するのはよいがそこをキープするのはダメだそうな。ボケボケしているとランアップやクールダウンの時に入ってしまうので注意しましょう。とくにランアップの時はスロットルが一定でも微妙に回転数がずれてくることがありますので注意してください。

キャブヒートなどです。写真の中に書いた説明のとおりです。

天井部分です。ぶら下がっている取っ手みたいなものがローターブレーキです。引っ張るとローターが止まるようになっています。
マップランプという、赤い照明がついています。すごく暗いですが・・。
ここからはチェックリストの解説をしてみます。全体的には、当たり前と思われるような項目も多いです。ただし、忘れないようにもれなくという目的で作られるものなのでそれは仕方がないところでしょうね。
なお、このチェックリストは2000年8月に承認された版であり、かなり古いです。現在は細かいところが改訂されています。まあ、雰囲気は十分に伝わると思いますので参考程度に見てみてください。
念のためそんな方はおられないとは思いますが、これを決して実際には使用しないでください。
なお、後ろにおいてあるのはニーボードといって、膝に巻きつけて置いてその上で地図などを見るための道具です。

簡単に項目を解説してみます。
[Before Starting Engine]
Seat Belt : Fastened
シートベルトを閉めましょう。
Fuel Shut-off valve : On
燃料バルブをを開けるということです。左席の肩の後ろにあります。通常のオペレーションではこのバルブを閉める手順はないはずですので、普通は開になっていると思います。
Cyclic/Collective friction : Off
Cyclic,Collective,pedals : Full Travel free
Throttle : Full Travel Free
Collective : Full down,friction on
Cyclic neutral : Friction on
Pedals : Neutral
フリクションをはずして、すべてのコントロールをグリグリ動かし引っかかるところがないことを確認するということです。荷物などに干渉しないことを確認するということでしょう。ペダルニュートラルのときは、両方のペダルをまとめて片方の足で踏むと良いです。
Governer : Off
ガバナースイッチOffです。コレクティブの先についているスイッチを左側にします。
Circuit breakers : In
ブレーカーがすべてIn(押し込んだ状態)になっているのを確認するということです。
Carb heat : Off
キャブヒートのノブを押し込むということです。
Mixture : Full Rich
Mixture guard : Installed
ミクスチャーのノブをいっぱいに押し込むということです。エンジンをカットする際に引いてあるはずなので、押し込んだ後にミクスチャーガード(プラスチックのわっか)をはめておけば良いです。
Primer : Down and locked
All Swicthes/avionics : Off
Clutch : Disengaged
ミサイルみたいなカバーの付いたスイッチがオフであることを確認ということです。もしこれがON(正確にはEngage)になっていると、スターターがエンジンだけでなくローターごと回す羽目になります。
Altimeter : Set
ATISで聞くか、空港の標高をセットします。
Roter Brake : Disengaged
左肩の辺りにローターブレーキの取っ手があります。途中のチェーンを引っ掛けることができるようになっていますが、それをはずすということです。
Map light : Off
まあ当たり前ですね。
[Starting engine and run-up]
Master Switch : On
赤いスイッチを入れます。ちなみにこのスイッチは非常に”特別な”意味のあるスイッチです。というのが、このスイッチに連動してアワーメーター(ホブズメーター)が動きます。つまり、機体をレンタルしているときはこのスイッチを入れたところから切ったところまでお金がかかり続けるということです。(泣泣)
Throttle twists for priming : As required
スロットルをひねると加速ポンプの働きで燃料がすこし送られます。まあ乱暴に言えばチョークのような働きとでもいうのでしょうか。暑いときはしなくても良いです。
Throttle : Closed
スロットルが全閉であることを必ず確認してください。もし全開だったりしたらエンジンオーバースピードでオーバホールの憂き目にあいます。スロットルを親指側に回しておけばOKです。
メンテナンスマニュアルにオーバースピード点検の手順があります。それによると110-116%はメインローターとテールローターのダイナミックバランスをチェックし、ベアリングをチェックすることになるようです。116%を超えたら、さらにブレードをRHCに送り返す必要があるらしい。ちなみにエンジンの関してはライカミングの指示に従えと簡潔にかつ適当に書いてあります。
Area : Clear
まわりに誰もいないことを確認します。クリアーと大声で叫びます。
Storobe light : On
ピカピカ光る白いライトをつけるということです。
Ignition switch : Start,then both
ここでエンジンがかかります。まあ、車のエンジンをかけるのと大差ないです。
Start then both となっていますが、Bothというのはマグネトを両方使っているという意味です。平たく言えばいつもの場所です。Thenとは書いてありますが、手を離せばbothに勝手に戻る(丁度車とおなじです。)ので、実際にはただひねって手を離すだけです。
Starter-On light : Out
Set Idle Speed : 55%
Clutch switch : Engaged (no delay)
Alternator switch : On (no delay)
クラッチスイッチがno delayとなっているのは、エンジンスタートの際にはベルトが滑っているので、滑っている状態を長時間維持するのが良くないからでしょう。
