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9月11日・
メディアが
試された日

 今回の事件後にいろいろな報道が行われましたが、誰かの意図があるのかないのかは別にして、大手のテレビ局、新聞社などが行う報道は、かなり偏っている場合がある、あるいは見る人に誤った印象を植え付ける危険性が高いように思いました。すでに書いたパレスチナでアメリカが攻撃を受けたことを喜ぶ人々の姿が一例でしょう。実際にはテロに顔をしかめた人も多かったにもかかわらず、喜んでいる一部の人たちの映像が、何の注釈もなく繰り返し報道され、あたかもパレスチナやイスラム教徒、あるいはアラブ圏を代表しているかのようなイメージを作り上げてしまいました。

 もうひとつ、今回の事件後に驚いたのは、日本から送られてくるメールや報道の方が、ニューヨークで暮らしている実感よりも、より戦争への緊迫感が高かったことでした。日本からの連絡を見てみると、アメリカは報復戦争一色に塗られ、日本はそれに追随すべきか否かが議論の対象になっていたような印象がありました。確かにブッシュ大統領の演説や、アメリカ政府の発表だけを聞いていると、アメリカは一致団結して戦争に向かう雰囲気で満ちていると誤解されても仕方がなかったかもしれません。アメリカ議会で報復攻撃に反対した議員は、上院下院あわせてもたった一人だったそうですから、大政翼賛的なきな臭さを感じた人が日本で多くても無理はないだろうと思います。

 しかし実際にはアメリカでも反戦活動が行われ、テロ犯に対する何らかの行動を支持する人の中にも、アフガニスタンへの戦争行為が、ベトナムの二の舞になることや、更なるテロを生み出す原因となることへの危惧を表明する人もかなりいました。そうした報道も、アメリカが思ったほど攻撃を急がず、次第に空気が落ち着いてくると共に増えてはきましたが、当初の緊迫状態のところに流された報道は政府発表のものが多く、かなり増幅された印象として受け取られてしまったようです。

 考えてみれば当たり前ですが、実際にはひとつのシーンがテレビの画面に写されたとき、それはカメラの前だけの光景でしかありません。どのようなシーンであれ、写す側が意図を持って切り取ったシーンであり、報道する側が意図を持って流しているシーンであることを肝に命ずるべきだと思います。それはメディアの自由が無い国では政治的に意図的に行われることでしょうし、またそうでなくてもメディアの側が、商業的な理由から話題になりそうなことばかりを取り上げた結果の場合もあることでしょう。本来大きくて多様な社会を、映像のたったの一シーンや、ひとつの情報が代表できるはずはありません。政府によってメディアがコントロールされているようなところは言語道断としても、マスメディアはその特徴として、複雑な世界の一部だけを切り取ることによって単純化して描き、多様な意見の一部を取り上げる、あるいは統計処理を加えることによって単純化して見せるものであるようです。いったん単純化された情報から、元の姿を構築することは不可能ですが、見ている側は往々にしてそのシーンだけに基づいて全体を想像してしまいます。

 タイムールさんからの別のメールの一部を再び引用します。これは事件後しばらくして送られてきたもので、世界中でなされた報道によって、イスラムが一方的に誤った印象をもたれてしまうことを非常に危惧していると同時に、私たちが報道に接する上で重要な点を指摘してくれています。

