志望動機
 私が医学部を志望した理由、それはただ、「医者になりたいから」。でもそれだけだとみもふたもないので、もう少し詳しく説明すると、「苦しむ人を救いたいから」ということだった。

 中学生の頃から私はサイエンスにあこがれていて、高校に入る頃には医学部に行って研究者になろうと考えていた。ところが、大学入試では不合格。でも、理科一類に入って、私はこれで本当のサイエンスができる、とむしろ喜んでいた。若さゆえ、資格になどとらわれずに純粋にサイエンスがしたいと思っていたのだ。しかし、その結果が、卒研での大失敗だった。

 休学してのんびりしていた頃に、ふと、医学部を目指していた頃のことを思い出した。精神科でお世話になったA先生に苦しみから救ってもらった、という感動もあった。今度は、研究者になるのではなくて純粋に、苦しんでいる人、悩んでいる人を救いたい。その一心で、医学部受験を決意した。

 学士編入試験では、よく出願書類と一緒に志願理由を提出することを求められる。志願理由はどんなふうに書いたらいいのか、情報が少ない中で困っている方もたくさんいると思うし、私もその一人だった。どう考えても、「ただ人を救いたい」、それだけでは採点者の目に留まるとは思えない。そこで、ここでは私が実際に提出した志願理由の概要と、それを書いた経緯を紹介したい。

 まず私は、卒業研究で植物ウイルスを扱い、分子生物学を学んでいた。これは明らかに有利であると思った。植物ウイルスから人に感染するウイルスに興味が移っていくのは自然なことだし、分子生物学は今や医学には欠かせないテクニックであるからだ。そこで、植物ウイルスを学ぶうちに、ウイルスの様々な側面にも興味が及び、もっと社会的な意義が大きい分野でこれまでに学んだ知識とテクニックを活かしたい、と考えるようになった、というストーリーを作った。

 ストーリーとは言っても、事実を多少採点者の受けがよくなるように脚色しただけで、本質的な部分は決して創作ではない。事実、私は大学院在学中こそ植物ウイルスにしか目が行っていなかったものの、休学中には人に疾病を起こすウイルスについて興味を持って、いろいろ勉強していた。

 ここまで決まってしまえばあとは簡単だった。現在の医学におけるウイルスと分子生物学の重要性を強調し、自分はこれまでに充分その知識と経験を身につけてきたので、社会の中での意義が大きい医学の中で、これまでの経験を活かしていきたいと考えるようになった、とまとめた。

 以下に、実際に私が提出した志望理由書を掲載する。しかし、これはあくまで参考にとどめてほしい。なぜなら、志望理由は本来人それぞれであるべきで、他人のものをまねた志望理由書では、その人本来の志望理由が表現できないからだ。そもそも、たとえ他人の志望理由書をまねて提出したところで、面接ではさらに詳しく志望理由について訊かれるから、いかにも自分で書いたようなふりをして合格するのはまず無理だろう。
「志望理由書」-私の場合