Blades Turning : Less than 5 seconds
5秒以内にブレードが回り始めるというのが基準ですが、実際にはほぼ同時に回り始めます。
Oil Pressure in 30 sec : 25 PSI minimum
油圧チェックです。数値で指定してありますが、実際にはゲージの色で見ます。
Avionics,Headset : On
ヘッドセットをつけてやっと静かになります。
Wait for Clutch light : Out
Waitと書いてありますが、ここで数分待つことになるでしょう。
Warm-up RPM : 70 to 75%
まあウォームアップです。飛行機の場合はタキシングとウォームアップを同時に行うことも可能ですが、ヘリの場合はホバリングで全開に近いパワーが必要なのでそのような都合の良いことはできません。まあ、アパッチみたいに車輪式のヘリならできるかもしれません。
ちなみに70-75%に維持するのは結構大変です。スロットルがあまりスムーズに動かないことに加えて、だんだん回転数が上がったり、そして下がったりするので油断できません。少なくとも持続的に60-70%には入れてはいけません。これはテールが共振するため、激しくテールローターギアボックスが揺れ、シールの隙間からオイルが漏れ出すことがあるかららしいです。
Engine gages : Green
実際にはCHT(Cylinder Head Temperature)シリンダーヘッド温度が上昇するのを待つことになります。
Warning Light : Out
警告灯が点いていないのを確認せよ、です。当たり前ですね。
Mag drop at 75% RPM : 7% max in 2 seconds
これはマグネトを左右の片方にしたときの回転落ちが極端でないことを確認ということです。ツインプラグですが、どこかのプラグがダメになっているとここで引っかかるはずです。
Carb heat check : CAT rise/drop
キャブヒートを引いて、CATがあがることを確認です。あたりまですね。回転数が少し下がるのが正常です。
Sprug Clutch check : Needles split
ここはヘリに特徴的なチェックです。実際にやることはただスロットルを急激に閉じるだけのことです。そうすると当然エンジンの回転数が落ちます。そのときにそれに追従してローターの回転数が落ちなければ正常です。つまり、連動しているエンジン&ローターの回転数の”針”が”別々に”動くという意味です。
具体的には、これはオーバーランニングクラッチ(スプラグクラッチ)のテストをしています。ローターの回転数よりエンジンの回転数が低いときはエンジンはローターから切り離され、ローターが空転します。要するにオートローテーションの時にこうなるわけです。
もし、このテストで異常があった場合にどのようなことになるかというとオートロができなくなります。つまり、たとえばエンジンが焼きいて止まってしまった場合はローターも止まります。これはどうしようもなく、操作のしようがありません。
Doors : Closed and latched
ドアを閉めるのは当たり前のようですが、書いてあります。
Limit MAP chart : Check
チェックリストの裏にMAPチャートがあるので見ておけということです。つまり、どこまでパワーを使っていいかチェックするということです。
Cyclic/Collective friction : Off
Governer On : RPM 102-104%
ガバナーをいれ、そして80%まで回転数を上げるとあとは104%まで回転を自動的にあげてくれます。
Lift Collective,Reduce RPM : Horn/light at 97%
これはLowRPM Hornのチェックですが、コレクティブを上げろと指定してあります。これはコレクティブがフルダウンだとこの警告がならないからです。ほんのすこし上げれば十分です。
Area : Clear
周りに誰もいないことを確認して離陸です。
[Shut Down]
Collective Down : Friction on
Cyclic/pedals neutral : Friction on
Governer : Off
Idle at 70 to 80% : CHT drop
ここまで一気にやってしまって、あとはCHTが落ちてくるのをじっと待つことになります。真夏だと結構時間がかかります。お金がこのときにもかかっているので結構いらいらする時間ですね。
Throttle : Closed
Clutch switch : Disengaged
Wait 30 sec : Pull idel cut-off
ミクスチャーをいっぱいまで引きます。当然リーンになるのですぐエンジンが止まります。航空機はなぜか点火カットでなくミクスチャーでエンジンをカットします。
Mixture guard : Back on mixture
Wait 30 sec : Apply rotor brake
ブレーキをかけてローターを止めます。なかなか止まりません。なお、ローターを止めるときはローターを前後方向にそろえて止めましょう。
Clutch light off : All switches off
クラッチが完全にDisengageした事を確認したらスイッチオフです。
チェックリストの裏です。速度制限やパワー制限が書いてあります。


これはPOHからコピーしてきました。R22でも各モデルごとにこのチャートがあり、最新のベータIIは数字の表になっています。しかし、理解するにはグラフの方がよさそうなのでベータのものを載せてみました。
このグラフからは、TakeOffRating(離陸時に使用できるパワー)を気温と高度から読み取ることができます。たとえば気温(OAT)20度で高度(圧力高度)の場合(ピンク色の丸)は24インチまで使用できます。なお赤で囲っている場所はありえない領域です。
連続最大出力(MCP)はこれより1インチ引けと書いてあります。
気温と標高ということは密度高度(Density Altitude)のことではないかと思われた方は鋭いです。そのとおりです。この表は本質的には密度高度とMAPの対照表です。