先週はすごくひどかったですよ!
まだそんな事件があったのは信じられないんですよ。
今や世界のマスコミはイスラムとアラブ世界の正しくないイメージを写していると思います。
残念ながら人々は自分で考えないでそれを信じています。
これは皆様のせいじゃなくて、マスコミのせいでしょう!
私の社会の人たちはこれは人類史上一番ひどかった罪と信じています。
ムスリムとアラブ人は皆そう思っています。
アメリカの政治に時々アラブとムスリムの人は反対しているけど、絶対に人を殺すほどじゃないですよ!
私はアメリカが早く普通の生活の戻って望んでいます、みんながそうです!
事件でアメリカ人、イスラム教徒、ヨルダン人、日本人とほかの人々が亡くなったのを聞いて、大変に悲しくなりました
この事件をやった人は絶対にムスリム教徒とは言えないと強く信じています。
イスラム教は人間の命をとても大切にしますので人を殺すことは許されず、逆に禁止されています。イスラムでは戦争の時、木を切って、動物を殺すのは禁止で、人間の命を守るのは第一ですね。人間と言うのはイスラム教徒、ユダヤ教徒、クリスト教徒、仏教の人、誰でも人は守らなければならないんですよ。
この事件に責任のある悪い奴らは悪魔ですよ!人間じゃないでしょう。
かれらはプロテロリスト、悪いことをする時、人が信じている物の裏にかくすのだ!
プロテロリストは、責任を他の人に押し付けようとねらっています。
私は皆さんの知恵を信じています。でもまだ皆さんと一緒にもっと考えなければならないんでしょう。
今の時代は「era of communications」とか「情報時代」と呼ばれていますけど、でも残念ながら私たち人類はまだ自分自身とほかの人たちの真実をわからないでしょう。
いくら技術がたあったって自分で見たり経験したりしないと、ほかの人の考え方や性格や行動が本当にはわからないでしょう。いくらテレビを見ても、誰が良い人で誰が悪い人かは分からないでしょう。ただのテレビ映像でしょうT_T
Today the media doesn't give the full picture about what people are really like. It is not just in the west or in Japan but even in our countries as well.
Sometimes the media in our countries shows a wrong picture about the west media has made reporting the news its most important mission, but sometimes reporting the news in a certain way might give a false image of what the truth is ...T_T our media is not objective T_T
皆さんにお願いしたいことは、何かを判断する前に知恵や「common sense」に頼ってください。それだけがあれば真実を見つけることができるようになるでしょう。
皆さんは今やアラブとムスリムのことはちょっと恐ろしいと思っているでしょうか。でもお願いしたいのは自分自身で確かめて判断してください。中東やイスラムに詳しい人に聞いて本を呼んで、テレビを見て、それだけで十分でしょう!
私は皆さん日本人の友達に会う前、日本はどんな国か、日本人はどんな人かわかりませんでした。でも本を読んで、親切な日本人に会って、日本のことすごく好きになりました。
アメリカの友だちのことを好きになっても同じことでしょう。地球人は私たちの兄弟と信じています。
ムスリム教徒でもクリスト教徒でも、仏教でも、インド人でも日本人でも、みんな尊敬しなければならない人間ですよ!これはイスラムの教えですのですごく信じています。

 どうでしょうか。彼は日本やアメリカのみならず、ヨルダンにおいても報道が偏っていることを危惧しています。そして彼が強調しているのは「自分の常識を元に考えた上で判断して欲しい」というそれだけです。アメリカや日本のように恵まれた社会においても、テロや犯罪を行うものは後をたちません。しかし、誰もアメリカ人や日本人のすべてがテロリストや犯罪者だとは考えないと思います。それと同様、世界のどの国をとっても、テロリストが大部分を占めたり、犯罪行為を支持する人が多数を占めたりしている国は無いことでしょう。

 各国政府の発表もマスメディアと同様でしょう。例えば日本の国会で自衛隊の海外派遣が議決され、首相がそれを対外的に発表したとしても、それに反対する日本の人たちは、その決定が自分たちを代表しているとは思わないし、むしろその発表が生み出す日本の軍国化の印象に危惧を抱くことでしょう。ところが外国から見ていれば「多数決で決定された」という報道と、日本政府の発表による軍事的な貢献が知らされるだけです。実際には多数派ではなくとも、議案に反対していた大勢の人の意見が反映されていない点には、さほど着目してもらえないでしょう。イスラム教徒であっても普通の人たちは同じ思いを抱くでしょうし、アメリカ人であっても同じでしょう。

 私たちには、自分の無知に気づき、そして危急のときにこそ、自分の常識を機能させるために準備をしておく必要があるように思います。