34.女性が主役のプロジェクト


■□■女性の組合■□■

半年前の滞在から比較して、このNGOのプロジェクトが大きくなったと感じたのは、女性が出資してローンを借り入れる組合活動が始まったことだった。その活動は広くなっており、ローンの融資だけでなく「女性のための店」で販売する製品を生産しているのも、この女性組合のメンバーたちだった。

これまで保健衛生活動を女性中心に展開してきたNGOだが、それだけではなく経済的自立も目指そうということで、組合を設立したとのことである。女性たちの中には、ヤギを買って子どもを産ませ、その子山羊を市場で売って収入を得ている人がいる。また、小さな店を開店し、野菜やお菓子などを販売している人もいる。

都市部では、若い世代の夫婦が共働きをするケースが増えている。しかし「共働き家庭」が少ない農村では、女性は家事に専念している。まだ10代のうちに結婚をして専業主婦になったという女性も珍しくない。そうした女性たちが、「何かをやりたい」と計画を立て、融資を受けて事業を始める。インターネットで情報を得ることができるわけでもない。事業に関する知識を身につけたわけでもない。ただ、やりたいという気持ちが、彼女たちを行動へと導く。「はじめは、できるわけがないと言っていた夫が、今では私の活動を羨ましがっているのよ」というように、彼女だちは活動を通して社会と関わるようになり、自信をつけ、変化していく。

こうした融資活動だけでなく、スナックの製造販売も始めたそうだ。

女性組合の事務所は、トレーニングセンターの敷地の中にある。このトレーニングセンターでは、村の青年たちを集めてリーダー養成のトレーニングをしたり、女性たちを集めて薬草の使い方をトレーニングしている。時には、チェンナイから行政職員が研修にやってきて、村の状況とその活動について理解を深めている。遠方から参加者が集まる際には、泊りがけの研修となる。女性たちは、こうしたトレーニング中の「ティータイム」に出されるスナック(揚げ菓子)を製造し、提供しているのである。
また、この近辺で暮らす人々の家には電話がなく、携帯電話を持つ人もほとんどいないため、週末にはトレーニングセンターに公衆電話が設置される。近くを通りがかる人が電話を利用したり、全寮制で生活をする子どもたちが、家族に電話をかけにやってくる。こうした人たちに向けてスナックを製造しているのだ。ある日、突然のスコールで雨宿りをしに訪れた人々が、雨宿りの間、おしゃべりをしながらチャイやこのスナックを購入し、思いがけない収入アップになったこともある。日本のようにコンビニでお菓子を買うことができない地域では、こうした活動も重要なのだ。

さて、この他に計画されていることのひとつに、事務所の移転がある。先ほど書いたとおり、事務所はトレーニングセンターがある敷地の一角にある。「土地は女性組合の所有ではない」ため、「自分たちの土地」を購入し、そこに移転を計画しているのだというのだ。つまり女性組合の名前で土地を購入し、そこに事務所や融資窓口を設ける計画だ。さらに、その土地に結婚式場を建設したいというのである。

このホームページにも、結婚事情について書いたことがある。結婚に際しては女性が多額の結婚費用を男性側に支払うため、女児が生まれることは、将来多額の出費をすることを意味する。そのため、村では女児が生まれたら殺してしまうという例があるほど、女児は歓迎されないのだった。現在でもなお、結婚にかかる費用は多額であり、日本円にして50万円前後、多いときには100万円前後かかる。例えば、NGOの現地スタッフが得ている給料が約1万円前後とすると、その金額がいかに多額で、家計の負担になっているのかがわかるだろう。近年、「女性側の結婚持参金は要らない」と言う若い男性も見受けられるようになったものの、特に農村では相変わらず女性からの結婚持参金が問題になっている。「ダウリーを支払えないから結婚できない」という女性もいる。結婚は、家族に負担をかけること。家族に迷惑をかけまいと、悩みに悩んだ末に自殺する花嫁もいるほどだ。

こうした状況の中で、女性組合で結婚式場を建設し、格安で結婚式を挙げられるようにしたいというのが新しい計画の趣旨だった。
女性が中心となって展開されている活動が、より積極的に、具体的になっている。活動の中心は、女性たち。
保健衛生の課題が深刻だった頃、女性たちは薬草の使い方や清潔、栄養などの知識を身につけた。あの頃、融資や結婚式場建設といっても、活動は継続しなかったのではないだろうか。カースト、保健、衛生、栄養などの問題が絡み合い、ハイカーストからの抑圧に苦しい生活を送っていた頃、女性たちは複雑な問題に関する知識を身に着け、一つ一つの問題を解決していった。長い年月を経てその活動が安定した今、プロジェクトは新しい取り組みへと変化していた。

女性たちの組合活動は活発に繰り広げられている。あと数年後。本当に、結婚式場が建設されているかもしれない。


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