Hight-Velocity Diagramとオートローテーション
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これが有名なHight-Velocity Diagramです。別名デッドマンズカーブとも言います。これは見ての通りロビンソンR22のものです。各機種にそれぞれあります。
この図で斜線が引いている部分で飛んではいけませんという表です。なぜ飛んではいけないかというと、この斜線内の領域でエンジンが止まった場合(power
failure)には安全にオートロに入れないためです。
つまり、地面近くである程度まで加速してから上昇するべきということが分かります。推奨離陸プロファイルもそのようになっていることが分かると思います。

前からロビンソンヘリコプター(RHC、Robinson Helicopter Company)の工場の見学をしたいと思っていたので行ってきました。ファクトリーツアーと名前が付いていますが、単なる工場見学です。
ロビンソンの本社(トーランス空港のすぐ南)に電話をしたらすぐ予約できました。一応曜日は決まっているとのことなので、電話で聞いてみるとよいでしょう。ただ見て回るだけなので人数制限はあまり厳しくないと思います。
私のときは私を含めて二人でしたが、もう一人はアメリカ人でシコルスキーのテストフライト部門のエンジニアでした。何のために来たのかよくわかりませんが、ロビンソンとシコルスキーはまったく競合していない(言ってみればハイエンド専門メーカーとローエンド専門メーカー)ので説明の人も気楽に説明していました。あまりテクニカルなことは答えが返ってこないこともありますが、知識の限りの説明は答えてくれます。英語力はある程度あったほうが見学していて面白いと思います。
なお中は撮影禁止なので写真はほとんどありません。
R22とR44が並んで製造されていますが、ラインの長さが明らかにR44の方が長いです。R22とR44だと実用性はまったく次元が違うので、訓練機としてでなければR44の方が人気があるのは当然でしょう。R44は1機約5000万円なのでほかのタービン機に比べてかなり安いです。
また、ロビンソンの特徴は内製率がものすごく高いことです。全部品の85%は内製だそうですが、エンジン(ライカミング製)以外はほとんど内製でしょう。アルミの棒とかインゴット、スチールの板とかがおいてあり、「これを原料に加工します」と無造作に説明されていました。 もちろんハイドリックシステムも内製です。クリーンルームで製造されていました。
この内製率の高さの理由についても聞いてみましたが、「わからない」といわれました。これは経営哲学の問題なので一介の社員に聞くのも無理があったかもしれません。
また、この会社の特徴として、研究部門が小さいことが挙げられるでしょう。設計部?はたしかに非常に少なく、説明でも従業員の95%は製造ラインで働いているとのことでした。
なお、製造工程はライン化されていますが、自動車のような完全なラインにはなっていません。ロボットはまったくありませんでした。NC旋盤やマシニングセンタ、プレス機などが並んでいて部品を作り、その隣のラインで検査、そのさらに隣で組み付けといった感じの配置です。ちなみに工作機械は日本製が非常に多かったです。
ブレードの製作に関しては非常に気を使っていました。ヘリの生命線ですから当然ではありますが、大変そうでした。ちなみにメインローターブレードの後ろ3/4はアルミハニカムのサンドイッチ構造です。そのハニカムの引き伸ばす前のものが説明用においてありました。アルミの塊みたいな感じですが、引き伸ばすと蜂の巣みたいに伸びる状態です。
梱包も面白かったです。キャビンを45度上を向いた形にして木製の小さいコンテナに格納し、そしてローターとテールローターも木製の細長いコンテナに格納されていました。出荷先がリストにしてありましたが、本当に世界中に出荷しています。出荷待ちの20台くらいのうちの1台は日本向けでした。
ただしバラバラの状態で出荷すると組み立て後の検査工程が大変なので、アメリカ国内なら飛んで帰る人が多いそうです。わかる話ではありますが、トーレンスは西の端にあるので東海岸なら相当時間がかかるような気がします。巡航はたった80ktなので確実に数日かかるでしょう。ぜひ一度やってみたいですが、相当疲れると思います。
また内製ですから、検査工程が非常に多いです。作っては測り、組みつけては測り、完成したら測りといった感じですね。航空機ですから当たり前のことではあります。
全体として製造工程でのサプライズはなかったです。大体予想通りであり、手作業が多いことと、検査の工程のコスト、FAAの認証のコストなどを考えると、R22の価格(23万ドル)は納得できると感じました。
今の10倍多く売れたら、部品の内製率を下げて完全にライン化してしまえばかなりコストは下がると思いましたが、難しいでしょうね。
最後に例のシコルスキーのエンジニアが「R66のラインはあるのか?」とか微妙な質問を飛ばしていました。たまたまスーパーバイザーなる人が通りがかったため質問に答えてもらっていましたが、量産体制に入っていないのでラインはないらしい。ただテストはしていてもう実際に飛んでいるそうです。
その他には「何でR22とR44のテールローターの回転方向が違うの?」と質問していましたが、「そんなことはわからない」と一蹴されていました。まあガイドさんはエンジニアではないのでムリもない答えだと思います。しかし私もぜひ知りたい。かならずなにか理由があるはずです。
ついでにメインテナンスマニュアルとパーツリストを買ってきました。両方で185ドルで結構高いですが、構造の勉強には最高の資料ですね。値段なりの価値はあるのではないでしょうか。ただし、日本の代理店を通すとおそらくとんでもない値段になると思うので、その場合は微妙ですね。なおこのマニュアルとリストは大きくて邪魔です。A4より一回り以上大きく、片方だけで厚さが5cmくらいあります。渡されたときに目を疑いました。
構造の勉強に役に立ちますが、マニュアルをみてびっくりしたような構造の部分はなかったです。おおむね想像どおりです。テールコーンの中のベアリングの支持も本当にステーのフリクションで振動を吸収する単純な構造でした。聞いていたとおりです。
Robinson Helicopter Company本社正面

