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今回の事件後にいろいろな報道が行われましたが、誰かの意図があるのかないのかは別にして、大手のテレビ局、新聞社などが行う報道は、かなり偏っている場合がある、あるいは見る人に誤った印象を植え付ける危険性が高いように思いました。すでに書いたパレスチナでアメリカが攻撃を受けたことを喜ぶ人々の姿が一例でしょう。実際にはテロに顔をしかめた人も多かったにもかかわらず、喜んでいる一部の人たちの映像が、何の注釈もなく繰り返し報道され、あたかもパレスチナやイスラム教徒、あるいはアラブ圏を代表しているかのようなイメージを作り上げてしまいました。 もうひとつ、今回の事件後に驚いたのは、日本から送られてくるメールや報道の方が、ニューヨークで暮らしている実感よりも、より戦争への緊迫感が高かったことでした。日本からの連絡を見てみると、アメリカは報復戦争一色に塗られ、日本はそれに追随すべきか否かが議論の対象になっていたような印象がありました。確かにブッシュ大統領の演説や、アメリカ政府の発表だけを聞いていると、アメリカは一致団結して戦争に向かう雰囲気で満ちていると誤解されても仕方がなかったかもしれません。アメリカ議会で報復攻撃に反対した議員は、上院下院あわせてもたった一人だったそうですから、大政翼賛的なきな臭さを感じた人が日本で多くても無理はないだろうと思います。 しかし実際にはアメリカでも反戦活動が行われ、テロ犯に対する何らかの行動を支持する人の中にも、アフガニスタンへの戦争行為が、ベトナムの二の舞になることや、更なるテロを生み出す原因となることへの危惧を表明する人もかなりいました。そうした報道も、アメリカが思ったほど攻撃を急がず、次第に空気が落ち着いてくると共に増えてはきましたが、当初の緊迫状態のところに流された報道は政府発表のものが多く、かなり増幅された印象として受け取られてしまったようです。 考えてみれば当たり前ですが、実際にはひとつのシーンがテレビの画面に写されたとき、それはカメラの前だけの光景でしかありません。どのようなシーンであれ、写す側が意図を持って切り取ったシーンであり、報道する側が意図を持って流しているシーンであることを肝に命ずるべきだと思います。それはメディアの自由が無い国では政治的に意図的に行われることでしょうし、またそうでなくてもメディアの側が、商業的な理由から話題になりそうなことばかりを取り上げた結果の場合もあることでしょう。本来大きくて多様な社会を、映像のたったの一シーンや、ひとつの情報が代表できるはずはありません。政府によってメディアがコントロールされているようなところは言語道断としても、マスメディアはその特徴として、複雑な世界の一部だけを切り取ることによって単純化して描き、多様な意見の一部を取り上げる、あるいは統計処理を加えることによって単純化して見せるものであるようです。いったん単純化された情報から、元の姿を構築することは不可能ですが、見ている側は往々にしてそのシーンだけに基づいて全体を想像してしまいます。 タイムールさんからの別のメールの一部を再び引用します。これは事件後しばらくして送られてきたもので、世界中でなされた報道によって、イスラムが一方的に誤った印象をもたれてしまうことを非常に危惧していると同時に、私たちが報道に接する上で重要な点を指摘してくれています。 先週はすごくひどかったですよ! どうでしょうか。彼は日本やアメリカのみならず、ヨルダンにおいても報道が偏っていることを危惧しています。そして彼が強調しているのは「自分の常識を元に考えた上で判断して欲しい」というそれだけです。アメリカや日本のように恵まれた社会においても、テロや犯罪を行うものは後をたちません。しかし、誰もアメリカ人や日本人のすべてがテロリストや犯罪者だとは考えないと思います。それと同様、世界のどの国をとっても、テロリストが大部分を占めたり、犯罪行為を支持する人が多数を占めたりしている国は無いことでしょう。 各国政府の発表もマスメディアと同様でしょう。例えば日本の国会で自衛隊の海外派遣が議決され、首相がそれを対外的に発表したとしても、それに反対する日本の人たちは、その決定が自分たちを代表しているとは思わないし、むしろその発表が生み出す日本の軍国化の印象に危惧を抱くことでしょう。ところが外国から見ていれば「多数決で決定された」という報道と、日本政府の発表による軍事的な貢献が知らされるだけです。実際には多数派ではなくとも、議案に反対していた大勢の人の意見が反映されていない点には、さほど着目してもらえないでしょう。イスラム教徒であっても普通の人たちは同じ思いを抱くでしょうし、アメリカ人であっても同じでしょう。 私たちには、自分の無知に気づき、そして危急のときにこそ、自分の常識を機能させるために準備をしておく必要があるように思います。 |