8.胎児殺しと幼児殺し


■□■知ってる?■□■

「胎児殺し」または「乳児殺し」を知っているだろうか。簡単に言うと、将来花嫁が支払う結婚持参金を苦に、女の赤ん坊が生まれると殺してしまうことである。反対に、男の子が生まれると家は安泰、家族は大喜びする。何故ならその子供が結婚をするときには、花嫁側から多額の持参金をもらうことができるからである。

本当のところはどうなのかと思い友人たちに聞いてみると、彼らはソーシャルワーカーだからだろうか。元気な子供であればどちらでも良いという意見がほとんどだった。それよりも驚いた事は、きっと病気かなにかで死亡してしまうだろうから欲しい子供の数より一人くらい多く生みたいという意見が多かったことである。

この意見は農村に行けば行くほど増える傾向にある。子供は三人欲しいから五人産むという言葉を聞いたとき、私はその理由がわからなかった。気軽に「何故?」と聞いた後、はっとする答えが返ってきた。貧しくて不衛生な状況では、子供に十分な栄養を与える事ができないかもしれない。病気になって死んでしまうかもしれない。そのため希望する子供の数より多めに子供を産むのだと説明してくれた。彼女は大学院を卒業したばかりのソーシャルワーカーであった。高い学歴と知識を持ったその彼女の言葉が、非常に重く感じられた。 そのような環境の中で、ある騒ぎがあった。男性のソーシャルワーカーが、赤ん坊を殺そうとしたのである。

村で活動しているワーカーたちは、診療所でおこなわれる胎児の羊水検査を禁止している。もし女の子であると判ればその子供をおろさなければならないか、望まれて生まれてこないからである。生まれてきても 「お前はお金がかかるだけだ。」 と両親に憎まれ、産んだ女性が責められてしまう事もある。やはり男の子を希望するのが本音だ。結婚持参金は、そのくらい多額な金額である。だから 「男の子が生まれようと女の子が生まれようと関係ないのだから、高い費用を払う性別検査は止めましょう。」 と言っても、村の数人の人たちは人目につかないように検査をしに行くのだ。その村では、そうした事に対する罰金が定められていた。隠れて行くつもりでも、必ず誰かが見ている。

■□■検査が駄目なら占い師!■□■

ある村の例を挙げてみたい。

ワーカーが自ら問題を起こしたというのだ。その原因は、やはり、結婚持参金であった。
村で調査をする際「一世帯に子供(特にそれが女の子)が一人」という時、たいていの場合は不妊手術を受けていると聞いた事がある。もうこれ以上子供は要らないからであり、一人分の持参金を支払うことはそのくらい負担になることの表れでもあった。

そのワーカーにも子供がいたが、男の子が欲しいという理由で妻に不妊手術を受けさせていなかった。しかし、占いの結果は女の子だった。ワーカーは生まれてくる子が女の子だと知ると、妻に暴力をふるい始めたのである。女の子が生まれてくるのは、妻には何の責任もないのに。この暴力を知った住民は彼を説得して暴力を止めさせたが、いざ女の子が生まれてくるとすぐに、ワーカーはその赤ん坊を殺してしまったというのだ。

住民は彼が赤ん坊を殺したということよりも、自分たちに殺すなと言っておきながら殺した事に怒りを感じていた。やっとの事で村のサンガムを設立したワーカーは、あっという間にその信頼を失う結果になった。現在、彼は妻の妹と再婚を考えているという。どうしても男の子が欲しいらしい。

村の人が、赤ん坊殺しには五つの方法があると教えてくれた。まず、生まれる前に中絶する方法。診療所に行かなくても長い棒をお腹の中に入れて掻き出すことができるという。次に、生まれてきた子供の首を締めて窒息死させる方法。そして、ミルクに毒を入れる方法。最も簡単なのは母乳を飲ませる時に母親の乳首にあらかじめ毒を塗り、それを口に含ませること。最後に、脱穀されていない、つまりもみ殻がついたままの米を赤ん坊の口に入れてそのまま母乳を飲ませる方法。もみ殻が喉に刺ささって死んでしまうという。

■□■結婚持参金と子ども■□■ 

私はいつか訪問したある地域を思い出していた。
見ず知らずの私たちのところに、頭を抱えたおじいさんがやって来たのだった。
頭が痛いのかな?
そう思って尋ねると、そんな事ではないという返事が返ってきた。彼の娘の赤ん坊(孫)が死んでしまったという。男の子だった。

ある日、政府の役人が来て村の人に薬を配った。何の薬かわからないが、両親はそれを何処かに放置しておいた。薬だと知る由もない赤ん坊はその薬を見つけ、口の中に入れてしまった。口に入れた薬は七、八錠もの量だったという。大人の私でさえ、インドの薬を処方通りに服用すると顔がパンパンに腫れてしまうほどの強い薬だ。これを幼児が服用したらどうなるか、簡単に想像がつく。

さらに、彼はこう言った。
「娘は、二人の子を産んだよ。男の子と女の子だ。しかし、この男の子は死んでしまった。男の子はいいよ。すごくいいんだ。学校を卒業したら良い職に就くことができる。男なら何でもできるよ。そう思わないか?男なら収入が上がる。でも女は、何もできないんだ。しかし、親は娘に多額の費用を費やさなければならない。ダウリー(結婚持参金)だよ!一体、どうやって払えば良いのだ?」

彼には一人の娘と三人の息子がいる。そのうち二人の息子たちは都市に働きに出ており、仕送りをしてくれる。娘が結婚してから四年間は子供に恵まれず、今回死亡した赤ん坊が初めての、そして待望の「男の孫」だったのである。男孫が生まれてから彼の収入は上がり、そのおかげで自転車を買うことができたし、土地も買ったし、良いことばかりが起きたのだと話してくれた。

「なのに、女の孫しかいないなんて……。」

彼は座ったまま、頭を抱えていた。


■ 次回は・・・赤痢になった!!