工場内で唯一撮影を許可された場所です。これからテストフライトをする機体が並んでいます。

コラム風にしてみました。実物とラジコンはぜんぜん違うものです。そもそも比較の対象にするのが間違っているかもしれませんが、
ラジコンをやっている人にとってR22をどのように感じるものかということを書き連ねてみました。
まず、最も違うのがパワーです。ラジコンでは有り余るパワーでむちゃくちゃなことができますが、R22はパワーが本当にありません。とくに、重い人が二人乗って、真夏とかになるとホバリングができないことさえあります。
特別な事情がないかぎり実機では地面からの垂直上昇はしてはいけませんが(なぜなら危ないから)、それをするともう本当にイライラするくらいゆっくりしか上って行きません。でも、ラジコンだったらすさまじい急上昇ができます。とくに、背面で地面すれすれで地面効果だけでホバーしてるみたいな状態からの急上昇は最高です。半端じゃないスピードで上がれるので快感です。
サイクリックの感触は余り変わりませんね(そう感じるだけで実際にはちがうでしょうが・・。)。R22ではサイクリックの操作範囲は数cmくらいです。具体的にはマッチ箱くらいの範囲しか動かさなくても十分飛べます。特にホバー中はmm単位で無意識に修正しているとおもいますよ。ラジコンでも派手な動きをする時は思いっきり切りますが、スムーズに飛ばすときには同じような感じです。R22は無拘束のシーソーなので運動性が悪いはずですが、私はそうは感じませんでした。ただ、オートロに入る瞬間はたしかに効きは悪くなります。
コレクティブの感覚(?)はぜんぜん違います。実機は回転数の制限とかパワーの制限がありますが、ラジコンはやりたい放題です。実機ではフルパワーを使うときでもマニフォールド圧を見ながらじわじわコレクティブを上げていく感じになります。
一番違うのはラダーかもしれません。今のラジコンは高性能なジャイロがテールをがっちりと押さえてくれます。風のあるときにホバリングターン(ピルエット)をするにしても、どの方向でもラダーは切っただけ一定速度で動きます。風が15ノットくらい(かなりの強風)あっても関係ないです。反動トルクのことなど考えなくても勝手に押さえてくれます。パワーを上げると同時にラダーをあてるというような必要はありません。もしそうなっているならジャイロの性能が悪いか、セッティングがおかしいです。ラダーを思いっきり切ると機体を毎秒1.5回くらい回転させられます。
対照的に実物は常に自分でラダーを当てつづける必要があります。ホバリング中はかなり左ペダルを踏んでいないといけませんし、コレクティブとペダルは常に同時に動かさないといけません。なにより違うと感じたのは、実機は曲がるときにはラダーは当てなくていいことです。飛行機はアドバースヨーを打ち消すためにラダーが必要ですし、ラジコンヘリでもラダーを当てないと変なことになります。しかし実機は要りません。最初のほうはよくインストラクターに注意されていました。しかも、ホバーから加速していくとテールローターのトランスレーショナルリフトが効いてくるのと、コレクティブがそのままにもかかわらず必要パワーが減ってガバナーがスロットルを勝手に閉じて行くので、機首がだんだん左を向き始めます。そういうのも全部自分で直さなければいけません。無意識に修正してしまうので別に大変ではないですが、違いますね。
それから実機だから高級な装備がいっぱいついているというのは全くの誤解です。バートルとかS76のようにでかくて高いヘリはともかく、ローエンド機R22には何もついていません。全てがマニュアル操作です。もちろん車よりも装備は少ないです。なーんにもついていませんよ。車用語をつかうなら、オーディオなし、パワステなし、エアコンなし、クルーズコントロールなし、カップホルダーなしとかそういう感じです。でも、ヒーターだけはついています。航空機には必須でしょう。ある友達が、「ヘリにはレーダーはついてないの?」とか聞いてきましたが、R22にはそんなもんあるわけありません。
R22にはオートパイロットもないので手を離すことはできません。とくに右手(サイクリック)は片時たりとも離すことはできません。左手(コレクティブ)は平和に飛んでいる時なら離すことができますが、ホバー中は離せませんね。あるときヒューズ500に乗っている警官(アメリカのポリスですよ)と話しましたが、ヒューズ500はオートトリムがついているので、トリムを入れるとサイクリックの現在の位置を保持してくれるそうです。要するに手が離せるということなのですが、その時のトリムはその時の重心位置と釣り合っているわけです。逆に言えば、トリムが入ったまま重心位置を移動させればヘリもそれに連れて動くわけです。もっと平たく言えば、機内で人間が移動したら、動いた方向に機体が傾くそうです。そうやって遊んでいたと言ってました。ようやるわ。というかそんなことをよく考え付くわ・・。
実物は高重量でホバーしていると、左ペダル量が増えます。さらに風が15ノット(スチューデントが飛べる上限くらいの風)くらい吹いているときに、左ホバリングターンでもするとなると大変です。だいたい、感じとしては少し踏んだだけではびくともせず、ある一定の量を超えた瞬間にくるっと回ってしまうかんじです。ぜんぜんリニアではないです。ラジコンと違いますねー。ひどいときには左ペダルを使いきってしまってどうしようか困ります。そういうときは、コレクティブを瞬間的に上げて機体を浮かせる感じにしておいてからコレクティブを少しだけ下げます。そうするとガバナーがスロットルを閉じますので反動トルクが減り、くるっと回ることができます。しかし、もちろん回り過ぎがちなので、すぐペダルを戻す感じになりますね。
R22にはあんまり関係ないかもしれませんが、状況によってはホバー中に左ペダルを使いきってしまうような設計のヘリもあるらしいですね。(攻撃ヘリのコブラの初期型なんかはそうらしい)これは単に左ホバーターンができないというレベルの話ではありません。これはそれ以上パワーを足せないということを意味します。何かあったらどうするんでしょう・・。ま、R22はテールローターも大きいのであんまり関係ないかも。
