『漢方生薬サイコに含まれている有効成分の分析』

1. サイコとは

サイコは漢方の生薬となる植物の名前です。写真を以下に掲載します。

上の写真は生えている姿で、下の写真はサイコの根を乾燥させた姿です。乾燥させたサイコの根をすり潰したりして飲み薬とします。

サイコは漢字で書くと柴胡です。サイコは解熱、消炎などを目的に配剤されている最も重要な漢方生薬の一つです。サイコの成分についてはsaikosaponin類の配糖体が含有されており、肝臓におけるタンパク合成、解毒に関与していることが知られており、この生薬・柴胡のサポニンについては多くの研究が報告されています。 熊本県菊鹿町では柴胡の栽培が行われ、市場に出荷されています。薬学部の薬草園ではこれまでに毎年サポニンの含量についてHPLCによる定量を行ってきました。菊鹿町では毎年種子を採集し、栄養繁殖により栽培を行っているが、種子の品質管理のためにも、一度は種子のサポニンの検定を行っておく必要があります。また、菊鹿町では地上部は夏期に入ると、刈り取られて廃棄されます。この量は何tにも及び、資源の有効利用の面から地上部のサポニンを分析しました。根は有効成分の存在が確認されており、薬となりますが、葉っぱや茎に有効成分が含まれているか調べた例はありません。葉っぱや茎から有効成分が検出されれば薬として使えるかもしれません。

2. 成分の分離操作

熊本県菊鹿町役場経済課から購入した、ミシマサイコ地上部 (2.6kg) を粉砕し、MeOHを用いて10時間還流抽出し、同様の方法で再度抽出、エキス ( 262 g ) を得ました。次に、このエキスをHexaneと80%MeOHを用いて溶媒抽出法で分配後、80%MeOH溶出画分 ( 244 g ) をDiaion HP-20 ( 溶媒 H2O→MeOH gradient ) で順次溶出し、5つの画分に粗分けしました。このうち、fr.4 ( 14.6 g ) をSephadex LH-20 ( 溶媒 MeOH ) にかけ、2つの画分に分画しました。次にこのfr.1 ( 6.7 g ) をODS ( 溶媒 60%→100%MeOH ) に付し、fr.1〜11に分画した。これらのうち、fr.6をsilicagel、およびODSにかけて精製し、BF-11、13、17と仮称する化合物を得ました。同様の方法でfr.10からはBF-5、6、8、また、fr.11からBF-6を得ました。

分離して抽出された各物質はそれぞれがなんという名前の物質でどのような構造をしているかを決定するために各物質に関して機器分析を行いました。

3. 分離して得られた物質

柴胡地上部の成分検索でsaikosaponin a ( 0.0017 % )、b2 ( 0.01 % )、及びf ( 0.0042 % ) と共に、柴胡にはこれまでに検出されていないmonoterpene glucoside 2種を得ました。これら2種のmonoterpenoid配糖体は、柴胡、及びその種子には含有されておらず、地上部からのみ分離されました。この化合物は植物の地上部に多く含まれる精油成分で、地上部の特徴ある成分と言えます。結果として柴胡、およびその種子にはそれぞれ約3%、1.9%のsaikosaponin類が含まれているのに対し、柴胡地上部には約0.7%のsaikosaponin類が含有していることが判明しました。 柴胡の主成分である、saikosaponin a, c, dとその腸内代謝物は肝臓でのタンパク合成や、内因性ステロイドホルモンの分泌促進に関与していることが荻原らの研究で明らかにされており、この研究により、地上部はsaikosaponin aとsaikosaponin dの誘導体であるsaikosaponin b2を多く含んでいることが判明したため、柴胡と同様の薬理作用を示すものと期待されます。今回の研究結果は地上部の有効利用、また新しい薬用資源の開発の観点からも興味がもたれます。