ちなみにラジコンは定速直線飛行中なら手を離せます。なぜかエレベーターを前に押す必要があまりないです。なんででしょうねえ。ちなみにホバリングでは手放しはほとんどできません。きちんと調整されたヘリでさえ、風が無い時に数秒できるというくらいでしょうね。60クラス(大きい)のヘリだともうちょっと安定しているかもしれませんが、風があったらもう全く手を離すことはできません。
R22は鋼管のスペースフレームです。ま、一言でいえばジャングルジムです。オーバーホール中のR22もみましたが、やっぱりジャングルジムでした。スペースフレームは原始的なようですが、生産数が少ないならば高強度高剛性でかつ軽量に作れる方式です。材質は知りませんが、多分普通のスチールでしょう。スチール(鋼鉄)も原始的ですが安くてまあまあの比強度もち、なにより信頼性が高い材料です。でもアルミかチタンにすりゃもっと軽くなりそうだなあ。などと思ったりしました。
テールコーンはジュラルミンのモノコックです。ここはよく考えられています。フレームの接続部位もきちんと補強されてますし、リベットがこれでもかとばかりに打ってあります。ちなみにプリフライトチェックでもリベットの目視点検が項目に入っています。テールコーンの外皮は1次構造ですからね。当然といえば当然です。
ラジコンのフレームはなんと表現したらいいのかは知りませんが、とにかく材料はアルミ、カーボン、高強度プラスチックなどです。どれが一番いいとは言えないのでしょうが、安いヘリはプラスチックのことが多いですね。ただ、プラスチックでもいいものはいいです。ラジコンヘリごときでもフレームの剛性はもっとも大事な部分に入るくらい重要な性能のひとつです。整備性とコストと剛性を全て実現するのは大変だろうなと思いますね。
ヘッドの形式も違いますね。大部分のラジコンはダンパーゴムで拘束されたシーソーヘッドです。(フラッピングとかもありますが、主流とはいいがたいです。)フェザヒンジはもちろんあります(無いわけはないですが)。リードラグヒンジもあります。コーニングヒンジはありませんし、プレコーン角もついていません。リードラグダンパーはありません。ローターグリップのボルトの締め付け力によりドラッグ方向のフリクションを発生させているだけです。
R22に乗りながらいつも不思議に思っていたことがあります。それは、R22では速度を出すとスティックを前に押していないと水平に飛べません。これは空力的にもっともだと思うのですが、ラジコンでは別にサイクリックをいじらなくてもまっすぐとぶんですよね。何でなんでしょう。よくわかりません。はっきり言ってラジコンの方が構造が複雑でわかりにくいです。
R22は無拘束のシーソー+独立コーニングヒンジ+吊り下げ式(UnderSlung)でリードラグヒンジなし(Rigid Inplain)です。全金属製のローターで剛性は実機らしく低くできてます。フラッピング方向の剛性は本当に低く、止まってる時は垂れ下がってます。ネジリ剛性は高いと思いますが、メインローターをねじってみたことはないので知りません・・。
R22のようなシーソーヘッドでは「マストバンピング」という物が起こります。これは推力がない時にサイクリックを入力すると起こります。一言で言うと、マストバンピングがあるからR22はロールやループができないのです。ラジコンも広義のシーソーヘッドですがダンパーゴムで拘束されていることと、吊り下げ式でないことでぜんぜん関係ないです。
R22のローターはアルミニウム合金製でステンレスリーディングエッジ付です。翼型は確か対称で、ネジリ下げは8度ついてます。詳しくは上の方に掲載したブレードの断面の写真を見てください。止まってる時はフニャっとしてます。当たり前ですね。面白いのが、ほこりなどでローターの塗装がはげるのです。それもきれいに三角形にはげてました。外側ほど大きくはげてるのでちょうど三角形になるんですね。ローターは上から見るとハデな塗装(黄色と白のシマシマとか)がしてあります。分かりやすいようにだと思いますが、それが外側ほど大きく内側ほど小さくはげるのでちょうど三角形にはげるんですよね。笑ってしまいました。まあ、これはほこりっぽいカリフォルニアだけの特殊事情かもしれません。どのくらいほこりっぽいかと言うと、このぺーじの冒頭の写真なんかものすごくほこりっぽいですよね。たしかあのときの視程は3マイルくらいだったと思います。たいしたことではありませんが、なんだか笑えたので書いてみました。
ラジコンのローターの剛性は結構高いです。特にねじり剛性はめちゃくちゃ高くできてます。フラッピング剛性はローターによって違いますが、いくら柔らかいものでも実物みたいにはふにゃふにゃしてません。翼型は対称や半対称など色々ありますが、背面する人には対称が向いてますね、もちろん。なお、ローターのネジリさげはあったり無かったりです。個人的にはネジリ下げは嫌いです。明らかにホバーでは浮きますが、背面しにくい・・。材質は木、カーボン、FRPと何でもありです。全部ウェイト(鉛が多い)が前縁に入ってます。ローターの重量は色々あります。一般的にFRPは重く、木は軽いです。カーボンはまちまちかも。ローターの重量はオートロの最後の瞬間にもろ効いてきますので重要な性能でしょう。
R22のテールローターは機体に比較してやけに大きくできてます。翼型は非対称で、キャンバーラインももちろん曲がってます。あらかじめコーニングアングル(プレコーン角8度くらい)もついており、なによりデルタスリー角45度のフラッピングヒンジがついています。はじめて見た時に「テールローターにまでヒンジが・・」とおもいましたが、冷静に考えれば当たり前のことですね。リンケージなどははっきり言ってラジコンとまったく同じです。「全く」です。違うのは材質だけかも。回転方向は機体を左から見て、反時計周り(CCW)です。時計回りの方が効率がいい(メインローターのダウンウォッシュを受けることができるから?)のだけど、重量の関係でできなかったとか。なおR44は時計回りです。
ヘリにとって危険な状況にはセトリングウィズパワーとかいろいろありますが、LTE(Loss of tail rotor effectiveness)というのもあります。これは要するにテールローターのセトリングです。具体的にはホバー中に激しく右ラダーを切った時に起こるそうです。あるいは、メインローターのダウンウォッシュをテールローターが巻き込んだ時にも起こるそうな。ただし、前述のとおり「R22はテールローターの効率がいいためLTEには事実上入らない。」とフランクロビンソンが言っていたそうです。まあ、それでも気持ちがわるいので私はホバーターンはいつも左ターンしていました。ただ、左ターンはパワーが余計に必要になるという欠点もあります。特に高温度高高度(一言で言うと高密度高度)でホバーしているときに風に逆らってターンするときに必要パワーが急上昇します。(MAPが急上昇します。ひえーーー。)それを補償できるだけの余剰パワーがあれば別に問題になりませんが、フルスロットルに当たってしまったらそのままセトリングに入る恐れがあります。地面すぐ近くなら問題無いですけどね。逆に高度が十分あったならやっぱりOKです。落ちつつ加速すれば問題ないわけですからね。中途半端な高度が一番危険です。
ラジコンのテールローターはリードラグヒンジ(?)のみあります。フラップヒンジはありません。本当のリジッドです。そのため、あまり硬い材質のテールローターを使うと負荷に負けてテールローターの駆動ベルトが歯飛びすることがあったそうな。私のヘリのテールローターはプラスチックの柔らかいやつです。これは余談ですが、ラジコンヘリでパンッとラダー入力を入れた時のテールの動きはヘリのできを反映します(と思います)。フレームの剛性なんかまで分かるような気がしますね。(ただの推測ですが。)最近はなぎなたみたいな形のテールローターが出てます。騒音を減らすことができるとか。騒音はどうでもいいけどカッコいいから欲しいです。
ラジコンでは「540度ストールターン」という技があります。ストールターンをしてその頂点で1.5回転(540度)くるくるっとまわってまた降りてくる技です。個人的には美しくて好きなんですが、ある意味LTEに入れるテストみたいな技ですね。なんども何度もやりましたが、なってしまったことは一度も無いです。たぶんラジコンもLTEには入らないんでしょう。いままで何100時間も飛ばしましたがセトリングも無いし、LTEも無く、エンストも1度(しかも燃料切れ)だけ、コントロール不能になったことは無く、という風に意外と信頼性は高いのかもしれません。
R22には排気量6リッター(360キュービックインチ)の強制空冷水平対向4気筒OHVエンジンがついています。指定ガソリンはAV-GASの100LLと言うやつです。ま、標準的航空ガソリンです。6リッターで4気筒ですから、1気筒でカローラくらいの排気量があります。だいたいガソリンエンジンで効率を維持できるのは1気筒500mlくらいまでらしいので、効率悪そうです。”もちろん”1気筒2バルブです。でかいバルブがついてます。日本車のエンジンを見慣れた目で構造をみると、30年前の構造といっても過言ではない感じです。
R22のエンジンは空冷です。最初に見たときに、「おおこれは俺の原チャ(ホンダスーパーディオ98年式)と同じだ。どっちも強制空冷だし。」と思いましたね。むかしあまり飛行機のことを知らなかった時は「いまどき空冷エンジンなんて」と思っていましたが、飛行機は空冷一色で驚きました。
O-360(これはシリンダーの配置が対向”O”ppositeで排気量360キュービックインチという意味です)の出力は本来は160HPです。5分間限定の出力は131HPです。これは97.7kwです。総重量を600kg(上限に近い重さ)としますとパワーウェイトレシオは6.1kg/kwとなります。ラジコンは排気量は選べますが、私のは30クラスで排気量は0.30キュービックインチです。普通に書くと5.23ccです。強制空冷単気筒2サイクルエンジンです。常用回転数は2000-22000rpmです。これでカタログ馬力は1.2ps@18000rpmです。(=0.882kw)燃料はニトロ入りのアルコールです。私のヘリの重量は3.5kgくらいなので、実物と同様にパワーウェイトレシオを計算してみます。3.96kg/kwとなります。意外と低いですね。もっと違うかと思っていました。
しかし、よく考えると5ccで0.9kwを搾り出すエンジンはすごいですね。これが一万円くらいで買える日本と言う国は幸せなところかも。まあ、ヘリのエンジンはパワーを余り重視せずにトルク特性と過渡特性を重視しています(これはラジコンの話です。念のため)。そういうわけであまりパワーはありません。逆にラジコンカーのレース用エンジンはパワー命です。排気量3.4cc、2.4ps(1.76kw)@32000rpmとかいうものもあります。リッターあたりの馬力が700ps/Lとかいう信じられないレベルに達しています。(ちなみにF1が250くらい)
もっと意味のない比較をしてみます。R22の重量は600kgといいましたが、一人で乗っていてしかも燃料が減っていたら重量は1100ポンド(lb)を切っていることもあると思います。つまり550kgくらいです。車でいうと、軽自動車でも500kgものはなかなかないでしょう。アルトワークスは660ccのターボでパワーは70馬力くらいのはずです。軽のターボを遅いと感じる方は少ないのではないかとおもいますが、そう言う風に考えると500kgで130馬力というのはものすごいパワーウェイトレシオなわけです。でも、R22の加速は全然すごく感じないのは不思議ですね。まあ、重量を支えるのにかなりのパワーが必要なんでしょう。オレゴンチョッパーの受売りですが、定速水平飛行での必要馬力は50HPくらいだそうなので、何となく納得です。
ちなみにR22の加速は水平に落ちて行く感じで、車や747みたいにグーっと来る感じではありません。スーっと加速して行きます。気がついたら速度が出ているという感じです。スピード感は本当にないです。巡航中もスピードは余り感じません。たとえば車で80km/h(50kt)で走るのと150km/h(80kt)で走るのは、全く感覚が違います。でもR22だとそれほど差は感じません。もちろんスティックを前に押す量は全然違うのですが、そんなものはすぐ慣れます。
ラジコンの燃料をニトロ入りと書きましたが、正確にはニトロメタン(英語ではナイトロメッセン)入りのメタノールです。メタノール(英語ではメッサノール)はめちゃくちゃ安いんですが、ニトロメタンは高いです。だから、ニトロの割合で燃料の値段は全然かわってきます。ちなみに、アメリカのドラッグレースの燃料はニトロメタンです。トップフューエルは6000馬力だそうですが、ラジコン(排気量わずか数cc)でこの出力ですから、スーパーチャージャー付きの大排気量なら6000馬力が十分可能に思えてくるのが不思議です。
あるとき遊びで自分のスクーターにラジコン用のニトロ30%の燃料を入れて走ってみました。とんでもないパワーでした。ニトロメタンは爆薬と燃料の中間のような物質で、きちんとパワーを引き出すにはかなり空燃比を濃くセッティングしないといけないのですが、そんなこと何もしなくてもアホみたいなパワーでした。100m全開にしただけでピストンに傷が付いてしまいましたが、あれは最高でした。わたしのスクーターは70ccに改造してあるので初めから十分速いのですが、ニトロ入りではさらに狂ったようなパワーが出ました。個人的には気に入っていましたが、30%ニトロはリッター1000円以上しますのでそれ以来やっていません。壊れてもいいから暴力的パワーを体験してみたいという方はやってみると楽しめるかも。ただし責任は取りませんよ、もちろん(笑)。
ニトロを入れるとなぜパワーがあがるかというと、ニトロ基(-NO2)は燃焼する時に酸素を放出するからです。エンジンというものは、要するに単位時間にどれだけの燃料を燃やせるかで出力が決まるのですが、レシプロエンジンでは吸入酸素量でそれが規定されます。でも、ニトロが入っていたら吸入した酸素以上に燃料を投入できるので出力が上がるわけです。この極端な例として、爆薬があります。たとえばTNT(トリニトロトルエン)では燃焼時に必要な酸素が元からTNT内にニトロ基の形で入っています。こうなるともう燃料とは言えず、燃焼ではなく爆轟(Detonation)します。爆轟の速度は音速を超えるので衝撃波が発生し、これが破壊力を生みます。
R22の燃料は航空ガソリンの100LLというものです。LLというのはLowLeadの略で、低鉛という意味です。本当に標準的な燃料で、アメリカの空港のガソリン屋にはまず置いてあると思います。セスナ172とか152とかも同じ燃料です。要するにピストンエンジンの航空機は全てこれといっても過言ではないのでは。オレゴンチョッパーに、航空ガソリンと自動車用ガソリンの最大の違いは長期間保存したときに性能が下がりにくいことだと書いてありました。
昔自動車が有鉛だったことで分かるように、ノッキングを避ける上で有機鉛化合物は非常に有効な添加剤です。ガソリンエンジンで性能を追求していけばどんな形であれ最終的にはノッキングが障害になるので、鉛は性能を上げる上で手軽なものなのです。日本でも、レースでAVGAS(航空ガソリンのこと)を使用して性能を稼ぐことがあると聞きました。反則技ではありますが、基本性能の差があるので有効な手法だとおもいますね。
まあ低鉛ではあるものの、いちおう有鉛です。ある本を読んでいたら、「日本では有鉛ガソリンは使用されていない」と書いてありましたが、それは厳密にはウソです。100LLは日本でも空港なら買えます。リッター250円とかしますが・・。
この燃料を使っている限り触媒をつけることは難しいかもしれません。いいかげん飛行機の世界にも環境意識を導入するべきなのかも知れませんが。
R22はクランク直結のファンがついています。でかいファンでスチール製です。ファンのケーシングはFRPでやはりデカイです。R22を後から見ると目立ちますね。説明書には「Squirrel
Cage Type」とかいてあります。直訳するとリスかご方式ですが、よくハムスターの籠に自分が中に入ってくるくる回るおもちゃがありますが、あれに似てるからかなあ。シリンダーヘッド、オイルクーラー、オルタネーター、メインローターギアボックスに冷却空気を供給しています。ぜんぜん関係ありませんが、「エキュレイユ」もフランス語で「リス」だそうです。
ラジコンは、普通の遠心ファンに適当なケーシングがついたもので冷却しています。非常に適当な構造ですが、特に問題無いようです。大きさが違うので比較できませんが、R22に比べてフィンのピッチも荒いし、だいたいヘッドの冷却面積自体が非常に小さい様に感じます。ま、燃料が違いますからね。
どう考えてもラジコンの方がいいと思うところはクラッチです。ラジコンは一応遠心クラッチがありますからね。R22にはまともなクラッチはついていません。プーリーの張りを緩めてベルトを滑らせている状態を「クラッチを切った(disengage)」と称してます。つまり、エンジンを掛けてから完全にクラッチが締結(engage)するまでベルトは滑る設計になっているのです。(実際には最初の数秒しか滑りませんが)。最初見たときはなんというええかげんな仕組みかと思いましたが、まあヘリのクラッチはエンジンを掛ける時の負荷を減らすためだけにあるわけですから、賢い仕組みですね。だから、エンジンを掛けると同時にクラッチをエンゲージします。それでも最初の数秒は滑っているので「キュキョキュキョ(機体かなりゆらゆら)ギュギュギュ(ものすごいエンジンがうるさいのでもうほかには何も聞こえない。)----バタバタ」ってなかんじですね。
なお、ラジコンではローターを止めてアイドリングできることが必要(飛ばす前とか)なのでまともなクラッチがあるものの、ヘリに関してはローターをまわさずにアイドリングというのは必要が無いのでこういう仕組みの差になっているのでしょう。
なお、ジェットレンジャーなどのフリータービン式ガスタービンエンジン装備のヘリにはクラッチは無いはずです。必要ないからです。
出力タービンとガスジェネレータータービンが機械的に接続されていないので、スターターでガスジェネレータータービンを回しつつ燃料に点火すれば出力タービン(フリータービン)が自然に回り始めます。
言い方を換えれば、N2ゼロの状態でN1の回転数を上昇させたら自然にN2は上昇する、と言うことです。世の中にはフリータービンのヘリが多いと思いますが、そのようなヘリは始動時にローターがゆっくりと回り始めます。逆にR22はかなりの勢いで回り始め、フルスピードに達するまではおそらく数秒という単位だと思います。
R22にももちろんフリーホイールユニット(正式名称はスプラグクラッチ?)がついています。思うにこれはヘリの駆動系でもっとも特徴的な部品ではないかと思います。R22ではテールコーンの付け根、エンジンからのドライブベルトのプーリーの内側に一体型で入っています。中身を分解してみたことはありませんが、スプラグというくらいだからスプラグ方式のワンウェイなんでしょう。プリフライトチェックの点検項目ですし、エンジンのランアップチェックにも当然入っています。急にスロットルを閉じた時に、エンジンとローターの回転数に差ができたらOK(Throttle Close:Needle Split)という方式です。
ラジコンではふつうメインギアとマストの接続部にワンウェイが入っています。「オートロクラッチ」という名前が一般的ですかね。まさに用途を表していますね。なおオートローテーションの最中にテールローターを駆動できるようにメインローターとテールローターが直結のヘリもあります。
R22のトランスミッションは中身を見たことはありませんが、大きさは結構小さいです。たぶんただ減速して方向を90度変えてメインローターに出力を供給している仕組みなのでしょう。ミッションマウントがついており一応ゴム製でした。なんかおもしろかったのが、メインローターギアボックスの冷却ダクトです。クーリングファンからの冷却空気をダクトでギアボックスに吹き付ける構造なのですが、ダクトが細い上に折れ曲がってて、「こんなんでほんとに冷えるんかいなー」と思いましたね。
ラジコンのトランスミッションは、スパーギアによるただの減速です。エンジンのクランクシャフトが縦に搭載されているので出力の向きを変える必要がありません。そのためシンプルです。一時減速はピニオンギアとスパーギアで行います。減速比は私のでは9:1くらいです。これで終わりです。テールローターへはベルトのプーリーの径で増速して動力を供給してます。やっぱりこれで終わりです。ヘリによっては、一次、二次減速ともベルトドライブという物もあります。そのヘリは結構静からしい。
R22にはガバナーがついています。コレクティブを操作しても回転数は上限(103%)に貼りついてます。結構きっちり制御してくれます。昔はなかったそうですが、LowRPMで落ちる人が続出したため必須装備に格上げされたそうです。「切っても普通に飛べるよ」とのことでしたが、まあ確かにそうかもしれません。私も何度かガバナーなしでいきなりホバーから着陸までやらされましたが、なんとかなったので特に問題はないのかも。クルーズ中にコレクティブをあげたりすると、スロットルグリップにガバナーの動きが伝わってきます。ガバナーも仕事してるなと感じる瞬間だったりする。ガバナーではないのですが、R22はコレクティブとスロットルが機械的に連動しています。コレクティブをあげるとスロットルが開くという単純極まりない仕組みなんですけどね。
ラジコンにもガバナーは付けられます。2万円位するのと、サーボをひとつ追加しないといけないので重量増がいやでわたしはつけてません。あと、わたしはエンジンのセッティングがほとんどできないのでガバナーは安全の観点からもつけてません。3Dをやる人には非常にいいらしいです。3Dでは+10度から-10度くらいまでを全部使う上にゼロピッチも日常的に使いますからねえ。
環境破壊度はどっちもどっちでしょう。ラジコンは基本燃料はアルコールなのでクリーンなはずですが、メタノールは毒物です。余り知られていませんが、メタノールは20ml飲んだくらいで失明します。それから30%くらいオイルが入っていてこれは燃えません。そのせいでかなりの煙を吹きます。しかも30%くらいニトロが入っており、ニトロの燃えた後の硝酸化合物はそれなりの毒性を持ちます。最近ラジコン雑誌で排気中のNox濃度を測ったりしていましたが、ニトロ30%(ハデに飛ばす人は普通使う燃料)で15000ppmとか書いてありました。ちなみに環境基準は0.03ppmくらいです。これは車と比較しても2ケタあるいは3ケタ違う数値です。すさまじいですね。
実物はガソリンエンジンなので排気はきれいなはずなのですが、鉛入りの航空ガソリンに触媒なし、マフラーなしです。風が無いときにホバリングしていると排気のにおいがコックピットに入ってきます。実は結構悪くないにおいで私は嫌いではありませんでした・・。
ちなみに実物でマフラーっぽくみえるのはキャビンの暖房用の熱交換器です。決してマフラーではありません。(たぶん。すこしは消音効果もあるでしょうが)あと、クランクケースのブリーザーが大気解放で気流をもろに受ける部分にあるため、オイルがドンドン出ていきます。言葉をかえればオイルを空中に撒き散らす設計になってます。さらに燃費も悪い。巡航でだいたい1時間30リットル消費します。巡航が140km/hくらいだから、車流に言うと5km/lくらいか。いい加減かつ意味のない計算ですね。でも6リッターエンジンの割には燃費いいともいえるかもしれません。
音に関していうと、ラジコンの音はピーンという感じの音がします。車の音とはだいぶ違う感じです。機体やマフラーによって音は変わってきますが、それなりにいい音がします。ブレードの失速音もきちんとしますよ。激しく舵を入れるとバタバタッといいます。ただし、これはローターによってぜんぜん違います。静かなローターというのは確かに存在します。とても失速音が少なくて優雅なローターもありました。たまに広告に「静かなローターを実現」とか書いてあります。なんのことか最初は分かりませんでしたが、今は差がわかるような気がします。
R22はうるさすぎです。排気音は前述のとおりですが、排気音はまあ空港内か、すぐ近くでしか気にならないでしょう。だからあまり問題になりません。しかし、アプローチに入って60ノットとかでコレクティブを下げた時のスラップ音は相当うるさいですよ。最初は壊れるんじゃないかと思いました。ヘッドセット(音の減衰能が20dBくらいあるのに)越しでもかなり聞こえてきます。しかも、アプローチ中ですから高度は400とか300ft(つまり100m)くらいなわけです。下に住んでいる人は相当気になるんじゃないかと思いますね。私は空港のとなりのアパートに滞在していましたが、「ちっちゃなちっちゃなR22のクセにうるせーな」とひとごとのように思っていました。でも、昼間はともかく夜でもしょっちゅう飛行機の排気音がすることには素直に感動していました。うらやましすぎる。航空機天国アメリカバンザーイ。
となりで警察のヒューズ500がよく飛んでいましたが、あれは静かですね。バタバタ音がかなり少なく、ヒュイーンという感じの音を出してました。いやいや静かなことはいいことですね。
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